上 下
151 / 253
3章 第3部 鳥かごの中の少女

146話 逃走

しおりを挟む
 レイジとカノンそして結月は現在、走行中の車の中にいた。彼女たちは後ろの席、レイジがいるのは助手席だ。そして運転しているのは。

「ふぅ、それにしても助かったよ。エリーに来てもらってて正解だったな」

 レイジの隣で運転しているのはエデン協会ヴァーミリオン所属のエリー・バーナード。
 実はカノンを自由にするため、今朝のうちに雇っておいたのだ。というのも彼女は昔の経験がら、裏の仕事系の荒事に慣れているらしい。よくアイギスにその部分でアピールし、仕事の 催促さいそくをしているのであった。

「フフ、自分荒事には慣れてるっすから、こういう依頼はぜひとも声をかけてほしいっす。もちろんそれなりの依頼料は取るっすけどね」

 エリーは運転しながらも、不敵にウィンクしてくる。

「そういえばスモークグレネードなんて、どこで調達してきたんだ? 今の時代セフィロトのせいで武器の類はほとんど 撤廃てっぱいされ、もう軍ぐらいしかもってないだろ?」

 このご時世、銃器などの危険物はどの国でも所持することが禁止されているのだ。これはセフィロトがさだめた政策の一つ。もし銃器などが普通に存在すれば、セフィロトの導く世界に不満をもったものが暴挙を起こす可能性が。これは当然セフィロトにとって容認できぬ問題。ゆえに今後の世界のためにも、刃向かう力そのものを排除しようとしたのが事の経緯だ。よってセフィロトが起動してからの世界では、一般人が銃器を持つことは許されない。もし発覚すれば、テロリスト並みのとても重い罪に問われるのであった。

「装備一式、ナユタさんが用意してくれた物っすよ。例え罪に問われたとしても、権力の力でもみ消しておくから好きなだけやればいいってね。フフ、おかげで久しぶりに特殊工作員じみたことができて、楽しかったっす」

 エリーはいっぱい暴れられて、さぞご満悦の様子だ。

「――ははは……、さすが那由他……、相変わらず恐ろしい奴だ」
「いやー、ナユタさんみたいなチートじみた人とつながりがあるのは、最高っすね!自分が持ってる偽造免許も、昔に作ってもらったやつなんすよ!」

 現在進行形で運転しているエリーは、まだ車に乗れる歳に達していない。だが那由他に頼んで偽造の免許を作ってもらったらしく、こうやって乗り回しているとのこと。

「それはそうとレイジさん。今回の依頼、少し気が乗らないので報酬上げてもらっていいっすか? 実はあちら側に知り合いがいて、やりづらいというか……」

 さっきから興奮さめず、はしゃぎ気味だったエリー。しかし次の瞬間ため息交じりに肩を落としながら、なにやら交渉してきた。

「ははは、そんなの知らないな。そっちの事情だろ? こっちは関係ない」
「――そうっすよねー」

 レイジの正論に対し、エリーは苦笑しながらあきらめる。
 そうこうしているとカノンが話に加わってきた。

「エリーさんだっけ。すごい手ぎわだったね。普通にエージェントとしてやっていけるほどのウデ前なんだよ」
「おほめいただき光栄っす。ヴァーミリオンに入る前、エデンでああいったことやりまくってたっすからね。そういうわけでカノン様もなにかあれば呼んで欲しいっす! なんでも結月様レベルのお金持ちのお嬢様とか! フフ、ぜひともお得意様になってほしいっすね!」

 エリーは気を取り直したようで、いつもの調子で上客に対する営業トークを。

「おい、なに押し売りしてるんだ? ほら、仕事中だろ。集中しろ」

 目を輝かせるエリーの頭を軽く小突き、カノンから引き離す。

「レイジさん、ほんと 容赦ようしゃないっすね。せっかくいい金づるを釣ろうと、がんばっているところを……」

 するとジト目を向け不服そうにするエリー。

「エリーちゃん、それなら今度妹の美月に紹介しとこうか。あの子片桐家次期当主だし、結構いい依頼を持ってこれるかもしれないよ」
「片桐家! しかも次期当主クラスっすか! ユヅキ様まじ神っす。一生ついていくほどっすよ!」
「――はぁ……、もういいよ。少し那由他に状況報告するから、後よろしくな」

 結月を あがめたて盛り上がるエリーを放って、ターミナルデバイスを機動。現状を報告するため那由他に連絡を取る。

「はーい! レイジの那由他ちゃんですよー!」
「那由他、こっちは計画通り、カノンの連れ出しに成功したぞ。そっちの方はどうだ?」
「例の 交渉こうしょうの案件は結月の協力もあって、着々と進んでますよー! 次にカノンの脱出計画ですが、こちらも準備万端です! エデン協会ヴァーミリオン、ゆきちゃんにも話を付けていますから、あとはアビスエリアの方に乗り込むだけですねー!」
「了解した。とりあえず第一目的地について、準備が整い次第もう一度連絡するよ」
「わっかりましたー! ではお待ちしてますねー!」

 那由他の返事を聞きおえ、通話をきった。今のところ計画は順調のようである。

「それでレージくん。これから私たちはどうするつもりなのかな?」

 するとカノンが後ろの席から身を乗り出し、たずねてくる。

「ははは、文字通りカノンを自由にするよ。そのためにもまずカノンにはあそこから出てもらわないと」
「――やっぱりそうなるんだね……。うん、レージくんたちの手を取ると決めた以上、私も覚悟を決めるんだよ」

 今の説明で、カノンはこれからレイジたちがなにをしようとしてるのかわかったみたいだ。その事のでかさに思い詰めるも、レイジたちを信じ覚悟を決めてくれたらしい。

「必ず成功させてみせるよ。カノンを自由にするための、最重要案件の一つなんだから」
「では、レイジさん、目的地に変更はないっすよね?」
「ああ、当初の予定通りだ」
「フフ、では三名さま、エデン協会ヴァーミリオンの事務所にご案内っす!」

 そしてエリーはどこか 芝居しばいがかったように、目的地の場所を口にするのであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...