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7.騎士と対決
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アークの塔にあったワンピースの方に着替えているので血は飲みやすい筈だ。
水魔はああ言ってたけどがっさがさでボロボロ貧乏剣士の私を女の子だと思える筈がない。
……最近栄養状態良くて髪とか肌とかツヤッツヤだけど。
普通こんなすぐに身体組織入れ替わらないよねやっぱり何か変。
水魔のこともあるし聞いてみようかな。
ソファーに座っているアークにワンピース姿を見せて聞いてみた。
「ねぇアーク、私最近ボロボロだった身体がうるうるしてきた気がするの」
「それはそうでしょう、僕が健康管理して居るんですから」
「だから…… 前より女の子らしくなったかな、と思うんだけど、どう思う」
よし、この質問で少しはアークの下心を測れる筈。
血を飲む時とか、接近すると嫌そうな顔されるし、ないと思うんだけどね。
「え…… まぁ確かに、そうですね。
僕が干からびてた時に何の躊躇いもなく血をくれた時点で女神みたいに見えてましたから、
そう言えばあの時ヒロさんもボロボロだったんですよね」
「女神か……」
まぁ少なくとも嫌われてはないんだろうけど、女神って何だろうな。
「やっぱり水魔が言ってたことは水魔視点のことだと思うんだよね。
気にすることなさそう」
「え…… 何て言ってたんですか?」
「何か、男の人はだいたい下心があると思って接しなさいって言ってた」
「何ですか水魔のくせにそれは同意しますね」
「え、そうなの?」
「僕は自制心は人並みにありますが、さすがに吸血した時などは……
だから早々に立ち去っても追いかけて来ないで下さいね」
「えぇ?
じゃあ死亡フラグって、それに何か関係があるの?」
「それは……
内緒です」
「うーん、
あ、私が死ぬぐらい飲んじゃ駄目だよアーク」
「ああ惜しい答えですね。
私はそんなに飲みませんよ」
じゃあ何だろう。
「血が飲みたいので、出来るだけ側に来てくれませんか?」
アークが座っているソファーのぴったり隣に腰掛ける。
アークは私の身体を少し抱き寄せると首筋から血を吸った。
吸血はすぐ終わったんだけど眉間に皺を寄せたアークの顔がすぐ目の前にある。どういうことかな。
「ヒロさんは大抵のことは許してくれますけど、なんでキスは駄目だったんですか」
「え…… 駄目でしょう、そういうことは」
「僕は婚約者居ませんけど」
「そういうことは好きな人とやらないと駄目でしょ」
「でもヒロさんは僕とキスするのは別に嫌じゃないんでしょう」
なんで知っている。
「だから僕がヒロさんのこと好きなら……」
私が硬直していると、アークは頭を抱え出した。
「ああ、忘れて下さい……
吸血すると一瞬理性が飛んでいるんです」
「アークがキャラ変してしまったかと思って焦ってしまったよ」
「いいえ、いいえ、僕はもっと外堀から埋めるタイプです」
うん?
「ただちょっと根に持ってただけです。
僕が格好良く熱を出す宣言をする前にはっきり断られたので」
これはだいぶ根に持ってたな?
「アークが悪い訳じゃないんだけど、あんまり恋愛にいい思い出がなくて。
変な話なんだけど、私がキスをするだけで不幸に巻き込みそうな気がするの」
「なるほど、前のその貴族の男の根が深いんですね。
もう居場所掴んでいるんで焼いておきましょうか?」
あれ、さらっと怖いこと言ったな?
「え…… なんでアルのこと知ってるの?」
「ヒロさんの気配が残っている男がそいつしか居ないからですよ。
近くまで来ていて貴方を探しているようですね」
やっぱり怖いこと言ってない?
「アル、まだ諦めてなかったの……
はやく真っ当な道に戻らないといけないのに」
「やっぱりちょっと焼いておきますか?」
「攻撃されても、魔物に私が攫われてると思うだけでしょ……
やっぱり、ちゃんと出て説明しないと……
アーク、一緒に来てくれない?」
「ほう、これは面白いことになりましたね」
アークは一瞬で吸血鬼の正装に着替え、コウモリのような羽根を出すと私を抱えたまま小屋の窓から外に出た。
2階は塔の中庭になっていたようで、空まで飛んで森に向かって降りていく。
私を追いかけて森を彷徨っていたらしいアルの目の前に降りた。
前髪を後ろになでつけた、短い金髪に青い瞳、いかにも騎士という体格のアル。
でもちょっとやつれた?
「ヒロ! お前魔物に……!」
「アル、彼が今の私の好きな人です! 諦めて下さい!!」
「な、何を……
そもそも、魔物はお前の両親の敵ではないのか!?」
「別にこの人が私の親を殺した訳じゃ……
あれ、ないよねアーク?」
「僕は人間を殺したことないですね」
アークはアルを威圧しつつわざわざ私に顔を寄せて親しげに話した。
「殺した訳じゃない!
私達は隣国に行って結婚するの!
邪魔しないで!!」
「ヒロ、お前は騙されているんだ!!」
「騙されてない!
けど騙されてたとしたって貴方と居るより幸せよ!
私とアークが一緒に居ても誰も不幸にならないもの!
ちゃんと王都に帰って婚約者と親に孝行して下さい!!」
「ぐっ」
正論を言われアルは膝をついた。
水魔はああ言ってたけどがっさがさでボロボロ貧乏剣士の私を女の子だと思える筈がない。
……最近栄養状態良くて髪とか肌とかツヤッツヤだけど。
普通こんなすぐに身体組織入れ替わらないよねやっぱり何か変。
水魔のこともあるし聞いてみようかな。
ソファーに座っているアークにワンピース姿を見せて聞いてみた。
「ねぇアーク、私最近ボロボロだった身体がうるうるしてきた気がするの」
「それはそうでしょう、僕が健康管理して居るんですから」
「だから…… 前より女の子らしくなったかな、と思うんだけど、どう思う」
よし、この質問で少しはアークの下心を測れる筈。
血を飲む時とか、接近すると嫌そうな顔されるし、ないと思うんだけどね。
「え…… まぁ確かに、そうですね。
僕が干からびてた時に何の躊躇いもなく血をくれた時点で女神みたいに見えてましたから、
そう言えばあの時ヒロさんもボロボロだったんですよね」
「女神か……」
まぁ少なくとも嫌われてはないんだろうけど、女神って何だろうな。
「やっぱり水魔が言ってたことは水魔視点のことだと思うんだよね。
気にすることなさそう」
「え…… 何て言ってたんですか?」
「何か、男の人はだいたい下心があると思って接しなさいって言ってた」
「何ですか水魔のくせにそれは同意しますね」
「え、そうなの?」
「僕は自制心は人並みにありますが、さすがに吸血した時などは……
だから早々に立ち去っても追いかけて来ないで下さいね」
「えぇ?
じゃあ死亡フラグって、それに何か関係があるの?」
「それは……
内緒です」
「うーん、
あ、私が死ぬぐらい飲んじゃ駄目だよアーク」
「ああ惜しい答えですね。
私はそんなに飲みませんよ」
じゃあ何だろう。
「血が飲みたいので、出来るだけ側に来てくれませんか?」
アークが座っているソファーのぴったり隣に腰掛ける。
アークは私の身体を少し抱き寄せると首筋から血を吸った。
吸血はすぐ終わったんだけど眉間に皺を寄せたアークの顔がすぐ目の前にある。どういうことかな。
「ヒロさんは大抵のことは許してくれますけど、なんでキスは駄目だったんですか」
「え…… 駄目でしょう、そういうことは」
「僕は婚約者居ませんけど」
「そういうことは好きな人とやらないと駄目でしょ」
「でもヒロさんは僕とキスするのは別に嫌じゃないんでしょう」
なんで知っている。
「だから僕がヒロさんのこと好きなら……」
私が硬直していると、アークは頭を抱え出した。
「ああ、忘れて下さい……
吸血すると一瞬理性が飛んでいるんです」
「アークがキャラ変してしまったかと思って焦ってしまったよ」
「いいえ、いいえ、僕はもっと外堀から埋めるタイプです」
うん?
「ただちょっと根に持ってただけです。
僕が格好良く熱を出す宣言をする前にはっきり断られたので」
これはだいぶ根に持ってたな?
「アークが悪い訳じゃないんだけど、あんまり恋愛にいい思い出がなくて。
変な話なんだけど、私がキスをするだけで不幸に巻き込みそうな気がするの」
「なるほど、前のその貴族の男の根が深いんですね。
もう居場所掴んでいるんで焼いておきましょうか?」
あれ、さらっと怖いこと言ったな?
「え…… なんでアルのこと知ってるの?」
「ヒロさんの気配が残っている男がそいつしか居ないからですよ。
近くまで来ていて貴方を探しているようですね」
やっぱり怖いこと言ってない?
「アル、まだ諦めてなかったの……
はやく真っ当な道に戻らないといけないのに」
「やっぱりちょっと焼いておきますか?」
「攻撃されても、魔物に私が攫われてると思うだけでしょ……
やっぱり、ちゃんと出て説明しないと……
アーク、一緒に来てくれない?」
「ほう、これは面白いことになりましたね」
アークは一瞬で吸血鬼の正装に着替え、コウモリのような羽根を出すと私を抱えたまま小屋の窓から外に出た。
2階は塔の中庭になっていたようで、空まで飛んで森に向かって降りていく。
私を追いかけて森を彷徨っていたらしいアルの目の前に降りた。
前髪を後ろになでつけた、短い金髪に青い瞳、いかにも騎士という体格のアル。
でもちょっとやつれた?
「ヒロ! お前魔物に……!」
「アル、彼が今の私の好きな人です! 諦めて下さい!!」
「な、何を……
そもそも、魔物はお前の両親の敵ではないのか!?」
「別にこの人が私の親を殺した訳じゃ……
あれ、ないよねアーク?」
「僕は人間を殺したことないですね」
アークはアルを威圧しつつわざわざ私に顔を寄せて親しげに話した。
「殺した訳じゃない!
私達は隣国に行って結婚するの!
邪魔しないで!!」
「ヒロ、お前は騙されているんだ!!」
「騙されてない!
けど騙されてたとしたって貴方と居るより幸せよ!
私とアークが一緒に居ても誰も不幸にならないもの!
ちゃんと王都に帰って婚約者と親に孝行して下さい!!」
「ぐっ」
正論を言われアルは膝をついた。
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