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3章1部 アルスタリアでの日常
地下水道での出会い
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シンヤたちはピクニック終え、再び街中へと来ていた。ただ女性陣は水着を買いに行く流れになったため、別行動中。シンヤは一人でにぎやかな街中をぶらついていたという。そんな中、路地裏の方で軽い人だかりができているのに気づき、向かうことに。
「なんだ騒がしいな。どうしたんですか?」
「実は地下水道から魔物の声がしてね。そしたら剣を持った女の子が倒してきますって、向かっちゃったのよ。でも一人だと危ないかもしれないし、冒険者の人にも来てもらったほうがいいかもって、みんなで話あってたところなの」
「オレ冒険者だから、手助けしてきますよ」
「おぉ、それは助かるわ。お願いね」
住人たちに応援されながらも、地下水道へと入っていく。
中は人が普通に行き来できるほどの、わりと広めの通路である。いざというとき避難経路としても使われているらしい。シンヤは薄暗くジメジメしている入り組んだ通路を、歩いていく。
(こんな街中に出てくるなんて。ミルゼ教の信者がやらかしたのか?)
魔物はこの地にはびこる邪神の怨念から、生み出されていく。だが呼び出さない限り、人間が大勢いる近くで湧いて出てこないそうだ。ゆえに普通、街周辺は安全なはずなのだがなにが原因なのだろうか。もしかするとミルゼ教の信者が、練習がてら呼び出したのかもしれない。
「魔物の声が、あっちか」
魔物の断末魔と戦闘音が奥の方から聞こえてきたので、すぐさま急行する。
入り組んだ通路をさらに奥へと進んでいると、資材などが置かれた開けたフロアに出た。そこには一人の少女が魔物と戦っており。
「はぁっ!」
きれいな金色の髪の少女が、剣で見事な二連撃を放つ。
それによりヴァジリスクという大きなトカゲ型の魔物、二体が華麗に斬り伏せられていった。
そして彼女は最後の一体。アクアエレメントという、宙を浮く一メートルほどの水の球体の魔物に突撃する。
アクアエレメントは迎撃しようと。圧縮した水球を砲弾のごとく撃ち放ってくるが、少女は俊敏な身のこなしで回避して距離を詰めていき。
「これで!」
少女は剣を一閃。鋭い斬撃がアクアエレメントを真っ二つに両断した。
(あれはフローラ!?)
なんとその人物はシンヤがよく知る人物。フローラであった。
前に会ったときは軽装の鎧(よろい)を身にまとった騎士のような姿だった。だが今回は鎧は装備せず、動きやすい旅人に適した服装をしていたという。
「フローラ、危ない!」
とっさに叫ぶ。というのも両断されたアクアエレメントはまだ倒れておらず、すぐさま元にもどり自身の身体の一部をムチのようにしてなぎ払ってきたのだ。
しかしフローラはそれを後方に跳躍することでやり過ごし、シンヤがいる方へと下がってきた。
「シンヤくん!? どうしてこんなところに?」
フローラはシンヤの突然の登場に、目を丸くする。
「ははは、それはこっちのセリフでもあるんだが、まずはアイツをやらないとな。加勢するぞ」
シンヤは心象武器で愛銃のリボルバーを取り出し、華麗にガンスピンさせながら目にも止まらぬ三連射をおみまいする。
しかし弾丸はアクアエレメントに直撃するが、水しぶきを上げるだけで呑み込まれていってしまった。
「なんだあいつ? 効いてない?」
「アクアエレメントの核を攻撃しないとダメよ。でもあの魔物、攻撃を受けるときに核を安全な場所に移動してやらせないようにしてくるのよね」
よくアクアエレメントを観察すると、拳ほどの丸い薄赤色の核みたいなのが見えた。思い返せばフローラが両断したとき、アクアエレメントは核をずらし攻撃が直撃するのを避けていたという。
「やっかいな敵だな」
「ええ、でもこうすれば、氷雪の風よ」
フローラが腕を振りかざし、魔法を行使する。次の瞬間、敵の周囲に局地的な吹雪が発生。凍てつく風が、アクアエレメントの水の身体を下半身から凍らせていく。
「さすがフローラ! 凍らせて動けなくすれば、容易に核をたたけるってわけだな」
「あっ!?」
このまま完全に凍りつかせられると思いきや、アクアエレメントはまだ凍っていない部分を切り離し、吹雪の範囲から緊急脱出したのだ。
しかも敵は魔法を使い、水を生み出して吸収していく。これにより再び元のサイズまで膨れ上がったという。
「おしいな。あとちょっとだったのに」
「なかなかやるわね。いい戦法だと思ったんだけど」
「フローラ、もう一度頼む。今度は逃がさない」
リボルバーをクルクル華麗に回しながら、フローラへ目くばせする。
「わかったわ。とどめはお願いね」
彼女はシンヤのやろうとしてることを察してくれたらしく、快く応じてくれた。
フローラはアクアエレメントへと突撃。敵の攻撃をかわしながらも瞬く間に、間合いを詰め。そして剣を敵へと突き刺した。
「氷雪の刃よ」
すると刺した剣の刃の部分から、みるみる内に敵の身体が凍っていく。
先ほどと同じ攻撃では警戒され、すぐに緊急回避されると踏んだのだろう。今度は違う攻撃で、敵を凍らせにいったみたいだ。
だがそんな攻撃も、先ほど同様アクアエレメントはみずからの身体を切り離し上空へ逃げようと。このままではまたやり過ごされてしまうが、シンヤがそうはさせない。
「これでしまいだ。魔弾装填、アインバレット!」
マナを圧縮しまくった特殊弾丸を生成し、リボルバーに装填する。そして逃げようとするアクアエレメントに狙いをさだめ、クイックドロウ。
敵は身体を切り離したことで、自身を構成する水の量が減っていた。そのため核を移動できるスペースも限られ、狙いもさだめやすい。ここまでくれば完全にとらえるのも容易く、あとは。
「~~~~~!?」
シンヤの狙いどおり、必殺の一撃はアクアエレメントの核を見事撃ち抜いた。
核を失った水球は、はじけて四散していく。ただその身体を構成していた水はかなり圧縮されていたらしく、ザーっと滝のように降りそそいだ。
ここで問題なのは。
「きゃっ!?」
アクアエレメントは身体を切り離し、そのまま真上へと逃げていたのだ。ゆえにその下には剣を突き刺し凍らせていたフローラが。結果、彼女のもとに大量の水が降りそそぐことになり。
「ふ、フローラ、大丈夫か?」
「ええ、濡れただけよ。ちょっと、油断してたわ」
フローラははずかしそうにほおをかきながら、ほほえんだ。
降りそそいだ水のせいで、彼女は全身ずぶぬれである。
「フフフ、それよりも久しぶりね、シンヤくん!」
フローラがはずむ足取りで、シンヤへと駆け寄ってきた。
「フローラはどうしてアルスタリアに? 確かユーリアナの首都へ、向かったんだったよな」
「ええ、報告しに行って、それからアルスタリアに用事ができてね。ほんの少し前に、この街に来たのよ」
「そうだったのか。まさかこんなに早く再開できると思っていなかったから、びっくりしたよ。――はっ!?」
そこでふと気づいてしまった。
(――おい!? ちょっと、待て!? 濡れたせいで、下着が透けてるんだが!?)
そう、フローラがずぶ濡れ状態になったせいで、服が肌に張り付き彼女のスタイルのいいボディーラインが浮き彫りに。しかも胸元部分が透けて、ミントグリーンのブラがくっきり見えてしまっていたのだ。そのせいでフローラの発育のいい胸が、さらに強調される形に。
もはや目のやり場が困るどころの話ではない。ごくりと息を飲まずにはいられなかった。
「シンヤくん、どうしたの?」
「――いや、その……」
ここは気づかないふりをすべきなのか、それとも教えてあげるべきなのか。当の本人はシンヤに会えたことではしゃいでいるらしく、気づく気配がない様子。
「トワちゃんやリアちゃんは、元気してるかしら?」
「みんな元気にしてるよ。オレとトワはとりあえず冒険者になって、依頼をこなしてるんだ。リアはフォルスティア教会に顔を出しながら、オレたちの依頼を手伝ってくれたりしててさ」
「わー、そうなんだ! 早く二人にも会いたいなー♪」
「――きっと喜ぶよ……、ははは……」
そんな会話をしながらも、シンヤはチラチラとフローラの胸部分を見てしまう。これがいけないとわかりつつも、湧き上がる煩悩に逆らえられなかったといっていい。
「シンヤくん、さっきから少し変よ。なんか視線が泳いでるというか、チラチラこっちを見て……」
フローラがシンヤの視線を追って、自身の胸を方をみる。
「――あっ……、透けて……」
ここでようやく気づいたらしく、ほおがかぁーと赤くなっていくフローラ。
(――ま、マズイ!?)
「ふーん、シンヤくん、再会を心から喜んでいる私をよそに、さっきから透けた下着をみてたんだー?」
フローラはプルプル震えながら、こわい笑顔を向けてきた。
「――これは、その……」
「シンヤくんのエッチ!」
あわあわするシンヤへ、フローラが全力のビンタを。
詰め寄る速度、体さばき、そして手首のスナップ。戦闘慣れしている者ならではのキレのある一撃だ。
しかし予知のスキルによる攻撃察知で見切っていたおかげで、ギリギリ回避ができた。
「うわっ、あぶね!? 相変わらずすごいビンタだな……。少しは手加減しないと、痛いどころじゃすまないかもしれないぞ?」
「だってこれぐらい本気でいかないと、軽々かわされてしまうでしょ? まえに水浴びをのぞかれたときのリベンジも込めてやったけど、結局また外しちゃったわ。ざんねん……」
胸元を隠しながら、肩を落とすフローラ。
「――ははは……」
「まあ、今のはこんなに濡れてるのにも関わらず、うれしさのあまり不用意に近づいた私もわるいかもね。だから大目にみてあげる」
「――その、なんだ。ごめんな、つい男の性で」
罪悪感が半端なく、もうしわけない気持ちになってしまう。彼女は純粋に再会を喜んでくれていたのに、自分ときたら。
「悪いと思ってるなら。一回ぐらい乙女の制裁を受けてくれてもいいのよ?」
「そうだな。男ならケジメは付けるべきだよな。よし、こいフローラ」
覚悟を決め彼女のビンタを受けようと。
「フフフ、冗談よ。反省してくれてるなら、それでいいわ。くしゅん」
しかしフローラは笑って許してくれた。だが最後にかわいらしいくしゃみを。
「フローラ、大丈夫か?」
「ええ、こうもずぶぬれにされたら、さすがに困ったものね。着替えは宿に置いてきてしまってるし、この恰好で外にでるのは。諸事情であまり目立ちたくないのよね」
「ここひんやりしてるし、そのまま濡れた服を着続けてると、風ひくかもしれないぞ」
「――そうね。でも脱ぐとなると……」
フローラがはずかしそうに目をふせる。
だれもいないならまだしも、男のシンヤがいる中ではさすがに抵抗があるだろう。
「とりあえずハンカチと、これを羽織っておいてくれ」
拭く用のハンカチと、羽織っていたジャケットを手渡す。
「――あ、ありがとう……。向こうで脱いでくるから、少し待っててね」
「ああ」
フローラが見えないところへ向かい、着替えに。
その間、邪念をはらいながら落ち着こうと。
「お待たせ、シンヤくん」
「――うっ……」
しばらくしてフローラが戻ってきた。
彼女は借りたジャケットを羽織り、肌を隠している。とはいえ胸元部分はさすがに隠しきれず、ミントグリーンのブラが見えかけている状況。さすがにはずかしかったのか、下着は付けたままにしてきたみたいだ。ちなみに下の方はギリギリ見えてはいないが、かなりきわどい。全体を通して、非常に目に毒であった。
「ちょっと!? こっちを見ないでよ!?」
「すまん、すまん」
自制心を強く保ち、目をそらす。
「とりあえず服を乾かしたいけど、ここだと時間が掛かりそうね」
「この地下水道、避難用にも使われてるんだ。確か、街の郊外の方にも通じてたはず。そこなら人もいないだろうし、この天気ならすぐ乾くんじゃないか」
「そうね。シンヤくんの後ろをついていくから、先導お願いね。後ろは振り返らないこと。わかった」
「――も、もちろんだ」
フローラに釘を刺されながら、地下水道の別の出口に向かうシンヤなのであった。
「なんだ騒がしいな。どうしたんですか?」
「実は地下水道から魔物の声がしてね。そしたら剣を持った女の子が倒してきますって、向かっちゃったのよ。でも一人だと危ないかもしれないし、冒険者の人にも来てもらったほうがいいかもって、みんなで話あってたところなの」
「オレ冒険者だから、手助けしてきますよ」
「おぉ、それは助かるわ。お願いね」
住人たちに応援されながらも、地下水道へと入っていく。
中は人が普通に行き来できるほどの、わりと広めの通路である。いざというとき避難経路としても使われているらしい。シンヤは薄暗くジメジメしている入り組んだ通路を、歩いていく。
(こんな街中に出てくるなんて。ミルゼ教の信者がやらかしたのか?)
魔物はこの地にはびこる邪神の怨念から、生み出されていく。だが呼び出さない限り、人間が大勢いる近くで湧いて出てこないそうだ。ゆえに普通、街周辺は安全なはずなのだがなにが原因なのだろうか。もしかするとミルゼ教の信者が、練習がてら呼び出したのかもしれない。
「魔物の声が、あっちか」
魔物の断末魔と戦闘音が奥の方から聞こえてきたので、すぐさま急行する。
入り組んだ通路をさらに奥へと進んでいると、資材などが置かれた開けたフロアに出た。そこには一人の少女が魔物と戦っており。
「はぁっ!」
きれいな金色の髪の少女が、剣で見事な二連撃を放つ。
それによりヴァジリスクという大きなトカゲ型の魔物、二体が華麗に斬り伏せられていった。
そして彼女は最後の一体。アクアエレメントという、宙を浮く一メートルほどの水の球体の魔物に突撃する。
アクアエレメントは迎撃しようと。圧縮した水球を砲弾のごとく撃ち放ってくるが、少女は俊敏な身のこなしで回避して距離を詰めていき。
「これで!」
少女は剣を一閃。鋭い斬撃がアクアエレメントを真っ二つに両断した。
(あれはフローラ!?)
なんとその人物はシンヤがよく知る人物。フローラであった。
前に会ったときは軽装の鎧(よろい)を身にまとった騎士のような姿だった。だが今回は鎧は装備せず、動きやすい旅人に適した服装をしていたという。
「フローラ、危ない!」
とっさに叫ぶ。というのも両断されたアクアエレメントはまだ倒れておらず、すぐさま元にもどり自身の身体の一部をムチのようにしてなぎ払ってきたのだ。
しかしフローラはそれを後方に跳躍することでやり過ごし、シンヤがいる方へと下がってきた。
「シンヤくん!? どうしてこんなところに?」
フローラはシンヤの突然の登場に、目を丸くする。
「ははは、それはこっちのセリフでもあるんだが、まずはアイツをやらないとな。加勢するぞ」
シンヤは心象武器で愛銃のリボルバーを取り出し、華麗にガンスピンさせながら目にも止まらぬ三連射をおみまいする。
しかし弾丸はアクアエレメントに直撃するが、水しぶきを上げるだけで呑み込まれていってしまった。
「なんだあいつ? 効いてない?」
「アクアエレメントの核を攻撃しないとダメよ。でもあの魔物、攻撃を受けるときに核を安全な場所に移動してやらせないようにしてくるのよね」
よくアクアエレメントを観察すると、拳ほどの丸い薄赤色の核みたいなのが見えた。思い返せばフローラが両断したとき、アクアエレメントは核をずらし攻撃が直撃するのを避けていたという。
「やっかいな敵だな」
「ええ、でもこうすれば、氷雪の風よ」
フローラが腕を振りかざし、魔法を行使する。次の瞬間、敵の周囲に局地的な吹雪が発生。凍てつく風が、アクアエレメントの水の身体を下半身から凍らせていく。
「さすがフローラ! 凍らせて動けなくすれば、容易に核をたたけるってわけだな」
「あっ!?」
このまま完全に凍りつかせられると思いきや、アクアエレメントはまだ凍っていない部分を切り離し、吹雪の範囲から緊急脱出したのだ。
しかも敵は魔法を使い、水を生み出して吸収していく。これにより再び元のサイズまで膨れ上がったという。
「おしいな。あとちょっとだったのに」
「なかなかやるわね。いい戦法だと思ったんだけど」
「フローラ、もう一度頼む。今度は逃がさない」
リボルバーをクルクル華麗に回しながら、フローラへ目くばせする。
「わかったわ。とどめはお願いね」
彼女はシンヤのやろうとしてることを察してくれたらしく、快く応じてくれた。
フローラはアクアエレメントへと突撃。敵の攻撃をかわしながらも瞬く間に、間合いを詰め。そして剣を敵へと突き刺した。
「氷雪の刃よ」
すると刺した剣の刃の部分から、みるみる内に敵の身体が凍っていく。
先ほどと同じ攻撃では警戒され、すぐに緊急回避されると踏んだのだろう。今度は違う攻撃で、敵を凍らせにいったみたいだ。
だがそんな攻撃も、先ほど同様アクアエレメントはみずからの身体を切り離し上空へ逃げようと。このままではまたやり過ごされてしまうが、シンヤがそうはさせない。
「これでしまいだ。魔弾装填、アインバレット!」
マナを圧縮しまくった特殊弾丸を生成し、リボルバーに装填する。そして逃げようとするアクアエレメントに狙いをさだめ、クイックドロウ。
敵は身体を切り離したことで、自身を構成する水の量が減っていた。そのため核を移動できるスペースも限られ、狙いもさだめやすい。ここまでくれば完全にとらえるのも容易く、あとは。
「~~~~~!?」
シンヤの狙いどおり、必殺の一撃はアクアエレメントの核を見事撃ち抜いた。
核を失った水球は、はじけて四散していく。ただその身体を構成していた水はかなり圧縮されていたらしく、ザーっと滝のように降りそそいだ。
ここで問題なのは。
「きゃっ!?」
アクアエレメントは身体を切り離し、そのまま真上へと逃げていたのだ。ゆえにその下には剣を突き刺し凍らせていたフローラが。結果、彼女のもとに大量の水が降りそそぐことになり。
「ふ、フローラ、大丈夫か?」
「ええ、濡れただけよ。ちょっと、油断してたわ」
フローラははずかしそうにほおをかきながら、ほほえんだ。
降りそそいだ水のせいで、彼女は全身ずぶぬれである。
「フフフ、それよりも久しぶりね、シンヤくん!」
フローラがはずむ足取りで、シンヤへと駆け寄ってきた。
「フローラはどうしてアルスタリアに? 確かユーリアナの首都へ、向かったんだったよな」
「ええ、報告しに行って、それからアルスタリアに用事ができてね。ほんの少し前に、この街に来たのよ」
「そうだったのか。まさかこんなに早く再開できると思っていなかったから、びっくりしたよ。――はっ!?」
そこでふと気づいてしまった。
(――おい!? ちょっと、待て!? 濡れたせいで、下着が透けてるんだが!?)
そう、フローラがずぶ濡れ状態になったせいで、服が肌に張り付き彼女のスタイルのいいボディーラインが浮き彫りに。しかも胸元部分が透けて、ミントグリーンのブラがくっきり見えてしまっていたのだ。そのせいでフローラの発育のいい胸が、さらに強調される形に。
もはや目のやり場が困るどころの話ではない。ごくりと息を飲まずにはいられなかった。
「シンヤくん、どうしたの?」
「――いや、その……」
ここは気づかないふりをすべきなのか、それとも教えてあげるべきなのか。当の本人はシンヤに会えたことではしゃいでいるらしく、気づく気配がない様子。
「トワちゃんやリアちゃんは、元気してるかしら?」
「みんな元気にしてるよ。オレとトワはとりあえず冒険者になって、依頼をこなしてるんだ。リアはフォルスティア教会に顔を出しながら、オレたちの依頼を手伝ってくれたりしててさ」
「わー、そうなんだ! 早く二人にも会いたいなー♪」
「――きっと喜ぶよ……、ははは……」
そんな会話をしながらも、シンヤはチラチラとフローラの胸部分を見てしまう。これがいけないとわかりつつも、湧き上がる煩悩に逆らえられなかったといっていい。
「シンヤくん、さっきから少し変よ。なんか視線が泳いでるというか、チラチラこっちを見て……」
フローラがシンヤの視線を追って、自身の胸を方をみる。
「――あっ……、透けて……」
ここでようやく気づいたらしく、ほおがかぁーと赤くなっていくフローラ。
(――ま、マズイ!?)
「ふーん、シンヤくん、再会を心から喜んでいる私をよそに、さっきから透けた下着をみてたんだー?」
フローラはプルプル震えながら、こわい笑顔を向けてきた。
「――これは、その……」
「シンヤくんのエッチ!」
あわあわするシンヤへ、フローラが全力のビンタを。
詰め寄る速度、体さばき、そして手首のスナップ。戦闘慣れしている者ならではのキレのある一撃だ。
しかし予知のスキルによる攻撃察知で見切っていたおかげで、ギリギリ回避ができた。
「うわっ、あぶね!? 相変わらずすごいビンタだな……。少しは手加減しないと、痛いどころじゃすまないかもしれないぞ?」
「だってこれぐらい本気でいかないと、軽々かわされてしまうでしょ? まえに水浴びをのぞかれたときのリベンジも込めてやったけど、結局また外しちゃったわ。ざんねん……」
胸元を隠しながら、肩を落とすフローラ。
「――ははは……」
「まあ、今のはこんなに濡れてるのにも関わらず、うれしさのあまり不用意に近づいた私もわるいかもね。だから大目にみてあげる」
「――その、なんだ。ごめんな、つい男の性で」
罪悪感が半端なく、もうしわけない気持ちになってしまう。彼女は純粋に再会を喜んでくれていたのに、自分ときたら。
「悪いと思ってるなら。一回ぐらい乙女の制裁を受けてくれてもいいのよ?」
「そうだな。男ならケジメは付けるべきだよな。よし、こいフローラ」
覚悟を決め彼女のビンタを受けようと。
「フフフ、冗談よ。反省してくれてるなら、それでいいわ。くしゅん」
しかしフローラは笑って許してくれた。だが最後にかわいらしいくしゃみを。
「フローラ、大丈夫か?」
「ええ、こうもずぶぬれにされたら、さすがに困ったものね。着替えは宿に置いてきてしまってるし、この恰好で外にでるのは。諸事情であまり目立ちたくないのよね」
「ここひんやりしてるし、そのまま濡れた服を着続けてると、風ひくかもしれないぞ」
「――そうね。でも脱ぐとなると……」
フローラがはずかしそうに目をふせる。
だれもいないならまだしも、男のシンヤがいる中ではさすがに抵抗があるだろう。
「とりあえずハンカチと、これを羽織っておいてくれ」
拭く用のハンカチと、羽織っていたジャケットを手渡す。
「――あ、ありがとう……。向こうで脱いでくるから、少し待っててね」
「ああ」
フローラが見えないところへ向かい、着替えに。
その間、邪念をはらいながら落ち着こうと。
「お待たせ、シンヤくん」
「――うっ……」
しばらくしてフローラが戻ってきた。
彼女は借りたジャケットを羽織り、肌を隠している。とはいえ胸元部分はさすがに隠しきれず、ミントグリーンのブラが見えかけている状況。さすがにはずかしかったのか、下着は付けたままにしてきたみたいだ。ちなみに下の方はギリギリ見えてはいないが、かなりきわどい。全体を通して、非常に目に毒であった。
「ちょっと!? こっちを見ないでよ!?」
「すまん、すまん」
自制心を強く保ち、目をそらす。
「とりあえず服を乾かしたいけど、ここだと時間が掛かりそうね」
「この地下水道、避難用にも使われてるんだ。確か、街の郊外の方にも通じてたはず。そこなら人もいないだろうし、この天気ならすぐ乾くんじゃないか」
「そうね。シンヤくんの後ろをついていくから、先導お願いね。後ろは振り返らないこと。わかった」
「――も、もちろんだ」
フローラに釘を刺されながら、地下水道の別の出口に向かうシンヤなのであった。
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