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2章 第2部 陽だまりへの誘い
64話 手掛かり
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陣は灯里と別れ、少し前にルシアやカーティス神父と会った教会へ。
中は相変わらず色とりどりのステンドグラスや神秘的な内装により、神々しい。礼拝スペースには多くの信者たちが祈りをささげており、厳粛な雰囲気が漂っていた。そんな中陣は礼拝スペースを抜け、奥にある執務室の方へと向かう。
「陣さん、よく来てくれました」
中に入るとカーティス神父が出迎えてくれた。
「カーティス神父、進展があったというのは本当ですか?」
「はい、それと陣さんが追っている、創星術師の情報も手に入れておきましたよ」
「本当ですか、助かります」
「ではまず情報の方から。サイファス・フォルトナーの擬似恒星を持つ青年の名前は、アンドレー・ローラント。レーヴェンガルト側に身を置く創星術師です」
さっそくカーティスは、陣たちが追っている創星術師の情報を提供してくれる。
「――アンドレー・ローラント……」
「実は彼、星魔教のトップである大司教に目を付けられていた魔道の求道者で、そのツテによりサイファス・フォルトナーの擬似恒星と出会ったとか。それから創星使いとなり、星魔教の手伝いをしながらウデを上げて創星術師に。そして大司教の推薦で、レーヴェンガルトの戦力に加わったらしいですね」
星魔教のサポートを受けている創星術師の中には、その恩を返すため彼らの戦力として手助けする者も多いのだ。そのため別の創星術師の護衛や逃走の手伝いなど、星魔教のエージェントのような働きをすることもめずらしくない。それにこれは恩を返すだけでなく、荒事でみずからの星の輝きを上げる事にもつながる。よって魔道の求道にもうってつけであり、けっこう流行っているといってよかった。
「ただ少し前から消息を絶っていて、レーヴェンガルト側も探していたそうです」
「消息を絶っていたということは、今アンドレーは独自に動いてるということですか?」
「はい、どうやらそのようで。聞いた話によると、大司教はアンドレーが暴れたことを聞いて、取り乱していたとか。おそらく彼がレイヴァース当主を狙っていることは、レーヴェンガルト側にとっても予想外だったのでしょう」
これは陣たちにとって朗報かもしれない。アンドレーが独自に動いているなら、現在彼をサポートするレーヴェンガルト側の人間がいないことに。なのでうまくいけば妨害もなく、アンドレーとサシで戦えるはずだ。
「さて、ここからが進展についてです。実は今から少し前に大司教みずからが、ロストポイントである神代特区旧市街地に向かったそうです。しかも護衛もつけないまま、秘密裏にね」
この神代特区にはロストポイントが二つある。一つはパラダイスロストの中心地となる、福音島。そしてもう一つはかつて創星術師が暴走し、多くの爪あとを残した旧市街だ。
「大司教みずから?」
「怪しいと思いませんか? このタイミングでそのような場所に行くなんて。実際大司教とアンドレーとは、深いつながりがあります。なのでアンドレーのいる場所に心当たりがあるのか、それとも連絡が取れたのか。追ってみる価値はあると思うんですよ」
カーティスは不敵に笑いながら、自身の考えを口に。
「確かに有力な手掛かりですね。すぐに向かってみます」
「すでにロストポイントの入り口付近に、ルシアさんを待機させています。彼女なら旧市街にある星魔教関連の隠し施設にくわしいので、役に立つはず」
「わかりました」
さすがはカーティス。すでに案内人を用意し、旧市街地を調べる手はずを整えてくれているとは。
「それと陣さん、突然でわるいのですが、一つ星魔教側から依頼させてもらえないでしょうか?」
有力な手掛かりが得れたのでさっそく向かおうとすると、カーティスが呼び止めてきた。
「このタイミングで依頼ですか?」
「はい、なにやらアンドレーはレイヴァース当主を狙っている様子。なので陣さんには、それを阻止していただきたい。もしここでレイヴァース当主になにかあれば、星葬機構側がだまっているはずがない。最悪の形で全面戦争が起こり、星魔教もタダでは済まないでしょう。なのでこちらとしては、アンドレーの思い通りにさせるわけにはいかないのです」
クレハは星葬機構のトップ。そんな彼女がやられ、しかもその相手が宿敵であるレーヴェンガルト側となれば、もはや一大事どころではない。星葬機構は報復のため全勢力を率いて、殲滅に向かうのは明白。となればレーヴェンガルトと間接的つながりがある星魔教も、巻き込まれてしまう恐れが。最悪の場合、レーヴェンガルト側の戦力として矢面に立たされる場合も。ゆえに星魔教側からしてみれば、アンドレーをなんとしてでも止めなければならないのだ。
「なるほど。その依頼、引き受けさせてもらいますよ。アンドレーを倒すのがオレの目的ですから、ちょうどいい」
「ありがとうございます。こちらもルシアさんを通して、バックアップさせてもらいますので。では、ご武運を」
そしてカーティスに見送られ、陣は旧市街へと向かうのであった。
中は相変わらず色とりどりのステンドグラスや神秘的な内装により、神々しい。礼拝スペースには多くの信者たちが祈りをささげており、厳粛な雰囲気が漂っていた。そんな中陣は礼拝スペースを抜け、奥にある執務室の方へと向かう。
「陣さん、よく来てくれました」
中に入るとカーティス神父が出迎えてくれた。
「カーティス神父、進展があったというのは本当ですか?」
「はい、それと陣さんが追っている、創星術師の情報も手に入れておきましたよ」
「本当ですか、助かります」
「ではまず情報の方から。サイファス・フォルトナーの擬似恒星を持つ青年の名前は、アンドレー・ローラント。レーヴェンガルト側に身を置く創星術師です」
さっそくカーティスは、陣たちが追っている創星術師の情報を提供してくれる。
「――アンドレー・ローラント……」
「実は彼、星魔教のトップである大司教に目を付けられていた魔道の求道者で、そのツテによりサイファス・フォルトナーの擬似恒星と出会ったとか。それから創星使いとなり、星魔教の手伝いをしながらウデを上げて創星術師に。そして大司教の推薦で、レーヴェンガルトの戦力に加わったらしいですね」
星魔教のサポートを受けている創星術師の中には、その恩を返すため彼らの戦力として手助けする者も多いのだ。そのため別の創星術師の護衛や逃走の手伝いなど、星魔教のエージェントのような働きをすることもめずらしくない。それにこれは恩を返すだけでなく、荒事でみずからの星の輝きを上げる事にもつながる。よって魔道の求道にもうってつけであり、けっこう流行っているといってよかった。
「ただ少し前から消息を絶っていて、レーヴェンガルト側も探していたそうです」
「消息を絶っていたということは、今アンドレーは独自に動いてるということですか?」
「はい、どうやらそのようで。聞いた話によると、大司教はアンドレーが暴れたことを聞いて、取り乱していたとか。おそらく彼がレイヴァース当主を狙っていることは、レーヴェンガルト側にとっても予想外だったのでしょう」
これは陣たちにとって朗報かもしれない。アンドレーが独自に動いているなら、現在彼をサポートするレーヴェンガルト側の人間がいないことに。なのでうまくいけば妨害もなく、アンドレーとサシで戦えるはずだ。
「さて、ここからが進展についてです。実は今から少し前に大司教みずからが、ロストポイントである神代特区旧市街地に向かったそうです。しかも護衛もつけないまま、秘密裏にね」
この神代特区にはロストポイントが二つある。一つはパラダイスロストの中心地となる、福音島。そしてもう一つはかつて創星術師が暴走し、多くの爪あとを残した旧市街だ。
「大司教みずから?」
「怪しいと思いませんか? このタイミングでそのような場所に行くなんて。実際大司教とアンドレーとは、深いつながりがあります。なのでアンドレーのいる場所に心当たりがあるのか、それとも連絡が取れたのか。追ってみる価値はあると思うんですよ」
カーティスは不敵に笑いながら、自身の考えを口に。
「確かに有力な手掛かりですね。すぐに向かってみます」
「すでにロストポイントの入り口付近に、ルシアさんを待機させています。彼女なら旧市街にある星魔教関連の隠し施設にくわしいので、役に立つはず」
「わかりました」
さすがはカーティス。すでに案内人を用意し、旧市街地を調べる手はずを整えてくれているとは。
「それと陣さん、突然でわるいのですが、一つ星魔教側から依頼させてもらえないでしょうか?」
有力な手掛かりが得れたのでさっそく向かおうとすると、カーティスが呼び止めてきた。
「このタイミングで依頼ですか?」
「はい、なにやらアンドレーはレイヴァース当主を狙っている様子。なので陣さんには、それを阻止していただきたい。もしここでレイヴァース当主になにかあれば、星葬機構側がだまっているはずがない。最悪の形で全面戦争が起こり、星魔教もタダでは済まないでしょう。なのでこちらとしては、アンドレーの思い通りにさせるわけにはいかないのです」
クレハは星葬機構のトップ。そんな彼女がやられ、しかもその相手が宿敵であるレーヴェンガルト側となれば、もはや一大事どころではない。星葬機構は報復のため全勢力を率いて、殲滅に向かうのは明白。となればレーヴェンガルトと間接的つながりがある星魔教も、巻き込まれてしまう恐れが。最悪の場合、レーヴェンガルト側の戦力として矢面に立たされる場合も。ゆえに星魔教側からしてみれば、アンドレーをなんとしてでも止めなければならないのだ。
「なるほど。その依頼、引き受けさせてもらいますよ。アンドレーを倒すのがオレの目的ですから、ちょうどいい」
「ありがとうございます。こちらもルシアさんを通して、バックアップさせてもらいますので。では、ご武運を」
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