R18『クズアルファはぐずぐずに尽くし巣を作る』 #溺愛アルファの巣作り

ああいああこ 【ゆる腐わ女子】

文字の大きさ
上 下
1 / 7
『クズアルファはぐずぐずに尽くし巣を作る』本編(完結)

◆回想◆◇処分◇◆回想◆◇処……

しおりを挟む

素敵な企画ありがとうございました。

◆回想◆◇処分◇◆回想◆◇処……



 恋をするとは思わなかった。

『ファッションを扱うには、お前は冷た過ぎる』

 そう言われ続けたアルファの私が、あっさり恋に堕ちるとは。





 地方の繊維の街に、視察と接待を兼ねて招待されていた。
 ホテルの朝食続きは味気ないと、空腹を刺激する匂いに釣られて入店してみた。地元民御用達のこじんまりしたワンオペ大衆食堂、そんなところに……

『いた』

 ひと目でお互いにわかった。いや、ひと嗅ぎか。
 くたびれてはいるが清潔な白衣。頭には店名入りのタオル巻き。うなじには厚生省支給品の分厚いネックガード。
 オメガなのに、華奢とは程遠い。柔らかく弾力がありそうなまんまるのシルエット。香ばしくどこか懐かしい、美味しそうなフェロモン。

『ああ、私の番だ』

 一瞬で納得した。




 六畳ほどの狭いアパートの一室に、単独で無断で上がり込む。鍵は大家に複製させた。
 クローゼットと呼ぶには貧相な布カバー付きのハンガーラック。ジッパーを開け、敷きっぱなしのシングル布団の上に中身を放り投げていく。

「こんな大衆品、全て処分だ」




 震える手、震える声。

『……ごゆっくり』

 一言添えて、カタカタと置かれた器。火照った丸い頬。食欲を唆る匂いと、性欲を掻き立てる番の香り。
 これから毎日毎日、両方ぺろりといただけるのか。
 にやける顔を誤魔化しつつ、私はレジ台に向かった。準備中の札を探し出し、店の引き戸に勝手にぶら下げた。
 出張随行の秘書と、私の部署、本日の会合相手にキャンセルの連絡を入れた。連泊予定のホテルにも。

 再び店内に舞い戻った。他の客が退くまでの間、じっくり味わおう。見開いた黒い瞳をうるうるさせた番の横で、彼の初手料理に箸をつけた。
 何てしあわせなんだろう!




 1Kの古アパートなんて、相応しくない。早く私の元に連れ帰らないと。
 今の渋谷のマンションは、便は良いが周辺環境は今一つか。とりあえずは、そこに。
 自ら番のために製作した服や小物で、住処を満たしたいところだ。が、揃うまでは弊社の商品で我慢しよう。
 下着から全て指定して本社に送らせた一式を、クローゼットに新しく掛ける。

 押入れのふすまを力任せに全開する。
 なぜ、彼はサイズ感の合わない品々を身につけるのか! 私の番なのに!
 背が低く、あちこちに脂肪がのっているのだ。胸囲腹囲に合わせて既製品を選べば、袖や裾はズルズルと醜い。耐えられん。
 いや、むしろ愛らしさが打ち消されてきたからこそ、番は無垢のままでいられるのかもしれないが……




『ごちそうさま』

 最後の客が年季の入った食堂を後にした。レジ打ちの場所から、カチンと固まって動けない番。
 そっと隣に立ち、私のフェロモンを当て、隙間なく全身を覆ってあげた。

『名前は?』
『や……おれに、ちかづ、くな……』

 恥じらいを含む声に我慢できず、彼の手首を掴み、そのまま強引に抱き込んだ。

『うっ、ああっ……』

 私の腕の中で、ふるふると白い柔肌が揺れていた。アルファによって引きずり出されたオメガのフェロモンと、それだけではない香り。

『少し体に触れただけで、イッちゃったね?』

 手近な食堂椅子に座り、番を膝に乗せた。白衣をはだけ、ウエストゴムのボトムに手を差し込むと、青い匂いが強くなった。

『う、うそだ……』

 少しずり下げると、ゆるゆるトランクスに粘着度の高いものがべったりと。粗雑な布地にぐったりした陰茎を包んで、ゆっくり擦り上げた。

『な、にこれ……しらない……やめてやめ……』
『まさか初めて? 発情期、どうしてるの?』

 はぁはぁあがる息を隠すように、私のネクタイを握り顔を寄せてきた。可愛い。

『ヒート? ひとり。このまちにアルファ、なんて……いない』

 口角が上がるのを止められなかった。そうか、私だけを待っていたのか。嬉しくて、一際強く私のフェロモンで囲ってしまった。
 
『あぅ、また、でちゃう……やぁ』

 今まで遊んできたオメガとは違う。
 私だけの、オメガ。

『しらない……たすけて……こわい』

 ぬちっぬちっと淫蕩な水音が、木造の低い天井にまで響いた。履き慣れ色褪せたトランクスは、精を吸い取りきれないほど薄く脆そうだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

シャルルは死んだ

ふじの
BL
地方都市で理髪店を営むジルには、秘密がある。実はかつてはシャルルという名前で、傲慢な貴族だったのだ。しかし婚約者であった第二王子のファビアン殿下に嫌われていると知り、身を引いて王都を四年前に去っていた。そんなある日、店の買い出しで出かけた先でファビアン殿下と再会し──。

ひとりのはつじょうき

綿天モグ
BL
16歳の咲夜は初めての発情期を3ヶ月前に迎えたばかり。 学校から大好きな番の伸弥の住む家に帰って来ると、待っていたのは「出張に行く」とのメモ。 2回目の発情期がもうすぐ始まっちゃう!体が火照りだしたのに、一人でどうしろっていうの?!

巣作りΩと優しいα

伊達きよ
BL
αとΩの結婚が国によって推奨されている時代。Ωの進は自分の夢を叶えるために、流行りの「愛なしお見合い結婚」をする事にした。相手は、穏やかで優しい杵崎というαの男。好きになるつもりなんてなかったのに、気が付けば杵崎に惹かれていた進。しかし「愛なし結婚」ゆえにその気持ちを伝えられない。 そんなある日、Ωの本能行為である「巣作り」を杵崎に見られてしまい……

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

処理中です...