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2章1部 アルスタリアへ
交易都市アルスタリア
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「えへへ、あまりの気持ちよさに、気づけば寝ちゃってました!」
「リア、よく眠れたか?」
「はい、おかげでごらんの通り、元気があり余ってます! ということでシンヤさん! トワさん! 遊びましょう! 気分的には前やっただるまさんが転んだですが、さすがに馬車ではムリですよね。じゃあ、ボードゲーム? しりとり? それともまた新しい遊びを教えてくれますか? わくわく!」
リアは目を輝かせ、うずうずしだす。
実は道中、リアが遊びたがり、いっぱい付き合ってあげたという。初めのほうは彼女が持ってきたボードゲームなどで遊んだりしていた。しかしリアがあまりにも楽しそうにしてくれていたため、もっと遊んであげたくなったのである。なのでこちらの世界の遊びをいろいろ教えてあげ、みんなで遊びまくったのだ。そのときリアはもちろんのこと、トワのはしゃぎっぷりも相当なもの。これまで病気のせいでそういう経験ができなかったからか。まるで無邪気な子供のように、全力で楽しんでいたという。ちなみにシンヤもシンヤでそんなほほえましい二人を見て、いつのまにか童心に帰って遊んでいたのであった。
「あはは、リアちゃんは元気だね」
寝ころんでいたトワは、目をこすりながら起き上がってくる。
「もうテンション爆上がり中です!」
「ははは、元気いっぱいなのは年相応でいいことだ。でもまさかリアがこんなにもパワフルな女の子だったなんてな」
「普段封印の巫女としているときは、少しでも体裁を保てるようがんばっていますから。なので素は基本こんな感じですよ!」
リアは自身の胸に手を当て、にっこり笑う。
「ふっ、とはいえ今のリアはいつもと一味違いますが。なんと封印の巫女として抑圧された日々を過ごしてきた反動が、猛烈に押し寄せてきてるんです! なのでより一層、はっちゃけ中なんですよ!」
そして彼女は不敵にほほえみ、胸元近くで拳をぐっとにぎりしめながらやる気に満ちあふれだした。
「リアちゃん、封印の巫女って、そんなに大変だったの?」
「はい、お祈りの時間や遠隔での封印の点検、街の人たちに顔を見せに行ったり、演説したり。書類へのサインや教会のそうじとか、ほかにもいろいろ。もうやることが多くて、全然遊び足りなかったです。しかも封印の巫女の威厳の問題とかで、あまりにわんぱく系なやつは禁止されてましたし……」
リアはがっくり肩を落としながら答えた。
まだまだ年端のいかない子供なのに仕事をさせられ、おまけにやりたいことまで制限されるとは。もはや彼女がはっちゃけたくなる気持ちもよくわかった。
「それはちょっときついな」
「ですがその堅苦しい立場とも、しばらくはおさらば! この自由を存分に満喫しようと思ってる所存です! わくわくドキドキの冒険はもちろん、外で元気よく遊びまわったり、釣りやハイキングといったアウトドアも押さえておきたいですね!」
しかし表情を曇らせるのもつかの間、子供らしい無邪気さ全開でやりたいことを熱くかたるリア。
「ははは、リアもリアでこの旅を満喫する気満々だな」
「はっ!? さすがに浮かれすぎですよね?」
リアは手をもじもじさせながら、目をふせる。
「いいや、そんなことないさ。オレたちも大体そんなノリだし、どこまでも付き合うぜ!」
彼女の頭をやさしくなでながら、ほほえみかける。
トワはトワでリアの気持ちを察し、ノってくれたようで。
「うんうん! いっぱい楽しんじゃお!」
「わーい、お二人についてきて、本当によかったです!」
これにはバンザイしながら喜ぶリア。
「お客さん、少し馬車を止めます。あそこからアルスタリアが一望できますので、よかったら見てきたらどうですか?」
そんなふうにワイワイやっていると、馬車が止まり運転手が声をかけてきた。
「アルスタリアが! 行こう! シンヤ! リアちゃん!」
「おう」
「はい!」
駆け足で向かうトワについていくシンヤとリア。
現在いるところはかなり高所地帯であり、馬車の運転手が進めてくれた崖のところからはアルスタリアの街が見下ろせた。
「わー! すごい、すごい! 大きな街! 港もあるし、あれがリアちゃんの言ってた教会? もうあまりに豪華絢爛すぎて、お城みたいだよ!」
「リアも初めて見ました! これがあの有名なアルスタリアの街! なんてステキな街並みなんでしょうか!」
トワとリアはぴょんぴょん跳びはねながら、目を輝かせる。
彼女たちがはしゃぐのも無理はない。シンヤもシンヤで目の前の光景に感動していたのだから。
まず驚くのは広大な土地に広がる街並みであろう。事前に聞いた話によると、各国の王都レベルの規模だとか。そんなバカでかいアルスタリアの街は、ここからでも人がにぎわっているのがわかるメイン通りだったり、緑豊かな広場だったり。いかにも重要そうな立派な建物などがちらほらあったり。さらに港のほうはしっかり整備されており、太陽の光をキラキラ反射している海には大きな船が何隻も。そして一番目が惹かれるのは街はずれの方にある、見るからに荘厳な建物。まるで西洋風のお城のような、大聖堂と言う言葉がしっくりくる教会であった。
「へー、ここが交易都市アルスタリアか」
「この街周辺はどの国にも属さない中立地帯となっていて、フォルスティア大陸の中でも随一の三つの大国に囲まれているんですよ。西はリアたちがさっきまでいたユーリアナ王国。国土が一番大きく、緑豊かで人々の活気あふれる国です」
リアが興奮しながらも、アルスタリアの街について説明してくれる。
「そして北は魔法と学術の国アルマティナ。大地にマナがあふれていて、鉱物などの資源が豊富なんだそうです。あと研究業が盛んで、優秀な魔法使いや学者が集う国としても有名ですね。そして東側にライズモンド帝国。山岳地帯が多く、寒冷な気候が特徴ですね。この国はフォルスティア大陸の中でもとくに魔物の進行が激しく、軍事力にとくに力を入れて兵力がすごいそうです。そんな大国に囲まれているため、アルスタリアでは交易がとても盛んで、交通の便もいいいらしいですよ。そしてリアたちが信仰するフォルスティア教の中心地であり、冒険者ギルドの本部もこの街にありますね」
「おぉ、とにかくすごいところなんだな。情報も集まりそうだし、なにかあったらすぐに現地にいける。いっそ活動拠点にするのもありだな」
「ここにしばらく滞在するの! わーい、これだけ大きな街ならいっぱいお店とかあるよね! ショッピングにおいしいものめぐりし放題! もうわくわくが止まらないよ!」
これからのことを考えていると、トワが両腕をブンブンしながらはしゃぎだす。
「トワさん、楽しみですね!」
「ねー、リアちゃん!」
そして二人は手を取り合い、今後のアルスタリアでの生活に胸をはずませていた。
「ぜひ満喫してくれたらいいが、やるべきこともあるからな。まず金銭面の問題だ。いつまでもフローラに借りっぱなしってわけにはいかないし、自分たちでも稼げるようにしないと」
リザベルトの街にいるころからずっと、フローラのお金でなんとかなっているのだ。さすがにこのまま彼女に頼りっぱなしでいるのは、心苦しい。せめて自分たちで自立できるぐらいにはなっておかなければ。
ちなみにフローラと別れる前、彼女からさらにお金を持たせてもらっており、当分生活面は安泰なのであった。
「――あはは……、そうだよね」
「ちょうど冒険者ギルドの本部があることだし、冒険者になり依頼を受けて稼ごうと思う。いろいろ経験もつめて、成長にはもってこいだろ。金も入って一石二鳥ってな」
聞いたところによると、冒険者は各地を回りながら人々の依頼を受け生計を立てるのだとか。世界を救うため旅するシンヤたちにとって、冒険者になるのはまさに最適解であろう。
「うん、ナイスアイディア! 困ってる人も助けられるしね!」
「あと平行して旅の仲間も探したいところだ。とくに旅に慣れていて、冒険の知識や経験が豊富な人がいいな。冒険に不慣れなオレたちを、ぜひ導いてほしい」
シンヤとトワはこの世界に来たばっかで、冒険にまったく慣れていない。リアも封印の巫女としてずっとリザベルトの街にいたため、どちらかというとシンヤたちと同じ立場。よって今後フォルスティア大陸各地を回ることを考えると、旅に精通しており、冒険に役立つ知識や技術を持った者が、仲間に加わってくれると非常にありがたかった。なのでワンチャン、様々な人が集まるであろう交易都市アルスタリアで新たな仲間を見つけたかったという。
「確かにそれだと心強いね! いい人が入ってくれたらいいんだけど」
「ははは、そこは勇者さまのカリスマに期待だな。ぜひともいい人材を引き入れてきてくれ」
「わ、わたし!? ――う、うん、が、がんばってみるよ!」
ぎこちない返事をしながら、両腕で小さくガッツポーズするトワ。
「ははは、期待してるぞ」
そんなトワの頭をポンポンしながら、アルスタリアの街を見下ろす。
新たな出会いの予感を抱きながら。
「リア、よく眠れたか?」
「はい、おかげでごらんの通り、元気があり余ってます! ということでシンヤさん! トワさん! 遊びましょう! 気分的には前やっただるまさんが転んだですが、さすがに馬車ではムリですよね。じゃあ、ボードゲーム? しりとり? それともまた新しい遊びを教えてくれますか? わくわく!」
リアは目を輝かせ、うずうずしだす。
実は道中、リアが遊びたがり、いっぱい付き合ってあげたという。初めのほうは彼女が持ってきたボードゲームなどで遊んだりしていた。しかしリアがあまりにも楽しそうにしてくれていたため、もっと遊んであげたくなったのである。なのでこちらの世界の遊びをいろいろ教えてあげ、みんなで遊びまくったのだ。そのときリアはもちろんのこと、トワのはしゃぎっぷりも相当なもの。これまで病気のせいでそういう経験ができなかったからか。まるで無邪気な子供のように、全力で楽しんでいたという。ちなみにシンヤもシンヤでそんなほほえましい二人を見て、いつのまにか童心に帰って遊んでいたのであった。
「あはは、リアちゃんは元気だね」
寝ころんでいたトワは、目をこすりながら起き上がってくる。
「もうテンション爆上がり中です!」
「ははは、元気いっぱいなのは年相応でいいことだ。でもまさかリアがこんなにもパワフルな女の子だったなんてな」
「普段封印の巫女としているときは、少しでも体裁を保てるようがんばっていますから。なので素は基本こんな感じですよ!」
リアは自身の胸に手を当て、にっこり笑う。
「ふっ、とはいえ今のリアはいつもと一味違いますが。なんと封印の巫女として抑圧された日々を過ごしてきた反動が、猛烈に押し寄せてきてるんです! なのでより一層、はっちゃけ中なんですよ!」
そして彼女は不敵にほほえみ、胸元近くで拳をぐっとにぎりしめながらやる気に満ちあふれだした。
「リアちゃん、封印の巫女って、そんなに大変だったの?」
「はい、お祈りの時間や遠隔での封印の点検、街の人たちに顔を見せに行ったり、演説したり。書類へのサインや教会のそうじとか、ほかにもいろいろ。もうやることが多くて、全然遊び足りなかったです。しかも封印の巫女の威厳の問題とかで、あまりにわんぱく系なやつは禁止されてましたし……」
リアはがっくり肩を落としながら答えた。
まだまだ年端のいかない子供なのに仕事をさせられ、おまけにやりたいことまで制限されるとは。もはや彼女がはっちゃけたくなる気持ちもよくわかった。
「それはちょっときついな」
「ですがその堅苦しい立場とも、しばらくはおさらば! この自由を存分に満喫しようと思ってる所存です! わくわくドキドキの冒険はもちろん、外で元気よく遊びまわったり、釣りやハイキングといったアウトドアも押さえておきたいですね!」
しかし表情を曇らせるのもつかの間、子供らしい無邪気さ全開でやりたいことを熱くかたるリア。
「ははは、リアもリアでこの旅を満喫する気満々だな」
「はっ!? さすがに浮かれすぎですよね?」
リアは手をもじもじさせながら、目をふせる。
「いいや、そんなことないさ。オレたちも大体そんなノリだし、どこまでも付き合うぜ!」
彼女の頭をやさしくなでながら、ほほえみかける。
トワはトワでリアの気持ちを察し、ノってくれたようで。
「うんうん! いっぱい楽しんじゃお!」
「わーい、お二人についてきて、本当によかったです!」
これにはバンザイしながら喜ぶリア。
「お客さん、少し馬車を止めます。あそこからアルスタリアが一望できますので、よかったら見てきたらどうですか?」
そんなふうにワイワイやっていると、馬車が止まり運転手が声をかけてきた。
「アルスタリアが! 行こう! シンヤ! リアちゃん!」
「おう」
「はい!」
駆け足で向かうトワについていくシンヤとリア。
現在いるところはかなり高所地帯であり、馬車の運転手が進めてくれた崖のところからはアルスタリアの街が見下ろせた。
「わー! すごい、すごい! 大きな街! 港もあるし、あれがリアちゃんの言ってた教会? もうあまりに豪華絢爛すぎて、お城みたいだよ!」
「リアも初めて見ました! これがあの有名なアルスタリアの街! なんてステキな街並みなんでしょうか!」
トワとリアはぴょんぴょん跳びはねながら、目を輝かせる。
彼女たちがはしゃぐのも無理はない。シンヤもシンヤで目の前の光景に感動していたのだから。
まず驚くのは広大な土地に広がる街並みであろう。事前に聞いた話によると、各国の王都レベルの規模だとか。そんなバカでかいアルスタリアの街は、ここからでも人がにぎわっているのがわかるメイン通りだったり、緑豊かな広場だったり。いかにも重要そうな立派な建物などがちらほらあったり。さらに港のほうはしっかり整備されており、太陽の光をキラキラ反射している海には大きな船が何隻も。そして一番目が惹かれるのは街はずれの方にある、見るからに荘厳な建物。まるで西洋風のお城のような、大聖堂と言う言葉がしっくりくる教会であった。
「へー、ここが交易都市アルスタリアか」
「この街周辺はどの国にも属さない中立地帯となっていて、フォルスティア大陸の中でも随一の三つの大国に囲まれているんですよ。西はリアたちがさっきまでいたユーリアナ王国。国土が一番大きく、緑豊かで人々の活気あふれる国です」
リアが興奮しながらも、アルスタリアの街について説明してくれる。
「そして北は魔法と学術の国アルマティナ。大地にマナがあふれていて、鉱物などの資源が豊富なんだそうです。あと研究業が盛んで、優秀な魔法使いや学者が集う国としても有名ですね。そして東側にライズモンド帝国。山岳地帯が多く、寒冷な気候が特徴ですね。この国はフォルスティア大陸の中でもとくに魔物の進行が激しく、軍事力にとくに力を入れて兵力がすごいそうです。そんな大国に囲まれているため、アルスタリアでは交易がとても盛んで、交通の便もいいいらしいですよ。そしてリアたちが信仰するフォルスティア教の中心地であり、冒険者ギルドの本部もこの街にありますね」
「おぉ、とにかくすごいところなんだな。情報も集まりそうだし、なにかあったらすぐに現地にいける。いっそ活動拠点にするのもありだな」
「ここにしばらく滞在するの! わーい、これだけ大きな街ならいっぱいお店とかあるよね! ショッピングにおいしいものめぐりし放題! もうわくわくが止まらないよ!」
これからのことを考えていると、トワが両腕をブンブンしながらはしゃぎだす。
「トワさん、楽しみですね!」
「ねー、リアちゃん!」
そして二人は手を取り合い、今後のアルスタリアでの生活に胸をはずませていた。
「ぜひ満喫してくれたらいいが、やるべきこともあるからな。まず金銭面の問題だ。いつまでもフローラに借りっぱなしってわけにはいかないし、自分たちでも稼げるようにしないと」
リザベルトの街にいるころからずっと、フローラのお金でなんとかなっているのだ。さすがにこのまま彼女に頼りっぱなしでいるのは、心苦しい。せめて自分たちで自立できるぐらいにはなっておかなければ。
ちなみにフローラと別れる前、彼女からさらにお金を持たせてもらっており、当分生活面は安泰なのであった。
「――あはは……、そうだよね」
「ちょうど冒険者ギルドの本部があることだし、冒険者になり依頼を受けて稼ごうと思う。いろいろ経験もつめて、成長にはもってこいだろ。金も入って一石二鳥ってな」
聞いたところによると、冒険者は各地を回りながら人々の依頼を受け生計を立てるのだとか。世界を救うため旅するシンヤたちにとって、冒険者になるのはまさに最適解であろう。
「うん、ナイスアイディア! 困ってる人も助けられるしね!」
「あと平行して旅の仲間も探したいところだ。とくに旅に慣れていて、冒険の知識や経験が豊富な人がいいな。冒険に不慣れなオレたちを、ぜひ導いてほしい」
シンヤとトワはこの世界に来たばっかで、冒険にまったく慣れていない。リアも封印の巫女としてずっとリザベルトの街にいたため、どちらかというとシンヤたちと同じ立場。よって今後フォルスティア大陸各地を回ることを考えると、旅に精通しており、冒険に役立つ知識や技術を持った者が、仲間に加わってくれると非常にありがたかった。なのでワンチャン、様々な人が集まるであろう交易都市アルスタリアで新たな仲間を見つけたかったという。
「確かにそれだと心強いね! いい人が入ってくれたらいいんだけど」
「ははは、そこは勇者さまのカリスマに期待だな。ぜひともいい人材を引き入れてきてくれ」
「わ、わたし!? ――う、うん、が、がんばってみるよ!」
ぎこちない返事をしながら、両腕で小さくガッツポーズするトワ。
「ははは、期待してるぞ」
そんなトワの頭をポンポンしながら、アルスタリアの街を見下ろす。
新たな出会いの予感を抱きながら。
応援ありがとうございます!
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