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序章 神代の依頼
10話 陣vs暴走した創星術師
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「さあ、僕の星よ! 吠えろ! はぁぁぁぁー!」
少年は星詠みによって生み出した炎を圧縮。巨大な炎球を生成し、陣目掛けて放つ。
すべてを飲み込む業火の塊は、その余波で地面を抉えぐりながら標的へ。その威力はこれまでの炎と、比べ物にならないといっていい。自身の滅びをさとったためどうせ散るならと、暴走の深度を上げたようだ。もはやなりふりかまわず、自身の星に命をくべているのがわかる。
実際彼の星詠みはかなり未熟だが、暴走状態によりその出力は格段に上がっていた。なので下手すると威力だけは、普通の創星術師よりも上かもしれなかった。
「ヒュー、やるー。暴走のおかげで威力だけなら、断罪者レベルかもしれないぞ」
だがそんな炎球に陣はひるまず、よゆうの表情で賞賛を。
「そうくるなら、こっちもマジでやらないとな!」
次の瞬間陣はあろうことか、せまりくる業火の炎に突っこんだ。
触れれば消し炭にされるかもしれないのにも関わらず、全速力で駆けていく。そして陣は魔法を発動するため、マナをねった。
「炎よ、焼き尽くせ」
陣が右手を前へ振りかざすと炎の奔流が生まれ、せまりくる炎球に立ちふさがった。
炎球と炎の奔流が互いを焼き尽くそうと衝突。しかし結果はさっきと同じ。星詠みの業火によって、魔法の炎が次々と飲み込まれてしまう。
「ふっ、無駄です! そんな薄い炎で僕の炎は打ち勝てませんよ!」
「だろうな。でもこっちの手はまだ終わってないぜ。風よ、荒れ狂え」
陣はすぐさま左手を前に突き出し、再び魔法を発動。今度は大気を圧縮して生み出した暴風を放つ。もはやコンクリートの壁など軽く砕くほどの衝撃波が、幾度となく舞い狂う。結果、炎と風の重撃が炎球の勢いを少しばかり遅らせた。
だが結局のところ遅らせただけ。魔法では星詠みに勝てず塗り潰されるだけなので、すぐに飲み込まれ陣にその猛威を振るってくるだろう。
「少し遅らせれば十分。よっと」
続けざまに足にマナをため、一気に爆発させる。すると一時的だが驚異的な跳躍力を獲得。陣は炎球を飛び越し、回避しきってみせた。
実はマナを自身の身体にまとうことで、こういった芸当ができるのだ。これを身体強化の魔法といい、速度や跳躍力、物理攻撃の威力を上げたりなど普通の人間ではありえない動きが可能なのであった。
「さあ、氷よ、射ぬけ!」
そのまま上空から氷による巨大な氷柱を六本展開。合図とともに少年へと撃ち込んだ。
人の背丈ほどの氷の杭は、標的を串刺しにするといわんばかりに降り注ぐ。
「この程度、僕の炎で!」
しかし少年の炎の壁に阻まれ、先程同様飲み込まれてしまう。
「ははは、なかなかの反応だな。じゃあ、そろそろ仕舞にしようか! 水よ、飲み込め」
着地した瞬間、続けざまに水流を発生させそのまま少年へ繰り出す。
もはや小規模の津波といっていい水の暴力が、彼を飲み込もうとうなりを上げた。
「――はぁ……、なにをするかと思えば……。炎を水で消せるとでも思ったのですか!」
本来なら炎は水に飲み込まれ潰えていただろう。だが相手は星詠みによって生み出された炎。魔法とは位階が違う上位の力ゆえ、自然の法則など通じない。多少は炎の勢いを弱められたかもしれないが、またたく間に蒸発。周りに蒸気をばらまくだけでおわってしまう。
「なかなかの曲芸の数々でしたが、もううんざりしてきました。この一撃で終わりにしてあげましょう!」
「いや、もうチェックメイトだよ、暴走した創星術師くん」
大技を繰り出そうと力をため始める少年に、勝利宣言を告げてやる。
「え?」
そして陣は彼の背後から、手刀を叩き込んだ。
すると少年はあっけなく倒れていく。
「星詠みは確かに強力だが、扱うのは生身の人間。なら話は簡単だ。こうやって物理で殴ればいいだけの話、だろ?」
「――なるほど……。蒸気を発生させ姿を隠し、一気に接近を……。――うぅ……」
少年はうつ伏せに倒れながらも、最後に納得しそのまま気絶したようだ。
彼の言う通りあの水流の攻撃は、蒸発によって生まれた蒸気の目くらましが狙い。あれで視覚による捕捉をはずし、その隙に接近する作戦だ。移動はさっきの跳躍のように、身体強化の魔法で一気に間合いを詰めてである。
「気絶したか。よし! これであとは連れて帰るだけだな」
そして陣は特に疲れた素振りも見せず、悠々と少年を確保するのであった。
少年は星詠みによって生み出した炎を圧縮。巨大な炎球を生成し、陣目掛けて放つ。
すべてを飲み込む業火の塊は、その余波で地面を抉えぐりながら標的へ。その威力はこれまでの炎と、比べ物にならないといっていい。自身の滅びをさとったためどうせ散るならと、暴走の深度を上げたようだ。もはやなりふりかまわず、自身の星に命をくべているのがわかる。
実際彼の星詠みはかなり未熟だが、暴走状態によりその出力は格段に上がっていた。なので下手すると威力だけは、普通の創星術師よりも上かもしれなかった。
「ヒュー、やるー。暴走のおかげで威力だけなら、断罪者レベルかもしれないぞ」
だがそんな炎球に陣はひるまず、よゆうの表情で賞賛を。
「そうくるなら、こっちもマジでやらないとな!」
次の瞬間陣はあろうことか、せまりくる業火の炎に突っこんだ。
触れれば消し炭にされるかもしれないのにも関わらず、全速力で駆けていく。そして陣は魔法を発動するため、マナをねった。
「炎よ、焼き尽くせ」
陣が右手を前へ振りかざすと炎の奔流が生まれ、せまりくる炎球に立ちふさがった。
炎球と炎の奔流が互いを焼き尽くそうと衝突。しかし結果はさっきと同じ。星詠みの業火によって、魔法の炎が次々と飲み込まれてしまう。
「ふっ、無駄です! そんな薄い炎で僕の炎は打ち勝てませんよ!」
「だろうな。でもこっちの手はまだ終わってないぜ。風よ、荒れ狂え」
陣はすぐさま左手を前に突き出し、再び魔法を発動。今度は大気を圧縮して生み出した暴風を放つ。もはやコンクリートの壁など軽く砕くほどの衝撃波が、幾度となく舞い狂う。結果、炎と風の重撃が炎球の勢いを少しばかり遅らせた。
だが結局のところ遅らせただけ。魔法では星詠みに勝てず塗り潰されるだけなので、すぐに飲み込まれ陣にその猛威を振るってくるだろう。
「少し遅らせれば十分。よっと」
続けざまに足にマナをため、一気に爆発させる。すると一時的だが驚異的な跳躍力を獲得。陣は炎球を飛び越し、回避しきってみせた。
実はマナを自身の身体にまとうことで、こういった芸当ができるのだ。これを身体強化の魔法といい、速度や跳躍力、物理攻撃の威力を上げたりなど普通の人間ではありえない動きが可能なのであった。
「さあ、氷よ、射ぬけ!」
そのまま上空から氷による巨大な氷柱を六本展開。合図とともに少年へと撃ち込んだ。
人の背丈ほどの氷の杭は、標的を串刺しにするといわんばかりに降り注ぐ。
「この程度、僕の炎で!」
しかし少年の炎の壁に阻まれ、先程同様飲み込まれてしまう。
「ははは、なかなかの反応だな。じゃあ、そろそろ仕舞にしようか! 水よ、飲み込め」
着地した瞬間、続けざまに水流を発生させそのまま少年へ繰り出す。
もはや小規模の津波といっていい水の暴力が、彼を飲み込もうとうなりを上げた。
「――はぁ……、なにをするかと思えば……。炎を水で消せるとでも思ったのですか!」
本来なら炎は水に飲み込まれ潰えていただろう。だが相手は星詠みによって生み出された炎。魔法とは位階が違う上位の力ゆえ、自然の法則など通じない。多少は炎の勢いを弱められたかもしれないが、またたく間に蒸発。周りに蒸気をばらまくだけでおわってしまう。
「なかなかの曲芸の数々でしたが、もううんざりしてきました。この一撃で終わりにしてあげましょう!」
「いや、もうチェックメイトだよ、暴走した創星術師くん」
大技を繰り出そうと力をため始める少年に、勝利宣言を告げてやる。
「え?」
そして陣は彼の背後から、手刀を叩き込んだ。
すると少年はあっけなく倒れていく。
「星詠みは確かに強力だが、扱うのは生身の人間。なら話は簡単だ。こうやって物理で殴ればいいだけの話、だろ?」
「――なるほど……。蒸気を発生させ姿を隠し、一気に接近を……。――うぅ……」
少年はうつ伏せに倒れながらも、最後に納得しそのまま気絶したようだ。
彼の言う通りあの水流の攻撃は、蒸発によって生まれた蒸気の目くらましが狙い。あれで視覚による捕捉をはずし、その隙に接近する作戦だ。移動はさっきの跳躍のように、身体強化の魔法で一気に間合いを詰めてである。
「気絶したか。よし! これであとは連れて帰るだけだな」
そして陣は特に疲れた素振りも見せず、悠々と少年を確保するのであった。
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