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3章1部 アルスタリアでの日常
フローラとデート
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シンヤとフローラはあれから再びアルスタリアの街へと戻り、大通りへと着ていた。
相変わらず行きかう人々の数。店や露店の数。そして活気あふれるさまはすさまじく、ガヤガヤとにぎわっている。
「ここからどうするんだ?」
「観光もいいけど、今は店を回って買い物したいかも」
「いいんじゃないか。オレもまだそこまでゆっくり店を回れてないし、日に日に掘り出し物がいっぱいでてるのがこの街の特色らしいからな。そういうレアものを探すのもきっと楽しいはずだ」
交易都市のアルスタリアゆえ、多くの商人たちが集まっているのだ。そのため多くのお店が立ち並ぶだけじゃなく、旅商人たちが露店形式で商売をしているらしい。なので買い物するにはまさにもってこいの場所であり、その日しかお目にかかれない掘り出し物もたくさんあるのだとか。
「ええ! いきましょう!」
「そうだ。フローラにはいっぱい世話になったからな。感謝の気持ちを込めてなにかプレゼントさせてくれ」
フローラは様々なサポートをしてくれただけでなく、装備を買いそろえてくれたり、軍資金をくれたりしていたのだ。彼女がいなければきっと金がなさすぎて、今ごろ生きていくのだけで精一杯だったに違いない。その感謝も込めて、なにかフローラにしてあげたかったという。
「プレゼント?」
「冒険者の仕事で少しは稼げたからな。フローラがほしいものなんでもいってくれ」
「そんな、いいのに」
「まあまあ、感謝の気持ちってことで、ここはひとつ」
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいましょうか! 実は長旅も考慮して、装備を一新したの」
「そういえば騎士装備じゃなくなってるな」
前に会ったときは軽装の鎧を身にまとった騎士のような姿だった。だが今回は鎧は装備せず、動きやすい旅人に適した清楚な感じの服装をしていたという。
「旅をしやすいように身軽さを重視して、魔法剣士ふうの装備にしたの。どう? 似合ってるかしら?」
フローラはその場で一回転して、服を見せてくれる。
「ああ、清楚感あふれるかわいらしい感じですごくいいと思うぞ」
「フフフ、ありがとう♪」
髪をいじりながら、うれしそうにほほえむフローラ。
「ははは、なんだかフローラのにじみ出る気品も相まって、お忍びで外に出てきたお姫様って感じがするな」
「え? お姫様!? も、もしかして目立ってるかしら? 騎士装備は街中とかだと目立ちそうだったから、こっちにしたっていうのもあるんだけど……」
フローラは一瞬、お姫様という言葉に過剰に反応し、うろたえる。そして自分の服を見て、悩みだす。
「ははは、フローラはすごく美人だし、どんな服着てても目を引くから、そこらへんはあまり気にしても意味はないかもな」
「――あ、ありがとう……」
彼女はスカートの裾をぎゅっとにぎりしめながら、ほおを染めてうつむいてしまう。
それからおずおずとたずねてきた。
「ちなみにシンヤくんって私のこと、あれからなにか聞いたりしてるかしら?」
「いや、とくには。どうかしたのか?」
「それならいいの! なんでもないから気にしないでね!」
ぱっとうれしそうな表情をして、話を流していくフローラ。
「えっと、この服に合うアクセサリーとかほしいなーって思ってたの! それをお願いしようかな!」
「アクセサリーか。よし、さっそく見に行こうぜ!」
こうして二人でお店を見ながら、街中を歩くことに。
「ふん♪ ふん♪ ふーん♪」
フローラはさっきシンヤが露店の方で買ってあげたネックレスを眺めながら、鼻歌を歌っている。
「プレゼントそれでよかったのか? もっと高いやつでもよかったんだぞ」
買ってあげたのは、小さなサファイアがはめ込まれたネックレス。デザインはいいものの、実はそこまで高価ではなかったという。
「いいの、いいの。デザインが気に入ったし、シンヤくんもほめてくれたでしょ?」
「ああ、フローラにすごく似合ってた」
「ふふふ、ありがとう! このネックレス、大切にするね!」
シンヤの正直な感想に、フローラはとてもうれしそうだ。
「少し安かったし、ほかにもなにかプレゼントするぞ」
「これだけでもう十分よ。気持ちだけ受け取っておくわね」
「それだとちょっと申しわけなさが……。今もなんかいろいろと買ってもらってるしさ」
実は彼女にさっきからいろいろと、買ってもらっているのだ。というのもシンヤも冒険者の仕事で少しは稼いだものの、そこまで贅沢できる状態ではない。フローラにお礼のプレゼントを買ってあげる以上、なおさら無駄遣いはできない。なので欲しいものを見つけても我慢するしかなかったのだが、フローラが気になるなら買ってあげるとお金を出してくれたのだ。
「気にしないで。買ってあげたいから買ってあげてるだけだし、私自身このシンヤくんとの買い物を楽しんでいるんだもの! 付き合ってくれてる、お礼だと思ってくれたらいいからね!」
フローラはシンヤの顔を下からのぞきこみながら、屈託のないほほえみを向けてくる。
「――くっ、また甘やかして、沼らせてくる……。このままだとフローラなしで、生きていけなくされちまいそうだ」
「くす、いいんじゃないかしら? 私お世話するの好きだし、シンヤくんならめんどうみてあげるわよ♪」
「――くっ、オレはヒモ男になどならん」
「ふふふ、あっ、シンヤくん、アイスクリーム食べないかしら? 買ってくるわね!」
フローラの誘惑に耐えていると、彼女がアイスクリームの露店を見つけて買いに行ってくれた。
「はい、シンヤくん、どうぞ!」
「ははは、どんどんたたみかけてくるな。ありがと」
差し出してくれたアイスクリームを受け取り、二人ですぐ近くにあった休憩スペースで食べることに。
「ふふふ、甘くておいしいわね! これ食べたら次どこを見て回りましょうか♪」
フローラはアイスクリームを食べながら、ほおに手を当て幸せそうに笑う。そして目を輝かせて、待ちきれなさそうに次の行き先を決めようと。さっきから彼女はまるで子供のように、はしゃぎっぱなしである。
「フローラ、さっきからなんかやけにはしゃいでるな」
「――うっ……、変かしら?」
「いや、いつも大人びてるけど、今は少し子供っぽいというか」
「――あはは……、やっぱりこういうのわかってしまうのね。今ちょっと私の憧れていた夢の一つが叶っているから、内心すごく浮かれているのよ」
「夢?」
「少しはずかしいんだけど、私こういうシチュエーションにすごく憧れてたの。こんなふうに気兼ねなくその……、男の子とデートみたいなことするの……」
フローラはチラチラとシンヤを見ながら、はずかしそうに告白してくれる。
これには気恥ずかしさのあまり、思わずほおをかいてしまう。
「あー、なるほど……。でもフローラほどの美少女なら、相手に困らずいくらでもできそうだけどな」
「それが私の場合、立場的にすごく難しいのよ。身分とか関係なく、普通の女の子として扱ってくれるデートがいいから……」
フローラはどこか疲れた瞳で肩を落とす。
どうやらこれまで立場的な問題で、いろいろ苦労してきたみたいだ。
「だから今のシンヤくんみたいに、フランクに接してほしいの」
フローラはシンヤの腕をつかみ、意味ありげな視線を向けてきた。
「――えっと、じゃあ、今のところオレは、フローラにお気に召してもらえてるってことでいいのか?」
「ええ! もう百点満天をあげちゃうわ♪」
満面の笑顔で答えてくれるフローラ。
「ははは、それはよかったよ」
「そういうわけだからもう少し付き合って……、あっ……」
「うん?」
フローラの視線を追うと、そこにはトワたちが。みなはまだこちらに気づいていないようだが、確実に近づいて来ていた。このままだとバレるのも時間の問題だろう。
(フローラ?)
フローラは残念そうに肩をすくめている。
またいくらでもデートができると思うのだが、このすごく名残惜しそうな表情。まるでこの時間がこれっきりで終わってしまうと言いたげだ。
その落ち込み具合に、気づけばシンヤの身体が動いていた。
「フローラ、行こう!」
「シンヤくん!?」
フローラの手をつかみ、みんなに見つからないよう走ろうと。
「トワたちのあいさつは、また今度でもできるからな。今はこの二人の時間を楽しもうぜ!」
「うん♪」
こうしてシンヤたちは、トワたちに見つからないようにこの場を去るのであった。
相変わらず行きかう人々の数。店や露店の数。そして活気あふれるさまはすさまじく、ガヤガヤとにぎわっている。
「ここからどうするんだ?」
「観光もいいけど、今は店を回って買い物したいかも」
「いいんじゃないか。オレもまだそこまでゆっくり店を回れてないし、日に日に掘り出し物がいっぱいでてるのがこの街の特色らしいからな。そういうレアものを探すのもきっと楽しいはずだ」
交易都市のアルスタリアゆえ、多くの商人たちが集まっているのだ。そのため多くのお店が立ち並ぶだけじゃなく、旅商人たちが露店形式で商売をしているらしい。なので買い物するにはまさにもってこいの場所であり、その日しかお目にかかれない掘り出し物もたくさんあるのだとか。
「ええ! いきましょう!」
「そうだ。フローラにはいっぱい世話になったからな。感謝の気持ちを込めてなにかプレゼントさせてくれ」
フローラは様々なサポートをしてくれただけでなく、装備を買いそろえてくれたり、軍資金をくれたりしていたのだ。彼女がいなければきっと金がなさすぎて、今ごろ生きていくのだけで精一杯だったに違いない。その感謝も込めて、なにかフローラにしてあげたかったという。
「プレゼント?」
「冒険者の仕事で少しは稼げたからな。フローラがほしいものなんでもいってくれ」
「そんな、いいのに」
「まあまあ、感謝の気持ちってことで、ここはひとつ」
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいましょうか! 実は長旅も考慮して、装備を一新したの」
「そういえば騎士装備じゃなくなってるな」
前に会ったときは軽装の鎧を身にまとった騎士のような姿だった。だが今回は鎧は装備せず、動きやすい旅人に適した清楚な感じの服装をしていたという。
「旅をしやすいように身軽さを重視して、魔法剣士ふうの装備にしたの。どう? 似合ってるかしら?」
フローラはその場で一回転して、服を見せてくれる。
「ああ、清楚感あふれるかわいらしい感じですごくいいと思うぞ」
「フフフ、ありがとう♪」
髪をいじりながら、うれしそうにほほえむフローラ。
「ははは、なんだかフローラのにじみ出る気品も相まって、お忍びで外に出てきたお姫様って感じがするな」
「え? お姫様!? も、もしかして目立ってるかしら? 騎士装備は街中とかだと目立ちそうだったから、こっちにしたっていうのもあるんだけど……」
フローラは一瞬、お姫様という言葉に過剰に反応し、うろたえる。そして自分の服を見て、悩みだす。
「ははは、フローラはすごく美人だし、どんな服着てても目を引くから、そこらへんはあまり気にしても意味はないかもな」
「――あ、ありがとう……」
彼女はスカートの裾をぎゅっとにぎりしめながら、ほおを染めてうつむいてしまう。
それからおずおずとたずねてきた。
「ちなみにシンヤくんって私のこと、あれからなにか聞いたりしてるかしら?」
「いや、とくには。どうかしたのか?」
「それならいいの! なんでもないから気にしないでね!」
ぱっとうれしそうな表情をして、話を流していくフローラ。
「えっと、この服に合うアクセサリーとかほしいなーって思ってたの! それをお願いしようかな!」
「アクセサリーか。よし、さっそく見に行こうぜ!」
こうして二人でお店を見ながら、街中を歩くことに。
「ふん♪ ふん♪ ふーん♪」
フローラはさっきシンヤが露店の方で買ってあげたネックレスを眺めながら、鼻歌を歌っている。
「プレゼントそれでよかったのか? もっと高いやつでもよかったんだぞ」
買ってあげたのは、小さなサファイアがはめ込まれたネックレス。デザインはいいものの、実はそこまで高価ではなかったという。
「いいの、いいの。デザインが気に入ったし、シンヤくんもほめてくれたでしょ?」
「ああ、フローラにすごく似合ってた」
「ふふふ、ありがとう! このネックレス、大切にするね!」
シンヤの正直な感想に、フローラはとてもうれしそうだ。
「少し安かったし、ほかにもなにかプレゼントするぞ」
「これだけでもう十分よ。気持ちだけ受け取っておくわね」
「それだとちょっと申しわけなさが……。今もなんかいろいろと買ってもらってるしさ」
実は彼女にさっきからいろいろと、買ってもらっているのだ。というのもシンヤも冒険者の仕事で少しは稼いだものの、そこまで贅沢できる状態ではない。フローラにお礼のプレゼントを買ってあげる以上、なおさら無駄遣いはできない。なので欲しいものを見つけても我慢するしかなかったのだが、フローラが気になるなら買ってあげるとお金を出してくれたのだ。
「気にしないで。買ってあげたいから買ってあげてるだけだし、私自身このシンヤくんとの買い物を楽しんでいるんだもの! 付き合ってくれてる、お礼だと思ってくれたらいいからね!」
フローラはシンヤの顔を下からのぞきこみながら、屈託のないほほえみを向けてくる。
「――くっ、また甘やかして、沼らせてくる……。このままだとフローラなしで、生きていけなくされちまいそうだ」
「くす、いいんじゃないかしら? 私お世話するの好きだし、シンヤくんならめんどうみてあげるわよ♪」
「――くっ、オレはヒモ男になどならん」
「ふふふ、あっ、シンヤくん、アイスクリーム食べないかしら? 買ってくるわね!」
フローラの誘惑に耐えていると、彼女がアイスクリームの露店を見つけて買いに行ってくれた。
「はい、シンヤくん、どうぞ!」
「ははは、どんどんたたみかけてくるな。ありがと」
差し出してくれたアイスクリームを受け取り、二人ですぐ近くにあった休憩スペースで食べることに。
「ふふふ、甘くておいしいわね! これ食べたら次どこを見て回りましょうか♪」
フローラはアイスクリームを食べながら、ほおに手を当て幸せそうに笑う。そして目を輝かせて、待ちきれなさそうに次の行き先を決めようと。さっきから彼女はまるで子供のように、はしゃぎっぱなしである。
「フローラ、さっきからなんかやけにはしゃいでるな」
「――うっ……、変かしら?」
「いや、いつも大人びてるけど、今は少し子供っぽいというか」
「――あはは……、やっぱりこういうのわかってしまうのね。今ちょっと私の憧れていた夢の一つが叶っているから、内心すごく浮かれているのよ」
「夢?」
「少しはずかしいんだけど、私こういうシチュエーションにすごく憧れてたの。こんなふうに気兼ねなくその……、男の子とデートみたいなことするの……」
フローラはチラチラとシンヤを見ながら、はずかしそうに告白してくれる。
これには気恥ずかしさのあまり、思わずほおをかいてしまう。
「あー、なるほど……。でもフローラほどの美少女なら、相手に困らずいくらでもできそうだけどな」
「それが私の場合、立場的にすごく難しいのよ。身分とか関係なく、普通の女の子として扱ってくれるデートがいいから……」
フローラはどこか疲れた瞳で肩を落とす。
どうやらこれまで立場的な問題で、いろいろ苦労してきたみたいだ。
「だから今のシンヤくんみたいに、フランクに接してほしいの」
フローラはシンヤの腕をつかみ、意味ありげな視線を向けてきた。
「――えっと、じゃあ、今のところオレは、フローラにお気に召してもらえてるってことでいいのか?」
「ええ! もう百点満天をあげちゃうわ♪」
満面の笑顔で答えてくれるフローラ。
「ははは、それはよかったよ」
「そういうわけだからもう少し付き合って……、あっ……」
「うん?」
フローラの視線を追うと、そこにはトワたちが。みなはまだこちらに気づいていないようだが、確実に近づいて来ていた。このままだとバレるのも時間の問題だろう。
(フローラ?)
フローラは残念そうに肩をすくめている。
またいくらでもデートができると思うのだが、このすごく名残惜しそうな表情。まるでこの時間がこれっきりで終わってしまうと言いたげだ。
その落ち込み具合に、気づけばシンヤの身体が動いていた。
「フローラ、行こう!」
「シンヤくん!?」
フローラの手をつかみ、みんなに見つからないよう走ろうと。
「トワたちのあいさつは、また今度でもできるからな。今はこの二人の時間を楽しもうぜ!」
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