電子世界のフォルトゥーナ

有永 ナギサ

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1章 第2部 電子の世界エデン

30.5話 アーカイブスフィアとメモリースフィア②

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頻度ひんどでいったら、数えきれないほどあるぞ。なんたって傘下である企業は、定期的に上へデータを納品のうひんしなくちゃならないからな」

 今の世の中一つの分野を一つの大財閥が取り仕切り、あとはそこから枝分えだわかれ式に傘下を取っていく形態をとっている。なのである分野をまとめる大財閥の傘下に加わる財閥たち。そしてその一つの財閥の傘下に加わる大企業たち。その一つの大企業の傘下に加わる企業たちといった形にだ。そのため傘下の者たちは自分たちを取りまとめる上へ、途中経過や成果などのデータを送る義務があるという。
 ちなみに分野ごとに、リーダーの財閥が傘下をまとめ上げる形態。すべてのところがセフィロトの理想通りに、動いているわけではなかった。この話はリーダーとなった財閥の、すぐ下につく上位陣の財閥たちで多く見られる問題。これまで肩を並べていた相手の下に付くなどプライドが許さないと、非協力体勢をとるところが。ようは必要最低限の傘下の役割だけをこなし、後は裏で好きなようにやるといった感じだ。こういったところは今の立場に不満しかないため、現在リーダーの財閥の座狙って暗躍しまくっているとか。

「メインエリアにアーカイブスフィアがあれば、普通に送信機能が使える。でもクリフォトエリアだとそれがない。だから自分たちの足で、運ぶはめになるんだ」

 データを見せるだけなら、自分たちのアーカイブスフィアへのアクセス権限を渡せば済む話。そうすれば相手側も与えられた権限分のデータを、閲覧できる。しかしデータの納品は実際に相手側のアーカイブスフィアに、自分たちの所のデータを入れる必要があるのだ。なぜならそのデータをふまえたうえで、セフィロトに演算のサポートをしてもらうために。
 このデータの納品においては基本送信するか、メモリースフィアで持っていくしかない状態。そのほかの手段はすべて不正とみなされ、却下されるという。というのも演算のサポートに使われるデータは、アーカイブスフィア内で作られる、しっかりとした計算にもとづいて裏付けもされた立証データ。なのでただデータを書き込むといった方法は、意味をなさない。セフィロトとしてはクリフォトエリアを利用するにあたり、リスクを与えたいがため抜け道など許さないのだ。あと、その納品時のデータを運ぶときに、暗号化するということも不可能であった。

「そこがデータの奪い合いの中でも、かなり熱いといっていいか。そのデータを奪えさえすれば、今後出し抜くことも容易になるだろ。うまくいけば手柄てがらを横取りできる可能性もあるし、自分たちがさらに上に行くにはもってこいの機会というわけだ」

 これまではセフィロトがしいた政策のせいで上に行けず、ただ与えられた役割を果たすしかない不変の世界だった。だがこのパラダイムリベリオン後の世界では、データが奪えるようになりその理屈はくつがえることに。
 納品するデータには今進めている案件や、新製品の報告などいろいろある。そこで納品データを奪い、そのデータをもとに他が進めている計画を自分たちが進める。そうすればセフィロトが指示した役割を多くこなしたということで、必要性のレベルが上がりさらに上に行くことができるのだ。
 それゆえ同じ傘下同士はもちろん、下の立ち位置にいる者たちもこぞって奪いに来るのが現状。中には上の立ち位置にいる者が、ライバル企業を出し抜くためその傘下からデータを奪うということも。このようにいくらでも狙う者はいるといっていい。なのでその分、エデン協会や狩猟兵団の人間が次々に投入されるというわけだ。

「もちろんデータのバックアップのため運ばれてるメモリースフィアも、この戦いに巻き込まれるといっていいな。どこもデータを損失する恐れがあるから、バックアップは万全にしておきたい。だからかさねかさねデータを更新しにいくことになり、その都度狙われてしまう可能性が出てくる」

 どこも最悪の事態に備えて、頻繁にメモリースフィアへ最新のデータを更新しに行っていた。しかもそれは一つにではなく、複数のメモリースフィアへ。なぜならメモリースフィアが保管されているアーカイブポイントまで、狙われる可能性があるから。
 もしこちらのすべてのアーカイブポイントが襲われた場合どうなるか。そうなるといづれ一切削除できない、自分のところのすべてが詰まったメモリースフィアだけが残ってしまう。それを奪われたらなにもかも終わってしまうので、少しでもこのリスクをなくすためいくつも用意しておくのがクリフォトエリアでの常識なのだ。となると当然、増やした分の数のアーカイブポイントへ向かうことに。このためかなりの頻度ひんどで護衛を引きつれデータの更新に行かねばならず、それを狙ってデータの奪い合いが加速したのであった。

「――あはは、そうなんだ。まさかこんな世の中になるなんて、セフィロトが起動した当時は思いもよらなかったんだろうね」
「ははは、それ言えてる」

 結月のもっともな意見に、笑うしかなかった。

「――まだパラダイムリベリオンが起こる前なら、このクリフォトエリアの制約はなんら問題なかったけど、今じゃ、笑い話にもならないな。そのせいでこんなデータを奪い合う世の中が、当たり前の世界になったんだし……」
「うん、それにセフィロトがこの異常事態を、問題と思ってないのもやばいもの」
「そうだな。どんな不具合か知らんが、こちらから問いただしても正常に稼働してるの一点張り。まったく、先が思いやられるよ」

 ちなみにここまで世界がおかしくなっているのに、セフィロトはそれらをまったく問題視していない。むしろ正常に機能していると、一切問題解決に動いてくれていないのであった。

「くおんにゆづき。おしゃべりはそこまでぇ」

 さっきまでだんまりだったゆきが、急に深刻そうな声で割り込んできた。

「ゆき、やっぱりなにかあったのか?」
「どうやらヤバそうな相手が、こちらを狙ってるみたい」
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