94 / 96
3章 第1部 入学式前日
91話 上代カリン
しおりを挟む
陽が暮れ始めたころ。陣は灯里と別れてから、神代特区内の約四分の一を占める研究区と呼ばれる場所に来ていた。このエリアでは魔法工学、兵器開発、マナ関連などさまざまな分野の研究所がずらりと建ち並んでいる最先端技術都市。これらの研究事業は大財閥クロノスの主軸ゆえ、その規模、設備、人員の力の入れようはほかと比べてケタ違い。そのため研究者にとって、思う存分研究に励める夢のような場所だとか。
そして現在いるのは、とある研究所の地下にある極秘の研究施設。こここそ裏の研究機関ノルンの数ある研究所の一つ。おもに星詠みの研究がおこなわれる、物騒な場所であった。
ここに来たのは一度、サイファス・フォルトナーの星の力を見せてほしいと要請があったから。これに関してはノルンだけでなく、神代の悲願にも関係があると奈月の姉である神楽にも言われたため、来るはめになったという。
「ふー、今日はなかなかハードスケジュールだったな」
陣は先ほどまで様々な機材が立ち並ぶ計測室で、指示通りに創造の星を行使していたのだ。そして計測がおわり、少し休もうと待合室の椅子に腰掛けたところであった。
「――じん……」
「うん? カリン、どうしたんだ?」
声の方に振り向くと、そこには背が小さい白衣を着た女の子の姿が。
彼女の名前は星海学園中等部二年、神代カリン。感情表現がとぼしく、常にボーっとした少女なのだが、彼女の持つ肩書きはすごい。なんとまだ子供でありながら、クロノスの裏の研究機関ノルンの代表を務めているのだ。神代内では表の研究機関代表の琴音との、二大神童として名をはせていた。
ちなみにカリンとはクロノスの暗部の仕事で顔を会わせることがあり、割と面識があった。
「疑似恒星、見せてほしい」
カリンは陣の隣に座ったかと思うと、有無も言わさない勢いでぐいぐい詰め寄ってくる。
「ほれ、これでいいか?」
「――おぉ、これがサイファス・フォルトナーの疑似恒星……。――すごい……」
差し出したサイファス・フォルトナーの疑似恒星を、まじまじと見つめるカリン。
いつものけだるそうな瞳が、心なしか輝いているように見える。どうやらよほど興奮しているらしい。
「輝き、輝き」
そして彼女は陣の腕を揺さぶりながら、疑似恒星を使えとのオーダーを。
「いや、さっき見せてやっただろ?」
「――むぅ……」
カリンはジト目で見つめてきた。
彼女は歳の割に小さい見た目で、しゃべり方も子供っぽい。そのためなんだか小さい子をいじめてるような気分が、湧き上がってきてしまう。
「あー、わかったから、そんな目で見つめるな。ほら、いくぞ」
罪悪感から、彼女の思うようにしてやることに。
まずは疑似恒星にマナをそそぎ、創造の星の輝きを出してやる。
「――おぉ、きれぇ……」
カリンはさっきよりも目を輝かせ、うっとりとした表情を。
もはやまばたきを忘れるほど、創造の疑似恒星に釘づけになっていた。
「――さあ、もういいだろ」
ある程度見せてやったため、創造の疑似恒星をポケットにしまう。
するとまだ全然たりないと、陣の腕を揺さぶりながら抗議してくるカリン。
「――むぅ、まだまだ見たい。シリウス当てに依頼するから、もっと見せてぇ」
「依頼か。金次第だが、とりあえずどれぐらい付き合えばいいんだ?」
「一日中」
「あほか、長すぎるわ」
あまりに無茶な要望ゆえ、カリンの頭に軽くチョップしツッコミを。
一、二時間程度なら、まだ考えなくもない。だというのに陣の予想をはるかに超える一日中とは。完全に即答レベルの却下であった。
「――うぅ……、痛いー」
カリンは被弾箇所をさすりながら、涙目に。
「――むぅ、じゃあ、拉致るぅ。そしてじんをかりんのモノにするぅ」
そして不服そうに、怖いことを口にしてくるカリン。
普通なら冗談としかいえない内容。しかし向こうは実際に、暴走した創星術師を拉致っている組織の親玉なのだ。しかもカリンは研究のためならなんでもやる性格ゆえ、マジで拉致ってきそうであった。
なのでお灸をすえるためにも、よくセナやリルにするお説教用のぐりぐり攻撃をお見舞いしてやる。
「ははは、馬鹿も休み休み言えよ」
「うぅ!? かりんがわるかったから、許してぇ……!?」
これはたまらないと、必死に謝ってくるカリン。
どうやら反省してくれたみたいなので、解放してやることに。
「――むぅ、あとでじんがいじめたって、りくと兄さんに言いつけてやるー」
「――で、どうだった? カリンの目からして、創造の輝きは?」
ぶつぶつと恨み言をつぶやいているカリンに、先ほどの感想をたずねてみる。
「うーん、複雑にからみあい過ぎて、細かいメカニズムまで解き明かせなさそぉ」
「へー、カリンの慧眼をもってしてもつかめないのか。琴音も無理だったし、さすがはサイファス・フォルトナーの星の輝きだな」
そう、実は少し前に表の研究機関代表の上代琴音にも、創造の星の輝きを見てもらっていた。だが結果はカリンと同じ、よくわからないのだそうだ。もしメカニズムを理解できたならリルの代わりに教えてもらい、楽ができたのだが。
「――むぅ、くやしぃ……」
カリンはよほど悔しかったのか、拳をにぎりしめながらプルプル震える。
「ははは、そうむくれるな。カリンと琴音のすごいのは、よくわかってるからさ。頭の良さはもちろん、研究部門の代表にまで押し上げた、そのマナの流れを見れる慧眼ときたら。もう世界のトップクラスを、軽くしのぐレベルの目なんだろ」
本来カリンや琴音の歳で研究機関の代表をやるのは、普通に考えて無理がある話だろう。ではなぜその役職に就けているのか。神童と呼ばれるほどの頭の良さもそうだが、一番の決め手は彼女たちの慧眼。なんとカリンたちは、マナの流れを常人よりも濃く見通すことができる得意体質なのだ。
この得意体質の強みは、マナをさらに細かい次元で見ることができる点。これによりマナを粒子レベルまで観測し、操作することが可能という。この技能はマナをさまざまな力に変換する魔法工学と、まさに相性抜群。普通の研究者だと機材を使って観測したり、いじったりしどうしても時間が掛かってしまう。しかしカリンたちなら一目見ただけで観測し、それらを手足のごとくいじっていけるのだ。もはや作業効率も成果のクオリティも段違い。ほかの研究者たちでは手も足もでないため、研究機関の代表に軽く上り詰めれたのであった。
ちなみにこういったマナの流れを見通す特異体質は、カリンたち以外にもごく少数だが存在する。しかしみなカリンや琴音ほどではなく、見る力もたかがしれていた。
「むふぅ、かりんたちさいきょー」
カリンは両手で小さくガッツポーズしながら、得意げに主張を。
「ははは、その意気だ、その意気だ」
「――あ、かりんがその疑似恒星の、調整技師になってあげようかぁ」
マナの流れを濃く見通すことができるということは、マナを使って生み出す星詠みもくわしく見れるらしいのだ。そのため彼らは創星術師や創星使いよりも、疑似恒星の調整やシステムの構築が得意。よってその技能を生かし、依頼主の疑似恒星をいじる調整技師になる者も多かった。そんな彼らはよく断罪者の家系の専属としてついたり、星魔教に雇われいろいろ見て回ったりなどしているらしい。この神代特区内でも、フリーで活動している者がちらほらいると聞いたことがあった。
「うーん、遠慮しとくわ。カリンだと、なんかいろんな意味で怖いからな。だから同じ力量を持つ、琴音に任せることにするよ」
カリンに任せると疑似恒星だけでなく、陣自身もいじられそうで怖かった。だから頼むなら、信頼できる琴音のほうにすべきだろう。奈月がらみの嫉妬という、不安要素が少しあるのだが。
「――むぅ、ことね、ずるいー」
すると陣の上着の袖をぎゅっとにぎりしめながら、ほおを膨らませてくるカリン。
「さてと、じゃあ、帰るとするか。――と、その前にカリン。神楽さんにはだまってたみたいだけど、ノルンの方でなにか進展があったんだってな」
立ち上がりながら、気になっていたことをたずねる。
聞いた話によると、ノルンの報告には偽装があったとか。次期当主候補の神代神楽が、神代陸斗に追求していたことを思い出す。
「あのばれたやつー? まあねぇ、かりんががんばって、かなり真にせまれたぁ。あとはデータをとって、調整しまくってくぅ」
「へー、そのことについて教えてくれたりとかは……」
「部外者には教えられないー。じんがりくとにいさん側に付くなら、話は別だけどぉ」
探り入れてみるが、見事に突き放されてしまった。
「ははは、だよなー。じゃあさ、神代の悲願についてとかは? あれ、実はまだ知らなくてさ」
実をいうと陣は、神代の悲願についてほとんど知らない。
奈月や神楽に聞いても、それは教えられないとかわされ続けているのだ。今の質問、聞かなかったことにしてあげるからと、脅しを込めた感じにだ。
「それもむりぃ。その件は神代の中でも上位にいる人間しか知らない極秘事情。外部に漏らさないように、さだめられてるからぁ」
「なるほどな。通りでいくら聞いても、はぐらかされるわけだ」
そういう事情があるならしかたないだろう。神代家がなにをやろうとしているのかは気になるが、この様子じゃ近づきすぎると消されかねない。
「まあ、見ててぇ。悲願に関しては、必ずかりんが実現に近づけてみせるからぁ」
カリンは手をぐっとにぎり、メラメラと静かに闘志を燃やす
「ははは、それは頼もしいな。とはいってもがんばるのもほどほどにな。聞けば研究所にずっとこもってて、しかもろくに寝てないんだってな。そんなんじゃ、大きくなれないぞ?」
カリンの頭にぽんぽん手を置きながら、言い聞かす。
彼女は一応星海学園中等部に在籍しているが、ほとんど登校してないとのこと。いつも研究所にこもって、研究に明け暮れてるとか。めったに外に出ないそうだ。ちなみに学園の欠席の問題は、テストや成績、あと上代の権力でモノをいわせているそうだ。
「まぁ、ぜんしょするー」
「じゃあ、今度こそ、おいとまさせてもらおうか」
話も済んだことで、そろそろノルンの研究所から出ることに。
実はこのあと神楽とも、会う約束をしているのだ。
「じん、またサイファス・フォルトナーの疑似恒星、見せてねぇ」
「ははは、気が向いたらな」
カリンに見送られながら、陣は待合室を去るのであった。
そして現在いるのは、とある研究所の地下にある極秘の研究施設。こここそ裏の研究機関ノルンの数ある研究所の一つ。おもに星詠みの研究がおこなわれる、物騒な場所であった。
ここに来たのは一度、サイファス・フォルトナーの星の力を見せてほしいと要請があったから。これに関してはノルンだけでなく、神代の悲願にも関係があると奈月の姉である神楽にも言われたため、来るはめになったという。
「ふー、今日はなかなかハードスケジュールだったな」
陣は先ほどまで様々な機材が立ち並ぶ計測室で、指示通りに創造の星を行使していたのだ。そして計測がおわり、少し休もうと待合室の椅子に腰掛けたところであった。
「――じん……」
「うん? カリン、どうしたんだ?」
声の方に振り向くと、そこには背が小さい白衣を着た女の子の姿が。
彼女の名前は星海学園中等部二年、神代カリン。感情表現がとぼしく、常にボーっとした少女なのだが、彼女の持つ肩書きはすごい。なんとまだ子供でありながら、クロノスの裏の研究機関ノルンの代表を務めているのだ。神代内では表の研究機関代表の琴音との、二大神童として名をはせていた。
ちなみにカリンとはクロノスの暗部の仕事で顔を会わせることがあり、割と面識があった。
「疑似恒星、見せてほしい」
カリンは陣の隣に座ったかと思うと、有無も言わさない勢いでぐいぐい詰め寄ってくる。
「ほれ、これでいいか?」
「――おぉ、これがサイファス・フォルトナーの疑似恒星……。――すごい……」
差し出したサイファス・フォルトナーの疑似恒星を、まじまじと見つめるカリン。
いつものけだるそうな瞳が、心なしか輝いているように見える。どうやらよほど興奮しているらしい。
「輝き、輝き」
そして彼女は陣の腕を揺さぶりながら、疑似恒星を使えとのオーダーを。
「いや、さっき見せてやっただろ?」
「――むぅ……」
カリンはジト目で見つめてきた。
彼女は歳の割に小さい見た目で、しゃべり方も子供っぽい。そのためなんだか小さい子をいじめてるような気分が、湧き上がってきてしまう。
「あー、わかったから、そんな目で見つめるな。ほら、いくぞ」
罪悪感から、彼女の思うようにしてやることに。
まずは疑似恒星にマナをそそぎ、創造の星の輝きを出してやる。
「――おぉ、きれぇ……」
カリンはさっきよりも目を輝かせ、うっとりとした表情を。
もはやまばたきを忘れるほど、創造の疑似恒星に釘づけになっていた。
「――さあ、もういいだろ」
ある程度見せてやったため、創造の疑似恒星をポケットにしまう。
するとまだ全然たりないと、陣の腕を揺さぶりながら抗議してくるカリン。
「――むぅ、まだまだ見たい。シリウス当てに依頼するから、もっと見せてぇ」
「依頼か。金次第だが、とりあえずどれぐらい付き合えばいいんだ?」
「一日中」
「あほか、長すぎるわ」
あまりに無茶な要望ゆえ、カリンの頭に軽くチョップしツッコミを。
一、二時間程度なら、まだ考えなくもない。だというのに陣の予想をはるかに超える一日中とは。完全に即答レベルの却下であった。
「――うぅ……、痛いー」
カリンは被弾箇所をさすりながら、涙目に。
「――むぅ、じゃあ、拉致るぅ。そしてじんをかりんのモノにするぅ」
そして不服そうに、怖いことを口にしてくるカリン。
普通なら冗談としかいえない内容。しかし向こうは実際に、暴走した創星術師を拉致っている組織の親玉なのだ。しかもカリンは研究のためならなんでもやる性格ゆえ、マジで拉致ってきそうであった。
なのでお灸をすえるためにも、よくセナやリルにするお説教用のぐりぐり攻撃をお見舞いしてやる。
「ははは、馬鹿も休み休み言えよ」
「うぅ!? かりんがわるかったから、許してぇ……!?」
これはたまらないと、必死に謝ってくるカリン。
どうやら反省してくれたみたいなので、解放してやることに。
「――むぅ、あとでじんがいじめたって、りくと兄さんに言いつけてやるー」
「――で、どうだった? カリンの目からして、創造の輝きは?」
ぶつぶつと恨み言をつぶやいているカリンに、先ほどの感想をたずねてみる。
「うーん、複雑にからみあい過ぎて、細かいメカニズムまで解き明かせなさそぉ」
「へー、カリンの慧眼をもってしてもつかめないのか。琴音も無理だったし、さすがはサイファス・フォルトナーの星の輝きだな」
そう、実は少し前に表の研究機関代表の上代琴音にも、創造の星の輝きを見てもらっていた。だが結果はカリンと同じ、よくわからないのだそうだ。もしメカニズムを理解できたならリルの代わりに教えてもらい、楽ができたのだが。
「――むぅ、くやしぃ……」
カリンはよほど悔しかったのか、拳をにぎりしめながらプルプル震える。
「ははは、そうむくれるな。カリンと琴音のすごいのは、よくわかってるからさ。頭の良さはもちろん、研究部門の代表にまで押し上げた、そのマナの流れを見れる慧眼ときたら。もう世界のトップクラスを、軽くしのぐレベルの目なんだろ」
本来カリンや琴音の歳で研究機関の代表をやるのは、普通に考えて無理がある話だろう。ではなぜその役職に就けているのか。神童と呼ばれるほどの頭の良さもそうだが、一番の決め手は彼女たちの慧眼。なんとカリンたちは、マナの流れを常人よりも濃く見通すことができる得意体質なのだ。
この得意体質の強みは、マナをさらに細かい次元で見ることができる点。これによりマナを粒子レベルまで観測し、操作することが可能という。この技能はマナをさまざまな力に変換する魔法工学と、まさに相性抜群。普通の研究者だと機材を使って観測したり、いじったりしどうしても時間が掛かってしまう。しかしカリンたちなら一目見ただけで観測し、それらを手足のごとくいじっていけるのだ。もはや作業効率も成果のクオリティも段違い。ほかの研究者たちでは手も足もでないため、研究機関の代表に軽く上り詰めれたのであった。
ちなみにこういったマナの流れを見通す特異体質は、カリンたち以外にもごく少数だが存在する。しかしみなカリンや琴音ほどではなく、見る力もたかがしれていた。
「むふぅ、かりんたちさいきょー」
カリンは両手で小さくガッツポーズしながら、得意げに主張を。
「ははは、その意気だ、その意気だ」
「――あ、かりんがその疑似恒星の、調整技師になってあげようかぁ」
マナの流れを濃く見通すことができるということは、マナを使って生み出す星詠みもくわしく見れるらしいのだ。そのため彼らは創星術師や創星使いよりも、疑似恒星の調整やシステムの構築が得意。よってその技能を生かし、依頼主の疑似恒星をいじる調整技師になる者も多かった。そんな彼らはよく断罪者の家系の専属としてついたり、星魔教に雇われいろいろ見て回ったりなどしているらしい。この神代特区内でも、フリーで活動している者がちらほらいると聞いたことがあった。
「うーん、遠慮しとくわ。カリンだと、なんかいろんな意味で怖いからな。だから同じ力量を持つ、琴音に任せることにするよ」
カリンに任せると疑似恒星だけでなく、陣自身もいじられそうで怖かった。だから頼むなら、信頼できる琴音のほうにすべきだろう。奈月がらみの嫉妬という、不安要素が少しあるのだが。
「――むぅ、ことね、ずるいー」
すると陣の上着の袖をぎゅっとにぎりしめながら、ほおを膨らませてくるカリン。
「さてと、じゃあ、帰るとするか。――と、その前にカリン。神楽さんにはだまってたみたいだけど、ノルンの方でなにか進展があったんだってな」
立ち上がりながら、気になっていたことをたずねる。
聞いた話によると、ノルンの報告には偽装があったとか。次期当主候補の神代神楽が、神代陸斗に追求していたことを思い出す。
「あのばれたやつー? まあねぇ、かりんががんばって、かなり真にせまれたぁ。あとはデータをとって、調整しまくってくぅ」
「へー、そのことについて教えてくれたりとかは……」
「部外者には教えられないー。じんがりくとにいさん側に付くなら、話は別だけどぉ」
探り入れてみるが、見事に突き放されてしまった。
「ははは、だよなー。じゃあさ、神代の悲願についてとかは? あれ、実はまだ知らなくてさ」
実をいうと陣は、神代の悲願についてほとんど知らない。
奈月や神楽に聞いても、それは教えられないとかわされ続けているのだ。今の質問、聞かなかったことにしてあげるからと、脅しを込めた感じにだ。
「それもむりぃ。その件は神代の中でも上位にいる人間しか知らない極秘事情。外部に漏らさないように、さだめられてるからぁ」
「なるほどな。通りでいくら聞いても、はぐらかされるわけだ」
そういう事情があるならしかたないだろう。神代家がなにをやろうとしているのかは気になるが、この様子じゃ近づきすぎると消されかねない。
「まあ、見ててぇ。悲願に関しては、必ずかりんが実現に近づけてみせるからぁ」
カリンは手をぐっとにぎり、メラメラと静かに闘志を燃やす
「ははは、それは頼もしいな。とはいってもがんばるのもほどほどにな。聞けば研究所にずっとこもってて、しかもろくに寝てないんだってな。そんなんじゃ、大きくなれないぞ?」
カリンの頭にぽんぽん手を置きながら、言い聞かす。
彼女は一応星海学園中等部に在籍しているが、ほとんど登校してないとのこと。いつも研究所にこもって、研究に明け暮れてるとか。めったに外に出ないそうだ。ちなみに学園の欠席の問題は、テストや成績、あと上代の権力でモノをいわせているそうだ。
「まぁ、ぜんしょするー」
「じゃあ、今度こそ、おいとまさせてもらおうか」
話も済んだことで、そろそろノルンの研究所から出ることに。
実はこのあと神楽とも、会う約束をしているのだ。
「じん、またサイファス・フォルトナーの疑似恒星、見せてねぇ」
「ははは、気が向いたらな」
カリンに見送られながら、陣は待合室を去るのであった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
28
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる