電子世界のフォルトゥーナ

有永 ナギサ

文字の大きさ
16 / 253
1章 第1部 エデン協会アイギス 

15話 パートナーの正体?

しおりを挟む
「なあ、那由多なゆたはいったい何者なんだ? 元狩猟兵団でも元エデン協会でもないだろ?」

 レイジがずっと疑問に思っていたことを問いかける。
 実のところ那由他の過去をまったく知らないのだ。その身に付けている様々な技能からして、ただ者ではないはずなのだが。
 その手掛かりは昔アイギスを始めてすぐに、彼女を求めて依頼が殺到したということ。なんでもかなり有名人らしく、誰もが那由他の力を借りに来たのだ。しかも依頼人の誰もが、企業や軍、政府の重役だというから驚きであった。

「あはは! そんなのいつも言ってるでしょ! わたしはただの美少女エージェント、ひいらぎ那由他ちゃん! これがわたしのすべてです!」

 レイジの問いに、那由他は腰に両手を当て、むふんと得意げに笑ってくる。
 その様子は完全にいつもの調子であり、一切動揺していない。どうやらぼろの一つも出そうにないみたいだ。

「――もっと具体的にだな……」
「レイジ! 女の子の過去を詮索せんさくするのはマナー違反ですよ! まあ、美少女すぎる那由他ちゃんが気になって仕方ない気持ちは、わかりますけどねー!」

 那由他は人差し指を立てながら、楽しそうに忠告してきた。
 そんな言い方をされると、レイジとしてもこれ以上追求することができなくなってしまう。

「――はぁ……、教える気はないんだな?」
「はい、でもわたしとレイジの関係はなに一つ変わりません! なんたってわたしたちはお互いを支え合い、苦難を共に乗り越えるパートナーなんですから!」 

 レイジに手を差し出し、満面の笑顔を向けてくる那由他。

「――パートナーね……。でも背中を預ける相手の正体がわからないのは、どうかと思うんだが?」
「そのことならご安心を! わたしは決して裏切りません! もしレイジが信じられなくても、わたしだけはずっとあなたのことを信じ続けます! たとえレイジがどんな結末を選んだとしても、どこまでもついて行って、そばにいてあげますよ!」

 那由他はむねにそっと手を当て、陽だまりのような笑顔で自身の想いを告白してくれる。そこにはいつものふざけた感じはなく、慈愛にあふれていた。
 その言葉がなにをさしているのか理解できなかったが、レイジのことを想ってくれていることだけは確かなので思わず頭をかきながらテレてしまう。

「な、なにを言いたいのかよくわからないんだが……」
「あはは! いづれわかりますよ! 那由他ちゃんの魅力にメロメロになって、わたしぬきでは生きられなくなるんですからね!」

 那由他はかわいらしくウィンクして、自信満々に宣言を。

「ははは、ありえない話だな」
「ふっふっふっ! そんな風に余裕ぶっていられるのも、今のうち! もうレイジの運命はわたしと結ばれることになると、決定されてるんです! そう、なんたってこの先、那由他ちゃんルート一直線なんですからねー!」
「なにが那由他ちゃんルートだ。そんな後々苦労しまくりそうなルート、誰が選ぶかよ。――だけどとりあえずこの件はいいか。悔しいが那由他のことはいろいろと信頼してるしな……」

 そう、不思議と那由他のことは心から信頼しているといっていいのだ。それは始めて出会ったあの時からずっと変わらず。柊那由他という少女には、久遠くおんレイジにとってなにか大切なつながりがあるような気がしてやまない。それは決して不快ではなく、心地よいなにかが。それはまるでレイジの戦友である、アリス・レイゼンベルトのように。

「おやおやー、いつも口では散々なことを言っておいて、本当は認めてくれてるんですかー? レイジは素直じゃありませんねー」

 ほおに指を当て、ニヤニヤしながら意地の悪い視線を向けてくる那由他。

「う、うるさいな! さっさと仕事してろ!」
「あはは! 話をそらそうとしても……。――おや、いいところなのに電話がきました。少しだけお待ちを。――どうかしましたか。ふむ、そういうことですか。わかりました。すぐそちらに向かうので、待っててください」

 どうやら那由他宛に着信がきたようだ。いつものようにテキパキと受け答えするところをみると、仕事の依頼らしい。

「仕事の依頼か?」
「はい、レーシスが軍に来てくれと」
「はぁ……、レーシスがらみってことはいつものだよな。あいつの依頼は毎回厄介なものばっかだから、正直気が重いよ……」

 アイギスには様々な依頼がくるが、その中でもある人物が持ってくる依頼は極めて大変なものばかりといっていい。おそらくまた政府や軍関係の厄介(やっかい)ごとを、アイギスに押し付けてくるつもりなのだろう。

「ほらほらー、文句言ってないでさっさと行きましょう! レイジ!」
「へいへい、じゃあ、あいつの顔をおがみにいくとしますか」

 こうしてレイジたちは事務所を後にし、指定された場所へと向かうのであった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...