上 下
89 / 110

ブルーノの変化

しおりを挟む
 ジョセフ対ノアの戦いを見た後で、ブルーノは、ノアを睨み付けて、再び訓練を始めようとした。
ノアは、ブルーノのその鋭い眼光を見て、ジョセフに耳打ちした。
「これは、逆効果だったかもしれん」
ジョセフも、ノアの言葉に納得したようだった。
「そうだな」

 ノアは、ブルーノの訓練を再開した。
「ブルーノ、短剣でまた、私の腹部を狙え!」
 しかし、ノアが思った通りになった。
ブルーノは、また、やみくもにノアに剣を向けた。
ジョセフ対ノアの戦いを見て、自分の力不足を感じ、気持ちが焦ってしまっていたのだ。

 訓練をする前より、ブルーノの剣の腕前は、落ちた。
ノアは、ブルーノに何回も言った。
「ブルーノ、落ち着くんだ。集中するんだ。やみくもに剣を向けるな」
 しかし、ブルーノの剣がノアの腹部に近付いていくことは、なかった。

 ノアは、一旦、訓練を止め、ブルーノの両肩を抱いて、諭した。
「ブルーノ、お前は、ジョセフと私の動きの速さだけ見ている。ブルーノ、それは、違うぞ。私達がどれだけ、頭を使っているか。まずは、頭を使って、剣が向かう先を見ろ。避けられたら、更に、その先を、読む。そのことを続けていくんだ。それからだ。動きの速さをつけるのは。とにかく、ブルーノ、焦るな。わかったか」
「わかった。ノア。やってみるよ」
「では、訓練を再開させるぞ! 来い、ブルーノ!!」

 すると、ブルーノの動きは、みるみる良い方向に変わった。
最初のうちこそ、ブルーノが向けた剣は、ノアから離れていたが、徐々に、ノアの腹部に剣が近付いていった。
 ついには、何回もノアの腹部に当たる寸前になるまでになった。

 ノアが嬉しそうに言った。
「良くなってきたぞ、ブルーノ。やはり、私とジョセフの戦いを見せた甲斐があった。では、今度は、私がお前に、剣を当てるから避けるんだぞ!!」
「わかったよ、ノア。避け……」

 その時だった。外に出てきたオリバーが、ブルーノに呪術で、手を翳して吹き飛ばした。
「ブ、ブルーノ……お前には、呪術の訓練が待っているからな」

 ノアとブルーノの訓練を立って見ていたジョセフは、オリバーを酷く叱った。
「オリバー、何をしている。訓練中だぞ。引っ込んでろ!!」

 ローズは、後から出てきて、オリバーの肩をポンッと叩き、馬鹿にしたように言った。
「悔しかったんでしょう。ブルーノは、あなたより、力をつけているからね。残念だったわね。すぐに、抜かれて。」

 オリバーは、悔しそうに唇を噛みしめて言った。
「その通りだよ。でも、すみませんでした」
そう言うと、オリバーは、すごすごと寝床に戻っていった。
 ローズも。その後に付いていった。

 ノアは、ブルーノに咳払いをしながら言った。
「んっ! んっ! 邪魔が入ったが、訓練を続けるぞ! ブルーノ!!」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

業腹

ごろごろみかん。
恋愛
夫に蔑ろにされていた妻、テレスティアはある日夜会で突然の爆発事故に巻き込まれる。唯一頼れるはずの夫はそんな時でさえテレスティアを置いて、自分の大切な主君の元に向かってしまった。 置いていかれたテレスティアはそのまま階段から落ちてしまい、頭をうってしまう。テレスティアはそのまま意識を失いーーー 気がつくと自室のベッドの上だった。 先程のことは夢ではない。実際あったことだと感じたテレスティアはそうそうに夫への見切りをつけた

【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした

仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」  夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。  結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。  それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。  結婚式は、お互いの親戚のみ。  なぜならお互い再婚だから。  そして、結婚式が終わり、新居へ……?  一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...