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2.綺麗な身体

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大きくなったら着たいお洋服とかいっぱいあった。
女の人の大きいおっぱいにも憧れた。
綺麗な形で丸くて大きくて柔らかそう。
実際人間と触れ合っていた時の記憶は忘れてしまったので、漫画の中のお姫様のイメージだけだけど。
だがしかし。
念願の20歳の身体になり立派なおっぱいにも恵まれた私だけどこれは潰さねばなるまい。
ごめんおっぱい。
だってソウジ様が吐いちゃうもん。
私はタオルをきつめに胸に巻き、長い髪もきつめの三つ編みにして、あんまり女らしく見えないように気をつけた。
ソウジ様のパジャマだし、誤魔化せられないかしら?
おしりとか、足とかも女性らしく綺麗な曲線を描いていて、我ながら顔は凡だけど身体すごい綺麗じゃない?
星に願ったから?
でもソウジ様には毒なんだよなぁ、これ。
勿体ないけど、仕方ない。

腕と足を折ったソウジ様のパジャマで普段朝食をとるリビングに向かう。
ソウジ様は二人分の食事を用意し、食卓に並べていた。
良かった追い出す気はないようだ。
……いや、
いつも斜めに向かって食べていたのに、今は別のテーブルが用意され端に朝食が置かれている。とほほ。
「メイメイ、おはようございます」
「おはようございます、ソウジ様」
ソウジ様は瓶底のメガネをかけている。
さては視界から入る情報を誤魔化そうとしているな?
私はしぶしぶ食卓についた。
「メイメイ、体調に悪い所はありませんか?」
ソウジ様は手元の目玉焼きを見つめながら私に聞く。
「いいえ、健康そのものだと思います」
「そうですか。どうして急に大きくなってしまったんでしょうね?」
大きくなるのは駄目でしたかソウジ様。
「昨日の夜、流れ星に願ったんです」
「……あぁ。ではそれは貴方の望みなのですね」
流れ星に願うだけで願いが叶うことについて、ソウジ様は疑いを抱いていないようだ。
ソウジ様は魔法は使えないけれど、エルフは魔法が使えるらしいから抵抗がないのかな?
「エルフの血を使えばメイメイは元に戻るかと思っていたけれど、どうやらそれは不要そうだ。
となると、私の女性恐怖症が私達の暮らしの一番の障害ですね……」
私達の、ということはソウジ様はまだ私と暮らすことを諦めていないみたいだ。良かった。
「ソウジ様、どれぐらい近づくと駄目ですか?」
「そうですね。三メートルが限界です。
このメガネのおかげでよく見えませんが、あまり女性らしくないように服装を整えて下さったんですね。
メイメイの優しさは変わって居ないのに、こんな風になってしまって申し訳ありません」
ソウジ様が謝ってくれるので何だかひたすら申し訳なくなった。
思えば養父に邪な感情を抱いた私が悪かったんじゃないだろうか。
「ソウジ様は、女性に邪な感情を抱かれるのが苦手なんですか?」
「ああ…… そうですね……
私のトラウマは朝食の席ですることではありませんし、そもそもメイメイに聞かせたい話でもありませんから、濁しておきたいのですが。
私を巡って女性が争ったりするとなお苦手ですね」
独占欲は駄目、と。
「かと言って突然距離が三メートルになるのは寂しいですね、あ。
ソウジ様、バドミントンならできますよ!!」
逆に距離を開けなきゃいけないものについて考えてみた。
「その発想の突飛さ、やはりメイメイですね。
朝の仕事が終わったらやりましょうか」

お互い運動は苦手なのでそんなにラリーは続かなかったが、球だけ見ていればいいのでソウジ様の負担は少なかったようだ。
私の方はというと、動くとサラシが動いて擦れる。
やっぱり下着を新調すべきだ。余ってる布あったかな。
「その運動音痴っぷり、やっぱりメイメイなんですけどねぇ」
「ソウジ様も人のこと言えないでしょう。
それに急に大きくなって小回りがきかないんです」
ソウジ様は私のラケットを回収しようと、近づいた所でやっぱり後ろに歩いて行った。
「だいぶ慣れたつもりでしたが、やっぱり無理でしたか」
「1日でどうにかなる訳ないじゃないですか、ソウジ様」
「けれど早く慣れないと、メイメイがお嫁に行ってしまいます」
ソウジ様は三メートル先でそう呟いた。
「いや、私は……」
小さい時はソウジ様のお嫁さんになりたい、なんて言えたけど。
今言ったら困らせてしまうのでは?
ソウジ様、好意を寄せられるのは苦手なのでは?
「…………」
考え込んでいると、ソウジ様は悪い方向に頭を働かせたようだ。
「相手は誰ですか、もしかして商売人のサンですか?」
サンは街に行けない私たちに品物を売りに来てくれている商売人だ。
長い水色の髪のそこそこなイケメンだ。チャラいお兄ちゃんだけど。
「ソウジ様、もう小さいメイメイは居ません」
ソウジ様はぐっ、と息を飲んだ。
「だからお嫁に行ってしまっても、仕方ないと思いますよ」
「メイメイ、私は……」
「なんて、ソウジ様を置いて行く訳ないじゃないですか」
「悪い冗談ですね、メイメイ。心臓が締め付けられて死ぬ所でした」
私も、
ソウジ様をどうすればいいのだろう、とは思っているの。

私は余り布で下着とドレスを作った。
髪もせっかく綺麗なので解いたままにしておく。
せっかく綺麗に成長したのに、ソウジ様には見てもらえないんだぁ……
よっし浮気するか。
私は早速商売人のサンを呼び寄せた。
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