創星のレクイエム

有永 ナギサ

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1章 第3部 運命の出会い

40話 灯里の謎

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「でだ、灯里。一向に進展がないままだが、なにか弁解の余地はあるか?」

 調査を再開してしばらくしたあと、陣はとうとう灯里を問い詰めることに。
 というのもさっきから街中を歩き回っては少し止まり、そしてまた別の場所への繰り返し。今のところ成果は全くないみたいなので、そろそろ付き合うのも限界であった。

「えー、そんなこと私に言われても困るよー。そういうのは責任者に文句を言ってもらわないとー」

 すると灯里は肩をすくめながら、唇をとがらせる。

「責任者だと? というかいい加減、灯里の知ってること全部話せ。今のとこやばいことが起こる以外、説明してもらってないんだが?」

 今だ灯里にくわしい説明をしてもらっていないのだ。もしリルにこの件の全容を聞いていなければ、もっと早くに投げ出していたことだろう。
 これで彼女から有益な情報がなければ、もう一人で調べに行こうという心持ちであった。

「あー、それ、めんどくさいー。私難しい話は苦手だからねー、あはは」

 だるそうに断りながら、ケラケラと笑ってくる灯里。
 さすがにこうなってくると、堪忍袋かんにんぶくろが切れそうになるのも仕方のないことだろう。陣自身サイファス・フォルトナーの擬似恒星については非常に興味があり、あわよくば手に入れたいとさえ思っているほど。なので星葬機構や星魔教側に回収される前に、ありかを突き止めなければ。そのためにもあまり時間を無駄にしたくはないのであった。 

「はっはっは、しまいに切れるぞ? 親友よ?」
「ふぁっ!? 陣くんがお怒りに!? ええい、こうなったら……、聞こえてるでしょ! SOS! 早く灯里さんを助けに来てよー!」

 灯里は両腕を上げながら、大声で助けを求めだす。

「おい、なにいきなり助けを呼んで……」
「アカリ、なにかな?」

 いきなりの救援要請に呆れていると、ふと後方から別の少女の声が。
 問題はその声に聞き覚えがあるということ。なぜならついさっきまで、話ていたのだから。

「え?」
「なにかな、じゃない! このままだと陣くんの私への信頼が、右肩下がりになっちゃうよー! 全部リルがわるいんだから、誤解を解いてー!」

 灯里は陣の真横を通り過ぎ、現れた声の主の方へと泣きつきにいく。

「えー、わたしも気配を追って、がんばってるんだよー。文句なら、なかなか足をつかませてくれない、例の創星術師に言ってほしいなー」

 後ろを振り返ると、そこにはなんとリルの姿が。
 彼女は灯里に両肩を揺さぶられており、仲がよさそうに話していたのだ。

「ちょっと待て!? なんでリルがここに!? というかさっきからのパターンだと、オレ以外に姿を見せないんじゃなかったのか?」
「ふふっ、ジンくん。さすがにそれは自意識過剰だと思うなー。まあ、それほどわたしのことを想ってくれてたということだから、わるい気はしないけどねー」

 リルはほおにぽんぽん指を当てながら、ニヤニヤと笑いかけてくる。そしてまんざらでもなさそうに、ほほえんだ。

「イラ、これでもくらえ!」

 その反応が気に食わないため、陣は彼女の頭に軽くチョップを。
 するとリルは頭を両手で押さえ、涙目になりながらうったえてくる。

「いたい!? またもや理不尽な暴力が襲ったんだよ!?」
「いや、むかついたから、ついな」
「あれ、陣くん。リルのこと、知ってるの?」

 リルとのやり取りを見て、灯里がほおに指を当て小首をかしげてくる。

「ああ、何度か会って話したことがあってな」
「ちょっとリル! もしや私に隠れて、陣くんを口説いてたのー!?」

 灯里はリルの両肩を揺さぶり、文句を。

「ふふっ、そうだよー。そのかいあって、ジンくんはもうわたしにメロメロ。ストカー行為するほど、夢中なんだよねー」

 リルは両腰に手を当てて胸を張り、調子のいいことを口に。

「――なん……、だと……。まさか私の知らないところで、陣くんがとられていただなんて……。この泥棒猫!」
「ふふーん、これが大人のお姉さんの、魅力ってやつかなー。アカリみたいなお子様には、まだまだ早い世界だねー」

 なにやら芝居しばいがかったように大げさな反応を示す灯里に、リルは胸に手を当て得意げにお姉さんぶった。
 その姿は小さな子供が背伸びする感じであり、ほかの人間が見ればほほえましく思えてしまうだろう。だが好き放題言われている陣だと話は別。調子に乗っているリルに、おきゅうをすえたくてたまらない。

「ははは、少しだまろうなー、リル」
「い、いたいよー、ジンくーん!?」

 よってリルに、よくセナを攻撃するときに使う奥義を食らわせた。彼女の頭に、陣の両手のこぶしを押し付けぐりぐりとだ。

「それと灯里。お前もなに変なリアクションを取ってるんだ?」
「あはは、ノリだよ! ノリ! ちょっと修羅場の空気を味わってみようかなーと!」

 灯里は頭の後ろに手をやり、かわいらしく舌をだす。

「ジンくん、そろそろ止めてくれないと、頭が割れちゃうんだよー……」
「――あ、忘れてた。ほら、これにりたら、少しは自嘲しろよ。ふぅ、おかげで対セナ用の秘密兵器が火を吹いちまったぜ」
「もー、女の子に手をあげるのは、いただけないんだよー」

 解放されたリルは、またもや涙目になりながら抗議を。

「調子に乗ったリルがわるいだろうが。それはそうと、お前らの関係を教えろ」

 だが陣はそんな彼女を放っておいて、話を進めた。
 明らかにやばい存在のリルと、見るからにふつうの一般人の灯里。そんな二人にいったいどんなつながりがあるのだろうか。

「わたしたちの関係? 灯里の保護者、けんお姉さんのリルだよ!」
「あはは、陣くん、妹分のリルがお世話になってごめんねー!」

 リルは胸に手を当て、得意げにウィンクして紹介を。
 灯里は世話の焼ける妹と、リルの頭に手を置きながら紹介を。

「アカリ! いつも言ってるけど、わたしの方が年上! お姉さんなんだよ!」
「あー、ハイハイ、わかってるってばー。リルはお姉さん、お姉さん、よしよーし、いい子だねー」

 ぴょんぴょん飛び跳ね抗議するリルに対し、灯里は彼女の髪をくしゃくしゃなでながらあやそうと。

「なんか子供扱い、されまくってないかな!?」

 そのわいわいやっている光景は、まるで仲のいい姉妹そのもの。実にほほえましく感じてしまう。

「おい、コントはいいからさっさと本当のことをだな」
「まあ、まあ、細かいことは気になさんなー! ここで大事なのは、リルならこの件の黒幕の居場所をつかめるということ。でも近づかないと感知できないらしいから、こうやってしらみつぶしに歩き回ってるの」
「うん、もう暴走の一歩手前に来てるみたいだから、早くなんとかしないといけないんだよね。そういうことでジンくんも、引き続き手伝って欲しいんだよ」
「これって話を逸らされてるよな」

 二人は急に真面目な話をしだし、調査の続行をうながしてくる。
 どうやらくわしいことは教えてくれないらしい。

「あはは、陣くん、女の子の秘密を知ろうとするのは、デリカシ―なさすぎだぞー?」

 その証拠に灯里は口元に指を当てウィンクしながら、かわいらしく釘を刺してきた。

「――はぁ……、わかったよ。大人しく灯里たちについて行くさ」

 そこまで言われてしまうと、非常に言及しづらくなる。よって口惜しいがあきらめることに。こうして陣は、彼女たちにもうしばらく付き合うことになったのであった。
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