原初のヒーロー

七星北斗

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目的のための手段六

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 兄妹は誓約の言葉を言い終えると、僕の顔を待つようにチラチラ見る。

 一体どうしたというのだろう?そういった儀式には疎いのだから正直困る。

「僕はどうしたらいい?」

「主君、誓いを認めてください」

「誓いを認める?」

「認めるって言ってください」

「ああ、ごめん。誓約を認める」

「それと手を差し出してください」

「うん、わかった」

 手を差し出すと、影月は手の甲にキスをした。光莉は頬に小鳥が啄むように三回キスをする。

「えっ!なに?」

 突然のことに驚き、動揺を口に出してしまった。

「誓約の口づけって言えばわかりますか?よくある姫の手の甲に騎士が口づけするあれです」

「でも、光莉はなぜ頬にキスをしたの?しかも三回も」

「主殿、場所は関係ないと思う。これはマーキングです」

 光莉は顔を赤く染め、照れたように笑う。

 マーキング!僕は縄張りに示されたってこと?

「とりあえず誓約の儀式は終わりです」

「あ、はい」

 ここに誓約が交わされた。彼方と双子忍者兄妹の運命を共有する。

 光莉は、僕の腕に自分の腕を絡ませる。

「なんでそんなに距離が近いのでしょうか……?」

「すいません。妹は気に入った人間には馴れ馴れしいのです」

「兄様、失礼だよ。私は馴れ馴れしくないもん」

 光莉は可愛らしく頬を膨らませた。

 いやいや、かなり馴れ馴れしいだろ。僕は内心突っ込んだ。

「主君に失礼だぞ妹よ」

「だって、主殿は良い匂いがするのであります」

「でも、普段はここまで馴れ馴れしくはないですけどね」

 残念そうに光莉は一歩距離を取る。

 普通に安い石鹸使ってるんだけどな……

「そろそろ本題に入りましょう。とりあえず場所を移りませんか?流石にこの場所で密談はおすすめできません」

「うん、そうだね。どこに行く?」

「でしたら、近くのカラオケ店に行きましょう」

「りょーかい」

 忍者兄妹は近くに車を待たせており、用意周到な準備に驚かせられる。

 車で移動すること十五分、目的地のカラオケ店に着いた。

 このカラオケ店は、友達と何度も来たことのある馴染みの店だ。

 店に入り、店員に二番の部屋を案内されると、影月も光莉もごそごそと部屋の中を調べ始めた。

 何をしてるいるのかと聞くと、盗聴器の類いがないか調べているとのこと。

「何も仕掛けられてないようです」

「コンセント付近も何もないよ」

「こんなところに盗聴器仕掛ける奴いるの?」

「可能性の話をすれば、全ての可能性がゼロではなく、全ての可能性が有り得るので、できることなら全てをするのが俺の流儀です」

「用心深いんだね」

「普通ですよ」

「なるほど」

 一通り部屋を物色すると、影月は飲み物とフライドポテトを注文する。

「あ、私カップケーキ食べたい」

「はいはい」

 しょうがないという風に影月はカップケーキを注文する。

 店員の持ってきたカップケーキを、モシャモシャと光莉は咀嚼した。
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