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消えたジョセフ

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 アリスは、しばらくして、自分の怒りが収まると、ジョセフの横に行き、ブランケットを掛けながら言った。
「ごめんなさい。ジョセフ。さっきは、言い過ぎたわ。冷えるでしょう。ほら、これで暖かくして寝てね」
ジョセフは、アリスとは、逆の方を向き、丸まって申し訳なさそうに言った。
「いや……私も傲慢だったかもしれん。すまない……ありがとう」
「いいえ……」
アリスは、やけに素直なジョセフに対して、首を傾げた。

 ジョセフの横で寝ていたアリスは、ふと目を覚ました。
すると、横に居るはずのジョセフが消えていた。

 アリスは、慌てて皆を起こした。
「ジョセフが……ジョセフが……いなくなったわ! どうしよう……私が言い過ぎたせいだわ!!」
ノアがアリスを心配そうに見つめて言った。
「落ち着け、アリス。大丈夫だ。まだ夜は、明けていない」

 ノアが皆を見回して言った。
「皆、すぐにジョセフを探しに行こう。夢中になりすぎて、太陽の光を浴びないように気を付けろよ。そうだな……アリスとオリバー、マイルズとローズ、ブルーノと私で組んでいこう。死神がいるかもしれん。気を付けろよ!」
オリバーがぽつりと言った。
「マイルズとローズ……」
ノアは、オリバーを叱責した。
「オリバー。こんな大変な時におかしな事を心配するな! お前は!!」
オリバーは、項垂れて言った。
「すみません。ノア」

 アリスは、突然、泣き出した。
「私……私……ジョセフに何かあったら、消えて無くなりたい……グスッ……グスッ……」
ノアは、また、心配そうにアリスを見た。
「アリス。お前が弱い部分を見せるのは、珍しいな……わかるよ。大丈夫! すぐに見つかるさ!!」
アリスは、涙を拭いて、胸を張って言った。
「そうね。私は、ジョセフの妻だもの。気丈にしていなくては!」
「そうだ。その調子だ、アリス。あの誇り高きヴァンパイア、ジョセフの妻だものな! 行こう!! アリス!!」
ノアは、アリスを手招きして、外へ連れ出した。

 ヴァンパイア達は、夜中、ジョセフのことを探し回ったが、とうとうジョセフを探し出すことは、出来なかった。

 ノアは、寝床でアリスに話しかけた。
「大丈夫か?……アリス」
アリスは、凛とした目をして言った。
「大丈夫よ。私は、誇り高きヴァンパイアの妻なんでしょ。留守は、妻である私が預かるわ!」
ノアは、アリスが内心、無理をしていることがわかったが、アリスを褒め称えた。
「そうだ。それでこそ、アリスだ!」
オリバーがアリスに駆け寄ってきて言った。
「抱え込まないで下さい、アリス。皆がいますよ!」
そこにいるヴァンパイア達、皆がオリバーの言葉に頷いた。
「ありがとう、オリバー……ありがとう、皆」
アリスは、少しだけ、皆に笑顔を見せた。

 また夜がきて、訓練は、一時中止となり、ヴァンパイア達は、皆、人間の血を吸う通りを歩いていると、死神テオドアと死神カレンが仁王立ちで、ヴァンパイア達を待ち構えていた。

 ノアが皆に声をかけた。
「ジョセフがいなくても大丈夫だってところを皆で戦って、見せつけてやろうぜ!!」

「誰がいないって? おい! ここに私は、いるぞ!!」

 ノアが、後ろを振り返ると、傷がまだ少し残っているジョセフがいた。
ノアは、驚いた様子でジョセフに話しかけた。
「ジョセフ。……お前、どこに行ってた?」
ジョセフは、笑って言った。
「ちょっとな……隣国に残してきた死神ネイサンが私達に後々、悪さをしないように、倒してきてやったさ! ハッハッハ!!」

 アリスは、ジョセフの後ろを指差しながら、申し訳なさそうに言った。
「あの……言い辛いんだけど……そうでもないみたい……」

 ジョセフがその言葉を不思議に感じながら、ゆっくり、後ろを振り返ると、倒したはずの死神ネイサンがそこに不敵な笑みを浮かべて立っていた。
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