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3章 第4部 逃走劇

155話 レイジvs透

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 一方、結月と伊吹が片桐かたぎり家について話している中、レイジと透は一歩も引かぬ斬撃の攻防を繰り広げていた。
 レイジは刀、とおるはダガー。両者その熟練された技量で放つ猛攻は、苛烈きわまりない。刃物同士のぶつかるするどい音が鳴り響き、火花が無数に散る。もはや常人には彼らの戦闘を目でとらえるのは難しいほどだ。

「ははは、ほのかの言った通り、さすがのウデだ。まさか一本のダガーで、オレの斬撃をここまでさばくとはな」
「はは、レイジくんも相当のウデだよ。気を抜けば、またたく間にち斬られそうなんだからね」

 ともに笑いながら相手を称えるも、その攻撃の手を一向に緩めてはいない。なので会話しながらも斬り結びあっており、互いにどれだけ戦闘慣れしているのかがわかる。レイジもそうだが、透もかなりの場数を踏んでいるらしい。
 そんな中、両者相手をしとめる渾身こんしんの一撃をたたき込もうと。刀とダガーが激突し、その反動で二人ははじき飛ばされた。

「カノン、わるいな。これだと駆けつけるのが遅くなりそうだ」                      
「それはボクのセリフだよ。さすがは黒い双翼のやいばとして名をはせたことはあるね。手早くしとめようと思ったけど、そうはいかないらしい」

 レイジと透は相手の力量を見さだめながら、冷静に分析する。
 両者一刻も早く姫の元に駆け付けたいが、相手が悪い。このままではもうしばらく目の前の敵と、やり合うことになってしまうだろう。

「まあ、こっちは最悪時間稼ぎをすればいいだけだから、この状況を維持すればいいんだけどな。そうすれば残りの奴らが、なんとかしてくれるだろうし」
「どうやらそっちには、まだまだ切り札があるみたいだね。となればこのまま足止めを食らうわけにはいかない。すぐにでもケリを付けさせてもらう」
「ははは、つれないな。もうしばらく付き合ってくれよ、透。こんな凄ウデのデュエルアバターと戦える機会、あまりないんだからもっと楽しませてくれ!」

 透の闘志を燃やした宣言に、レイジは笑ってさらなる闘争への誘いを。
 こんなにも胸がおどる戦いを、早々に切り上げるのは正直もったいない。ゆえに彼にはもうしばらく付き合ってもらわなければ。

「せっかくの誘いだけど、遠慮させてもらうよ!」
「なら、無理にでも付き合ってもらうとするかな!」

 再びレイジと透は地を蹴り激突。刃と刃をまじえ合う。
 現状レイジが攻勢に転じ、透が受けに徹していた。レイジの止まらぬ連撃の嵐を、透は器用にダガーではじきしのぐ。もちろん透もただ押されっぱなしというわけではない。斬撃を逸らしたあと、こちらの隙を見さだめ的確な攻撃を打ち込んでくるのだ。その戦い方はまさに守りの型。透は堅牢けんろうな防御からのカウンターを得意としているらしい。

「そこだ!」
「やらせないよ」

 標的を叩き斬る上段からの一太刀を、透は見事にはじき返す。

「レイジくん、そろそろ決めに行かせてもらうよ!」

 そして即座に間合いを詰め、ダガーを一閃する透。その斬撃の精度は精確無慈悲。相手の致命打となる部位を、確実にとらえ狙ってくる。
 もし並のデュエルアバター使いなら、あまりの鋭いダガーさばきになすすべもなく刈り取られていただろう。だがレイジは幾百の戦場を渡り歩いてきた猛者もさ。胸板に吸い込まれていく閃光を見切り、後方に下がりながら刀で叩き落とす。
 しかし一息つく間もなく透の猛攻が再び。後ろに下がろうとするレイジに詰め寄り、ダガーによる刺突を繰り出そうと。
 その動きをなんとか読み刀で防ごうとするが、突如とつじょ異変が。なんと右手のダガーより先に、レイジのみぞおちめがけて左手のこぶし飛んできたのだ。おそらくレイジが反応したのを見極め、透は一瞬で次の一手を変えてきたのである。
 レイジはギリギリのところで反応し、左腕を自身のみぞおちにすべり込ませた。結果、左腕に重い衝撃が。しかしそのおかげでボディに叩き込まれることだけは回避。そのまま右手で刀を振るい、透を引き離した。

(キレのある拳だ。となると透の武器はダガーだけでなく)

 透のバトルスタイルを分析しようとするが、そんな暇はないようだ。敵はダガーを振りかぶり、レイジへ疾走を開始する。レイジもそれに応戦し前へ。
 そして刀とダガーがまたもや激突。しかし今回はそれだけではない。レイジの危惧きぐした通り、ダガーの閃光のほかに拳や蹴り、掌底といった殴打の猛襲が。その一打一打の動きはどれも洗練されており、格闘戦を得意としているのがよくわかった。
 さすがにこうなってくるとレイジにとって分がわるい。ダガーの斬撃だけでも手一杯だというのに、そこへ武術の嵐まで加わってくるとは。今のところ直撃を回避しつつしのいでいるが、このままではいづれとらえられてしまう恐れが。
 ゆえにレイジは打って出る。一度大きく後方へ下がるそぶりを見せ、透を誘う。彼としてはこのまま距離を詰め続け、たたみかけたいはずだ。すると案のじょう透は食いつき、後方に下がる隙を狙って間合いを詰めてきた。
 そこへ。

(演算開始!)

 レイジはつかさず刀をさやにしまい、抜刀ばっとうのアビリティを起動する。

「ッ!?」

 透はレイジがなにかをしでかすつもりだと気づき、足を止めようとするがもう遅い。すでに彼はレイジの射程内。透の速度ではこの抜刀のアビリティから放たれる斬速から、のがれることは叶わないのだから。

「とらえたぞ! 断ち斬る!」

 レイジは鞘から刀を抜き、死閃の刃を放つ。
 透を襲うは、威力を限界にまでブーストさせた斬撃。それまるで目にも止まらぬ速さで相手を断ち斬る、死の閃光。大気を斬り裂き、銀閃は透の胴体へ咆哮ほうこうを。もはやレイジ自身、完全にとらえたと確信した渾身こんしんの一撃であったが。

極限きょくげん一式いっしき

 しかし透がなにかをつぶやいた瞬間、彼の姿が突然消えた。
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