逆転ヒロインの復讐まで

2

蹴られたお腹が痛くて、しばらく応接間の床で倒れているとサンバルク家の使用人と思われる人が入ってきた。

「お嬢様、旦那様がお呼びです。ダイニングルームに向かいましょう。」

倒れている私には目もくれず、淡々とそう言った。
正直、お腹が痛くて動きたくなかったが行くしかない。
ダイニングルームということはもしかしたら食事がもらえるかもしれない。
うっすらとそんな期待をしながら起き上がろうとした。

が、あまりの腹部の激痛になかなか立ち上がれない。

「すみません、立つのを手伝っていただけますか？」

恐る恐るそういうと、「チッ」と舌打ちが聞こえ、無理やり腕を引っ張られた。

「痛いっ！」

そう言っても使用人は構いもせず、ディディアラを引き摺るようにしてダイニングルームに向かった。





「遅い。」

ダイニングルームに着くと広いテーブルには2人分の食事が用意されていて、叔父様はすでに席に着いていた。
初めて見る豪華な食事に静かに胸が高鳴る。

この部屋には食事の世話をする使用人数名と叔父様と私しかいない。
ということは、食事が用意されているあの席は私の席だろうか？
こんな豪華な食事は食べたことがないので食べ方やマナーは分からない。
しかし、食欲には抗えない。

少し早歩きになりながら食事の席に着こうとしたその時、

「キャーー！なにこれ！？」

声のした方を振り向くと、同じ歳くらいの可愛らしい女の子がこちらを見ながら悲鳴をあげていた。　

そして
「お父様！この汚いのはなんですか…？ララフィの席なのになんでそんなのが座ろうとしてるの！！椅子が汚れちゃう！！」

そう言いながら「ララフィ」という少女は怒りながら泣き出してしまった。


「ララフィ、泣かないでくれ。すぐに椅子を取り替えてもらうから早くこっちへおいで。」

叔父様は素早く使用人に目配せして椅子を取り替えさせる。
そして鋭い目で私を睨んだ。

「おい。なんでお前なんかがララフィの食事の席に着こうとした？」

「ご、ごめんなさい！！私と叔父様しか部屋に居なかったので私の席だと思ってしまいました。本当にごめんなさい！！」

限界まで頭を下げる。

「勘違いも甚だしいな。お前みたいな奴が私たちと一緒に食事の席につけると思うだなんて。」

「おい、こいつの姿勢を正してやれ。」

叔父様の言葉で側にいた使用人が近くにやってきた。
そして無理矢理膝をつかされ頭を地面にぶつけられる。

「まあ初めてなんだ、しょうがない。これからは私たちが食事を終えるまでそうしていなさい。」

「は、はい…すまませんでした…」

こんな扱いをされる悔しさからなのか、蹴られたお腹が痛むからか、お腹が空いているからなのかどうしてか分からないが涙が溢れ出てきた。

「おとうさまー？もういいから、ご飯食べよ？ララフィお腹が空いた！」

「そうだな、食事にしよう。
終わったらアレを紹介してやろう」

叔父様と「ララフィ」という少女の楽しそうな声を聞きながら早く時間が過ぎてほしいと願った