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   1章1部 異世界転生!?

予知のスキル

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「や、やられる!? ウソだろ!? こんなところでオレの異世界ライフが!?」

 シンヤを食いかかろうと、牙を光らせ飛び込んでくるウルフ。
 これから起こるであろう悲劇に、思わず目を閉じてしまう。これはおわったと、心の中ではあきらめの感情が。
 だがそこへ。

(左うでがやられる!?)

 なんと左腕にダメージを受ける予感が、急に湧き上がってきたのだ。なのでなりふりかまわず右側へ緊急回避を。

「あれ?」

 すると驚くべきことが。そう、さっきシンヤの左腕があったところを、ウルフが突っ込んでいったのだ。もし回避行動をとっていなければ、予感がしたように左腕がやられていたに違いない。

(次は右肩がやられる!?) 

 かわしたのもつかの間、またもや予感が。今度はシンヤの右肩にダメージを受けると。

「うわっ!?」

 予感にしたがい、左側へステップ。
 するとシンヤの右肩があった場所をかもうと、空振りにおわるウルフの姿が。

「よっと、ほっと、ふっ」

 だがそれらはまだまだ続く。三匹のウルフが次々に襲ってくるが、やられる予感にしたがい身体を動かすと、紙一重かみひとえにかわせるのだ。

「くらえ!」
「ギャウ!?」

 予感にしたがい攻撃を緊急回避。そして真横を過ぎ去っていったウルフに対し、さっき拾ったナイフで反撃を。
 するとウルフは血を流しながら、ひるみだす。

「ふ、はははははは! どうした! どうした! ケモノども? その程度でオレが倒せると思っているのか!」

 シンヤはナイフをちらつかせながら、不敵な笑みを浮かべる。
 というのもここで気づいてしまったのだ。予感にしたがい動けば、敵の攻撃をギリギリかわせることを。そう、自分はもしかするとかなり強いのではという事実に。

(そうか! これが予知のスキルの力!)

 そして理解する。どうやらシンヤは予知のスキルを使えているみたいなのだ。ただ女神も言っていたようにまだレベルが低いためか、今のところ危機的状況下における予知だけみたいだが。
 だがそれでも十分。これから受けるであろう自身の被害ひがいを、予感という形で事前に知ることができるようになったのだ。この予知のスキルによる被害察知能力により、もはや敵はちょっとやそっとでは、シンヤにダメージを与えることができなくなったのであった。

「いいね、いいね、おもしろくなってきた! ということでケモノども、貴様らが何匹束になってかかってこようが、オレの敵じゃ……、あれ?」

 ナイフを敵に突きつけ自信満々に宣言しようとしたところ、ここで異変に気付いた。
 なんとさっきまでは三匹しかいなかったが、この開けた場所に次々と彼らの仲間が集まってきていたのだ。その数十匹以上であり。

「はっ、直観がさけんでる。このままだとヤバイと……」

 ひたいを押さえながら、一歩あとずさる。

 なんだか嫌な予感が次々と湧き上がっているのだ。これも危機的状況下における予知の効果なのだろう。なのでシンヤはある決断を。それは。

「ははは、前言撤回!? すんませんでしたー!」

 謝りながらも一目散に逃げ出す。
 さすがにあの数を相手にするのは骨が折れる。なのでここは相手をせず逃走することにしたのだ。
 とはいっても足の速さではあのウルフの集団に勝てないため、すぐ追いつかれてしまうだろう。後方からウルフたちの走る音が、だんだん近づいてきているのだから。だがシンヤには秘策があった。

「こっちだ、こっちに行けと直観が告げてる!」

 しげみをかき分けながら突き進む。もはや視界は常に茂みとなっており、先の景色は見えていない。自分でもどこに向かっているかわからないが、それでも確信があった。そう、このままではマズイという予感とともに、こっちに行けば助かるという直観にも似たなにかがさけんでいたのだ。これもシンヤの予知の力なのだろう。具体的な内容まではわからないが、その状況についてどう動くのが最善かなんとなくわかるようになっているらしい。
 実際進行方向からは川の流れる音が。心なしか少し水音が大きい気がするが、そこを渡って逃げろという感じだろう。

「オレはこの予知のスキルを信じるぜ! 行くぞ! ここから思いっきりジャンプだ!」

 茂みで先が見えないが、予知からの直観にしたがい前方へ大きく跳んだ。
 すると茂みから完全に抜け、目に飛び込んできた光景は。

「――ははは……、う、ウソだよな。こんなの聞いてないぞーーー!?」

 もはや心からのツッコミをするしかない。
 というのも今だシンヤは空中。本来なら地面か川に着陸しているはずなのにだ。ではなにが起こったのか。それはいたってシンプル。茂みから飛び込んだ先は、ちょうど滝となっている部分だったということ。下の方を見れば足場がなく、水がザーザーと流れ落ちている光景。しかもなかなかの高さだった。

「うわぁーーーーーー!?」

 そして落下とともに、シンヤの悲鳴がこだまするのであった。

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