212 / 253
5章 第2部 ゆきの家出
206話 相馬の考え
しおりを挟む
「わぁ! このお肉おいしすぎるー! くおん、付け合わせのニンジン全部あげるから、そのお肉と交換しよぉ?」
隣に座っているゆきがお肉をおいしそうにほおばり、幸せそうに目を細める。そして目をキランと光らせ、交渉してきた。
時刻は十二時ごろ。レイジとゆきがいるのは現実の十六夜島にある、高級ホテル。その最上階に位置する上流階級用のレストランである。店内は重厚感あふれるカーペットが敷かれ、非常におしゃれな内装。ガラス張りの窓からは、十六夜島の街並みを一望できる。これが夜ならば見事な夜景が広がっており、とてもロマンチックな雰囲気をかもしだしていただろう。ここは相馬がランチに指定した場所であり、今日はおごってくれるのだそうだ。
ちなみに現在やりとりしているのは、並べられた料理の中でもメインディッシュにあたるもの。ちょこんと盛られた最上級クラスのステーキである。
「おい、全然見合ってないじゃないか。しかもそのニンジン、初めからどけてたのを見るに、嫌いなものだろ。ついでに押し付けようとするな」
運ばれてすぐゆきが付け合わせのニンジンをいやそうに端にどけるのを、レイジは見逃してはいなかったのだ。
「むぅ、くおんのけちぃ。ならせめてこのニンジンのやつ食べてよぉ」
ゆきはほおを膨らませ、付け合せのニンジンをフォークで運んでこようと。
「ははは、好き嫌いしてると大きくなれないぞ?」
「よけいなお世話だぁ! もう、いいよぉ! この程度、一人で食べてみせるもん! ぐぬぬ、大きくなるためにも、ぱく……」
付け合せのニンジンとにらみ合い、そして意を決して口にほりこんだ。
どうやら大きくなるというワードに反応し、がんばることを決めたらしい。
「――うぅ……、やっぱり苦手だぁ……」
「おお、えらい、えらい、よくできました」
涙目にながら食べるゆきの頭をなでてやる。
いつもなら子ども扱いするなと怒ってきそうだが、今はそれどころではないらしく素直に受け入れていた。
そんなゆきのさわがしさに、相馬はため息を。
「――はぁ……、白神家の人間なのだから、もっと優雅に食べれないものか?」
「おいしく食べるのが一番でしょー。ただでさえこんな高級店、連れてきてもらったことないのにさぁ。ねぇ、くおん」
ゆきはそっぽを向き、レイジに同意を求めてくる。
「うん? オレは相馬さんにプライベートで、結構連れてきてもらったことあるけどな」
相馬には狩猟兵団レイヴン時代、よくアリスと一緒にこういった店でおごってもらっていたのである。これも彼に気に入られていたがためなのだろう。
「え? そうまにいさんの妹である、ゆきを差し置いてぇ? ずるくなーい!」
その事実に身を乗り出し、抗議するゆき。
「俺に力を貸してくれる者には、当然の褒美だ。悔しければゆきも、兄の手伝いにはげむのだな。そうすれば連れてきてやるのも、やぶさかではないぞ?」
「ゆきも、そうま兄さんの私兵に……、じゅるり……」
彼女は相馬の私兵になって、おごってもらっている光景を想像しているようだ。よだれをすすりながら、妄想にふ
けだす。
「ゆき、食べ物でつられそうになってるぞ?」
「はっ!? ゆきとしたことが!?」
ゆきははっと我に返り、あわててよだれをふく。
「まったく……、ゆきよ、この程度で懐柔されそうになるとは、将来が心配になってくるぞ」
もはや見てられないと、こめかみを押さえる相馬。
「うるさいなぁ。それに文句ならゆきにだってあるもん! そうまにいさんがアポルオンと手を結んでるせいで、どれだけゆきに厄介ごとがふってきたと思ってるのぉ!」
あきれる相馬に、ゆきは今回の本題を使って抗議を。
「――ふむ……、おおかた父さんあたりに、次期当主になれとでも言われたところか?」
「そこまでわかってるのなら話は早いよぉ! さっさとアポルオンなんかと縁(えん)を切って、白神コンシェルン側に戻ってきてぇ! そうまにいさんだって、白神家を裏切るのは内心心苦しいと思ってるはずでしょー?」
ゆきは相馬の心情にうったえかけ、必死に説得を試みる。
「仮に俺が戻ったとしてどうなると思うんだ?」
「そんなのとうさん、かえでねえさん、そうまにいさんが力を合わせれば、アポルオンの件ぐらいなんとかなるよねぇ?」
ゆきは少し不安げに首をかしげる。
「ふん、認識が甘いな、ゆき。一つ断言しておこう。俺が白神家についたところで、アポルオンの介入は止まらない。なにせ保守派はどんな手を使ってでも、管理者の力を奪おうとしてるんだ。その勢いは革新派との戦いより、優先するほどにな」
すると相馬が彼女の楽観的考えを、変えられない事実で打ち砕いてきた。
「え? そんなになのぉ?」
「ははは、まさか革新派の騒動が二の次って、どれだけ管理者の力を欲してるんですか?」
革新派のクーデターは、もはやアポルオン内の一大事といっていい事件。それは保守派
にだって変わらないはずなのに、それよりも優先することがあるとは。よほど彼らはその計画とやらに、ご執心のようだ。
となればアポルオンによる白神コンシェルンへの介入。これはレイジたちが思っている以上に、ヤバイ案件なのかもしれない。
「俺もくわしいことはわからん。ただ彼ら保守派の計画を完遂するには、管理者の力がどうしても必要らしい。つまりだ。もはや白神コンシェルンがいくら抵抗したところで、結末は変わらない。ならば我々は、被害を最小限に抑えるべく行動すべきではないか?」
「え? もしかして相馬さんがアポルオン側についたのって、白神コンシェルンを守るために?」
「ハハハ、このままではすべて奪われかねんだろ? ならばやることは一つ。始めから向こうに協力し、その貢献を持って立ち位置を確立する。最悪、傀儡になりはてる形になるかもしれんが、完全に乗っ取られるよりはましだろう」
相馬は手をぐっとにぎり、今後の事態を見すえる。
つまり相馬は相馬なりに、白神コンシェルンを守ろうとしていたということ。
もはや本気を出した保守派に勝てる可能性は低い。となれば早いうちに負けを認め、少しでも被害を少なくするほかないというもの。ゆえに相馬のとった行動は、必ずしも白神コンシェルンを裏切ったとは言えないのだ。結果的に見ると最善の選択なのかもしれなかった。
「ちなみに今のところは順調だぞ。序列二位サージェンフォード家当主と、わるくない同盟を結べている。このまま駒としての役割をまっとうし続ければ、それなりの全権は任せてもらえるぐらいにな」
「そうまにいさんが、まさかそこまで考えていたなんてぇ……」
彼の真実に、ゆきは目を丸くする。
まさか唯我独尊、野心家の相馬がここまで自分たちのことを思っていたのかと。
「なにやら自分の野望のため裏切ったと思われがちだが、俺は俺なりに白神コンシェルンの身を案じて、動いていたというわけだ」
相馬はワインを一口飲みながら、すずしげに笑う。
「じゃあ、もしかして相馬さんがここまで権力を集めてきたのって、全部白神コンシェルンを救うためなんですか?」
「え? そうなのそうまにいさん……」
もしそうだとしたら、これまでの相馬の見え方が180度変わってくる。すべては白神コンシェルンを救うため、上を目指していたのだと。
その可能性に、二人で思わず尊敬のまなざしを向ける。
「ハハハ、まさか。オレはそんなに聖人君子はないぞ。俺には俺の野望がある。今回の件はたまたまそれが重なっただけのこと。サージェンフォード家との結びつきと、白神コンシェルンの代表の座。この二つが手に入れば、我が覇道もさらに進むからな!」
相馬はその期待を笑い飛ばし、本音を熱くかたる。
「――はぁ……、やっぱりそうまにいさんはそうまにいさんだぁ。感動して損したよぉ」
ゆきは肩を落とし、笑うしかないようだ。
「そういうわけだから、媚(こび)を売っとくなら今のうちだぞ、ゆき。お前の兄はいづれ天下をとる男なのだからな! ハハハ!」
そして相馬は立ち上がり、手をバッと前に出しながら声高らかに宣言する。
そこには夢みたいなあいまいなものはなく、なにがなんでも実現してみせるという気迫であふれていた。
「おぉ! これぞまさしく王たる風格! さすがは相馬様! ブリジットは一生あなた様についていきます!」
そんな相馬の力説に、どこからともなく現れるメイド服姿のブリジット。
彼女は祈るように手を組み、テンション高く感服の意を。
「って、いたんですか!? ブリジットさん!?」
「当たり前です。主人にいついかなるときもお仕えするのが、メイドの務めなのですから!」
ブリジットは胸に手を当て、さぞ当然とばかりに主張する。
「ささ、みなさま私にかまわず、お食事をお楽しみくださいませ」
そしてブリジットは相馬のすぐ後ろに待機し、レイジたちに食事の再開を勧める。
「ブリジットの言う通りだな。冷めてしまっては、せっかくの料理がもったいない。食事を再開するとしよう」
相馬は席に座り、ワインを一口。そして優雅に食事を再開する。
「ははは、そうですね。うん? オレの肉がない? ハッ!? まさかゆき!? 取りやがったな!?」
ブリジットには少しわるい気もするが、もっともな意見なので食事を再開することに。
そこでふと気づく。先程まであったステーキが、レイジの皿から消えていたのだ。
「えー、ゆきー、くおんがなにをいってるか、わからないよぉー、もぐもぐ」
レイジの問い詰めに、ゆきはかわいくとぼけだした。幸せそうになにかをほおばりながらだ。
「なにかわいくとぼけてやがる。その口の中にあるのが証拠だろうが!」
もはや犯人は一目瞭然。なのでゆきの肩をつかみ、力を入れる。
「きゃー、そうま兄さん、くおんが乱暴しようとするー」
対してゆきは卑怯なことに、相馬へ助けを求めだした。
さすがに兄である相馬の前、さらには公衆の目もある。なのでそう強く責めることはできそうになかった。
「――くっ……、ゆきにまんまとやられるとは……」
「ハハハ、ゆきにしてやられるとは、久遠もまだまだだな」
そんな感じでレイジたちは、にぎやかなランチを楽しむのであった。
隣に座っているゆきがお肉をおいしそうにほおばり、幸せそうに目を細める。そして目をキランと光らせ、交渉してきた。
時刻は十二時ごろ。レイジとゆきがいるのは現実の十六夜島にある、高級ホテル。その最上階に位置する上流階級用のレストランである。店内は重厚感あふれるカーペットが敷かれ、非常におしゃれな内装。ガラス張りの窓からは、十六夜島の街並みを一望できる。これが夜ならば見事な夜景が広がっており、とてもロマンチックな雰囲気をかもしだしていただろう。ここは相馬がランチに指定した場所であり、今日はおごってくれるのだそうだ。
ちなみに現在やりとりしているのは、並べられた料理の中でもメインディッシュにあたるもの。ちょこんと盛られた最上級クラスのステーキである。
「おい、全然見合ってないじゃないか。しかもそのニンジン、初めからどけてたのを見るに、嫌いなものだろ。ついでに押し付けようとするな」
運ばれてすぐゆきが付け合わせのニンジンをいやそうに端にどけるのを、レイジは見逃してはいなかったのだ。
「むぅ、くおんのけちぃ。ならせめてこのニンジンのやつ食べてよぉ」
ゆきはほおを膨らませ、付け合せのニンジンをフォークで運んでこようと。
「ははは、好き嫌いしてると大きくなれないぞ?」
「よけいなお世話だぁ! もう、いいよぉ! この程度、一人で食べてみせるもん! ぐぬぬ、大きくなるためにも、ぱく……」
付け合せのニンジンとにらみ合い、そして意を決して口にほりこんだ。
どうやら大きくなるというワードに反応し、がんばることを決めたらしい。
「――うぅ……、やっぱり苦手だぁ……」
「おお、えらい、えらい、よくできました」
涙目にながら食べるゆきの頭をなでてやる。
いつもなら子ども扱いするなと怒ってきそうだが、今はそれどころではないらしく素直に受け入れていた。
そんなゆきのさわがしさに、相馬はため息を。
「――はぁ……、白神家の人間なのだから、もっと優雅に食べれないものか?」
「おいしく食べるのが一番でしょー。ただでさえこんな高級店、連れてきてもらったことないのにさぁ。ねぇ、くおん」
ゆきはそっぽを向き、レイジに同意を求めてくる。
「うん? オレは相馬さんにプライベートで、結構連れてきてもらったことあるけどな」
相馬には狩猟兵団レイヴン時代、よくアリスと一緒にこういった店でおごってもらっていたのである。これも彼に気に入られていたがためなのだろう。
「え? そうまにいさんの妹である、ゆきを差し置いてぇ? ずるくなーい!」
その事実に身を乗り出し、抗議するゆき。
「俺に力を貸してくれる者には、当然の褒美だ。悔しければゆきも、兄の手伝いにはげむのだな。そうすれば連れてきてやるのも、やぶさかではないぞ?」
「ゆきも、そうま兄さんの私兵に……、じゅるり……」
彼女は相馬の私兵になって、おごってもらっている光景を想像しているようだ。よだれをすすりながら、妄想にふ
けだす。
「ゆき、食べ物でつられそうになってるぞ?」
「はっ!? ゆきとしたことが!?」
ゆきははっと我に返り、あわててよだれをふく。
「まったく……、ゆきよ、この程度で懐柔されそうになるとは、将来が心配になってくるぞ」
もはや見てられないと、こめかみを押さえる相馬。
「うるさいなぁ。それに文句ならゆきにだってあるもん! そうまにいさんがアポルオンと手を結んでるせいで、どれだけゆきに厄介ごとがふってきたと思ってるのぉ!」
あきれる相馬に、ゆきは今回の本題を使って抗議を。
「――ふむ……、おおかた父さんあたりに、次期当主になれとでも言われたところか?」
「そこまでわかってるのなら話は早いよぉ! さっさとアポルオンなんかと縁(えん)を切って、白神コンシェルン側に戻ってきてぇ! そうまにいさんだって、白神家を裏切るのは内心心苦しいと思ってるはずでしょー?」
ゆきは相馬の心情にうったえかけ、必死に説得を試みる。
「仮に俺が戻ったとしてどうなると思うんだ?」
「そんなのとうさん、かえでねえさん、そうまにいさんが力を合わせれば、アポルオンの件ぐらいなんとかなるよねぇ?」
ゆきは少し不安げに首をかしげる。
「ふん、認識が甘いな、ゆき。一つ断言しておこう。俺が白神家についたところで、アポルオンの介入は止まらない。なにせ保守派はどんな手を使ってでも、管理者の力を奪おうとしてるんだ。その勢いは革新派との戦いより、優先するほどにな」
すると相馬が彼女の楽観的考えを、変えられない事実で打ち砕いてきた。
「え? そんなになのぉ?」
「ははは、まさか革新派の騒動が二の次って、どれだけ管理者の力を欲してるんですか?」
革新派のクーデターは、もはやアポルオン内の一大事といっていい事件。それは保守派
にだって変わらないはずなのに、それよりも優先することがあるとは。よほど彼らはその計画とやらに、ご執心のようだ。
となればアポルオンによる白神コンシェルンへの介入。これはレイジたちが思っている以上に、ヤバイ案件なのかもしれない。
「俺もくわしいことはわからん。ただ彼ら保守派の計画を完遂するには、管理者の力がどうしても必要らしい。つまりだ。もはや白神コンシェルンがいくら抵抗したところで、結末は変わらない。ならば我々は、被害を最小限に抑えるべく行動すべきではないか?」
「え? もしかして相馬さんがアポルオン側についたのって、白神コンシェルンを守るために?」
「ハハハ、このままではすべて奪われかねんだろ? ならばやることは一つ。始めから向こうに協力し、その貢献を持って立ち位置を確立する。最悪、傀儡になりはてる形になるかもしれんが、完全に乗っ取られるよりはましだろう」
相馬は手をぐっとにぎり、今後の事態を見すえる。
つまり相馬は相馬なりに、白神コンシェルンを守ろうとしていたということ。
もはや本気を出した保守派に勝てる可能性は低い。となれば早いうちに負けを認め、少しでも被害を少なくするほかないというもの。ゆえに相馬のとった行動は、必ずしも白神コンシェルンを裏切ったとは言えないのだ。結果的に見ると最善の選択なのかもしれなかった。
「ちなみに今のところは順調だぞ。序列二位サージェンフォード家当主と、わるくない同盟を結べている。このまま駒としての役割をまっとうし続ければ、それなりの全権は任せてもらえるぐらいにな」
「そうまにいさんが、まさかそこまで考えていたなんてぇ……」
彼の真実に、ゆきは目を丸くする。
まさか唯我独尊、野心家の相馬がここまで自分たちのことを思っていたのかと。
「なにやら自分の野望のため裏切ったと思われがちだが、俺は俺なりに白神コンシェルンの身を案じて、動いていたというわけだ」
相馬はワインを一口飲みながら、すずしげに笑う。
「じゃあ、もしかして相馬さんがここまで権力を集めてきたのって、全部白神コンシェルンを救うためなんですか?」
「え? そうなのそうまにいさん……」
もしそうだとしたら、これまでの相馬の見え方が180度変わってくる。すべては白神コンシェルンを救うため、上を目指していたのだと。
その可能性に、二人で思わず尊敬のまなざしを向ける。
「ハハハ、まさか。オレはそんなに聖人君子はないぞ。俺には俺の野望がある。今回の件はたまたまそれが重なっただけのこと。サージェンフォード家との結びつきと、白神コンシェルンの代表の座。この二つが手に入れば、我が覇道もさらに進むからな!」
相馬はその期待を笑い飛ばし、本音を熱くかたる。
「――はぁ……、やっぱりそうまにいさんはそうまにいさんだぁ。感動して損したよぉ」
ゆきは肩を落とし、笑うしかないようだ。
「そういうわけだから、媚(こび)を売っとくなら今のうちだぞ、ゆき。お前の兄はいづれ天下をとる男なのだからな! ハハハ!」
そして相馬は立ち上がり、手をバッと前に出しながら声高らかに宣言する。
そこには夢みたいなあいまいなものはなく、なにがなんでも実現してみせるという気迫であふれていた。
「おぉ! これぞまさしく王たる風格! さすがは相馬様! ブリジットは一生あなた様についていきます!」
そんな相馬の力説に、どこからともなく現れるメイド服姿のブリジット。
彼女は祈るように手を組み、テンション高く感服の意を。
「って、いたんですか!? ブリジットさん!?」
「当たり前です。主人にいついかなるときもお仕えするのが、メイドの務めなのですから!」
ブリジットは胸に手を当て、さぞ当然とばかりに主張する。
「ささ、みなさま私にかまわず、お食事をお楽しみくださいませ」
そしてブリジットは相馬のすぐ後ろに待機し、レイジたちに食事の再開を勧める。
「ブリジットの言う通りだな。冷めてしまっては、せっかくの料理がもったいない。食事を再開するとしよう」
相馬は席に座り、ワインを一口。そして優雅に食事を再開する。
「ははは、そうですね。うん? オレの肉がない? ハッ!? まさかゆき!? 取りやがったな!?」
ブリジットには少しわるい気もするが、もっともな意見なので食事を再開することに。
そこでふと気づく。先程まであったステーキが、レイジの皿から消えていたのだ。
「えー、ゆきー、くおんがなにをいってるか、わからないよぉー、もぐもぐ」
レイジの問い詰めに、ゆきはかわいくとぼけだした。幸せそうになにかをほおばりながらだ。
「なにかわいくとぼけてやがる。その口の中にあるのが証拠だろうが!」
もはや犯人は一目瞭然。なのでゆきの肩をつかみ、力を入れる。
「きゃー、そうま兄さん、くおんが乱暴しようとするー」
対してゆきは卑怯なことに、相馬へ助けを求めだした。
さすがに兄である相馬の前、さらには公衆の目もある。なのでそう強く責めることはできそうになかった。
「――くっ……、ゆきにまんまとやられるとは……」
「ハハハ、ゆきにしてやられるとは、久遠もまだまだだな」
そんな感じでレイジたちは、にぎやかなランチを楽しむのであった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる