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1章3部 勇者の初戦闘
シンヤVSガルディアス
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「ほざくな! 小僧!」
ガルディアスが叫ぶと、彼の周りにいたウルフたち六匹がシンヤへと襲いかかってきた。
「銃があればこっちのもんだぜ!」
即座に照準を合わせ、慣れた手つきでリボルバーの引き金を引いていく。
FPSゲームで鍛えた反射神経と判断能力を駆使することで、二撃目、三撃目と別の標的に切り替えながらだ。
「ガルルルー!?」
これにより襲いかかってきたウルフ四匹に銃弾を撃ち込み、倒すことに成功する。
それはまるでFPSゲームをやっているかのように。見事なまでの早打ちで、あざやかに敵を葬っていた。
(すごい!? 思い通りの射撃ができる! ははは、まるでリボルバーが自分の手足のようだぜ!)
これまで本物の銃など撃ったことのないシンヤであったが、その銃さばきはもはやプロレベル。というのも心象武器のリボルバーが、思った通りに応えてくれるのだ。銃の取り回しから、精確な射撃まで。まるで銃そのものが、シンヤをアシストしてくれているかのように。
「ガルルルッ!」
残り二匹のウルフがシンヤに向かって跳びかかってくる。
(はっ!? 敵の攻撃がわかる?)
だがそこであることに気付く。本来ならここで予知のスキルによる被害察知能力により、ダメージを受けた予感が湧き上がってくるはずだった。しかし今はそれとは別の予感。なんと敵が繰り出そうとする攻撃の軌道や射程など、その攻撃がどういったものなのかなんとなくだがわかるのだ。それはまるでアクションゲームなどで、敵の攻撃が繰り出される前にその攻撃範囲がマークされるときのように。よってあとはその情報にしたがい、対処すればいいだけの状態へと。
どうやら先ほど限界以上に予知の力を使ったためか、予知のスキルのレベルが上がったらしい。これにより被害察知が攻撃察知へと進化。以前ならダメージを受けた予感から逆算し、回避行動するだけで精一杯だった。しかし今だと意識することでどんな攻撃なのか事前に見極められるため、対処の幅が格段に広がることに。そのまま回避するもよし。カウンターをきめるもよし。次の行動に生かせるようになったのであった。
シンヤは進化した予知の力にしたがい、鋭いクローの攻撃を前へローリングする形で回避する。
「そこだ!」
そしてすぐさま体勢を立て直し、すれ違ったウルフたちに銃弾を撃ち込んで撃破した。
「まだまだ!」
これによりリボルバーのシリンダーに装填された弾六発を、すべて使い切った形に。そのためガルディアスの方へ振り向きながらも、魔法で銃弾を生成。二発分を即座にリロードし、彼のそばにいたウルフ二体に射撃。立て続けに倒していった。
「これであとはあんた一人だ。覚悟しやがれ」
ガルディアスの周りにいたウルフたちは、これで全員いなくなった。あとはボス一人だけ。銃弾を装填しながら、不敵な笑みを浮かべる。
「調子に乗るなよ、小僧! 黒雷の閃光よ!」
するとガルディアスが、黒雷の剣を持っていない左手を前に突き出して魔法を行使。一直線に標的を貫く黒い雷光が、シンヤ目掛けて放たれた。
(よし! これはかわせる!)
直撃すればひとたまりもない破壊力を秘めた一撃が、またたく間にシンヤへと迫る。
しかし予知のスキルにより、雷撃の攻撃範囲をいち早く察知。すぐさま横方向へとステップし、直撃をギリギリかわした。
どんな攻撃か事前にわかっていれば、対策はいくらでも立てられる。あとはその情報をもとに、被害を最小限に抑えればいいだけの話であった。
「くらいやがれ!」
だがそこで終わるシンヤではない。回避後すぐさま敵に照準を合わせ、リボルバーの引き金を引いた。
標的へと吸い込まれるように飛翔していった弾丸。あとはそのまま敵に着弾し風穴を開けるだけと思いきや。
「その程度の攻撃で、ワレをやれると思うなよ!」
なんとガルディアスが黒雷の剣ではじいてみせたのだ。
「この!」
続けて連射し、さらに三発撃ち込む。
「ふん」
しかし銃弾が届く前に、黒雷の剣によって全弾はじかれてしまった。
「おいおい!? 銃弾を斬るとかアニメや漫画だけの話だろ!?」
ウルフみたいなザコ敵には効果的だが、ボス級となるとそこまで猛威を振るわないらしい。銃で無双できるかもと思っていたが、現実はそう甘くないみたいだ。あと威力的にみても、本物の銃より少し劣っているみたいであった。
「さっきは運よくかわせたみたいだが、これならどうだ。黒雷の連撃よ!」
ガルディアスが左手を掲げた瞬間、激しい黒雷が咆哮を上げる。そしてそこからシンヤに向かって、小規模の雷撃が連射された。
一定間隔で次々と放たれる黒い雷撃。威力は先ほどと比べ大したことはないが、当たれば確実にダメージが。しかもそれが続けざまに襲ってくるため、一発かわした程度ではまったく安心できない。ヘタすればハチの巣にされかねない恐れが。
「数で攻めてきたか!? でもどんな攻撃か読めれば!」
確かにここまで数で攻められたら、いづれ運も尽きるというもの。まぐれでかわせる数にも限度がある。だがシンヤの場合は運でもなんでもなく、予知のスキルを使っての回避。ゆえにいくら数で攻めてこようとも、とくに関係はなかった。
「はっ!」
「ちっ!」
次々に放たれる雷撃を紙一重にかわしながら、その合間合間にリボルバーを撃ち込んでいく。しかし敵も回避したり、銃弾をたたき落としたりしてシンヤの攻撃を凌いでしまう。
結果、互いに攻撃をさばきながらの撃ち合いに。銃撃と雷撃が幾度となく交差し、先に敵をしとめきろうと猛威を。
ここで幸いなのは、ガルディアスがトワを狙わないこと。反撃された怒りと、かわされ続けることにムキになってか、完全にシンヤ狙いだったのだ。おかげでトワに流れ弾が届かない位置取りに誘導しての、戦闘ができていた。
「おらおら、どうした! どうした!」
「ええい! ちょこまかと! こうなれば斬り伏せるのみ!」
敵を引き付けるため挑発しながら攻撃していると、ガルディアスが苛立ちげに動いた。なんと敵はこのままだと拉致が明かないと遠距離攻撃を止め、突っ込んできたのだ。
「させるか!」
一発リボルバーをぶちかますも、黒雷の剣によってはじかれてしまう。そしてまたたく間に間合いを詰められてしまった。
「やばい!?」
「この距離では外さんぞ!」
黒雷の剣を振りかざそうとするガルディアス。
その剣は完全にシンヤをとらえており、もはや逃がしてくれそうにない。これがウルフ程度の攻撃ならば、まだ余裕をもって回避できただろう。しかし相手はボスクラスの魔人。その動きや攻撃のキレが段違いであり、事前に察知できていてもそうかわせるものではない。それがこうも接近されたらなおさらであった。
リボルバーに装填された弾数は残り四発。振り下ろされた剣閃がシンヤに届こうとしたまさにその刹那。
「うぉぉぉっ!」
シンヤは瞬時にリボルバーを三連射。このまま敵本体に撃ったとしても攻撃を止められないと判断し、狙いは彼の振るう黒雷の剣へだ。
「ぬ!?」
銃弾を一点に集中させて撃った三連射は、見事黒雷の剣の一撃をはじくことに成功する。
威力を集中させたのと、敵もまさか振るった剣に攻撃してくるとは思っていなかったみたいだ。それらのおかげで間一髪、凌ぐことができていた。
「もらった!」
そしてはじかれたことで一瞬硬直しているガルディアスに、最後の一発を撃ち込んだ。
「ちっ!?」
だが向こうもそう簡単にやらせてくれないらしい。敵は後方に跳躍しながら、なんとか剣を銃弾の軌道に割り込ませてガードを。とはいえ完全に防げなかったようで、肩に被弾していた。
「はぁ、はぁ、今のは危なかった」
リロードしながらも、安堵の息をつく。
(遠距離タイプが一人で戦うのって、やっぱりきついな。敵を食い止めてくれる、強い前衛がほしいところだ)
シンヤ一人ですべて対応できたらいいのだが、遠距離タイプだとそれにも限度がある。あらためて自分は後衛向き。接近戦は前衛に任せ、後方から射撃でサポートするのがあっていると痛感した。
(あと、もう少し火力がほしいところだな。今のオレじゃ、やつに致命打を与えるのは難しそうだし)
ザコ戦には十分な火力を持っているが、ボスクラス相手だとさすがに火力が足りていない。今後の課題として、心象武器や銃弾の強化が必要になってくるだろう。
(――って、ないものねだりしてる場合じゃないよな。目の前の敵に集中しろ。とにかくこのまま魔人を引き付けて、時間を稼がないと!)
そう、今シンヤがやるべきことは、とにかく時間を稼ぐこと。なので無理して敵を倒す必要はない。フローラやリアが助けにくるまで、トワと生き延びることが最優先なのだから。それにもし魔人を倒すなら、戦力面も考え二人と合流してからであろう。
「一度ならず二度までも! 八つ裂きにしてくれる!」
再び傷を負わされたガルディアスは、鬼の形相でにらんでくる。
そんな殺気だった相手に対し、笑うシンヤ。
「ははは」
「なにがおかしい?」
「それも一足遅かったみたいだぜ。オレの勝ちだ」
後方に視線を移しながら、得意げに宣言する。
それと同時に。
「シンヤくん、お待たせ!」
フローラがシンヤの隣に駆けつけ、頼もしげにほほえんでくる。
「ここからはリアたちも参戦します!」
リアも後方から援護しようと、臨戦態勢を。
なんとリアが分断していた障壁を解除し、シンヤのもとへ駆けつけてくれたのだ。しかも後方にいたウルフたちはフローラが全滅させたらしく、残るはガルディアス一人だけであった。
「フローラ! リア!」
「シンヤくん、一人でがんばってくれてたところわるいんだけど、もう少し力を貸してくれないかしら? 私の剣にリアちゃんの封魔の魔法。そしてシンヤくんのその魔導銃があれば、あの魔人を倒し切れるはず」
「ははは、もちろんだ。援護射撃なら任せてくれ!」
フローラの要請に、リボルバーをクルクル回しながらカッコよく応(こた)える。
「お願いね! みんな行くわよ!」
「おう!」
「はい!」
フローラの合図で、動こうとするシンヤたち。
「束になってこようがきさまら程度、ワレ一人で!」
それを迎え撃とうとするガルディアス。だがそんな彼の表情には少し焦りの色が。
そして戦闘が再開されようとした、まさにそのとき。後方から聞いたことがある女性の声が。
「はいはい、そこまでよ」
「はっ!? リア!?」
「リアちゃん!? 後ろ!?」
「え?」
シンヤとフローラが振り返ると、リアのすぐ後ろに黒いドレスを着たクラウディアの姿が。
「うふふ、後ろががら空きよ、お嬢ちゃん」
「きゃっ!?」
不気味な笑みを浮かべながらクラウディアが、リアの背中へと触れる。
次の瞬間、リアの意識が途切れたらしく、その場に崩れ落ちそうに。
「はい、つかまえた。じゃあ、この子は預かっていくわね」
だがすぐさまクラウディアによって、リアの身体が支えられた。
「ッ!? リアをどうするつもりだ!?」
「うふふ、邪神の眷属の封印を解くのを、少し手伝ってもらうだけよ」
「なんだって!?」
「さあ、魔人さん、目的は達成できたし撤収するわよ」
「撤収だと? ふざけるな! 今からこいつらを八つ裂きにするところだぞ!」
クラウディアのオーダーに、ガルディアスが猛反発を。
「それで返り討ちにあったらどうするのかしら? 魔人さんにはまだやってもらいたいことがあるのよ」
「ワレが負けるとでも?」
「もしもの話よ。そもそもこの子たちを倒すのと、邪神の眷属の封印を解くの。魔人さんにとって、どちらが優先事項なのかしら?」
クラウディアはほおに手を当て、意味ありげにたずねた。
「くっ! いいだろう。ここは退いてやる」
ガルディアスは黒雷の剣をしまい、苛立ちげに踵を返し去っていく。
「うふふ、そういうことだから、じゃあね、ボウヤとお嬢ちゃんたち」
優雅に手を振り、ほほえんでくるクラウディア。
「待ちなさい!」
「リアを返しやがれ!」
逃走しようとするクラウディアを阻止しようとするが。
「安心してちょうだい。こんな小さな女の子を手にかけるなんて、非道なマネしないから。ちゃんと封印を解いたら、返してあげるわ。くすくす」
クラウディアは最後にそう言い残し、黒いもやに包まれリアと一緒に消えてしまう。
そしてシンヤ、フローラ、トワだけがこの場に取り残されるのであった。
ガルディアスが叫ぶと、彼の周りにいたウルフたち六匹がシンヤへと襲いかかってきた。
「銃があればこっちのもんだぜ!」
即座に照準を合わせ、慣れた手つきでリボルバーの引き金を引いていく。
FPSゲームで鍛えた反射神経と判断能力を駆使することで、二撃目、三撃目と別の標的に切り替えながらだ。
「ガルルルー!?」
これにより襲いかかってきたウルフ四匹に銃弾を撃ち込み、倒すことに成功する。
それはまるでFPSゲームをやっているかのように。見事なまでの早打ちで、あざやかに敵を葬っていた。
(すごい!? 思い通りの射撃ができる! ははは、まるでリボルバーが自分の手足のようだぜ!)
これまで本物の銃など撃ったことのないシンヤであったが、その銃さばきはもはやプロレベル。というのも心象武器のリボルバーが、思った通りに応えてくれるのだ。銃の取り回しから、精確な射撃まで。まるで銃そのものが、シンヤをアシストしてくれているかのように。
「ガルルルッ!」
残り二匹のウルフがシンヤに向かって跳びかかってくる。
(はっ!? 敵の攻撃がわかる?)
だがそこであることに気付く。本来ならここで予知のスキルによる被害察知能力により、ダメージを受けた予感が湧き上がってくるはずだった。しかし今はそれとは別の予感。なんと敵が繰り出そうとする攻撃の軌道や射程など、その攻撃がどういったものなのかなんとなくだがわかるのだ。それはまるでアクションゲームなどで、敵の攻撃が繰り出される前にその攻撃範囲がマークされるときのように。よってあとはその情報にしたがい、対処すればいいだけの状態へと。
どうやら先ほど限界以上に予知の力を使ったためか、予知のスキルのレベルが上がったらしい。これにより被害察知が攻撃察知へと進化。以前ならダメージを受けた予感から逆算し、回避行動するだけで精一杯だった。しかし今だと意識することでどんな攻撃なのか事前に見極められるため、対処の幅が格段に広がることに。そのまま回避するもよし。カウンターをきめるもよし。次の行動に生かせるようになったのであった。
シンヤは進化した予知の力にしたがい、鋭いクローの攻撃を前へローリングする形で回避する。
「そこだ!」
そしてすぐさま体勢を立て直し、すれ違ったウルフたちに銃弾を撃ち込んで撃破した。
「まだまだ!」
これによりリボルバーのシリンダーに装填された弾六発を、すべて使い切った形に。そのためガルディアスの方へ振り向きながらも、魔法で銃弾を生成。二発分を即座にリロードし、彼のそばにいたウルフ二体に射撃。立て続けに倒していった。
「これであとはあんた一人だ。覚悟しやがれ」
ガルディアスの周りにいたウルフたちは、これで全員いなくなった。あとはボス一人だけ。銃弾を装填しながら、不敵な笑みを浮かべる。
「調子に乗るなよ、小僧! 黒雷の閃光よ!」
するとガルディアスが、黒雷の剣を持っていない左手を前に突き出して魔法を行使。一直線に標的を貫く黒い雷光が、シンヤ目掛けて放たれた。
(よし! これはかわせる!)
直撃すればひとたまりもない破壊力を秘めた一撃が、またたく間にシンヤへと迫る。
しかし予知のスキルにより、雷撃の攻撃範囲をいち早く察知。すぐさま横方向へとステップし、直撃をギリギリかわした。
どんな攻撃か事前にわかっていれば、対策はいくらでも立てられる。あとはその情報をもとに、被害を最小限に抑えればいいだけの話であった。
「くらいやがれ!」
だがそこで終わるシンヤではない。回避後すぐさま敵に照準を合わせ、リボルバーの引き金を引いた。
標的へと吸い込まれるように飛翔していった弾丸。あとはそのまま敵に着弾し風穴を開けるだけと思いきや。
「その程度の攻撃で、ワレをやれると思うなよ!」
なんとガルディアスが黒雷の剣ではじいてみせたのだ。
「この!」
続けて連射し、さらに三発撃ち込む。
「ふん」
しかし銃弾が届く前に、黒雷の剣によって全弾はじかれてしまった。
「おいおい!? 銃弾を斬るとかアニメや漫画だけの話だろ!?」
ウルフみたいなザコ敵には効果的だが、ボス級となるとそこまで猛威を振るわないらしい。銃で無双できるかもと思っていたが、現実はそう甘くないみたいだ。あと威力的にみても、本物の銃より少し劣っているみたいであった。
「さっきは運よくかわせたみたいだが、これならどうだ。黒雷の連撃よ!」
ガルディアスが左手を掲げた瞬間、激しい黒雷が咆哮を上げる。そしてそこからシンヤに向かって、小規模の雷撃が連射された。
一定間隔で次々と放たれる黒い雷撃。威力は先ほどと比べ大したことはないが、当たれば確実にダメージが。しかもそれが続けざまに襲ってくるため、一発かわした程度ではまったく安心できない。ヘタすればハチの巣にされかねない恐れが。
「数で攻めてきたか!? でもどんな攻撃か読めれば!」
確かにここまで数で攻められたら、いづれ運も尽きるというもの。まぐれでかわせる数にも限度がある。だがシンヤの場合は運でもなんでもなく、予知のスキルを使っての回避。ゆえにいくら数で攻めてこようとも、とくに関係はなかった。
「はっ!」
「ちっ!」
次々に放たれる雷撃を紙一重にかわしながら、その合間合間にリボルバーを撃ち込んでいく。しかし敵も回避したり、銃弾をたたき落としたりしてシンヤの攻撃を凌いでしまう。
結果、互いに攻撃をさばきながらの撃ち合いに。銃撃と雷撃が幾度となく交差し、先に敵をしとめきろうと猛威を。
ここで幸いなのは、ガルディアスがトワを狙わないこと。反撃された怒りと、かわされ続けることにムキになってか、完全にシンヤ狙いだったのだ。おかげでトワに流れ弾が届かない位置取りに誘導しての、戦闘ができていた。
「おらおら、どうした! どうした!」
「ええい! ちょこまかと! こうなれば斬り伏せるのみ!」
敵を引き付けるため挑発しながら攻撃していると、ガルディアスが苛立ちげに動いた。なんと敵はこのままだと拉致が明かないと遠距離攻撃を止め、突っ込んできたのだ。
「させるか!」
一発リボルバーをぶちかますも、黒雷の剣によってはじかれてしまう。そしてまたたく間に間合いを詰められてしまった。
「やばい!?」
「この距離では外さんぞ!」
黒雷の剣を振りかざそうとするガルディアス。
その剣は完全にシンヤをとらえており、もはや逃がしてくれそうにない。これがウルフ程度の攻撃ならば、まだ余裕をもって回避できただろう。しかし相手はボスクラスの魔人。その動きや攻撃のキレが段違いであり、事前に察知できていてもそうかわせるものではない。それがこうも接近されたらなおさらであった。
リボルバーに装填された弾数は残り四発。振り下ろされた剣閃がシンヤに届こうとしたまさにその刹那。
「うぉぉぉっ!」
シンヤは瞬時にリボルバーを三連射。このまま敵本体に撃ったとしても攻撃を止められないと判断し、狙いは彼の振るう黒雷の剣へだ。
「ぬ!?」
銃弾を一点に集中させて撃った三連射は、見事黒雷の剣の一撃をはじくことに成功する。
威力を集中させたのと、敵もまさか振るった剣に攻撃してくるとは思っていなかったみたいだ。それらのおかげで間一髪、凌ぐことができていた。
「もらった!」
そしてはじかれたことで一瞬硬直しているガルディアスに、最後の一発を撃ち込んだ。
「ちっ!?」
だが向こうもそう簡単にやらせてくれないらしい。敵は後方に跳躍しながら、なんとか剣を銃弾の軌道に割り込ませてガードを。とはいえ完全に防げなかったようで、肩に被弾していた。
「はぁ、はぁ、今のは危なかった」
リロードしながらも、安堵の息をつく。
(遠距離タイプが一人で戦うのって、やっぱりきついな。敵を食い止めてくれる、強い前衛がほしいところだ)
シンヤ一人ですべて対応できたらいいのだが、遠距離タイプだとそれにも限度がある。あらためて自分は後衛向き。接近戦は前衛に任せ、後方から射撃でサポートするのがあっていると痛感した。
(あと、もう少し火力がほしいところだな。今のオレじゃ、やつに致命打を与えるのは難しそうだし)
ザコ戦には十分な火力を持っているが、ボスクラス相手だとさすがに火力が足りていない。今後の課題として、心象武器や銃弾の強化が必要になってくるだろう。
(――って、ないものねだりしてる場合じゃないよな。目の前の敵に集中しろ。とにかくこのまま魔人を引き付けて、時間を稼がないと!)
そう、今シンヤがやるべきことは、とにかく時間を稼ぐこと。なので無理して敵を倒す必要はない。フローラやリアが助けにくるまで、トワと生き延びることが最優先なのだから。それにもし魔人を倒すなら、戦力面も考え二人と合流してからであろう。
「一度ならず二度までも! 八つ裂きにしてくれる!」
再び傷を負わされたガルディアスは、鬼の形相でにらんでくる。
そんな殺気だった相手に対し、笑うシンヤ。
「ははは」
「なにがおかしい?」
「それも一足遅かったみたいだぜ。オレの勝ちだ」
後方に視線を移しながら、得意げに宣言する。
それと同時に。
「シンヤくん、お待たせ!」
フローラがシンヤの隣に駆けつけ、頼もしげにほほえんでくる。
「ここからはリアたちも参戦します!」
リアも後方から援護しようと、臨戦態勢を。
なんとリアが分断していた障壁を解除し、シンヤのもとへ駆けつけてくれたのだ。しかも後方にいたウルフたちはフローラが全滅させたらしく、残るはガルディアス一人だけであった。
「フローラ! リア!」
「シンヤくん、一人でがんばってくれてたところわるいんだけど、もう少し力を貸してくれないかしら? 私の剣にリアちゃんの封魔の魔法。そしてシンヤくんのその魔導銃があれば、あの魔人を倒し切れるはず」
「ははは、もちろんだ。援護射撃なら任せてくれ!」
フローラの要請に、リボルバーをクルクル回しながらカッコよく応(こた)える。
「お願いね! みんな行くわよ!」
「おう!」
「はい!」
フローラの合図で、動こうとするシンヤたち。
「束になってこようがきさまら程度、ワレ一人で!」
それを迎え撃とうとするガルディアス。だがそんな彼の表情には少し焦りの色が。
そして戦闘が再開されようとした、まさにそのとき。後方から聞いたことがある女性の声が。
「はいはい、そこまでよ」
「はっ!? リア!?」
「リアちゃん!? 後ろ!?」
「え?」
シンヤとフローラが振り返ると、リアのすぐ後ろに黒いドレスを着たクラウディアの姿が。
「うふふ、後ろががら空きよ、お嬢ちゃん」
「きゃっ!?」
不気味な笑みを浮かべながらクラウディアが、リアの背中へと触れる。
次の瞬間、リアの意識が途切れたらしく、その場に崩れ落ちそうに。
「はい、つかまえた。じゃあ、この子は預かっていくわね」
だがすぐさまクラウディアによって、リアの身体が支えられた。
「ッ!? リアをどうするつもりだ!?」
「うふふ、邪神の眷属の封印を解くのを、少し手伝ってもらうだけよ」
「なんだって!?」
「さあ、魔人さん、目的は達成できたし撤収するわよ」
「撤収だと? ふざけるな! 今からこいつらを八つ裂きにするところだぞ!」
クラウディアのオーダーに、ガルディアスが猛反発を。
「それで返り討ちにあったらどうするのかしら? 魔人さんにはまだやってもらいたいことがあるのよ」
「ワレが負けるとでも?」
「もしもの話よ。そもそもこの子たちを倒すのと、邪神の眷属の封印を解くの。魔人さんにとって、どちらが優先事項なのかしら?」
クラウディアはほおに手を当て、意味ありげにたずねた。
「くっ! いいだろう。ここは退いてやる」
ガルディアスは黒雷の剣をしまい、苛立ちげに踵を返し去っていく。
「うふふ、そういうことだから、じゃあね、ボウヤとお嬢ちゃんたち」
優雅に手を振り、ほほえんでくるクラウディア。
「待ちなさい!」
「リアを返しやがれ!」
逃走しようとするクラウディアを阻止しようとするが。
「安心してちょうだい。こんな小さな女の子を手にかけるなんて、非道なマネしないから。ちゃんと封印を解いたら、返してあげるわ。くすくす」
クラウディアは最後にそう言い残し、黒いもやに包まれリアと一緒に消えてしまう。
そしてシンヤ、フローラ、トワだけがこの場に取り残されるのであった。
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