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1章2部 勇者との出会い
巫女の護衛
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「どうだった?」
「すみません。どうやら封印の巫女の権力を使ったとしても、難しそうです。現在勇者さまはこの騒動の犯人、または関係者とみなされています。なので身の潔白を証明するなにかがない以上、しばらく解放されそうにありません」
リアが申しわけなさそうに、つかまったトワの件について報告してくれる。
「まあ、そうなるよな。状況的にみたら怪しいし、勇者という肩書きだけじゃさすがに無理か」
「リアが調査の依頼を頼んだみたいな形にすれば、なんとかなったかもしれません。ですがすでに彼女のことはなにも知らないと、言ってしまっていて……」
「そっか。頼みの綱のリアでそれだと、もうこの騒動を無事解決するぐらいしか残ってないかもな」
封印の巫女でもダメだとすると、いくらシンヤが手を尽くしても難しいはず。もはや一番手っ取り早いのは、この騒動を無事解決することかもしれない。幸いフローラやリアといった頼もしい仲間たちがいるため、トワ抜きでもなんとかなるかもしれなかった。
「そうですね。今は封印の件でみなさんピリついてますから、まずそこをどうにかしないと。そうすればこちらの言い分も、通りやすくなるはずです」
「ははは、ほんと世話のかかる勇者さまだ」
彼女の置かれている状況に、改めて笑うしかなかった。
「一応、面会ならさせてあげられますよ」
「それは助かる。いったん情報交換とか、少し込み入ったことを話しておきたかったんだよ」
これは非常にありがたかった。まだトワとはしゃべったこともなく、どんな子なのかさえわからない状態。今後仕えるであろう相手のことなので、そこらへんを早く知っておきたかったのだ。
「ただ取り調べとかの関係上、夜ぐらいからになると思うんですが」
「話せるだけ十分だよ。それで頼んだ」
「では手配しておきますね」
「となると夜まで時間をつぶす必要があるのか」
「巫女さま、よろしいですか?」
どう時間をつぶすか考えていると、扉をノックする音が。
「はい、どうぞ」
「失礼します。司祭さまがお呼びです」
シスターが入ってきて、要件を伝えてくる。
「わかりました、すぐ行きます。シンヤさんはこの部屋でゆっくりしておいてください」
リアは立ち上がり、部屋を出て行こうと。
「そうか? じゃあお言葉に甘えて」
「あなた巫女さまの護衛ですよね。さっきの騒動もありますし、ちゃんと巫女さまに付き添っておくべきでは?」
待たせてもらおうとすると、シスターが怪訝そうな視線を向けてくる。
そういえばさっきかばってもらう時、リアの護衛になっていたことを改めて思い出す。確かに守るべき対象を放ってくつろいでいるなど、護衛としてあるまじきこと。注意されるのも無理はない。
「いえ、彼については、その……」
これ以上付き合わせるのはわるいと、なんとかかばおうとしてくれるリア。
「ははは、冗談ですよ、冗談、さあ、行きましょう、巫女さま」
彼女に無理させるわけにもいかないので、立ち上がりリアのもとへ。
「シンヤさん、いいんですか?」
「いろいろ世話になってる分、少しでも恩を返さないとさ。物騒なのは事実だし、護衛しながら手伝えることとかあればなんでもやらせてもらうよ」
リアの肩に手を置き、頼もしげに笑いかける。
「ありがとうございます。では一緒に行きましょうか」
こうしてもうしばらくリアの護衛をすることに。
「ふう、もう夜か」
両腕を伸ばしながら一息つく。
すでに外は陽が沈み夜に。あれからリアの封印の巫女の仕事。礼拝だったり、現状における話し合いだったり、人々の不安を和らげるため街の方へ顔を出しに行ったりなど。ずっと彼女の護衛として付き添っていたという。そして現在それらの仕事もおわり、トワがいる牢屋へと向かっている真っ最中なのであった。
「すみません、こんな時間まで付き合わせてしまって」
「ははは、これぐらいどうってことないさ。むしろ貴重な体験をさせてもらえてありがたかったよ。補佐役のちょうどいい予行練習にもなったしな」
申しわけなさそうに目をふせるリアに、気にしなくていいと笑いかけた。
「それにリアの封印の巫女としての、凛々しい姿もいっぱい見れたし」
そして彼女の頭をやさしくなでる。
「え、えへへ」
するとテレくさそうにしながらも、気持ちよさそうに目を細めるリア。
「というかオレなんてほとんど付き添ってただけだし、お疲れなのはリアの方だろ。あの業務の数々、よくがんばったな」
「えへへ、シンヤさんが話し相手になってくれてたおかげで、いつもより楽しく巫女の業務ができたと思います。案外いいものですね。こうやってサポートしてくれる人がいるのは」
リアはシンヤの上着の袖をぎゅっとつかみ、はにかんだほほえみを。
「ははは、それはよかったよ」
彼女の頭をやさしくポンポンしながら笑う。そんないじらしい反応をされると、にやけてしまうというものだ。
(それにしてもようやく勇者さまとのご対面か。ただシチュエーションはかなり残念な形だよな。まさか牢屋で出会うなんて、向こうからしてみればけっこう情けない場面だし)
牢屋に向かいながら、トワとの対面に思いをはせる。
(ははは、まあ、そこらへんは目をつぶってやるか。このくらいのヘマなら、まだかわいいものだし)
心の中で笑い飛ばしていると、急に異変が。
「きゃっ!?」
「なんだ!? 今の音は!?」
なんと突然近くで爆発音が鳴り響いたのだ。しかも今の音的に、シンヤたちの進行先である牢屋からである。
「たぶん牢屋の方からです!?」
「なんだって!? じゃあ、トワの身になにかが!?」
一瞬シンヤたちを襲ってきた魔人のことが頭によぎる。もしかすると魔人側が、邪神の眷属の復活の障害になり得るであろうトワを先に消しに来た可能性が。もしそうならすぐにでも助けに向かわなければ。
すぐさまトワの元に向かおうとしたまさにそのとき、牢屋の部屋の門番をしていたであろう兵士があわててシンヤたちの方へと走ってきた。
「大変です!? つかまえていた少女が牢屋を破壊し、脱走しました!」
そして予想外の報告を。
(おいおいおい!? ただでさえ立場がわるいのに、なにやっちゃってくれてるんだよ!? 勇者さま!?)
まさかの展開に、心の中で叫ばずにはいられないシンヤなのであった。
「すみません。どうやら封印の巫女の権力を使ったとしても、難しそうです。現在勇者さまはこの騒動の犯人、または関係者とみなされています。なので身の潔白を証明するなにかがない以上、しばらく解放されそうにありません」
リアが申しわけなさそうに、つかまったトワの件について報告してくれる。
「まあ、そうなるよな。状況的にみたら怪しいし、勇者という肩書きだけじゃさすがに無理か」
「リアが調査の依頼を頼んだみたいな形にすれば、なんとかなったかもしれません。ですがすでに彼女のことはなにも知らないと、言ってしまっていて……」
「そっか。頼みの綱のリアでそれだと、もうこの騒動を無事解決するぐらいしか残ってないかもな」
封印の巫女でもダメだとすると、いくらシンヤが手を尽くしても難しいはず。もはや一番手っ取り早いのは、この騒動を無事解決することかもしれない。幸いフローラやリアといった頼もしい仲間たちがいるため、トワ抜きでもなんとかなるかもしれなかった。
「そうですね。今は封印の件でみなさんピリついてますから、まずそこをどうにかしないと。そうすればこちらの言い分も、通りやすくなるはずです」
「ははは、ほんと世話のかかる勇者さまだ」
彼女の置かれている状況に、改めて笑うしかなかった。
「一応、面会ならさせてあげられますよ」
「それは助かる。いったん情報交換とか、少し込み入ったことを話しておきたかったんだよ」
これは非常にありがたかった。まだトワとはしゃべったこともなく、どんな子なのかさえわからない状態。今後仕えるであろう相手のことなので、そこらへんを早く知っておきたかったのだ。
「ただ取り調べとかの関係上、夜ぐらいからになると思うんですが」
「話せるだけ十分だよ。それで頼んだ」
「では手配しておきますね」
「となると夜まで時間をつぶす必要があるのか」
「巫女さま、よろしいですか?」
どう時間をつぶすか考えていると、扉をノックする音が。
「はい、どうぞ」
「失礼します。司祭さまがお呼びです」
シスターが入ってきて、要件を伝えてくる。
「わかりました、すぐ行きます。シンヤさんはこの部屋でゆっくりしておいてください」
リアは立ち上がり、部屋を出て行こうと。
「そうか? じゃあお言葉に甘えて」
「あなた巫女さまの護衛ですよね。さっきの騒動もありますし、ちゃんと巫女さまに付き添っておくべきでは?」
待たせてもらおうとすると、シスターが怪訝そうな視線を向けてくる。
そういえばさっきかばってもらう時、リアの護衛になっていたことを改めて思い出す。確かに守るべき対象を放ってくつろいでいるなど、護衛としてあるまじきこと。注意されるのも無理はない。
「いえ、彼については、その……」
これ以上付き合わせるのはわるいと、なんとかかばおうとしてくれるリア。
「ははは、冗談ですよ、冗談、さあ、行きましょう、巫女さま」
彼女に無理させるわけにもいかないので、立ち上がりリアのもとへ。
「シンヤさん、いいんですか?」
「いろいろ世話になってる分、少しでも恩を返さないとさ。物騒なのは事実だし、護衛しながら手伝えることとかあればなんでもやらせてもらうよ」
リアの肩に手を置き、頼もしげに笑いかける。
「ありがとうございます。では一緒に行きましょうか」
こうしてもうしばらくリアの護衛をすることに。
「ふう、もう夜か」
両腕を伸ばしながら一息つく。
すでに外は陽が沈み夜に。あれからリアの封印の巫女の仕事。礼拝だったり、現状における話し合いだったり、人々の不安を和らげるため街の方へ顔を出しに行ったりなど。ずっと彼女の護衛として付き添っていたという。そして現在それらの仕事もおわり、トワがいる牢屋へと向かっている真っ最中なのであった。
「すみません、こんな時間まで付き合わせてしまって」
「ははは、これぐらいどうってことないさ。むしろ貴重な体験をさせてもらえてありがたかったよ。補佐役のちょうどいい予行練習にもなったしな」
申しわけなさそうに目をふせるリアに、気にしなくていいと笑いかけた。
「それにリアの封印の巫女としての、凛々しい姿もいっぱい見れたし」
そして彼女の頭をやさしくなでる。
「え、えへへ」
するとテレくさそうにしながらも、気持ちよさそうに目を細めるリア。
「というかオレなんてほとんど付き添ってただけだし、お疲れなのはリアの方だろ。あの業務の数々、よくがんばったな」
「えへへ、シンヤさんが話し相手になってくれてたおかげで、いつもより楽しく巫女の業務ができたと思います。案外いいものですね。こうやってサポートしてくれる人がいるのは」
リアはシンヤの上着の袖をぎゅっとつかみ、はにかんだほほえみを。
「ははは、それはよかったよ」
彼女の頭をやさしくポンポンしながら笑う。そんないじらしい反応をされると、にやけてしまうというものだ。
(それにしてもようやく勇者さまとのご対面か。ただシチュエーションはかなり残念な形だよな。まさか牢屋で出会うなんて、向こうからしてみればけっこう情けない場面だし)
牢屋に向かいながら、トワとの対面に思いをはせる。
(ははは、まあ、そこらへんは目をつぶってやるか。このくらいのヘマなら、まだかわいいものだし)
心の中で笑い飛ばしていると、急に異変が。
「きゃっ!?」
「なんだ!? 今の音は!?」
なんと突然近くで爆発音が鳴り響いたのだ。しかも今の音的に、シンヤたちの進行先である牢屋からである。
「たぶん牢屋の方からです!?」
「なんだって!? じゃあ、トワの身になにかが!?」
一瞬シンヤたちを襲ってきた魔人のことが頭によぎる。もしかすると魔人側が、邪神の眷属の復活の障害になり得るであろうトワを先に消しに来た可能性が。もしそうならすぐにでも助けに向かわなければ。
すぐさまトワの元に向かおうとしたまさにそのとき、牢屋の部屋の門番をしていたであろう兵士があわててシンヤたちの方へと走ってきた。
「大変です!? つかまえていた少女が牢屋を破壊し、脱走しました!」
そして予想外の報告を。
(おいおいおい!? ただでさえ立場がわるいのに、なにやっちゃってくれてるんだよ!? 勇者さま!?)
まさかの展開に、心の中で叫ばずにはいられないシンヤなのであった。
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