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1章4部 トワの答え
シンヤ、トワvsガルディアス
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シンヤとトワは、神殿の最奥らしき部屋がある扉の前にたどり着く。
フローラによるとこの最奥の部屋から地下に降りられ、その先に邪神の眷属が封印されているフロアがあるとか。
「この先に居やがるな」
扉の奥から禍々しい気配が一つ。ガルディアスがいるのは間違いないようだ。
それと地下からはさらに大きな魔の気配が、だんだん濃くなってきている。どうやらまだフローラは食い止められていないらしい。これは早く加勢に向かわなければ。
「ねえ! シンヤ! やっぱり考え直した方がいいんじゃない!? 今のわたしじゃ、あの魔人とやり合うのは無謀すぎるよ!」
ふとトワがシンヤの上着の袖をクイクイと引っ張りながら、うったえてくる。
「ダメに決まってるだろ。あの状態は死ぬリスクが、一気に跳ね上がるんだから。というか怨念に染まり、殺戮マシーンのように戦う勇者ってどうなんだ? 勇者ならもっとみんなに希望を与えるような、頼もしい戦い方をしろよ。あれだと、引かれるだけだぞ」
「――た、確かに言われてみれば……。じゃあ、どの道あの力は完全に封印するしかないってこと……」
シンヤの正論に、肩をがっくり落とすトワ。
「そういうことだ。あんな暴走じみた無茶な戦い、トワのイメージとはかけ離れすぎてる。これを機にあんな得体の知れないものに頼らず、自分の力でなんとかしてけ」
「――でもそれだと一気に戦力ダウンに……」
「さっきはあれだったが、落ち着いてやれば大丈夫。あとはあの状態での力の使い方を参考にしてものにすれば、十分戦えるはずだ。それになにもトワ一人で戦うわけじゃないんだ。オレが全力でサポートする。そういうわけだから仲間を頼ってけ」
彼女の肩に手を置き、頼もしく笑いかける。
「そう、だよね!」
「第一あの魔人は極光の一撃で、もうかなり弱ってたはず。あれなら今のオレたちでもやれるはずだ」
「うん! なんだかいける気がしてきた!」
トワは両腕でガッツポーズしながら、闘志を燃やしだす。
「おう、その意気だ。期待してるぜ、勇者さま」
そんな彼女の背中をぽんっと軽くたたき、気合を後押ししておいた。
「よーし、いっくぞー!」
そして扉を開け二人で奥に。
このフロアもまた広々としており、荘厳な柱や石像があちこちに設置されている。さらに一番奥の壁に、女神をモチーフにした巨大な石造が。そしてその下に、地下に降りられるであろう階段があった。
「きたか」
部屋の中央付近にはガルディアスの姿が。極光の光によって受けた傷は今だ完全に塞がっておらず、重いダメージを負っているのがわかる。それに魔のオーラもかなり弱弱しくなっており、彼にとってかなり厳しい状態みたいだ。
「ここから先は通さんぞ!」
「その傷でまだやる気かよ」
「フン、ここでキサマらにやられる未来だろうが、ただでは終われん!」
ガルディアスはかぶっていたフードを、勢いよく脱ぎ捨てる。
今までフードをかぶっていたため顔がよく見れなかったが、見た目は20代後半ぐらいだろうか。銀髪で赤い瞳をした、冷たい雰囲気をまとう青年であった。
「ワガ命のすべてをかけ、せめてあのお方の復活まで時間を稼いでみせよう!」
そして覚悟に満ちた瞳で、腕を振りかざしながら宣言を。
すると次の瞬間、彼の禍々しいオーラが一気に膨れ上がった。だがその急上昇ぶりは明らかに以上。まるで命を燃やしているかのようであり、相当無理しているのがわかる。もはやこの一戦に自身のすべてをかける気のようだ。
「決死の覚悟ってやつか」
「すごい気迫。あの魔人にとって、それほどまでに邪神の眷属が大切な存在ってことなんだね」
邪神の眷属のためすべてをかけて戦いを挑むガルディアスの姿に、敵ながら感動を覚えずにはいられないシンヤたち。
きっと彼は譲れないもののために、最後まで抗うのだろう。たとえそれが自分の命をなげうつことになったとしてもだ。
「これはそう簡単にやらせてくれなさそうだ。トワ気をつけろ」
「うん!」
「さあ、ゆくぞ!」
黒雷の剣を取り出し、迎え撃とうとするガルディアス。
そして決戦の火蓋が切って落とされる。
「じゃあ、遠慮なく! くらえ!」
シンヤは取り出したリボルバーをガルディアスに向け、引き金を引いた。
放(はな)たれた弾丸は標的へと飛翔し、風穴を開けようとするが。
「フン」
しかしガルディアスの振るう黒雷の剣によって、はじかれてしまう。
「おらおらおら!」
だがそんなのおかまいなしに連射を。続けざまに放たれる銃弾が、次々と敵へと押し寄せていく。
「行け! トワ!」
「うん!」
シンヤの合図にトワがガルディアスに突撃を。
そんな中、銃弾は黒雷の剣によって防がれ続けているが、敵を押さえられていた。おかげで彼女が魔法で迎撃されず、接近戦においても先手を取ることに成功する。
「はぁぁぁ!」
「チッ!」
トワが振りかざす極光をまとった斬撃が、ガルディアスを強襲。
しかし極光の一閃は、敵に届く前に黒雷の剣により阻まれてしまう。だが彼女はそれでも止まらず、二撃、三撃目を振るった。
「なんだその甘い攻撃は?」
だがその連撃もことごとく防がれてしまう。
それもしかたのないことだろう。今の彼女の攻撃に、先ほどガルディアスと戦ったときのようなキレはない。それなりには攻撃できているが、精度や威力、さらに剣にまとう極光どれもが劣っていたといっていい。ウルフといったザコ敵ならば問題なくやれるだろうが、さすがにボスクラスだとまだまだ心もとなかった。
「ワレをなめているのか!」
「きゃっ!?」
ガルディアスの大振りの斬撃が、トワを襲う。
彼女はなんとか剣で防ぐが、その勢いにノックバックされてしまった。その隙を確実に攻めようと、間合いを詰めるガルディアス。
「させるかよ!」
だがそこへリボルバーに弾丸を装填しおえたシンヤが動く。即座に照準を合わせ二連射。
「こしゃくな!」
このまま攻撃に転じればもろに銃弾をくらうため、ガルディアスは後方に引きながらも黒雷の剣ではじく。
「そこだよ!」
そこへ体勢を立て直したトワが、剣を振りかぶりながら前へ。斬撃を放った。
「クッ!?」
彼女の攻撃はさばかれるも、敵の脇腹をかすめダメージを与えることに成功する。
これにはたまらず敵はさらに後方へとさがり、距離をとろうと。しかしたださがるのではなく、シンヤへ左手を向けながらだ。
「黒雷の矢よ!」
そしてガルディアスから掃射される、迸る漆黒の雷で生成された七本の矢。
放たれた矢は黒い閃光となって標的に牙を剥くが。
「わるいが、オレには当たらないぜ!」
シンヤは敵の攻撃を紙一重にかわしてみせる。予知のスキルによる攻撃察知能力で、その攻撃範囲などを事前に把握できるのだ。なのでどんな攻撃がくるかなんとなくわかり、あとはそれにしたがい対応すれば、被害を最小限に抑えることができる。それゆえ遠距離攻撃でシンヤにダメージを与えるのは、かなり難しいといっていい。
回避後、敵の側面をとるように走りながら、リボルバーをぶっ放していく。さらにそれに続いて、攻撃を仕掛けるトワ。
今や精度抜群の銃撃がトワを的確に援護し、彼女の攻撃や防御の手助けを。おかげで戦力が落ちてしまったトワでも、ガルディアスと真っ向からぶつかりあえる展開に。もはや敵にとっては歯痒いばかりであろう。トワの隙を突くものなら、銃弾が飛んできて邪魔を。そうでなくても銃撃にさらされ、対応しなければならないのだ。ゆえにガルディアスはその原因を作っているシンヤに、トワと斬り合いながらも魔法を撃つ。しかし予知のスキルによって、そのどれもが空振りに終わる結果に。となればシンヤに接近戦を仕掛けたいところだが、極光の一撃必殺を持つトワがいる。そのためうかつに攻めれば、それがまさに命取りに。よってガルディアスはこの現状を維持しなくてはならなくなり。
(このまま押し切ればいける!)
銃弾と極光の剣が次第にガルディアスを追い詰めていく。
「次で決める! シンヤお願い!」
「おう!」
トワの援護射撃のオーダーに、全力で応える。
リボルバーに装填されていた弾丸四発を、ガルディアスに一斉掃射した。
「ヌ!?」
シンヤの銃撃がさばかれながらも。敵をその場に押さえこみさらに体勢を崩させる。
その絶好のチャンスに斬りかかろうとするトワ。
「はぁぁぁっ!」
「チッ!? 黒雷の閃光よ!」
その間際ガルディアスが、とっさに左手で雷撃を放つ。
だがあいにくトワの極光の前に、闇に染まった魔法は効かない。それは先ほどの戦いで、女神の怨念に染まった彼女が証明している。それにあの状態でないトワならちゃんと敵の攻撃を対処し、それから再び攻撃に移るだろう。なので安心して見てられた。きっと敵の魔法を極光で断ち切り、敵の懐に潜り込むはずだ。そして戦いが終わる。体勢を崩しただけでなく魔法を撃った反動も合わさり、トワの剣に斬り裂かれるだろう。たとえギリギリ防がれても、シンヤが逃しはしない。即座に一発リロードしたリボルバーをかまえて前へ。この一発を確実に撃ち込み、敵を戦闘不能にする気でいた。
(これでようやく!)
勝ったと安堵したまさにそのとき。
「きゃっ!?」
なんとトワが黒雷を防いで突っ込まず、とっさに右後ろ方向に跳び引いたのだ。しかもそのあと頭を抱えながらうずくまり、ブルブル震えだしたという。
これにはシンヤと同じく、ガルディアスも完全に予想外だったらしい。向こうからしてみれば、もはや死を覚悟していた場面。それがこんなことになったのだ。あまりに拍子抜けしすぎて無防備の彼女に攻撃できず、そのまま大きく後方に跳躍してさがっていった。
「おい、トワ! なにやってるんだ!」
慌ててトワの方に駆けより、声を荒げるしかない。
「だってあれ雷だよ!? 怖いに決まってるじゃん!」
彼女は今だ頭を抱えて、涙目でうったえてくる。
「もしかしてトワ、雷がダメなタイプか?」
「うん、雷雨の日は、いつもふとんに潜り込んで震えてた……」
もはやガクブル状態でうなづくトワ。どうやら敵の雷撃が、彼女のトラウマを思いっきり刺激しているらしい。
「――マジか……」
そういえばガルディアスがシンヤに向け黒雷の魔法を行使していたとき、一瞬トワの動きが止まっていたがそれが原因だったみたいだ。そのときはなんとか耐えていたみたいだが、さすがに自分に向けて放たれたとなると、あまりの恐怖に怖じ気づくしかなかったらしい。
となると状況はマズイ展開に。ガルディアスが雷撃の魔法を撃った瞬間、トワが役立たずになる恐れがあるのだから。
フローラによるとこの最奥の部屋から地下に降りられ、その先に邪神の眷属が封印されているフロアがあるとか。
「この先に居やがるな」
扉の奥から禍々しい気配が一つ。ガルディアスがいるのは間違いないようだ。
それと地下からはさらに大きな魔の気配が、だんだん濃くなってきている。どうやらまだフローラは食い止められていないらしい。これは早く加勢に向かわなければ。
「ねえ! シンヤ! やっぱり考え直した方がいいんじゃない!? 今のわたしじゃ、あの魔人とやり合うのは無謀すぎるよ!」
ふとトワがシンヤの上着の袖をクイクイと引っ張りながら、うったえてくる。
「ダメに決まってるだろ。あの状態は死ぬリスクが、一気に跳ね上がるんだから。というか怨念に染まり、殺戮マシーンのように戦う勇者ってどうなんだ? 勇者ならもっとみんなに希望を与えるような、頼もしい戦い方をしろよ。あれだと、引かれるだけだぞ」
「――た、確かに言われてみれば……。じゃあ、どの道あの力は完全に封印するしかないってこと……」
シンヤの正論に、肩をがっくり落とすトワ。
「そういうことだ。あんな暴走じみた無茶な戦い、トワのイメージとはかけ離れすぎてる。これを機にあんな得体の知れないものに頼らず、自分の力でなんとかしてけ」
「――でもそれだと一気に戦力ダウンに……」
「さっきはあれだったが、落ち着いてやれば大丈夫。あとはあの状態での力の使い方を参考にしてものにすれば、十分戦えるはずだ。それになにもトワ一人で戦うわけじゃないんだ。オレが全力でサポートする。そういうわけだから仲間を頼ってけ」
彼女の肩に手を置き、頼もしく笑いかける。
「そう、だよね!」
「第一あの魔人は極光の一撃で、もうかなり弱ってたはず。あれなら今のオレたちでもやれるはずだ」
「うん! なんだかいける気がしてきた!」
トワは両腕でガッツポーズしながら、闘志を燃やしだす。
「おう、その意気だ。期待してるぜ、勇者さま」
そんな彼女の背中をぽんっと軽くたたき、気合を後押ししておいた。
「よーし、いっくぞー!」
そして扉を開け二人で奥に。
このフロアもまた広々としており、荘厳な柱や石像があちこちに設置されている。さらに一番奥の壁に、女神をモチーフにした巨大な石造が。そしてその下に、地下に降りられるであろう階段があった。
「きたか」
部屋の中央付近にはガルディアスの姿が。極光の光によって受けた傷は今だ完全に塞がっておらず、重いダメージを負っているのがわかる。それに魔のオーラもかなり弱弱しくなっており、彼にとってかなり厳しい状態みたいだ。
「ここから先は通さんぞ!」
「その傷でまだやる気かよ」
「フン、ここでキサマらにやられる未来だろうが、ただでは終われん!」
ガルディアスはかぶっていたフードを、勢いよく脱ぎ捨てる。
今までフードをかぶっていたため顔がよく見れなかったが、見た目は20代後半ぐらいだろうか。銀髪で赤い瞳をした、冷たい雰囲気をまとう青年であった。
「ワガ命のすべてをかけ、せめてあのお方の復活まで時間を稼いでみせよう!」
そして覚悟に満ちた瞳で、腕を振りかざしながら宣言を。
すると次の瞬間、彼の禍々しいオーラが一気に膨れ上がった。だがその急上昇ぶりは明らかに以上。まるで命を燃やしているかのようであり、相当無理しているのがわかる。もはやこの一戦に自身のすべてをかける気のようだ。
「決死の覚悟ってやつか」
「すごい気迫。あの魔人にとって、それほどまでに邪神の眷属が大切な存在ってことなんだね」
邪神の眷属のためすべてをかけて戦いを挑むガルディアスの姿に、敵ながら感動を覚えずにはいられないシンヤたち。
きっと彼は譲れないもののために、最後まで抗うのだろう。たとえそれが自分の命をなげうつことになったとしてもだ。
「これはそう簡単にやらせてくれなさそうだ。トワ気をつけろ」
「うん!」
「さあ、ゆくぞ!」
黒雷の剣を取り出し、迎え撃とうとするガルディアス。
そして決戦の火蓋が切って落とされる。
「じゃあ、遠慮なく! くらえ!」
シンヤは取り出したリボルバーをガルディアスに向け、引き金を引いた。
放(はな)たれた弾丸は標的へと飛翔し、風穴を開けようとするが。
「フン」
しかしガルディアスの振るう黒雷の剣によって、はじかれてしまう。
「おらおらおら!」
だがそんなのおかまいなしに連射を。続けざまに放たれる銃弾が、次々と敵へと押し寄せていく。
「行け! トワ!」
「うん!」
シンヤの合図にトワがガルディアスに突撃を。
そんな中、銃弾は黒雷の剣によって防がれ続けているが、敵を押さえられていた。おかげで彼女が魔法で迎撃されず、接近戦においても先手を取ることに成功する。
「はぁぁぁ!」
「チッ!」
トワが振りかざす極光をまとった斬撃が、ガルディアスを強襲。
しかし極光の一閃は、敵に届く前に黒雷の剣により阻まれてしまう。だが彼女はそれでも止まらず、二撃、三撃目を振るった。
「なんだその甘い攻撃は?」
だがその連撃もことごとく防がれてしまう。
それもしかたのないことだろう。今の彼女の攻撃に、先ほどガルディアスと戦ったときのようなキレはない。それなりには攻撃できているが、精度や威力、さらに剣にまとう極光どれもが劣っていたといっていい。ウルフといったザコ敵ならば問題なくやれるだろうが、さすがにボスクラスだとまだまだ心もとなかった。
「ワレをなめているのか!」
「きゃっ!?」
ガルディアスの大振りの斬撃が、トワを襲う。
彼女はなんとか剣で防ぐが、その勢いにノックバックされてしまった。その隙を確実に攻めようと、間合いを詰めるガルディアス。
「させるかよ!」
だがそこへリボルバーに弾丸を装填しおえたシンヤが動く。即座に照準を合わせ二連射。
「こしゃくな!」
このまま攻撃に転じればもろに銃弾をくらうため、ガルディアスは後方に引きながらも黒雷の剣ではじく。
「そこだよ!」
そこへ体勢を立て直したトワが、剣を振りかぶりながら前へ。斬撃を放った。
「クッ!?」
彼女の攻撃はさばかれるも、敵の脇腹をかすめダメージを与えることに成功する。
これにはたまらず敵はさらに後方へとさがり、距離をとろうと。しかしたださがるのではなく、シンヤへ左手を向けながらだ。
「黒雷の矢よ!」
そしてガルディアスから掃射される、迸る漆黒の雷で生成された七本の矢。
放たれた矢は黒い閃光となって標的に牙を剥くが。
「わるいが、オレには当たらないぜ!」
シンヤは敵の攻撃を紙一重にかわしてみせる。予知のスキルによる攻撃察知能力で、その攻撃範囲などを事前に把握できるのだ。なのでどんな攻撃がくるかなんとなくわかり、あとはそれにしたがい対応すれば、被害を最小限に抑えることができる。それゆえ遠距離攻撃でシンヤにダメージを与えるのは、かなり難しいといっていい。
回避後、敵の側面をとるように走りながら、リボルバーをぶっ放していく。さらにそれに続いて、攻撃を仕掛けるトワ。
今や精度抜群の銃撃がトワを的確に援護し、彼女の攻撃や防御の手助けを。おかげで戦力が落ちてしまったトワでも、ガルディアスと真っ向からぶつかりあえる展開に。もはや敵にとっては歯痒いばかりであろう。トワの隙を突くものなら、銃弾が飛んできて邪魔を。そうでなくても銃撃にさらされ、対応しなければならないのだ。ゆえにガルディアスはその原因を作っているシンヤに、トワと斬り合いながらも魔法を撃つ。しかし予知のスキルによって、そのどれもが空振りに終わる結果に。となればシンヤに接近戦を仕掛けたいところだが、極光の一撃必殺を持つトワがいる。そのためうかつに攻めれば、それがまさに命取りに。よってガルディアスはこの現状を維持しなくてはならなくなり。
(このまま押し切ればいける!)
銃弾と極光の剣が次第にガルディアスを追い詰めていく。
「次で決める! シンヤお願い!」
「おう!」
トワの援護射撃のオーダーに、全力で応える。
リボルバーに装填されていた弾丸四発を、ガルディアスに一斉掃射した。
「ヌ!?」
シンヤの銃撃がさばかれながらも。敵をその場に押さえこみさらに体勢を崩させる。
その絶好のチャンスに斬りかかろうとするトワ。
「はぁぁぁっ!」
「チッ!? 黒雷の閃光よ!」
その間際ガルディアスが、とっさに左手で雷撃を放つ。
だがあいにくトワの極光の前に、闇に染まった魔法は効かない。それは先ほどの戦いで、女神の怨念に染まった彼女が証明している。それにあの状態でないトワならちゃんと敵の攻撃を対処し、それから再び攻撃に移るだろう。なので安心して見てられた。きっと敵の魔法を極光で断ち切り、敵の懐に潜り込むはずだ。そして戦いが終わる。体勢を崩しただけでなく魔法を撃った反動も合わさり、トワの剣に斬り裂かれるだろう。たとえギリギリ防がれても、シンヤが逃しはしない。即座に一発リロードしたリボルバーをかまえて前へ。この一発を確実に撃ち込み、敵を戦闘不能にする気でいた。
(これでようやく!)
勝ったと安堵したまさにそのとき。
「きゃっ!?」
なんとトワが黒雷を防いで突っ込まず、とっさに右後ろ方向に跳び引いたのだ。しかもそのあと頭を抱えながらうずくまり、ブルブル震えだしたという。
これにはシンヤと同じく、ガルディアスも完全に予想外だったらしい。向こうからしてみれば、もはや死を覚悟していた場面。それがこんなことになったのだ。あまりに拍子抜けしすぎて無防備の彼女に攻撃できず、そのまま大きく後方に跳躍してさがっていった。
「おい、トワ! なにやってるんだ!」
慌ててトワの方に駆けより、声を荒げるしかない。
「だってあれ雷だよ!? 怖いに決まってるじゃん!」
彼女は今だ頭を抱えて、涙目でうったえてくる。
「もしかしてトワ、雷がダメなタイプか?」
「うん、雷雨の日は、いつもふとんに潜り込んで震えてた……」
もはやガクブル状態でうなづくトワ。どうやら敵の雷撃が、彼女のトラウマを思いっきり刺激しているらしい。
「――マジか……」
そういえばガルディアスがシンヤに向け黒雷の魔法を行使していたとき、一瞬トワの動きが止まっていたがそれが原因だったみたいだ。そのときはなんとか耐えていたみたいだが、さすがに自分に向けて放たれたとなると、あまりの恐怖に怖じ気づくしかなかったらしい。
となると状況はマズイ展開に。ガルディアスが雷撃の魔法を撃った瞬間、トワが役立たずになる恐れがあるのだから。
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