俺が毎日愛でている猫は、俺が一目惚れした転校生らしい!?

れーずん

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二章 血塗られた過去

二十一話〔蓮・有香猫ペア〕俺だって見守ってるから

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「——どう? 祐也、捕まえられた?」
「ダメです。また白銀さんに取られちゃいました」

 私はクラス発表を終えたあと、蓮君のところに戻ってきていました。

 本当は、蓮君にあの場を助けてもらったあとにクラス発表で祐也君を捕まえる予定でしたが……白銀さんの方が一枚上手だったようです。
 私が祐也君に話しかける前に、白銀はすでに祐也君を連れて行ってしまいました。

 それにしても、白銀さんにはどことなく意識されている感じがあります。
 なんと言うか……ライバル視、という感じで。

「というか、思ったんだけどさ」

 そのとき、蓮君が口を開きました。

「なんですか?」

 私が聞き返すと、蓮君は心しか、少し切なげにある質問を繰り出しました。

「どうして、そこまでして祐也を追うんだ?」
「えっ……?」

 突然の言葉に、私は思わず驚いた声を出してしまいます。

「別に祐也じゃなくても、芹崎さんならもっと他に友達がいるよね? どうしてそこまで祐也に固執するのかなって……ちょっと気になって」
「それは……」

 祐也君といたほうが楽しいから、落ち着くから、ありのままの自分でいられるから。
 心の中でなら何回だって唱えることが出来ます。
 でも今の蓮君を前にすると、それを口に出すことは出来ませんでした。

「……まぁ、俺には関係ないことだから別にいいんだけどさ。時間取ってごめん。このままだったら祐也と一緒にいる時間がなくなっちゃうよ?」
「あっ、はい……」

 私がどう答えようか戸惑っていると、蓮君は優しい笑みを浮かべながら再び手を取ってくれました。
 ……ただ、その笑みは酷く痛々しいものでした。


         ◆


「——いた?」
「いましたけど……まだ二人でいますね」

 私は祐也君と白銀さん二人が座っている席を見ながら、持ってきた蟹ドリアをテーブルに置いて答えます。

 今私たちがいるのはカフェテリアでした。
 の二人もお食事中みたいなので、ここで待っていてもなかなか離れてくれないでしょう。

「もうこの際さ、突撃しちゃったら?」

 私が蓮君の方に振り向くと、蓮君は苦笑交じりにあそこの二人を指差します。

「それは……白銀さんがいる中で祐也君を誘えということですか!?」
「だって、あの調子じゃ学祭終わるまで離れないよ? どっかで覚悟決めていかないと、学祭は今日しかないんだから」
「それはそうですが……」

 確かに蓮君の言うとおりです。
 祐也君と一緒に学園祭をまわりたいなら、お昼休憩を挟んでいる今に誘うしかない。
 このまま流れてしまったら、今度こそそれが出来なくなってしまいます。

 今まで、こんなにも祐也君のことを考えたことはありませんでした。
 それが白銀さんに祐也君を取られそうになって、どこか焦っている私がいます。
 頭の中は、祐也君のことでいっぱいでした。

 これが……なのでしょうか?

「とりあえず、まずは俺たちも食べようよ。考えるのは後でも出来るさ」
「……そうですね」

 蓮君にそう促された私は自分の持ってきた蟹ドリアをスプーンで掬って、口に入れます。

 美味しいです。
 学園祭限定のこのメニューは、いつも以上に気合いを入れて作られているのがとてもよく伝わります。

 でも……あまり味がしません。
 かろうじて美味しいのを感じることが出来る程度です。
 いつもはこんなことありませんでした。

 やっぱり……。

 私の中で、疑念が確信の変わっていくのを感じました。


「——ごちそう、さまでした」
「ご馳走さま」

 そうして食事を終えた私たちは、再び祐也君と白銀さんの方に視線を向けます。

「……あれ? なんか——」
「どこかに移動するっぽいね」

 見ると、そこには席を立って動き出している二人の姿がありました。

 どこへ行くのでしょうか?

「どうする? 追う?」
「は、はい! 追います!」

 祐也君と白銀さんを長くいさせたら、何か良くないことが起こる。
 確証は全くありませんが、胸のざわつきがそのことを知らせているような気がしました。

「……分かった、じゃあ行こうか」

 蓮君がそうつぶやいたとともに、私たちも二人を追って移動を開始するのでした。


         ◆


「——ここは?」
「屋上に続く階段だよ。あの二人、屋上で何するつもりなんだろう」

 私たちが小さな声で喋っていると、祐也君と白銀さんは屋上の扉を開けて、その向こうへと消えてしまいました。

「……どうする?」
「っ——」
「ここでどっちか決めないと、先に進めないよ」
「そう、ですよね」

 決断しなければいけない時が来たようです。
 ……なんだか、急に緊張してきました。
 心臓が酷く鼓動しています。

 私は、どうするのが正解なんでしょうか。
 もしこのまま二人の前に出て私が祐也君を誘うことをしたら、厄介事になるのは目に見えています。
 でも今のまま誘わないでいると、最初で最後の学園祭を祐也君と過ごすことが出来なくなってしまいます。

 こうして考えている間も、時間はどんどん減っていきます。
 その事実が、私の思考能力を低下させていきます。

 一体どうすれば……。

「——芹崎さんはどうしたい?」
「私、ですか?」
「そう」

 急に問われたことで思考の渦から抜け出すことが出来た私は、もう一度、改めて思考します。

「私は……祐也君と一緒に、学園祭をまわりたいです」

 そう言った瞬間、一瞬の間がありました。
 それに違和感を感じた私は、思わず蓮君の方へ視線を向けます。

 すると、そこには儚げに微笑を浮かべた蓮君がいました。

 そのとき、私の中で胸のモヤモヤの理由が分かったような気がしました。
 私は……厄介事を避けるために悩んでいたんじゃない。

「そっか……じゃあ、行けばいいんじゃない?」

 蓮君は私に視線をずらすと、今度は優しい笑みを浮かべながら言います。

「でも……」
「大丈夫。いざとなったら祐也がいるし、俺だって見守ってるからさ」

 その暖かい笑みに、私は身体を押されたような気がしました。
 私は一瞬だけ言い淀んだあと、覚悟を決めて、

「……分かりました。私、行きます」

 蓮君を見据えて言いました。

「おう! 頑張れ!」

 蓮君は、最後まで私に笑顔を見せてくれました。

 蓮君を思うのなら、きっとここで行くのは間違いなのでしょう。
 でも、蓮君は私の意思を尊重してくれました。
 そんな蓮君の想いを……無駄にするわけにはいきません。

 私は屋上の扉に手をかけました。
 すると――。

『私は……中学三年! 祐也と三役になった頃から、祐也のことが好きだったの!』

「っ——蓮君!」
「あぁ、時間がない。行って!」
「うん!」

 扉の先で何が起こっているかを理解した私は、最後に蓮君に背中を押してもらって、屋上の扉を開けました。

 そして叫びます。

「祐也君!!」

















「こんなのって、ありかよ——」
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