8 / 8
8.隣国へ
しおりを挟む
「ふふふふふ。じゃあ行きましょうか」
アークはやたら上機嫌に私を抱き上げて空に戻った。
森が遠くに見える。
鳥より高い所を飛んでいると思うのだけど、不思議と寒くない。
「アーク、どこに向かっているの?」
「え、隣国に行って結婚するんでしょう?」
「え、あ、あれはアルを撒くための方便というか」
「ちょうど隣国に兄が居るんですよね。
呼ばれていたんですけど、飛ぶ魔力が足りなくて」
「そうだったの……」
「それでヒロさんは僕と結婚しても別に構いませんよね?」
さも当然のようにアークは口にする。
「え、それは嬉しい…… けど、死亡フラグはどうなったの?」
「ああ、それは、
あまりにもヒロさんの血が美味しいので、今後他の血を飲む気にならなくて。
ヒロさんにフラれたら死ぬだろうなーと思っていたので、生き残る方法を考えていただけですよ」
「ええっそれは食料として優秀で何よりだよ……」
「まぁ、僕のことを好きな人の血の方が美味しく感じるんですけどね」
「っていうことはバレバレだったんじゃない。
その状態でフラれる可能性、あるの!?」
「ありますよ、人間は、不可解ですから」
アークは遠い目をした。
あ、これはその状態でフラれたこと、あるんだ。
何故か撃墜されずに国境を越え、私達はあるお屋敷の中庭に舞い降りた。
アークをそのまま25歳ぐらいにして日焼けさせたような兄が出迎えてくれて、
アークは私のことを妻だと説明した。気が早くない?
「心配していたんだよ、リンデルさんが亡くなってから連絡がなくなって」
「色々あって、今は妻が僕の力の源になってくれているんだ」
「ヒロです、はじめまして」
「俺はジーニ、アークの兄だ」
ジーニさんと握手をする。
アークのお兄さんは隣国の国境付近の領土の領主らしい。
「それで俺の家を兄ちゃんの家の裏あたりに繋げたいんだけど」
アークが聞いたことがない口調で喋っていてびっくりした。
一人称は私と僕を行ったり来たりしてたけど常に敬語だったし俺というのはきいたことがなかった。
「どうせあの才能溢れるあり得ない籠城だろ、好きな所に作れよ」
兄の顔が若干ひきつっている。
やっぱりあの塔ありえないよね。何か持ち運び出来るみたいだし。
「ありがと、じゃあ詳しいことはまた」
私はお兄さんにお辞儀をしてアークに連れられて行った。
お兄さんの家の裏手の森にまた立てた塔に戻った。
今度は最上階のアークの部屋に案内された。
焦茶の木主体の落ち着いた部屋だけど、
本と布とミシンが散乱している。
「アークってお兄ちゃんっ子だったのね」
「あ、え、そうでしたか!?」
「あと、敬語は、やめていただいてもよろしいんですのよ」
「いえ、兄以外へは敬語が素です。両親に対しても確か敬語でしたし」
「そうなんだ。
あと、聞いてなかったけど、アークはいくつなのかな」
さすがに17歳とは結婚できないしなぁ。心情的に。
「僕は27ですよ。吸血鬼にしてはかなり若いですね」
「え…… あ、そうか。てっきり歳下とばかり」
「ヒロさん歳上好きそうですもんね。早く言えば良かったな」
「いや会話的にそうじゃないかなとは思ってたんだけどね、魔物だもん若く見えるよね、うん」
歳上好きと見抜かれたのは癪だけど実際気負っていた気持ちが楽になったのは確かだ。
「外堀を埋めたくて焦って連れてきてしまったんですが、結婚しても大抵のことは私が出来ますし、
ヒロさん何かしたいことあります?」
「うんちょっと展開が早くてついて行けてないかな。
少し生活に慣れたらアークのことと、この国のことを知りたいの。
知性がある魔物と共存する国ってどんな感じかしら」
あとは吸血鬼と人間の子供の育て方とか気になるけど、黙っていた。
「そうですね、吸血鬼はわりと人間寄りの文化ですけど、違いはありますし。
ゆっくり勉強しましょうか」
「そうだね」
それから二人で塔の中で畑や台所を整えたり、近くの街を散策したりして過ごしていたら
呪いのことをすっかり忘れていて、アークは熱を出した。
アークはやたら上機嫌に私を抱き上げて空に戻った。
森が遠くに見える。
鳥より高い所を飛んでいると思うのだけど、不思議と寒くない。
「アーク、どこに向かっているの?」
「え、隣国に行って結婚するんでしょう?」
「え、あ、あれはアルを撒くための方便というか」
「ちょうど隣国に兄が居るんですよね。
呼ばれていたんですけど、飛ぶ魔力が足りなくて」
「そうだったの……」
「それでヒロさんは僕と結婚しても別に構いませんよね?」
さも当然のようにアークは口にする。
「え、それは嬉しい…… けど、死亡フラグはどうなったの?」
「ああ、それは、
あまりにもヒロさんの血が美味しいので、今後他の血を飲む気にならなくて。
ヒロさんにフラれたら死ぬだろうなーと思っていたので、生き残る方法を考えていただけですよ」
「ええっそれは食料として優秀で何よりだよ……」
「まぁ、僕のことを好きな人の血の方が美味しく感じるんですけどね」
「っていうことはバレバレだったんじゃない。
その状態でフラれる可能性、あるの!?」
「ありますよ、人間は、不可解ですから」
アークは遠い目をした。
あ、これはその状態でフラれたこと、あるんだ。
何故か撃墜されずに国境を越え、私達はあるお屋敷の中庭に舞い降りた。
アークをそのまま25歳ぐらいにして日焼けさせたような兄が出迎えてくれて、
アークは私のことを妻だと説明した。気が早くない?
「心配していたんだよ、リンデルさんが亡くなってから連絡がなくなって」
「色々あって、今は妻が僕の力の源になってくれているんだ」
「ヒロです、はじめまして」
「俺はジーニ、アークの兄だ」
ジーニさんと握手をする。
アークのお兄さんは隣国の国境付近の領土の領主らしい。
「それで俺の家を兄ちゃんの家の裏あたりに繋げたいんだけど」
アークが聞いたことがない口調で喋っていてびっくりした。
一人称は私と僕を行ったり来たりしてたけど常に敬語だったし俺というのはきいたことがなかった。
「どうせあの才能溢れるあり得ない籠城だろ、好きな所に作れよ」
兄の顔が若干ひきつっている。
やっぱりあの塔ありえないよね。何か持ち運び出来るみたいだし。
「ありがと、じゃあ詳しいことはまた」
私はお兄さんにお辞儀をしてアークに連れられて行った。
お兄さんの家の裏手の森にまた立てた塔に戻った。
今度は最上階のアークの部屋に案内された。
焦茶の木主体の落ち着いた部屋だけど、
本と布とミシンが散乱している。
「アークってお兄ちゃんっ子だったのね」
「あ、え、そうでしたか!?」
「あと、敬語は、やめていただいてもよろしいんですのよ」
「いえ、兄以外へは敬語が素です。両親に対しても確か敬語でしたし」
「そうなんだ。
あと、聞いてなかったけど、アークはいくつなのかな」
さすがに17歳とは結婚できないしなぁ。心情的に。
「僕は27ですよ。吸血鬼にしてはかなり若いですね」
「え…… あ、そうか。てっきり歳下とばかり」
「ヒロさん歳上好きそうですもんね。早く言えば良かったな」
「いや会話的にそうじゃないかなとは思ってたんだけどね、魔物だもん若く見えるよね、うん」
歳上好きと見抜かれたのは癪だけど実際気負っていた気持ちが楽になったのは確かだ。
「外堀を埋めたくて焦って連れてきてしまったんですが、結婚しても大抵のことは私が出来ますし、
ヒロさん何かしたいことあります?」
「うんちょっと展開が早くてついて行けてないかな。
少し生活に慣れたらアークのことと、この国のことを知りたいの。
知性がある魔物と共存する国ってどんな感じかしら」
あとは吸血鬼と人間の子供の育て方とか気になるけど、黙っていた。
「そうですね、吸血鬼はわりと人間寄りの文化ですけど、違いはありますし。
ゆっくり勉強しましょうか」
「そうだね」
それから二人で塔の中で畑や台所を整えたり、近くの街を散策したりして過ごしていたら
呪いのことをすっかり忘れていて、アークは熱を出した。
10
お気に入りに追加
5
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。


兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】え、お嬢様が婚約破棄されたって本当ですか?
瑞紀
恋愛
「フェリシア・ボールドウィン。お前は王太子である俺の妃には相応しくない。よって婚約破棄する!」
婚約を公表する手はずの夜会で、突然婚約破棄された公爵令嬢、フェリシア。父公爵に勘当まで受け、絶体絶命の大ピンチ……のはずが、彼女はなぜか平然としている。
部屋まで押しかけてくる王太子(元婚約者)とその恋人。なぜか始まる和気あいあいとした会話。さらに、親子の縁を切ったはずの公爵夫妻まで現れて……。
フェリシアの執事(的存在)、デイヴィットの視点でお送りする、ラブコメディー。
ざまぁなしのハッピーエンド!
※8/6 16:10で完結しました。
※HOTランキング(女性向け)52位,お気に入り登録 220↑,24hポイント4万↑ ありがとうございます。
※お気に入り登録、感想も本当に嬉しいです。ありがとうございます。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる