3 / 5
3.チャラい商売人
しおりを挟む
電話した通り、サンは家の裏手に来てくれた。
「メイメイちゃんまいどおおきにー、ってどちら様?」
「メイメイよ。色々あって大きくなったの」
「そっかぁ。メイメイちゃんそう言えば成長止まってたからなぁ。
美人さんになって良かった良かった」
「……そう、それが普通の反応よね」
「ん? どうした?
あ、ソウジの旦那はもしかしてロリコンだったのか!?」
「ソウジ様の不名誉な話はしないでちょうだい。
ねぇそれでサン、ソウジ様は大人の女性が苦手らしいのだけど、どうしたら落とせると思う?」
「ええー、それは俺は女の人大好きだから、わっかんねぇなぁ。
苦手って言っても男にしか食指が動かないとか、そういうんじゃないんだろ?」
「そういうんではないと思うのよ、何となく」
「うーんうーん、
今までの様子を見るにメイメイちゃんのことは溺愛してたから、育っても何とかなるとは思うんだけど。
心の傷が原因なら、急に迫らず待ってあげるのがいいと思う。メイメイちゃんに出来るか?」
「正直言うと難しいわ……。
でも心の傷の原因になった女性達と、同じ分類に落ちてしまったら修復不可能ということよね」
「そうそう。俺でよかったらいつでも話聞くし、何なら気晴らしにでも付き合うよ」
「そうね……。せっかく大人の姿になったんだし、何なら街にでも降りてみたいかも」
「前向きになって何より。メイメイちゃんもソウジさんも、ずっと引きこもりだったもんなぁ」
「でも街に着ていく服がないのよね。
ソウジ様が好きそうな色の布地を何枚かいただけるかしら」
「まいどありー」
私は上品な水色の布地と、地味な薄緑色の布地を買った。
*
メイメイのお嬢ちゃんに布を買って貰って、ふんふん帰ろうとしたらソウジさんに呼び止められた。
「ちょっと話せますか?」
顔が怖い顔が怖い。
「メイメイさん、突然育ちましたねー。
あれもエルフの魔法なんですか?」
「あれはメイメイが望んだことだそうです。
サンさん、貴方は何か知りませんか?
可愛かったメイメイが突然自立心を持ってしまった原因、とか」
自立心は突然持った訳じゃないと思うんだが。
「ソウジさんに釣り合う外見になりたかったんじゃないですか?」
「私の……?」
「メイメイさんと話していると、ソウジさんの話しかしませんよ」
「それは家族は私しか居ませんからね。
でもあの子が大きくなってしまって、他所に嫁に行く気ではないかと気が気ではないのです」
「ご自身でお迎えになればよろしいのでは?」
「……私は、あの、決して倒錯した性的嗜好を持っている訳ではないのですが、
大人の女性を見ると悪寒がするのです」
「へぇ、それは災難ですね。
素敵なものを見ると寒気がするだなんて」
「ですから今のメイメイの姿も、美しいと思うと同時に嫌な思い出が蘇って……」
お、メイメイちゃん良かったなー、美しいと思われてるって。
「うーん、俺は女じゃないから、わかりませんけれど。
抱かせてくれない好きになった女より、抱かせてくれる俺を好きな女の方が俺は好きっすね!」
「な、なんですって!? そんな単純な話では……
いやでも男として価値がない私はどうしたら……」
「まあまあ。そもそも、メイメイさんも一緒に生活していく上でソウジさんを好きになったんでしょう。
恋して結婚しても生活で上手くいかなかったりするもんですよ。その点は安心じゃないですか」
「ですが恋も出来ないような私相手では……」
「そこは愛の力で何とかして下さい。
あ、結婚指輪はうちで買って下さいね!!」
長々とらちのあかない相談をしていることに気づいたのだろう。
ソウジさんは慌てて礼を言って立ち去った。
あーあ、牽制されちゃったなぁ。
せっかくメイメイちゃん綺麗に成長したのに。
……まぁいっか、俺モテるし。次行こ次!
*
私は買った布地を直線縫いで簡単なワンピースに仕立てていた。
本当はもっと細かくしてもよいのだけど、
あんまり身体にフィットすると女性らしさが出てしまうものね。
せっかく新しい服が出来たので、いつもの癖でソウジ様に見せに行った。
ソウジ様は何処かから帰って来たばかりのようだ。
「ソウジ様~、新しい服を縫ったんですけど、どうでしょうか」
スカートを軽くつまんでひらっと舞ってみせてから、そう言えば三メートル以上近づいていることに気づいてちょっと後ずさった。
「その水色の服、やっぱり彼の元にお嫁に行ってしまうんですね」
ソウジ様はおいおいと泣き出した。
水色…… あ、サンの髪の色!!
ソウジ様は調度品とかくすんだ水色か好きだから、そのイメージで選んでしまった。
いやサンのことは考えてなかったんだけど、説明するのめんどくさいなコレ。
彼と恋仲じゃないことを説明するのは楽だけど、ソウジ様のことが好きって言ったら嫌悪感を持たれるかもしれないし。
私がやや呆れているとソウジ様の後ろのドアのあたりが氷のようなもので固まってきた。え、氷?
「ソウジ様、何か変です……」
ソウジ様は泣いていて気づいてない。
「ソウジ様!!」
嫌われるかもしれないがソウジ様に抱きつく。
エルフの末裔ーー 本人は魔法が使えないと思っているのがたちが悪い。
おそらく、私が成長しなかったのは、ソウジ様がそう望んでいたせいだろうと、トラウマの話を聞いてから何となく思っていた。
「魔力が暴走してます!!」
「メイメイちゃんまいどおおきにー、ってどちら様?」
「メイメイよ。色々あって大きくなったの」
「そっかぁ。メイメイちゃんそう言えば成長止まってたからなぁ。
美人さんになって良かった良かった」
「……そう、それが普通の反応よね」
「ん? どうした?
あ、ソウジの旦那はもしかしてロリコンだったのか!?」
「ソウジ様の不名誉な話はしないでちょうだい。
ねぇそれでサン、ソウジ様は大人の女性が苦手らしいのだけど、どうしたら落とせると思う?」
「ええー、それは俺は女の人大好きだから、わっかんねぇなぁ。
苦手って言っても男にしか食指が動かないとか、そういうんじゃないんだろ?」
「そういうんではないと思うのよ、何となく」
「うーんうーん、
今までの様子を見るにメイメイちゃんのことは溺愛してたから、育っても何とかなるとは思うんだけど。
心の傷が原因なら、急に迫らず待ってあげるのがいいと思う。メイメイちゃんに出来るか?」
「正直言うと難しいわ……。
でも心の傷の原因になった女性達と、同じ分類に落ちてしまったら修復不可能ということよね」
「そうそう。俺でよかったらいつでも話聞くし、何なら気晴らしにでも付き合うよ」
「そうね……。せっかく大人の姿になったんだし、何なら街にでも降りてみたいかも」
「前向きになって何より。メイメイちゃんもソウジさんも、ずっと引きこもりだったもんなぁ」
「でも街に着ていく服がないのよね。
ソウジ様が好きそうな色の布地を何枚かいただけるかしら」
「まいどありー」
私は上品な水色の布地と、地味な薄緑色の布地を買った。
*
メイメイのお嬢ちゃんに布を買って貰って、ふんふん帰ろうとしたらソウジさんに呼び止められた。
「ちょっと話せますか?」
顔が怖い顔が怖い。
「メイメイさん、突然育ちましたねー。
あれもエルフの魔法なんですか?」
「あれはメイメイが望んだことだそうです。
サンさん、貴方は何か知りませんか?
可愛かったメイメイが突然自立心を持ってしまった原因、とか」
自立心は突然持った訳じゃないと思うんだが。
「ソウジさんに釣り合う外見になりたかったんじゃないですか?」
「私の……?」
「メイメイさんと話していると、ソウジさんの話しかしませんよ」
「それは家族は私しか居ませんからね。
でもあの子が大きくなってしまって、他所に嫁に行く気ではないかと気が気ではないのです」
「ご自身でお迎えになればよろしいのでは?」
「……私は、あの、決して倒錯した性的嗜好を持っている訳ではないのですが、
大人の女性を見ると悪寒がするのです」
「へぇ、それは災難ですね。
素敵なものを見ると寒気がするだなんて」
「ですから今のメイメイの姿も、美しいと思うと同時に嫌な思い出が蘇って……」
お、メイメイちゃん良かったなー、美しいと思われてるって。
「うーん、俺は女じゃないから、わかりませんけれど。
抱かせてくれない好きになった女より、抱かせてくれる俺を好きな女の方が俺は好きっすね!」
「な、なんですって!? そんな単純な話では……
いやでも男として価値がない私はどうしたら……」
「まあまあ。そもそも、メイメイさんも一緒に生活していく上でソウジさんを好きになったんでしょう。
恋して結婚しても生活で上手くいかなかったりするもんですよ。その点は安心じゃないですか」
「ですが恋も出来ないような私相手では……」
「そこは愛の力で何とかして下さい。
あ、結婚指輪はうちで買って下さいね!!」
長々とらちのあかない相談をしていることに気づいたのだろう。
ソウジさんは慌てて礼を言って立ち去った。
あーあ、牽制されちゃったなぁ。
せっかくメイメイちゃん綺麗に成長したのに。
……まぁいっか、俺モテるし。次行こ次!
*
私は買った布地を直線縫いで簡単なワンピースに仕立てていた。
本当はもっと細かくしてもよいのだけど、
あんまり身体にフィットすると女性らしさが出てしまうものね。
せっかく新しい服が出来たので、いつもの癖でソウジ様に見せに行った。
ソウジ様は何処かから帰って来たばかりのようだ。
「ソウジ様~、新しい服を縫ったんですけど、どうでしょうか」
スカートを軽くつまんでひらっと舞ってみせてから、そう言えば三メートル以上近づいていることに気づいてちょっと後ずさった。
「その水色の服、やっぱり彼の元にお嫁に行ってしまうんですね」
ソウジ様はおいおいと泣き出した。
水色…… あ、サンの髪の色!!
ソウジ様は調度品とかくすんだ水色か好きだから、そのイメージで選んでしまった。
いやサンのことは考えてなかったんだけど、説明するのめんどくさいなコレ。
彼と恋仲じゃないことを説明するのは楽だけど、ソウジ様のことが好きって言ったら嫌悪感を持たれるかもしれないし。
私がやや呆れているとソウジ様の後ろのドアのあたりが氷のようなもので固まってきた。え、氷?
「ソウジ様、何か変です……」
ソウジ様は泣いていて気づいてない。
「ソウジ様!!」
嫌われるかもしれないがソウジ様に抱きつく。
エルフの末裔ーー 本人は魔法が使えないと思っているのがたちが悪い。
おそらく、私が成長しなかったのは、ソウジ様がそう望んでいたせいだろうと、トラウマの話を聞いてから何となく思っていた。
「魔力が暴走してます!!」
2
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■

【コミカライズ】今夜中に婚約破棄してもらわナイト
待鳥園子
恋愛
気がつけば私、悪役令嬢に転生してしまったらしい。
不幸なことに記憶を取り戻したのが、なんと断罪不可避の婚約破棄される予定の、その日の朝だった!
けど、後日談に書かれていた悪役令嬢の末路は珍しくぬるい。都会好きで派手好きな彼女はヒロインをいじめた罰として、都会を離れて静かな田舎で暮らすことになるだけ。
前世から筋金入りの陰キャな私は、華やかな社交界なんか興味ないし、のんびり田舎暮らしも悪くない。罰でもなく、単なるご褒美。文句など一言も言わずに、潔く婚約破棄されましょう。
……えっ! ヒロインも探しているし、私の婚約者会場に不在なんだけど……私と婚約破棄する予定の王子様、どこに行ったのか、誰か知りませんか?!
♡コミカライズされることになりました。詳細は追って発表いたします。
【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。
美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました
宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。
しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。
断罪まであと一年と少し。
だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。
と意気込んだはいいけど
あれ?
婚約者様の様子がおかしいのだけど…
※ 4/26
内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。


【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。
櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のセラフィーナには生まれつき前世の記憶があったが、覚えているのはくだらないことばかり。
そのどうでもいい知識が一番重宝されるのが、余興好きの国王が主催する夜会だった。
毎年余興の企画を頼まれるセラフィーナが今回提案したのは、なんと「借り物競争」。
もちろん生まれて初めての借り物競争に参加をする貴族たちだったが、夜会は大いに盛り上がり……。
気付けばセラフィーナはイケメン王太子、アレクシスに借りられて、共にゴールにたどり着いていた。
果たしてアレクシスの引いたカードに書かれていた内容とは?
意味もなく異世界転生したセラフィーナが、特に使命や運命に翻弄されることもなく、王太子と結ばれるお話。
とにかくツッコミどころ満載のゆるい、ハッピーエンドの短編なので、気軽に読んでいただければ嬉しいです。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
小説家になろう様への投稿時から、タイトルを『借り物(人)競争』からただの『借り物競争』へ変更いたしました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる