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2章4部 ミルゼ教
ミルゼと愉快な配下たち
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シンヤとトワ、ミルゼ、そしてレネは、先ほどいた廃坑内に作られた会議室へと戻っていた。
あのあとトワがやってきたことでシンヤたちの身分がバレ、一気触発の状況に。しかし殺意を膨らませるミルゼに気づき、レネが来てくれなだめてくれたのだ。そのおかげでシンヤたちは命拾いをして、今にいたる。
「むー」
ほおを膨らませご立腹のミルゼ。
さっきから何度か話しかけても、怒りで取り付く島もなかった。
「シンヤ、気まずいよー、なんとかして……」
「そう言われてもだな」
ミルゼは明らかに機嫌が悪く、たじろぐしかないシンヤたち。
ちなみにレネは愉快そうに、シンヤたちとミルゼの様子を観察していたという。
「くくく、ミルゼさまよ。もうすぐ祭典が始まるというのに、そんなにムクれていて大丈夫か?」
「誰のせいだと思ってるの? レネ?」
「はて? そんなのそこの勇者たちであろう。なぜワレに矛先が向かっているのだ?」
ミルゼの非難の言葉に、レネは肩をすくめて白々しい態度を。
「原因はたしかにこの人たちだけど、元はといえばレネのせいでしょ。なんで排除せずに、客人として扱ってるの?」
「ここで邪魔者の勇者たちを始末するのは、容易かろう。しかしいいのか? ミルゼさまよ。こんな序盤の序盤に倒してしまって。あまりにあっけなさすぎて、おもしろくないではないか」
「別にミルゼはおもしろみとか求めてない」
「旅に出たばかりの新米勇者をつぶしにかかるなど、大人げないというもの。そんなことしては、魔王としての器が知れてしまうぞ」
「もっともらしいことを。じゃあ、そこは納得してあげる。でもミルゼの部屋に、この人たちをけしかけた件はどう説明するつもり? いきなり知らない人が入ってきて、どれだけびっくりしたと思ってるの?」
ミルゼはレネへ恨みがましい視線を向けながら、文句を口に。
「あのまま部屋にこもって待っていても、あれだろ? だから緊張をほぐす意味も込めて、刺激を与えてやろうかと」
「ほんとに?」
「くくく、白状すると、なにか愉快なことにならないかと期待してだがな」
悪びれた様子もなく、愉快げに笑うレネ。
「にしてもまさかこの小僧に身のお世話を任せるとは。よほど気に入ったらしいな。あの滅多に他者へなびかない、ミルゼさまが、クク」
そして彼女はニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべた。
これには怒りをあらわにするミルゼ。
「レネー!」
「ミルゼさま、そう怒るな。かわいい顔が台無しだぞ」
「だから誰のせいだと思ってるの!」
「くくく、かわいかろう。ワレらのミルゼさまは。あまりに愛くるしすぎて、もっといじり……、いや、愛でたくなってしまう」
プンプンするミルゼに対し、レネはなにやらうっとりしだす。
「昔からいつもいつもそうやって。ミルゼの配下としての自覚あるの?」
「そういわれてもな。ワレはミルゼさまをこうやって愛でるために、配下に加わったのだが」
「なっ!?」
「くくく、ミルゼ教ももとはミルゼさまのすばらしさを広める、ファンクラブとしてのノリで作ったわけだしな」
「レネー」
「ああ、その冷たいまなざしを向けるミルゼさまも、乙なものよの」
ミルゼのジト目に、身をくねくねして喜ぶレネ。
「――やっぱりこの人ヘンタイなんじゃ……」
「ではな。ミルゼさま成分も補充できたことだし、そろそろ祭典の準備に戻るとしよう。小僧ども、ミルゼさまの相手は任せたぞ」
レネはシンヤたちへ目くばせして、会議室から出ていこうとする。
「レネ、まだ話は!」
「くくく」
ミルゼが呼び止めるも、レネは部屋から出て行ってしまった。
そして部屋には、ミルゼとシンヤとトワが取り残される形に。
「行っちゃったな」
「むー、レネに一回、お灸をすえたほうがいいかも」
「ははは、まあまあ、仲がよくていいじゃないか。それだけミルゼが愛されてるってことだし、そうかっかしなくてもさ」
「今、ミルゼが怒ってる大半は、シンヤのせいなんだけど?」
ミルゼが今度はシンヤへと、ジト目を向けてきた。
「やば、矛先がこっちにきた……」
「シンヤ、いったいミルゼちゃんになにしたの?」
トワがシンヤの上着の袖をクイクイして、小声でたずねてくる。
「いや、信者のフリをしただけなんだか」
「それだけであそこまでぷんぷんするかな。なにかほかにやらかしたんじゃないの?」
「あー、もしかしてあれか。ミルゼのお願いを」
「そのことは忘れて! あと、それまでのやりとりとかも全部!」
心当たりに気づいていると、ミルゼが机をバンバンしながら必死にうったえてきた。
「え? どうしてだ?」
「敵にあんな醜態をさらしまくったからに決まってる!」
「醜態だなんて。年相応の女の子らしくて、かわいかったぞ」
「かわっ!? ~~~ッ!? なんであんなに甘えてしまったの、ミルゼ……」
シンヤの素直な感想に、ミルゼは顔を真っ赤にし面をくらった様子。そしてはずかしさのあまりか、頭をかかえ悶え始めた。
「――えっと……、ミルゼ?」
「とにかく! ミルゼはシンヤにもて遊ばれたの! やさしくするだけやさしくしてきて、ミルゼが気を許したところで裏切ってきた」
「うわー、それはシンヤが悪いよ。ようはまたいつものように、女の子をたらしこもうとしたわけでしょ?」
トワもジト目を向け、ダメ出ししてくる。
「いやいや、オレにそんなつもりはなくてだな!?」
「ぐすん」
よほど心が傷ついたのか、涙目になるミルゼ。
これによりトワの視線がさらにけわしいものに。
「ミルゼ、オレが悪かったから、そんな辛そうにしないでくれ! すごいいたたまれない気持ちになるから!」
こんな小さい女の子を泣かせてしまった罪悪感が、どんどん押し寄せてきてしまう。
そこへ部屋の扉が勢いよく開き、誰かが入ってきた。
「ミルゼさま! あんなやつら客人として、招き入れる必要はありません! 今すぐにでも八つ裂きに!」
「ガルディアス!?」
「きゃっ!?」
乱入してきたのは、封印の地でシンヤたちと死闘をくり広げた魔人のガルディアス。
トワはあのときの恐怖がよみがえってきたのか、怯えてシンヤに抱き着いてくる。
「――な……に……、ミルゼさまが泣いておられるだと!? きさまらいったいなにをした!」
涙目になっているミルゼに気づき、鬼の形相でシンヤたちをにらみつけてくるガルディアス。もはや殺意がどんどん膨れ上がっているのがわかった。
「待ってくれ、これは!」
「よくもミルゼさまを泣かせたな! 万死に値する! もはや客人など知ったことか! 今すぐ消し炭にしてやろう!」
「「ヒィッ!?」」
今すぐにでも攻撃を仕掛けてこようとするガルディアスに、震えあがるシンヤたち。
「ガルディアス、落ち着いて」
だがそこへミルゼの静止の声が。
「しかしミルゼさま!」
「一応この人たちは客人という扱いになってるから、ここはこらえて」
「――ッ! わかりました……」
ミルゼに対して忠実な臣下らしく、ガルディアスはしぶしぶであったが矛を収めてくれた。
「ミルゼ、期待とかさせてごめんな。オレはトワの補佐役だから、キミの世話役としてそばにいることはできないんだ」
今はとにかくミルゼをなぐさめることが先決と判断。心からの謝罪を。
「ふん、もうそのことは忘れてって言ってる」
するとミルゼはすねたように、プイっとそっぽを向いてしまった。
「小僧が世話役だと? ミルゼさま、ことの経緯はわかりませんが、なにも心を煩わせる必要はありません! あなたさまのお世話は、このガルディアスが喜んでさせてもらいますので」
そこへガルディアスがミルゼへ跪き、意気揚々と提案しだした。
「しなくていい。ガルディアスはいつも過保護すぎて、ちょっとうっとおしいレベルだから」
「な、なんですと!? そんなバカな……」
ミルゼのきっぱりとした否定に、ガルディアスは両ひざをつきがっくりうなだれてしまう。よっぽど精神的ダメージを受けてしまったらしい。まるで愛する愛娘に、突如反抗期で嫌われてしまった父親のように。
「過保護なまでに世話してくれるなら、いいじゃないか?」
「限度がある。ミルゼのやること一つ一つに、いちいち手助けしようとしてくるもん。あとお手を煩わせるわけにはいかないとか、危険とかでなかなか自由にさせてくれないし」
「それはさすがに、ちょっとうっとおしいかも」
「ぐぬぬ」
「あと心酔してくる熱量が高すぎて、なんか暑苦しい」
「ぐはっ!?」
ミルゼの本音の言葉が、グサグサとガルディアスへと刺さっていく。
「だからシンヤぐらいの距離感の人がいい」
「その気持ちに応えてあげたくはあるんだが、トワの補佐役である立場上、邪神側であるミルゼのところに出向くのはちょっとな」
「小僧、相手が誰かわかっているのか?。あの邪神に大いなる力をさずけられ、いづれ世界を混沌に染めあげ支配されるお方。その憂いを帯びたルビーの瞳。あどけなさとはかなさが合わさった、愛くるしい容姿。もはや見るものすべてを虜にする美少女さ! まさに闇夜のプリンセス! 女神フォルスティアなど、かすんで見えるわ!」
ガルディアスが急に立ち上がり、シンヤへ詰め寄りながら声高らかに力説しだす。
「そんなミルゼさまのお世話ができるなんて、光栄のあまり泣いて喜ぶレベルだぞ!」
「なんてオタク特有の早口……、あんたそんなキャラだったのか!?」
彼のイメージは、シリアス要素全開の恐ろしい男であった。しかし今のオタクのような早口でかたるガルディアスの姿を見ていると、これまで抱いていたイメージ像がどんどん崩壊していってしまう。
「それほどまでにミルゼさまの魅力が、すばらしいということだ!」
「――ガルディアス、はずかしいからそれ以上やめて……」
「しかしまだまだミルゼさまの魅力を、半分も伝えきれていません! もう少しお待ちを。いいか心して聞け、きさまら! ミルゼさまはな!」
ミルゼの静止の声を振り切り、再び熱くかたりつくそうとするガルディアス。
「――はぁ……、ミルゼの配下、なんかクセがある人多すぎない?」
そんな中、ミルゼが頭を抱え大きなため息をつくのであった。
あのあとトワがやってきたことでシンヤたちの身分がバレ、一気触発の状況に。しかし殺意を膨らませるミルゼに気づき、レネが来てくれなだめてくれたのだ。そのおかげでシンヤたちは命拾いをして、今にいたる。
「むー」
ほおを膨らませご立腹のミルゼ。
さっきから何度か話しかけても、怒りで取り付く島もなかった。
「シンヤ、気まずいよー、なんとかして……」
「そう言われてもだな」
ミルゼは明らかに機嫌が悪く、たじろぐしかないシンヤたち。
ちなみにレネは愉快そうに、シンヤたちとミルゼの様子を観察していたという。
「くくく、ミルゼさまよ。もうすぐ祭典が始まるというのに、そんなにムクれていて大丈夫か?」
「誰のせいだと思ってるの? レネ?」
「はて? そんなのそこの勇者たちであろう。なぜワレに矛先が向かっているのだ?」
ミルゼの非難の言葉に、レネは肩をすくめて白々しい態度を。
「原因はたしかにこの人たちだけど、元はといえばレネのせいでしょ。なんで排除せずに、客人として扱ってるの?」
「ここで邪魔者の勇者たちを始末するのは、容易かろう。しかしいいのか? ミルゼさまよ。こんな序盤の序盤に倒してしまって。あまりにあっけなさすぎて、おもしろくないではないか」
「別にミルゼはおもしろみとか求めてない」
「旅に出たばかりの新米勇者をつぶしにかかるなど、大人げないというもの。そんなことしては、魔王としての器が知れてしまうぞ」
「もっともらしいことを。じゃあ、そこは納得してあげる。でもミルゼの部屋に、この人たちをけしかけた件はどう説明するつもり? いきなり知らない人が入ってきて、どれだけびっくりしたと思ってるの?」
ミルゼはレネへ恨みがましい視線を向けながら、文句を口に。
「あのまま部屋にこもって待っていても、あれだろ? だから緊張をほぐす意味も込めて、刺激を与えてやろうかと」
「ほんとに?」
「くくく、白状すると、なにか愉快なことにならないかと期待してだがな」
悪びれた様子もなく、愉快げに笑うレネ。
「にしてもまさかこの小僧に身のお世話を任せるとは。よほど気に入ったらしいな。あの滅多に他者へなびかない、ミルゼさまが、クク」
そして彼女はニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべた。
これには怒りをあらわにするミルゼ。
「レネー!」
「ミルゼさま、そう怒るな。かわいい顔が台無しだぞ」
「だから誰のせいだと思ってるの!」
「くくく、かわいかろう。ワレらのミルゼさまは。あまりに愛くるしすぎて、もっといじり……、いや、愛でたくなってしまう」
プンプンするミルゼに対し、レネはなにやらうっとりしだす。
「昔からいつもいつもそうやって。ミルゼの配下としての自覚あるの?」
「そういわれてもな。ワレはミルゼさまをこうやって愛でるために、配下に加わったのだが」
「なっ!?」
「くくく、ミルゼ教ももとはミルゼさまのすばらしさを広める、ファンクラブとしてのノリで作ったわけだしな」
「レネー」
「ああ、その冷たいまなざしを向けるミルゼさまも、乙なものよの」
ミルゼのジト目に、身をくねくねして喜ぶレネ。
「――やっぱりこの人ヘンタイなんじゃ……」
「ではな。ミルゼさま成分も補充できたことだし、そろそろ祭典の準備に戻るとしよう。小僧ども、ミルゼさまの相手は任せたぞ」
レネはシンヤたちへ目くばせして、会議室から出ていこうとする。
「レネ、まだ話は!」
「くくく」
ミルゼが呼び止めるも、レネは部屋から出て行ってしまった。
そして部屋には、ミルゼとシンヤとトワが取り残される形に。
「行っちゃったな」
「むー、レネに一回、お灸をすえたほうがいいかも」
「ははは、まあまあ、仲がよくていいじゃないか。それだけミルゼが愛されてるってことだし、そうかっかしなくてもさ」
「今、ミルゼが怒ってる大半は、シンヤのせいなんだけど?」
ミルゼが今度はシンヤへと、ジト目を向けてきた。
「やば、矛先がこっちにきた……」
「シンヤ、いったいミルゼちゃんになにしたの?」
トワがシンヤの上着の袖をクイクイして、小声でたずねてくる。
「いや、信者のフリをしただけなんだか」
「それだけであそこまでぷんぷんするかな。なにかほかにやらかしたんじゃないの?」
「あー、もしかしてあれか。ミルゼのお願いを」
「そのことは忘れて! あと、それまでのやりとりとかも全部!」
心当たりに気づいていると、ミルゼが机をバンバンしながら必死にうったえてきた。
「え? どうしてだ?」
「敵にあんな醜態をさらしまくったからに決まってる!」
「醜態だなんて。年相応の女の子らしくて、かわいかったぞ」
「かわっ!? ~~~ッ!? なんであんなに甘えてしまったの、ミルゼ……」
シンヤの素直な感想に、ミルゼは顔を真っ赤にし面をくらった様子。そしてはずかしさのあまりか、頭をかかえ悶え始めた。
「――えっと……、ミルゼ?」
「とにかく! ミルゼはシンヤにもて遊ばれたの! やさしくするだけやさしくしてきて、ミルゼが気を許したところで裏切ってきた」
「うわー、それはシンヤが悪いよ。ようはまたいつものように、女の子をたらしこもうとしたわけでしょ?」
トワもジト目を向け、ダメ出ししてくる。
「いやいや、オレにそんなつもりはなくてだな!?」
「ぐすん」
よほど心が傷ついたのか、涙目になるミルゼ。
これによりトワの視線がさらにけわしいものに。
「ミルゼ、オレが悪かったから、そんな辛そうにしないでくれ! すごいいたたまれない気持ちになるから!」
こんな小さい女の子を泣かせてしまった罪悪感が、どんどん押し寄せてきてしまう。
そこへ部屋の扉が勢いよく開き、誰かが入ってきた。
「ミルゼさま! あんなやつら客人として、招き入れる必要はありません! 今すぐにでも八つ裂きに!」
「ガルディアス!?」
「きゃっ!?」
乱入してきたのは、封印の地でシンヤたちと死闘をくり広げた魔人のガルディアス。
トワはあのときの恐怖がよみがえってきたのか、怯えてシンヤに抱き着いてくる。
「――な……に……、ミルゼさまが泣いておられるだと!? きさまらいったいなにをした!」
涙目になっているミルゼに気づき、鬼の形相でシンヤたちをにらみつけてくるガルディアス。もはや殺意がどんどん膨れ上がっているのがわかった。
「待ってくれ、これは!」
「よくもミルゼさまを泣かせたな! 万死に値する! もはや客人など知ったことか! 今すぐ消し炭にしてやろう!」
「「ヒィッ!?」」
今すぐにでも攻撃を仕掛けてこようとするガルディアスに、震えあがるシンヤたち。
「ガルディアス、落ち着いて」
だがそこへミルゼの静止の声が。
「しかしミルゼさま!」
「一応この人たちは客人という扱いになってるから、ここはこらえて」
「――ッ! わかりました……」
ミルゼに対して忠実な臣下らしく、ガルディアスはしぶしぶであったが矛を収めてくれた。
「ミルゼ、期待とかさせてごめんな。オレはトワの補佐役だから、キミの世話役としてそばにいることはできないんだ」
今はとにかくミルゼをなぐさめることが先決と判断。心からの謝罪を。
「ふん、もうそのことは忘れてって言ってる」
するとミルゼはすねたように、プイっとそっぽを向いてしまった。
「小僧が世話役だと? ミルゼさま、ことの経緯はわかりませんが、なにも心を煩わせる必要はありません! あなたさまのお世話は、このガルディアスが喜んでさせてもらいますので」
そこへガルディアスがミルゼへ跪き、意気揚々と提案しだした。
「しなくていい。ガルディアスはいつも過保護すぎて、ちょっとうっとおしいレベルだから」
「な、なんですと!? そんなバカな……」
ミルゼのきっぱりとした否定に、ガルディアスは両ひざをつきがっくりうなだれてしまう。よっぽど精神的ダメージを受けてしまったらしい。まるで愛する愛娘に、突如反抗期で嫌われてしまった父親のように。
「過保護なまでに世話してくれるなら、いいじゃないか?」
「限度がある。ミルゼのやること一つ一つに、いちいち手助けしようとしてくるもん。あとお手を煩わせるわけにはいかないとか、危険とかでなかなか自由にさせてくれないし」
「それはさすがに、ちょっとうっとおしいかも」
「ぐぬぬ」
「あと心酔してくる熱量が高すぎて、なんか暑苦しい」
「ぐはっ!?」
ミルゼの本音の言葉が、グサグサとガルディアスへと刺さっていく。
「だからシンヤぐらいの距離感の人がいい」
「その気持ちに応えてあげたくはあるんだが、トワの補佐役である立場上、邪神側であるミルゼのところに出向くのはちょっとな」
「小僧、相手が誰かわかっているのか?。あの邪神に大いなる力をさずけられ、いづれ世界を混沌に染めあげ支配されるお方。その憂いを帯びたルビーの瞳。あどけなさとはかなさが合わさった、愛くるしい容姿。もはや見るものすべてを虜にする美少女さ! まさに闇夜のプリンセス! 女神フォルスティアなど、かすんで見えるわ!」
ガルディアスが急に立ち上がり、シンヤへ詰め寄りながら声高らかに力説しだす。
「そんなミルゼさまのお世話ができるなんて、光栄のあまり泣いて喜ぶレベルだぞ!」
「なんてオタク特有の早口……、あんたそんなキャラだったのか!?」
彼のイメージは、シリアス要素全開の恐ろしい男であった。しかし今のオタクのような早口でかたるガルディアスの姿を見ていると、これまで抱いていたイメージ像がどんどん崩壊していってしまう。
「それほどまでにミルゼさまの魅力が、すばらしいということだ!」
「――ガルディアス、はずかしいからそれ以上やめて……」
「しかしまだまだミルゼさまの魅力を、半分も伝えきれていません! もう少しお待ちを。いいか心して聞け、きさまら! ミルゼさまはな!」
ミルゼの静止の声を振り切り、再び熱くかたりつくそうとするガルディアス。
「――はぁ……、ミルゼの配下、なんかクセがある人多すぎない?」
そんな中、ミルゼが頭を抱え大きなため息をつくのであった。
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