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1章3部 勇者の初戦闘
魔人ガルディアス
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シンヤたちはフローラ、リアと合流し、そのまま封印の森へ。邪神の眷属が封印されている神殿へと向かっていた。
空は黒い雲に覆われ、森の奥に進むほどだんだん辺りが暗くなってきている。さらに空気が重苦しく、不気味な気配が立ち込めていた。聖なる結界の力により比較的安全と聞いていたが、この様子ではいつ魔物たちが襲ってきてもおかしくはない。こうなっているのも、封印された邪神の眷属の活性化によるものなのだろうか。
ちなみに今のシンヤはとある理由で歩きづらくなっているため、そろそろ注意することに。
「おい、トワ、さっきから歩きづらいんだが」
後ろを向くと、そこにはシンヤの上着の袖をつかんで恐る恐る歩いているトワの姿が。
「だって怖いんだもん。もー、なんで昼なのに、こんなに暗くて不気味なの……。お化けとか出てきそうだよ……」
涙目でさぞ心細そうに、うったえてくるトワ。
「トワ、もしかしなくてもだが、怖いのダメなタイプなのか?」
「うん、暗いところとかとくに苦手……」
「でも昨日の夜とか、がんばれてたじゃないか」
「あそこらへんは月明かりで、まだ明るかったから。それにあの場にいたのだって、暗い森の奥が怖かったからで……」
「だから遠くに行ってなかったのか。おかげで助かったが、勇者が怖がりって……」
見つかる恐れがあるにもかかわらず、あんな街の近場にいたことに少し疑問を感じていた。その理由がまさか怖くて先に進めなかったとは。勇者といえば勇気に満ちあふれ、何事にも怖気づかないイメージがあったため、少し呆れてしまう。
「しかたないでしょ。こわいものは……、ひっ!?」
突如、近くの木から鳥たちが飛び立ち、それにびっくりしたトワが情けない声を。そのあまりのビビりっぷりに、もはや笑うしかなかった。
「ははは、これは重傷だな」
「でも確かに不気味で、少し怖いわね」
「そうですね。あと結界の近くだというのに、魔の気配が立ち込めている気がします」
怖がるトワをほほえましそうに見ていたフローラとリアであったが、周りの様子に表情を曇らせる。
「リアちゃんも、そう思う? これはこちらの思惑通りにことが進むかもしれないわね」
「魔人をおびき寄せて、一気にたたく作戦か」
そう、その作戦こそさっき教会で、トワの祖父が話してくれたものである。あえて少人数で行動することで敵を油断させ、今がチャンスだとおびきよせるのだ。そして精鋭で返り討ちにするつもりという。
「このまま魔人におびえ警戒し続けても拉致があかないし、不安要素は早めに片づけておくべきよ。リスクはあるけど、この戦力なら悪くない賭けだと思うわ。今なら勇者であるトワさんもいることだしね」
「だってさ、トワ。いきなり強敵相手だけど、やれるよな?」
「う、うん、まかせて、――あはは……」
シンヤたちの期待に、笑って応えるトワ。ただ心なしかその表情に若干の陰りが。
「トワさん、リアも全力でサポートするので、そう気負わないでくださいね」
するとリアが胸に手を当て、まぶしい笑顔を。
「ふふふ、トワちゃんだけじゃなく、封印の巫女のリアちゃんまでいてくれるなんて心強いばかりだわ」
「リアも戦えるのか?」
「はい、リアたちの血族は魔の力を弱体化させる、封魔の魔法が使えるんです」
リアは両腕でガッツポーズをしながら、頼もしげにほほえんだ。
「へー、そんな敵に刺さる魔法があるんだな」
「ええ、マナの方向性をより複雑に変換することで、さまざまな効果や事象を引き起こす魔法が使えるのよ。ただ難易度が一気に跳ね上がるのはもちろん、中には素質の問題でその血族内でしか使えないものとかもあるのよね」
「なるほど。センスがあれば、基本なんでもできるってわけだな。――はっ!?」
納得していたシンヤだが、ある予感にふと足を止める。
「あわわっ!? ちょっと、シンヤ、急に止まらないでよ」
それにより後ろでしがみついていたトワが、シンヤの背中にぼふっとぶつかった。
「――このイヤな予感……、みんな来るぞ!」
「シンヤ、来るってなにが?」
「ターゲットのお出ましだ」
ちょこんと首をかしげるトワに、臨戦態勢をとりながら伝える。
そう、シンヤが感じたもの。それは予知のスキルからくる、強大な敵が迫っているという危機的予感だったのだ。
「え? きゃっ!?」
次の瞬間、ドッと並々ならぬ重圧がシンヤたちに押し寄せてきた。
「ガルルルー!」
さらにシンヤたちの前方に、ウルフの集団が突然現れだす。
「急に出てきやがった!?」
「魔人や上位の魔物は、邪神の怨念から魔物を生み出し使役することができるらしいの」
「それでこんなにうじゃうじゃと」
「――ああ、忌々しい女神の力を感じる……」
そしてウルフの集団の中央から、悠々と歩いてくるフードをかぶった魔人の男が。
「きさまが勇者だな?」
魔人は顔を手で覆い、トワに対し指の隙間からギロリとにらみつけてきた。
「ひぃっ!?」
その濃い殺気を受け、ひるんでしまうトワ。
「今度は逃がさんぞ! あの方に仇なすであろう勇者、魔人ガルディアスがここで葬ってやろう」
ガルディアスは腕を振りかざし宣言を。
「ガルルルルー!」
それを合図にウルフの集団の第一陣。ざっと十二匹が襲ってきた。
「ッ!? 来る!」
「まかせてください! 封魔の結界よ!」
対してシンヤたちの前に出るのはリア。彼女は手を掲げ魔法を発動する。
その瞬間、襲いくるウルフたちがいた地面からまばゆい光があふれだした。
「ガルルー!?」
すると光に包まれたウルフたちが急に立ち止まり、苦しみだす。
あれがリアの言ってた封印の巫女の血族が使える、封魔の魔法みたいだ。おそらくあの聖なる光の中にいる間、魔のモノたちはダメージと弱体化を食らうはめになるのだろう。
「一気に斬り込むわね!」
そこへすかさずフローラが、ウルフたちへと突貫。
すれ違いざまに剣で次々と斬り伏せていく。その優雅な身のこなしでの流れるような連撃。思わず目を奪われるほどの剣の舞であった。
「風の刃よ!」
さらにフローラは左手を前へと突き出し、魔法を行使。
その瞬間、一陣の強烈な突風が、前方のウルフたちを薙ぎ払い消し飛ばしていった。
「ガルルルルーッ!」
だがフローラの攻撃から生き残った二匹のウルフが、彼女目掛けて跳びかかる。
「させません! 封魔の鎖よ!」
リアが腕を振りかざすと同時に、光で構成された鎖が二本放たれた。
光の鎖の先端は鋭利な刃となっており、まるで生き物のような軌道で標的へと。そして攻撃を仕掛けようとしていた二匹のウルフを、またたく間に貫いていった。
「強い」
敵の第一陣をいとも簡単に対処していった二人に、ただただ感服するしかない。
フローラが強いのはわかっていたが、リアまでもがそうだったとは。まだ小さい子供なのに、勇敢にも前に出て見事なサポートをしてみせたのだから。もはや彼女たち二人だけでも、魔人を倒せるのではないのかと思うほどであった。
「調子に乗るなよ! 小娘ども! 黒雷の閃光よ」
だがそこでガルディアスが動いた。彼は手から禍々しい雷撃を、フローラとリアに放ったのだ。
ほとばしる黒い電流が大気を切り裂き、彼女たちへと迫る。
「リアちゃん!」
「はい! 光の障壁よ!」
しかし二人は敵の攻撃をいち早く察知し、フローラは剣で。リアは光のバリアを展開し、ガードしながら後方へと回避行動を。結果、後ろへと吹き飛ばされる形になったが、雷撃の直撃を避け、まき散らす破壊の衝撃を最小限に抑えることに成功していた。
「フローラ、リア、無事か!?」
「ええ、大丈夫よ」
「ご心配なくです」
安否を確かめると、二人ともとくに目立った外傷はないみたいである。
彼女たちはシンヤとトワの少し後ろの方に着地し、すぐさま体制を整えていた。
「ガルルルーッ!」
「はっ!? 新手みたいね」
フローラは後ろを振り向き剣をかまえた。
というのも後方からウルフの集団が忍びよってきていたのだ。しかもその数はかなりのものであり、姿が見えているのだけでも十五体。さらに森の奥に潜んでいそうときた。
「リアちゃん、トワちゃんのサポートに回ってくれるかしら。あのウルフたちは私が食い止めておくから」
「ですがあの数、一人で大丈夫ですか?」
「魔人相手に、戦力を割くのはあまり得策ではないわ。すぐに片づけて加勢しにいくから、心配しないで」
不安げにたずねるリアに、フローラは頼もしげにほほえむ。
「わかりました。あの魔人の相手はリアたちに任せてください!」
彼女の指示にしたがい、リアがシンヤたちのもとへ駆け寄ろうとするが。
「え?」
リアは驚きながら足を止める。
なぜならシンヤたちとリアたちの間を遮るように、突如禍々しいオーラを放った障壁が発生したのだ。
「分断されただと!?」
「くっ、この壁、なかなか破れそうにないですね。トワさん、シンヤさん、少しだけお待ちを」
リアは壁に触れ、魔法でなんとかしてくれようと。
「ああ、こっちにはトワがいるから、そう心配しなくていいぞ。――って、トワ!? 敵が来てるぞ!?」
トワの方を振り向くと、二匹のウルフが彼女目掛けて突撃していたのだ。
ここで焦るのは、トワが棒立ちでいること。一応剣をかまえてはいるが、迎え撃とうとしていない様子だったのだ。
「はっ!」
このままではマズイと察知し、ナイフを振りかぶりながら襲いくるウルフの方へ。もはやあとのことを考えず、手前のウルフに突貫。敵が攻撃を仕掛ける前に、ナイフを一閃させ倒すことに成功する。
「ガルルルー!」
そこへ二体目のウルフが、シンヤへと跳びかかってきた。
戦うことに慣れてないシンヤゆえ、最初の一体に全力をそそいでしまっており、もう一体のことはまったく念頭に置いていなかったのだ。ゆえに本来ならなにも対応できず、無防備のままやられていたことだろう。しかし。
「くっ!?」
襲い掛かってくるウルフすら見ず、とにかくダメージを受ける予感にしたがい緊急回避。おかげで敵の攻撃を薄皮一枚分という、ギリギリのところでやり過ごすことに成功した。
「トワ、いつまで棒立ちしてるんだ!? そんなんじゃ、いいマトだぞ!?」
「――シンヤ……、身体が震えて、思い通りに動かないよ……」
あわてて声をかけると、トワが震えながら泣きそうな顔でうったえてきた。
空は黒い雲に覆われ、森の奥に進むほどだんだん辺りが暗くなってきている。さらに空気が重苦しく、不気味な気配が立ち込めていた。聖なる結界の力により比較的安全と聞いていたが、この様子ではいつ魔物たちが襲ってきてもおかしくはない。こうなっているのも、封印された邪神の眷属の活性化によるものなのだろうか。
ちなみに今のシンヤはとある理由で歩きづらくなっているため、そろそろ注意することに。
「おい、トワ、さっきから歩きづらいんだが」
後ろを向くと、そこにはシンヤの上着の袖をつかんで恐る恐る歩いているトワの姿が。
「だって怖いんだもん。もー、なんで昼なのに、こんなに暗くて不気味なの……。お化けとか出てきそうだよ……」
涙目でさぞ心細そうに、うったえてくるトワ。
「トワ、もしかしなくてもだが、怖いのダメなタイプなのか?」
「うん、暗いところとかとくに苦手……」
「でも昨日の夜とか、がんばれてたじゃないか」
「あそこらへんは月明かりで、まだ明るかったから。それにあの場にいたのだって、暗い森の奥が怖かったからで……」
「だから遠くに行ってなかったのか。おかげで助かったが、勇者が怖がりって……」
見つかる恐れがあるにもかかわらず、あんな街の近場にいたことに少し疑問を感じていた。その理由がまさか怖くて先に進めなかったとは。勇者といえば勇気に満ちあふれ、何事にも怖気づかないイメージがあったため、少し呆れてしまう。
「しかたないでしょ。こわいものは……、ひっ!?」
突如、近くの木から鳥たちが飛び立ち、それにびっくりしたトワが情けない声を。そのあまりのビビりっぷりに、もはや笑うしかなかった。
「ははは、これは重傷だな」
「でも確かに不気味で、少し怖いわね」
「そうですね。あと結界の近くだというのに、魔の気配が立ち込めている気がします」
怖がるトワをほほえましそうに見ていたフローラとリアであったが、周りの様子に表情を曇らせる。
「リアちゃんも、そう思う? これはこちらの思惑通りにことが進むかもしれないわね」
「魔人をおびき寄せて、一気にたたく作戦か」
そう、その作戦こそさっき教会で、トワの祖父が話してくれたものである。あえて少人数で行動することで敵を油断させ、今がチャンスだとおびきよせるのだ。そして精鋭で返り討ちにするつもりという。
「このまま魔人におびえ警戒し続けても拉致があかないし、不安要素は早めに片づけておくべきよ。リスクはあるけど、この戦力なら悪くない賭けだと思うわ。今なら勇者であるトワさんもいることだしね」
「だってさ、トワ。いきなり強敵相手だけど、やれるよな?」
「う、うん、まかせて、――あはは……」
シンヤたちの期待に、笑って応えるトワ。ただ心なしかその表情に若干の陰りが。
「トワさん、リアも全力でサポートするので、そう気負わないでくださいね」
するとリアが胸に手を当て、まぶしい笑顔を。
「ふふふ、トワちゃんだけじゃなく、封印の巫女のリアちゃんまでいてくれるなんて心強いばかりだわ」
「リアも戦えるのか?」
「はい、リアたちの血族は魔の力を弱体化させる、封魔の魔法が使えるんです」
リアは両腕でガッツポーズをしながら、頼もしげにほほえんだ。
「へー、そんな敵に刺さる魔法があるんだな」
「ええ、マナの方向性をより複雑に変換することで、さまざまな効果や事象を引き起こす魔法が使えるのよ。ただ難易度が一気に跳ね上がるのはもちろん、中には素質の問題でその血族内でしか使えないものとかもあるのよね」
「なるほど。センスがあれば、基本なんでもできるってわけだな。――はっ!?」
納得していたシンヤだが、ある予感にふと足を止める。
「あわわっ!? ちょっと、シンヤ、急に止まらないでよ」
それにより後ろでしがみついていたトワが、シンヤの背中にぼふっとぶつかった。
「――このイヤな予感……、みんな来るぞ!」
「シンヤ、来るってなにが?」
「ターゲットのお出ましだ」
ちょこんと首をかしげるトワに、臨戦態勢をとりながら伝える。
そう、シンヤが感じたもの。それは予知のスキルからくる、強大な敵が迫っているという危機的予感だったのだ。
「え? きゃっ!?」
次の瞬間、ドッと並々ならぬ重圧がシンヤたちに押し寄せてきた。
「ガルルルー!」
さらにシンヤたちの前方に、ウルフの集団が突然現れだす。
「急に出てきやがった!?」
「魔人や上位の魔物は、邪神の怨念から魔物を生み出し使役することができるらしいの」
「それでこんなにうじゃうじゃと」
「――ああ、忌々しい女神の力を感じる……」
そしてウルフの集団の中央から、悠々と歩いてくるフードをかぶった魔人の男が。
「きさまが勇者だな?」
魔人は顔を手で覆い、トワに対し指の隙間からギロリとにらみつけてきた。
「ひぃっ!?」
その濃い殺気を受け、ひるんでしまうトワ。
「今度は逃がさんぞ! あの方に仇なすであろう勇者、魔人ガルディアスがここで葬ってやろう」
ガルディアスは腕を振りかざし宣言を。
「ガルルルルー!」
それを合図にウルフの集団の第一陣。ざっと十二匹が襲ってきた。
「ッ!? 来る!」
「まかせてください! 封魔の結界よ!」
対してシンヤたちの前に出るのはリア。彼女は手を掲げ魔法を発動する。
その瞬間、襲いくるウルフたちがいた地面からまばゆい光があふれだした。
「ガルルー!?」
すると光に包まれたウルフたちが急に立ち止まり、苦しみだす。
あれがリアの言ってた封印の巫女の血族が使える、封魔の魔法みたいだ。おそらくあの聖なる光の中にいる間、魔のモノたちはダメージと弱体化を食らうはめになるのだろう。
「一気に斬り込むわね!」
そこへすかさずフローラが、ウルフたちへと突貫。
すれ違いざまに剣で次々と斬り伏せていく。その優雅な身のこなしでの流れるような連撃。思わず目を奪われるほどの剣の舞であった。
「風の刃よ!」
さらにフローラは左手を前へと突き出し、魔法を行使。
その瞬間、一陣の強烈な突風が、前方のウルフたちを薙ぎ払い消し飛ばしていった。
「ガルルルルーッ!」
だがフローラの攻撃から生き残った二匹のウルフが、彼女目掛けて跳びかかる。
「させません! 封魔の鎖よ!」
リアが腕を振りかざすと同時に、光で構成された鎖が二本放たれた。
光の鎖の先端は鋭利な刃となっており、まるで生き物のような軌道で標的へと。そして攻撃を仕掛けようとしていた二匹のウルフを、またたく間に貫いていった。
「強い」
敵の第一陣をいとも簡単に対処していった二人に、ただただ感服するしかない。
フローラが強いのはわかっていたが、リアまでもがそうだったとは。まだ小さい子供なのに、勇敢にも前に出て見事なサポートをしてみせたのだから。もはや彼女たち二人だけでも、魔人を倒せるのではないのかと思うほどであった。
「調子に乗るなよ! 小娘ども! 黒雷の閃光よ」
だがそこでガルディアスが動いた。彼は手から禍々しい雷撃を、フローラとリアに放ったのだ。
ほとばしる黒い電流が大気を切り裂き、彼女たちへと迫る。
「リアちゃん!」
「はい! 光の障壁よ!」
しかし二人は敵の攻撃をいち早く察知し、フローラは剣で。リアは光のバリアを展開し、ガードしながら後方へと回避行動を。結果、後ろへと吹き飛ばされる形になったが、雷撃の直撃を避け、まき散らす破壊の衝撃を最小限に抑えることに成功していた。
「フローラ、リア、無事か!?」
「ええ、大丈夫よ」
「ご心配なくです」
安否を確かめると、二人ともとくに目立った外傷はないみたいである。
彼女たちはシンヤとトワの少し後ろの方に着地し、すぐさま体制を整えていた。
「ガルルルーッ!」
「はっ!? 新手みたいね」
フローラは後ろを振り向き剣をかまえた。
というのも後方からウルフの集団が忍びよってきていたのだ。しかもその数はかなりのものであり、姿が見えているのだけでも十五体。さらに森の奥に潜んでいそうときた。
「リアちゃん、トワちゃんのサポートに回ってくれるかしら。あのウルフたちは私が食い止めておくから」
「ですがあの数、一人で大丈夫ですか?」
「魔人相手に、戦力を割くのはあまり得策ではないわ。すぐに片づけて加勢しにいくから、心配しないで」
不安げにたずねるリアに、フローラは頼もしげにほほえむ。
「わかりました。あの魔人の相手はリアたちに任せてください!」
彼女の指示にしたがい、リアがシンヤたちのもとへ駆け寄ろうとするが。
「え?」
リアは驚きながら足を止める。
なぜならシンヤたちとリアたちの間を遮るように、突如禍々しいオーラを放った障壁が発生したのだ。
「分断されただと!?」
「くっ、この壁、なかなか破れそうにないですね。トワさん、シンヤさん、少しだけお待ちを」
リアは壁に触れ、魔法でなんとかしてくれようと。
「ああ、こっちにはトワがいるから、そう心配しなくていいぞ。――って、トワ!? 敵が来てるぞ!?」
トワの方を振り向くと、二匹のウルフが彼女目掛けて突撃していたのだ。
ここで焦るのは、トワが棒立ちでいること。一応剣をかまえてはいるが、迎え撃とうとしていない様子だったのだ。
「はっ!」
このままではマズイと察知し、ナイフを振りかぶりながら襲いくるウルフの方へ。もはやあとのことを考えず、手前のウルフに突貫。敵が攻撃を仕掛ける前に、ナイフを一閃させ倒すことに成功する。
「ガルルルー!」
そこへ二体目のウルフが、シンヤへと跳びかかってきた。
戦うことに慣れてないシンヤゆえ、最初の一体に全力をそそいでしまっており、もう一体のことはまったく念頭に置いていなかったのだ。ゆえに本来ならなにも対応できず、無防備のままやられていたことだろう。しかし。
「くっ!?」
襲い掛かってくるウルフすら見ず、とにかくダメージを受ける予感にしたがい緊急回避。おかげで敵の攻撃を薄皮一枚分という、ギリギリのところでやり過ごすことに成功した。
「トワ、いつまで棒立ちしてるんだ!? そんなんじゃ、いいマトだぞ!?」
「――シンヤ……、身体が震えて、思い通りに動かないよ……」
あわてて声をかけると、トワが震えながら泣きそうな顔でうったえてきた。
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