ヴァンパイアよ死神から逃げよ

ナカムラ

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アリスの気づき

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 隣国に馬車で着く頃には、ローズの傷は、癒えていた。

 着くとすぐに、空き家になっている新しい寝床を色々探した。
広さなどちょうどよい空き家を見つけると、皆で掃除をして、綺麗にして一段落した。

 アリスは、皆に銀のワイングラスに入れた血を配った。
「また、血を吸いに行ったり、血を溜めたりしないと、もう底をついてしまったわ。」

 ローズは、もう、すっかり傷が治ったことで、また、オリバーに嫌味を言う癖が復活した。
「まぁ、オリバーは、人間の血を吸うことは、出来ないけど、私が溜めてあげるから待ってなさい」
オリバーは、自分に嫌味を言われたことより、ローズのことを心配した。
「そんなことより、もうローズ大丈夫なのかい? あんな怪我をして、もう動くなんて」
ローズは、怒って言った。
「大丈夫よ。何言ってるのよ。あなたの飲む血がないじゃない。私が行かないと」
「それは……すみません」
ノアが笑って言った。
「なんか仲がいいんだか、悪いんだか、わからないな。特にローズ、冷たい言い方で随分、優しいこと言っているぞ」
ローズは、顔を赤らめた。
ジョセフがまた、ノアをたしなめた。
「だから、オリバーとローズに絡むなよ」
ノアは、反省せずに言った。
「こちらが、聞いてられんかったからだ」

 アリスがふと思い付いたように言った。
「あの、思ったんだけど……」
ジョセフがアリスに珍しく苛ついて言った。
「何だ。アリス早く言え」
「あの、オリバーが出ていった時、私達、皆を吹き飛ばしたじゃない? ということは、かなり、オリバーの呪術の能力って、私達が思っている以上に凄くなってるんじゃない? だって、私達、誰もオリバーが私達を吹き飛ばす前に、オリバーを吹き飛ばす猶予を与えなかったわ。それだけ、呪術を使いこなしているということよ」
ジョセフは、オリバーを見て言った。
「アリスの言う通りだ。オリバー、お前は、もう少し自分に自信を持て。この中で、呪術の能力が一番だということだ。もう、私達を畏れなくていいんだからな。わかったな」
「はい」

 ジョセフは、皆に言った。
「もう、夜が明けちまう。皆、もう寝るぞ。次に備えるのだ」
皆は、すぐに、それぞれの部屋に眠りに行った。

 また、次の日暮れ頃、皆は、人間の血を吸う準備をして、日が完全に暮れて、人間の血を吸う通りを探すことにした。

 ジョセフは、オリバーに言った。
「オリバー、先頭を歩いてくれるか。新しい国だ。どんな死神がいるかわからん。お前に倒して貰わないとな」
オリバーは、嬉しそうに言った。
「はい、わかりました」
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