上 下
3 / 3

3.魔女の在り方

しおりを挟む
 涙を流すソアラさんをとても見ていられなくて、私はハンカチを差し出す。

「使って下さい」

 ソアラさんは、小さな手のひらで、大事なものを触れるようにハンカチを受け取ってくれた。

 村では汚いと、誰からも触れることのなかった私の指にソアラさんの指が当たる。

「ありがとうっす」

「あっ!」

 ソアラさんは、何も気にしていないようだ。

「こちらこそありがとうございます」

 この人はとても優しい人だと、私は感じた。

「逆っすよ」

「いえ、この出会いに感謝をしたのです」

「ライフさん、変わってるっすね」

 そういってポカーンとしたソアラさんは、にこやかに笑ってくれた。

「ゴホン。それよりもライフ殿は、これからどうされるのですか?」

「どうとは?」

 心底不思議そうな目で見る私を、サラクさんは諭すように話す。

「周りの人間は、貴女がもし魔女だとわかれば、間違いなくライフ殿を憲兵に突き出すでしょう。そうなったら‥」

「そうなったら?」

「ライフ殿は、処刑されます」

「処刑ですか‥えぇー、どうしてなのですか?私なにも悪いことしていませんよ」

「それが人間のルールなんだ。私では、どうすることもできない」

「ルールなら仕方ないですね」

 私は、さっぱりとした反応する。二人はその様子に大層驚いた様子で。

「どうして、そんな簡単に受け入れられるんっすか?もっと怒ったり、悲しんだりしないんっすか?」

 ソアラさんは、とても怒っているようで、何か気に触ることでも言ってしまっただろうか?わからない。私は、感情というものに蓋をしているのだから。

「私、思い出せないんです」

「何が思い出せないんっすか?」

「感情というか、気持ちが思い出せないんです」

「そんなの簡単っす。嬉しいときは、ぎゅーって抱きついて。悲しいときには、むぎゅーって抱きついて、許せないときには、殴ればいいっすよ」

「何故、抱きつく必要がある?」

「嬉しさのお裾分けっす。それに抱きつけば、悲しさは半分っす」

 そんなことを言われたのは、初めてで反応に困ってしまう。

「頭痛くなってきた」

 頭を押さえるサラクさんに、不思議そうな顔をするソアラさん。面白い組み合わせだ。ソアラさんとサラクさんは、仲良しなんだな、とても羨ましい。

 大きくて丸い目で優しく笑うソアラさんは、失礼だが、つい可愛いと思ってしまった。

「とりあえず、ご飯にしないっすか?お腹が空いてて」

「私もお腹が空きました」

「熊のお肉は筋肉質で硬いっすけど、調理次第で美味しくなるっすよ」

「熊の肉は、臭くてとても食べられたものじゃないぞ」

「これだから素人は」

「な!馬鹿にしているのか、私だって料理くらい」

「なら、勝負するっすか?」

「受けてたつ」

 そうして唐突に始まった料理バトル、勝敗の行方は。そうだ、私も何か作ってみよう。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

令和の俺と昭和の私

廣瀬純一
ファンタジー
令和の男子と昭和の女子の体が入れ替わる話

シチュボ(女性向け)

身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。 アドリブ、改変、なんでもOKです。 他人を害することだけはお止め下さい。 使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。 Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...