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3章 第2部 姫の休日
134話 カノンとアリス
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ファントムと別れた後、レイジは結月を引きつれアリスに教えられたバーへと急ぐ。
なんでもカノンがヒマを持て余して少し外に出たところ、偶然アリスと出会ったらしい。そこで巫女の間の件のお礼の話になり、アリスが一杯おごってくれたらと。なのでアリスとカノンは近くのNPCが経営するバーにいき、一緒にドリンクを飲んでおしゃべりしてるとか。
くわしいことを聞く前に通話が切れたため、今バーで一体なにが起こっているのか見当もつかないのだ。カノンとアリスは完全に真逆の価値観。平和を愛する少女と闘争を愛する少女。まったくかみ合っていない価値観ゆえ、話が通じ合うのかどうか。しかもカノンはレイジが狩猟兵団を出ていった原因そのもの。アリスとしては彼女のことをあまり快く思っていない可能性もある。そのため最悪那由他とアリスみたいな、少し険悪なムードになっていてもおかしくはないだろう。
不安が募りながらもレイジは急ぎ、ようやく目的のバーへとたどり着いた。
「ここがバーなのね。――あはは……、廃墟ふう仕様だからオシャレとかじゃなく、物騒な雰囲気しかないね」
「無法者の集まる場所をコンセプトに作られているからな。中も西部劇に出てくる、酒場みたいな感じだ」
シティゾーンの利用者はかなり多いため、こういう系の店はかなり設置されていた。ただ集まって飲み交わすのはもちろんのこと、よく接待や打ち合わせなどの利用目的にも。それゆえ常に人でにぎわっているのであった。
「酒場ね。RPGみたく仲間を勧誘できたり、情報が集まるイメージがすごくするよ」
「まあ、人が集まる場所だから、そのイメージ通りかもな。さあ、中に入ろう。カノンが心配だ」
「アリスもいるから大丈夫なんじゃないかな?」
「いや、カノンとアリスの二人っきりというのが怖いんだよ。あの二人価値観的に真逆だし、オレがらみでいろいろ因縁もあるだろうから」
「うーん、そんなに心配しなくてもいいと思うけどなぁ」
不安げなレイジに対し、結月はアゴに指を当て首をかしげる。
そしてレイジたちはバーへと入った。淡い明かりが店内を照らし、カウンターの後ろには様々な酒のボトルが立ち並んでいる。中は廃墟のためあちこち廃れているが、そこがいい感じの雰囲気をかもしだしていたといっていい。
店内を見渡すと利用客でにぎわい、みなカウンターやテーブル席で軽い飲食物を取りながら仕事の話や談笑などをしていた。そして一番奥側のテーブル席に座っているアリスとカノンの姿を発見。あわてて彼女たちに駆け寄る。
「レージくん、結月、こっちなんだよ」
「あら、やっと来たわね。ちょうど盛り上がってきたところだから、あなたたちも席に座りなさいな」
「――ああ……」
「うん、お邪魔させてもらうね」
とりあえずアリスに言われた通り、結月とあいている席に座る。
ぱっと見二人の間にギズギズした空気はないように見えるが、実際どうなっているかはわからなかった。
「えっと、なにを頼もうかな。うん、これにしよう」
「オレはこれでいいか」
レイジと結月も二人のようにドリンクを注文する。
注文する時はこの店限定のシステムにアクセスし、欲しい商品を購入する流れ。そうすれば目の前に出現するのであった。ちなみにレイジたちが頼んでいるのはジュース類。ここはバーなので酒の類もあるが、未成年なので当然頼めないのである。
レイジは一度落ち着くため、ドリンクを一口飲むことに。
「レージくん、聞いたんだよ。アリスとは小さいころから、家族ぐるみの付き合いなんだってね」
「そうそう、レージ。聞いたのだけど、カノンとは小さいころに出会った幼馴染なんですってね」
「ぐふっ!? ゴホッ、ゴホッ!?」
だがいきなりの二人の興味深々の言葉に、思わずむせてしまう。
「しかも背中を預け合ってきた戦友で、ずっと一緒に戦っていこうって誓いあった仲とか。うん、すごくロマンスあふれる素敵な話なんだよ!」
「あら、正真正銘のお姫様であるカノンが、レージと結んだ主従関係の誓いも負けず劣らずロマンチックじゃない! 女の子なら、誰もが一度は夢見るシチュエーションよ!」
アリスとカノンは恋バナをするかのように生き生きと、互いの誓いの話で盛り上がりだす。
だがレイジとしては、どこかひやひやせずにはいられなかった。
「久遠くん、どうしたの?」
「――いや、別になんでも……、――ははは……」
苦笑して誤魔化しながらも、再びドリンクに口を。
「フフフ、どうせレージの事だから、修羅場にならないかびくびくしてるんじゃないかしら。だって見方によれば、二股にも見えかねないもの」
「グフッ!?」
アリスの意地のわるい笑みを浮かべてのツッコミに、またもやむせてしまうレイジ。
「あー、だからあわてて駆け寄ってきたんだね。レージくん、安心してくれて大丈夫だよ。私たち全然ギスギスしてないから」
「ええ、むしろ親近感がありすぎて、息が合っちゃうぐらい。だからさっきまでレージのことで盛り上がりながら、一緒に飲んでいたのよ」
「ねー!」
カノンとアリスは屈託のない笑顔で笑いあう。
実際二人の間に、重苦しい空気はなさそうだ。もはや互いに楽しそうにおしゃべりしているのがよくわかり、すっかり打ち解けているようである。
「そ、そうなのか」
「さっきのアリスとの誓いの話。えへへ、 やっぱりどこまでいってもレージくんはレージくんなんだなぁって、感心してたんだよ。アリスを一人にしないために一緒にいる。うん、実にキミらしいって、内心うれしくなっちゃった」
カノンは胸をぎゅっと押さえながら、ほがらかにほほえむ。
「カノンのようなお姫様なら、レージがイチコロになるのもうなづけるわ。外見はもちろん、性格まで神がかってるときた。フフフ、もう、同じ女のアタシでも、惚れちゃいそうになるぐらいね。どこぞのメインヒロインカッコ笑いさんなんか、話にならないぐらいのヒロインの風格だわ。どうりでレージがあんなにも必死に、カノンを追いかけていたわけね」
アリスは腕を組みながら、うんうんとしみじみと納得を。
もはや二人には不満がなく、逆に好ましいといった感情の色が。どうやらレイジの不安は杞憂だったらしい。
(――ふぅ、とりあえずなにもなくてよかった……)
そんな風に心の中で安堵しているレイジだったが、それもつかの間(ま)。事態は別の意味で頭を悩ます状況へ。
「――えっと……、アリス、なんだかすごいこと言ってないかな?」
「フフフ、本当のことだもの! ええ、カノンならレージのハーレムへ入るのになんの問題もないわ! どうかしら? アタシと一緒にハーレムルートを目指さない? カノンが加わってくれればレージの心をかなり揺さぶれ、もうひと押しのところまで持っていけるはず!」
ベタほめされてテレるカノンへ、アリスは手を差し出し唐突に爆弾発言を。
そう、あろうことか以前目論んでいたハーレム計画を、カノンに告げ始めたのだ。
「おい、アリス。カノンを変な話に巻き込むな。カノンもこんなバカな話に付き合わなくていいぞ」
「ハーレムか。えっへへ、なんだか面白い事を考えてるみたいだね」
すぐさま会話の流れを切ろうとするレイジであったが、カノンは予想外なことに食いついてしまった。
どこからどうみても清純派のカノンゆえ不純だと、嫌悪感の一つでも示すと思いきや逆に興味深そうな反応。レイジとしては混乱せざるを得ない。
「って、カノン!? なに真に受けそうになってるんだ?」
「あら、その様子だと乗り気みたいね。フフフ、カノンも案外いける口だったようでうれしいわ。正妻は今のところユヅキだけど、二人で話し合って決めてくれたらいいから。アタシはレージと一緒にいられればそれでいいし、立ち位置にはこだわらないわ」
アリスは口元に手をやりニヤリと笑いながら、結月とカノンに目くばせする。
「あ、あ、アリス!? その話本気だったの!? わ、私が、く、く、久遠くんの……」
手をもじもじさせながら、うつむいてしまう結月。
「正妻ね。もちろんアタシの中ではもう、ユヅキはハーレム要員確定よ。この計画には家事全般をやってくれる女子力が高い女の子が、必須だもの」
「――あ、あわわ、未来の旦那さまが、く、く、久遠くん……」
アリスのさぞ当然といった主張に、ゆでダコみたいになった結月がレイジの方をチラチラと見てくる。ただろれつが回っていないようで、混乱しているのがすぐわかった。
「――ハーレム……、――それならこんな私でも、レージくんのそばにいることが許されるのかな……」
そんな中カノンがぽつりと、レイジに聞こえないぐらいの声でつぶやく。
うまく聞き取れなかったが、どこか悲痛じみた雰囲気をただよわせていたのはわかる。それはまるで咎人の懺悔のようであった。
「え? カノン?」
「えへへ、なんでもないんだよ。――うん、いいね! ハーレムルート! レージくんと一緒になるために、私もその話に乗ろうかな! もちろん正妻は結月で!」
だがすぐさまカノンは明るく振る舞い、ノリノリで肯定の意思を。そして結月に対し、お茶目な笑顔で正妻の件を認めだした。
「かかか、カノンまで!? これだと私が正妻の役目を……、あわわ!?」
結果、結月の頭から出る湯気がさらに激しさを増したのは、いうまでもない。
「フフフ、決まりね! ではカノン! まずはこのかたくなに認めてくれないレージを攻略しましょう!」
「うん、がんばろう、アリス! 目指すはハーレムルート一直線だね!」
カノンとアリスは手を取り合い、キャッキャッと盛り上がり始める。
カノンのさっきの反応が気がかりだったレイジだが、今のよくわからない状況に意識が持ってかれてしまう。
レイジがハーレムを目指すのなら話はわかるが、なぜ攻略される側の彼女たちが率先して目指すのか。なによりそこにカノンが加わったことが、レイジをさらに戸惑わせたといっていい。
「――ははは……、カノンまでアリスと同じことを……。オレはどうすれば……」
レイジは天をあおぎながら、もはや途方に暮れるしかなかった。
なんでもカノンがヒマを持て余して少し外に出たところ、偶然アリスと出会ったらしい。そこで巫女の間の件のお礼の話になり、アリスが一杯おごってくれたらと。なのでアリスとカノンは近くのNPCが経営するバーにいき、一緒にドリンクを飲んでおしゃべりしてるとか。
くわしいことを聞く前に通話が切れたため、今バーで一体なにが起こっているのか見当もつかないのだ。カノンとアリスは完全に真逆の価値観。平和を愛する少女と闘争を愛する少女。まったくかみ合っていない価値観ゆえ、話が通じ合うのかどうか。しかもカノンはレイジが狩猟兵団を出ていった原因そのもの。アリスとしては彼女のことをあまり快く思っていない可能性もある。そのため最悪那由他とアリスみたいな、少し険悪なムードになっていてもおかしくはないだろう。
不安が募りながらもレイジは急ぎ、ようやく目的のバーへとたどり着いた。
「ここがバーなのね。――あはは……、廃墟ふう仕様だからオシャレとかじゃなく、物騒な雰囲気しかないね」
「無法者の集まる場所をコンセプトに作られているからな。中も西部劇に出てくる、酒場みたいな感じだ」
シティゾーンの利用者はかなり多いため、こういう系の店はかなり設置されていた。ただ集まって飲み交わすのはもちろんのこと、よく接待や打ち合わせなどの利用目的にも。それゆえ常に人でにぎわっているのであった。
「酒場ね。RPGみたく仲間を勧誘できたり、情報が集まるイメージがすごくするよ」
「まあ、人が集まる場所だから、そのイメージ通りかもな。さあ、中に入ろう。カノンが心配だ」
「アリスもいるから大丈夫なんじゃないかな?」
「いや、カノンとアリスの二人っきりというのが怖いんだよ。あの二人価値観的に真逆だし、オレがらみでいろいろ因縁もあるだろうから」
「うーん、そんなに心配しなくてもいいと思うけどなぁ」
不安げなレイジに対し、結月はアゴに指を当て首をかしげる。
そしてレイジたちはバーへと入った。淡い明かりが店内を照らし、カウンターの後ろには様々な酒のボトルが立ち並んでいる。中は廃墟のためあちこち廃れているが、そこがいい感じの雰囲気をかもしだしていたといっていい。
店内を見渡すと利用客でにぎわい、みなカウンターやテーブル席で軽い飲食物を取りながら仕事の話や談笑などをしていた。そして一番奥側のテーブル席に座っているアリスとカノンの姿を発見。あわてて彼女たちに駆け寄る。
「レージくん、結月、こっちなんだよ」
「あら、やっと来たわね。ちょうど盛り上がってきたところだから、あなたたちも席に座りなさいな」
「――ああ……」
「うん、お邪魔させてもらうね」
とりあえずアリスに言われた通り、結月とあいている席に座る。
ぱっと見二人の間にギズギズした空気はないように見えるが、実際どうなっているかはわからなかった。
「えっと、なにを頼もうかな。うん、これにしよう」
「オレはこれでいいか」
レイジと結月も二人のようにドリンクを注文する。
注文する時はこの店限定のシステムにアクセスし、欲しい商品を購入する流れ。そうすれば目の前に出現するのであった。ちなみにレイジたちが頼んでいるのはジュース類。ここはバーなので酒の類もあるが、未成年なので当然頼めないのである。
レイジは一度落ち着くため、ドリンクを一口飲むことに。
「レージくん、聞いたんだよ。アリスとは小さいころから、家族ぐるみの付き合いなんだってね」
「そうそう、レージ。聞いたのだけど、カノンとは小さいころに出会った幼馴染なんですってね」
「ぐふっ!? ゴホッ、ゴホッ!?」
だがいきなりの二人の興味深々の言葉に、思わずむせてしまう。
「しかも背中を預け合ってきた戦友で、ずっと一緒に戦っていこうって誓いあった仲とか。うん、すごくロマンスあふれる素敵な話なんだよ!」
「あら、正真正銘のお姫様であるカノンが、レージと結んだ主従関係の誓いも負けず劣らずロマンチックじゃない! 女の子なら、誰もが一度は夢見るシチュエーションよ!」
アリスとカノンは恋バナをするかのように生き生きと、互いの誓いの話で盛り上がりだす。
だがレイジとしては、どこかひやひやせずにはいられなかった。
「久遠くん、どうしたの?」
「――いや、別になんでも……、――ははは……」
苦笑して誤魔化しながらも、再びドリンクに口を。
「フフフ、どうせレージの事だから、修羅場にならないかびくびくしてるんじゃないかしら。だって見方によれば、二股にも見えかねないもの」
「グフッ!?」
アリスの意地のわるい笑みを浮かべてのツッコミに、またもやむせてしまうレイジ。
「あー、だからあわてて駆け寄ってきたんだね。レージくん、安心してくれて大丈夫だよ。私たち全然ギスギスしてないから」
「ええ、むしろ親近感がありすぎて、息が合っちゃうぐらい。だからさっきまでレージのことで盛り上がりながら、一緒に飲んでいたのよ」
「ねー!」
カノンとアリスは屈託のない笑顔で笑いあう。
実際二人の間に、重苦しい空気はなさそうだ。もはや互いに楽しそうにおしゃべりしているのがよくわかり、すっかり打ち解けているようである。
「そ、そうなのか」
「さっきのアリスとの誓いの話。えへへ、 やっぱりどこまでいってもレージくんはレージくんなんだなぁって、感心してたんだよ。アリスを一人にしないために一緒にいる。うん、実にキミらしいって、内心うれしくなっちゃった」
カノンは胸をぎゅっと押さえながら、ほがらかにほほえむ。
「カノンのようなお姫様なら、レージがイチコロになるのもうなづけるわ。外見はもちろん、性格まで神がかってるときた。フフフ、もう、同じ女のアタシでも、惚れちゃいそうになるぐらいね。どこぞのメインヒロインカッコ笑いさんなんか、話にならないぐらいのヒロインの風格だわ。どうりでレージがあんなにも必死に、カノンを追いかけていたわけね」
アリスは腕を組みながら、うんうんとしみじみと納得を。
もはや二人には不満がなく、逆に好ましいといった感情の色が。どうやらレイジの不安は杞憂だったらしい。
(――ふぅ、とりあえずなにもなくてよかった……)
そんな風に心の中で安堵しているレイジだったが、それもつかの間(ま)。事態は別の意味で頭を悩ます状況へ。
「――えっと……、アリス、なんだかすごいこと言ってないかな?」
「フフフ、本当のことだもの! ええ、カノンならレージのハーレムへ入るのになんの問題もないわ! どうかしら? アタシと一緒にハーレムルートを目指さない? カノンが加わってくれればレージの心をかなり揺さぶれ、もうひと押しのところまで持っていけるはず!」
ベタほめされてテレるカノンへ、アリスは手を差し出し唐突に爆弾発言を。
そう、あろうことか以前目論んでいたハーレム計画を、カノンに告げ始めたのだ。
「おい、アリス。カノンを変な話に巻き込むな。カノンもこんなバカな話に付き合わなくていいぞ」
「ハーレムか。えっへへ、なんだか面白い事を考えてるみたいだね」
すぐさま会話の流れを切ろうとするレイジであったが、カノンは予想外なことに食いついてしまった。
どこからどうみても清純派のカノンゆえ不純だと、嫌悪感の一つでも示すと思いきや逆に興味深そうな反応。レイジとしては混乱せざるを得ない。
「って、カノン!? なに真に受けそうになってるんだ?」
「あら、その様子だと乗り気みたいね。フフフ、カノンも案外いける口だったようでうれしいわ。正妻は今のところユヅキだけど、二人で話し合って決めてくれたらいいから。アタシはレージと一緒にいられればそれでいいし、立ち位置にはこだわらないわ」
アリスは口元に手をやりニヤリと笑いながら、結月とカノンに目くばせする。
「あ、あ、アリス!? その話本気だったの!? わ、私が、く、く、久遠くんの……」
手をもじもじさせながら、うつむいてしまう結月。
「正妻ね。もちろんアタシの中ではもう、ユヅキはハーレム要員確定よ。この計画には家事全般をやってくれる女子力が高い女の子が、必須だもの」
「――あ、あわわ、未来の旦那さまが、く、く、久遠くん……」
アリスのさぞ当然といった主張に、ゆでダコみたいになった結月がレイジの方をチラチラと見てくる。ただろれつが回っていないようで、混乱しているのがすぐわかった。
「――ハーレム……、――それならこんな私でも、レージくんのそばにいることが許されるのかな……」
そんな中カノンがぽつりと、レイジに聞こえないぐらいの声でつぶやく。
うまく聞き取れなかったが、どこか悲痛じみた雰囲気をただよわせていたのはわかる。それはまるで咎人の懺悔のようであった。
「え? カノン?」
「えへへ、なんでもないんだよ。――うん、いいね! ハーレムルート! レージくんと一緒になるために、私もその話に乗ろうかな! もちろん正妻は結月で!」
だがすぐさまカノンは明るく振る舞い、ノリノリで肯定の意思を。そして結月に対し、お茶目な笑顔で正妻の件を認めだした。
「かかか、カノンまで!? これだと私が正妻の役目を……、あわわ!?」
結果、結月の頭から出る湯気がさらに激しさを増したのは、いうまでもない。
「フフフ、決まりね! ではカノン! まずはこのかたくなに認めてくれないレージを攻略しましょう!」
「うん、がんばろう、アリス! 目指すはハーレムルート一直線だね!」
カノンとアリスは手を取り合い、キャッキャッと盛り上がり始める。
カノンのさっきの反応が気がかりだったレイジだが、今のよくわからない状況に意識が持ってかれてしまう。
レイジがハーレムを目指すのなら話はわかるが、なぜ攻略される側の彼女たちが率先して目指すのか。なによりそこにカノンが加わったことが、レイジをさらに戸惑わせたといっていい。
「――ははは……、カノンまでアリスと同じことを……。オレはどうすれば……」
レイジは天をあおぎながら、もはや途方に暮れるしかなかった。
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