上 下
2 / 3

バカ王子

しおりを挟む

自分がキレそうになるのを抑えて、できるだけ微笑んで言った。

「可笑しなことをおっしゃいますのね、王太子殿下。
たった今、貴方が婚約破棄を言い渡しましてよ?」

「そ、それはそうだが…
そ、それより!さっきから王太子殿下とはなんだ!いつものように愛称で呼べ!チェシー!」

それよりって…本当に頭が痛くなりますわね…

「王太子殿下。『愛称』は婚約者と家族のみが許されているものですわ。
既に貴方にはおめでたい事に『愛称』で呼ばれいる方がいるではありませんか?
また、私をチェシーと呼ぶのもやめて下さいませ。チェルシー嬢とお呼びくださいませ。」

「なっ!俺は愛称を呼ぶことをスピア嬢に許していない!」

「あら?でも先ほど呼ばれても注意なさいませんでしたよね。そういうことですよ。」

「違う!違う!違う!!!!!
俺はスピア嬢など好きではない!!!
さっきのは嘘だ!お前は俺の婚約者だ!」

ほんとこのバカ王子、スピア嬢本人を前にして結構なことを仰いますわよね…スピア嬢、巻き込まれて可哀想に。

このバカ王子は幼い頃から、何かにつけて婚約破棄してくる。幼い頃は周りの大人から「引き止めてあげて下さい」と言われ、そうしてきた。それで毎回円満に解決していたが…
今回のことは私も怒っているので引きません。

「王太子殿下。お忘れですか?婚約して少し経った頃、私と約束しましたわよね。
他の令嬢と話すのも仲良くするのもほとんど全て許しますが、『愛称』だけは婚約者のものですから、私だけに、呼ばせてください…と。
もし、私以外に愛称をよばせるような、そういった方が現れれば、シェイ様とはお別れ致します…と。
この約束は私たちの中で婚約存続に関する1番大事な約束です。
愛称を呼ばせる方ができた今、私は貴方と結婚できません。
それとも、やはりお忘れになっていたのでしょうか。私との婚約なんてどうでもいいのですものね。
幼い頃から何回も私に婚約破棄されてましたものね。」

「忘れてなどいない!!お、おれは…不安なんだ…。最近婚約破棄を言い渡しても、他の令嬢が好きだといっても表面上でしかお前は引き止めてくれない!昔はもっと全力で引き止めてくれていた…!」

いや、それ、だんだん面倒くさくなっただけです。

「あ、愛称呼びだって、本当に何回も注意したんだ。だけど、スピア嬢は辞めなくて…。でも流石に愛称で呼ばれているところを見ればお前も以前のように全力で止めてくれると思ってた…!
なのに…!なのに…!お前は王太子殿下とか呼ぶし、他の男と婚約しようとするし、あっさり婚約破棄受け入れるし…
お、おればっかりお前のこと好きなのが悔しい…!」

そういうと王太子殿下は涙を流し始めた
いや、我慢しようとしてるけど全然出来てないからね?すごい顔になってるし。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約を白紙に戻すそうですが、そんなの認めません!先回りさせていただきます。

国湖奈津
恋愛
ドマニエ国第二王子イザックと婚約中の私(リュシー・カナルソル)はイザックが婚約を白紙に戻そうとしていることを知ってしまった。 どうして?なんで? 原因が全く思い浮かばない。 藁にも縋る思いで本の中に答えを求めると、意外な相手にイザックが想いを寄せているらしいと分かり…(;゚Д゚) そんなの認めません!先回りさせていただきます!

乳だけ立派なバカ女に婚約者の王太子を奪われました。別にそんなバカ男はいらないから復讐するつもりは無かったけど……

三葉 空
恋愛
「ごめん、シアラ。婚約破棄ってことで良いかな?」  ヘラヘラと情けない顔で言われる私は、公爵令嬢のシアラ・マークレイと申します。そして、私に婚約破棄を言い渡すのはこの国の王太子、ホリミック・ストラティス様です。  何でも話を聞く所によると、伯爵令嬢のマミ・ミューズレイに首ったけになってしまったそうな。お気持ちは分かります。あの女の乳のデカさは有名ですから。  えっ? もう既に男女の事を終えて、子供も出来てしまったと? 本当は後で国王と王妃が直々に詫びに来てくれるのだけど、手っ取り早く自分の口から伝えてしまいたかったですって? 本当に、自分勝手、ワガママなお方ですね。  正直、そちらから頼んで来ておいて、そんな一方的に婚約破棄を言い渡されたこと自体は腹が立ちますが、あなたという男に一切の未練はありません。なぜなら、あまりにもバカだから。  どうぞ、バカ同士でせいぜい幸せになって下さい。私は特に復讐するつもりはありませんから……と思っていたら、元王太子で、そのバカ王太子よりも有能なお兄様がご帰還されて、私を気に入って下さって……何だか、復讐できちゃいそうなんですけど?

【完結】浮気を咎めたら「お前の愛が重すぎる」と一方的に婚約破棄を告げられた殿下から「記憶喪失になったから助けてほしい」という手紙が届きました

冬月光輝
恋愛
「お前の愛は重すぎる」 婚約者であるボルメルト王国の第二王子、ロレンス殿下に愛人の存在について言及すると彼はそう答えました。 その上、愛人は七人いると口にされて海外では普通だと開き直ります。 「最後にはお前のもとに帰って来るのだから」と言われて喜ぶ方もいるのかもしれませんが……私は納得できません。 そんな私に殿下は躊躇いもなく婚約破棄を告げました。 それから、半年後……殿下から4度も復縁要請の手紙が届きましたが、私はそれを全て断ります。 そして、5度目の手紙――。 「記憶喪失になってしまったから、記憶を取り戻すのを手伝ってほしい」 どうやら、階段から転んで頭を打って記憶を無くしたらしいのですが、婚約破棄からのショックも残る私は彼ともう一度会おうかどうか迷うのでした。

完結 俺に捧げる至宝はなんだと聞かれたので「真心です」と答えたら振られました

音爽(ネソウ)
恋愛
欲深で知られる隣国の王子と見合いした王女。 「私の差し上げられる至宝は真心」と答えたら怒って帰国してしまった。 後に、その真心というのは拳大の宝石であると気が付いた王子は……

「君を愛す気はない」と宣言した伯爵が妻への片思いを拗らせるまで ~妻は黄金のお菓子が大好きな商人で、夫は清貧貴族です

朱音ゆうひ
恋愛
アルキメデス商会の会長の娘レジィナは、恩ある青年貴族ウィスベルが婚約破棄される現場に居合わせた。 ウィスベルは、親が借金をつくり自殺して、後を継いだばかり。薄幸の貴公子だ。 「私がお助けしましょう!」 レジィナは颯爽と助けに入り、結果、彼と契約結婚することになった。 別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0596ip/)

「聖女に比べてお前には癒しが足りない」と婚約破棄される将来が見えたので、医者になって彼を見返すことにしました。

ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
「ジュリア=ミゲット。お前のようなお飾りではなく、俺の病気を癒してくれるマリーこそ、王妃に相応しいのだ!!」 侯爵令嬢だったジュリアはアンドレ王子の婚約者だった。王妃教育はあんまり乗り気ではなかったけれど、それが役目なのだからとそれなりに頑張ってきた。だがそんな彼女はとある夢を見た。三年後の婚姻式で、アンドレ王子に婚約破棄を言い渡される悪夢を。 「……認めませんわ。あんな未来は絶対にお断り致します」 そんな夢を回避するため、ジュリアは行動を開始する。

「レイのバカ!もうしらない!」と婚約者の王子から言われて大泣きして部屋を飛び出した幼女令嬢、迷子になる。

ねお
恋愛
4歳の侯爵令嬢、レイ・グラスウォールは、同い年の王子と婚約することになりました。 2人は遊ぶことになったのですが・・・。

王太子に婚約破棄されたら、王に嫁ぐことになった

七瀬ゆゆ
恋愛
王宮で開催されている今宵の夜会は、この国の王太子であるアンデルセン・ヘリカルムと公爵令嬢であるシュワリナ・ルーデンベルグの結婚式の日取りが発表されるはずだった。 「シュワリナ!貴様との婚約を破棄させてもらう!!!」 「ごきげんよう、アンデルセン様。挨拶もなく、急に何のお話でしょう?」 「言葉通りの意味だ。常に傲慢な態度な貴様にはわからぬか?」 どうやら、挨拶もせずに不躾で教養がなってないようですわね。という嫌味は伝わらなかったようだ。傲慢な態度と婚約破棄の意味を理解できないことに、なんの繋がりがあるのかもわからない。 --- シュワリナが王太子に婚約破棄をされ、王様と結婚することになるまでのおはなし。 小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...