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   1章1部 異世界転生!?

さらば我が人生……

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 戦場と化した街中。シンヤは廃墟はいきょの六階のビルの屋上から、すぐ近くの広場を見下ろす。そしてすぐさまスナイパーライフルをかまえた。

「もらった」

 そしてスコープをのぞきこみ、敵兵士の動きを予測。慣れた手つきで相手をヘッドショットする。

「まだまだ!」

 さらに近くにいた残り二人も、またたく間にヘッドショットしていく。

「はっ!?」

 次の瞬間、このビルの屋上に続く階段を駆け上る音が聞こえてきた。
 そして扉を開け、屋上に突入してくる三人の敵兵士。彼らはすぐさまシンヤに向けてアサルトライフルを突き付けてくる。
 普通に考えて絶体絶命の状況。現在のシンヤのメイン武器はスナイパーライフルゆえ、この距離で打ち合うのは分がわるすぎるのだ。ゆえに敵兵士も勝ちを核心したことだろう。しかしシンヤは不敵な笑みを浮かべる。

「ははは、まだおわりじゃないぜ」

 敵が引き金を引いた瞬間、襲いくるであろう銃弾の軌道を予測。横へと回避行動しながら愛銃であるリボルバーを引き抜く。それから華麗かれいな銃さばきで、二人の兵士をヘッドショットし倒していった。そして最後の一人にヘッドショットの一撃を放ったまさにそのとき、敵の銃弾がシンヤに被弾ひだんし。

「あー! くそ! 相打ちかよ! しかも試合がちょうどおわったし!」

 ゲームのコントローラーを軽く投げ捨て、両手で頭をかきながら悔しがる。
 ちなみにここはシンヤの住んでいるマンションの一室。二十七歳のシンヤは一人暮らしであり、FPS中毒者。彼女いない歴=年齢の悲しい男である。

「まあ、成績はかなりよかったし、最後の銃撃戦はなかなか熱かったからいいか。やっぱり男のロマンっていったら、リボルバーだよな! ははは」

 部屋に飾っているエアガンの数々。その中でもお気に入りのリボルバーに視線を向けながらうっとりする。
 シンヤはリボルバー愛好家。FPSゲームでもサブ武器では必ずリボルバーを使っているほど。基本はスナイパーでやっているが、よくリボルバーを使いたくて前線に突撃するのがわるいクセだという。ちなみにスナイパーをやっているのも、単純にかっこいいからという理由だ。

「って、もうこんな時間かよ!?」

 時刻は朝の七時三十分。昨日は仕事の疲れにより、帰ってすぐに寝てしまった。そして今日は朝早くに起きて、今までFPSゲームに熱中していたのだ。

「やばい! すぐに仕事にいかないと!」

 そしてすぐさま立ち上がり、仕事へ行く準備をするシンヤなのであった。







「あー、今日も疲れたー。もう過労で倒れそうだ」

 時刻は二十時ごろ。ここは十三階建てのとあるオフィスビルの屋上おくじょうである。
 仕事をおえたシンヤはぐったりしながら、屋上の手すりにもたれかかっていた。街中は建物の光がキラキラと輝き、なかなかの絶景である。ふと下の方を見てみると、近くには大きい病院が。

「倒れたらすぐ近くに病院があるから、まあ、安心か……。いやいや、そういう問題じゃないから!」

 首を振りながら、一人ツッコミをしてしまう。

「あー、改めて考えると、オレの人生つまらないなー。ブラック企業でさんざん働かされて、それ以外はゲームするだけの日々。アニメとかみたいに、なにかおもしれーことでも起きないかな、――ははは……」

 今の自分の人生を自嘲的に笑いながら、ありえない非日常にあこがれをいだく。
 だがこの願いは到底かなわない。シンヤにあるのはこの先もこんな感じのつまらない人生なのだから。

「あれ? 女の子?」

 ふと視線を横に向けると、少し離れたところに十六歳ぐらいの少女が。茶色がかかった髪をした、どこかはかなげな雰囲気をもつ少女である。彼女は手すりの方にもたれかかり、なにやら思いつめた表情をしていた。
 いつからそこにいたのだろうか。感慨かんがいに浸っていたため、気づくのが遅れてしまったみたいだ。

(でもなんでこんなところに? しかもなんか様子が変じゃ?)

 ここはオフィスビルゆえ、十六歳ぐらいの少女がいるのは少しおかしい。家族でも待っているのだろうか。あと彼女は胸を押さえており、どこか苦しそうでもあったという。近くに病院があるため、もしかすると夜景が見たいからという理由でそこから抜け出してきたのかもしれない。
 声をかけるか迷っていると、そこで異変が。

「なっ!?」

 なんと少女は手すりを越え、そのまま前へ。
 もちろんその先に足場はなく、このままでは落下してしまうだろう。

(おいおい!? もしかして自殺!?)

 もはや驚愕きょうがくしながらも、必死に駆け寄ろうとする。シンヤも手すりを飛び越え、急いで少女のもとへ。
 さすがにこんな現場を見逃せるはずがない。シンヤならまだしも、彼女はまだまだ若く輝ける未来があるはずなのだ。それをこんなところでつなんて、あってはならないことだ。

「間に合え!」

 すでに少女は意を決し、飛び降りようと。身体が地面へ吸い込まれるように落ちていき。

「させるか!」
「え?」

 なんとか落ちかかっている少女のうでをつかみ、一瞬目が合う。
 彼女は心底驚いたようで、きょとんとしていた。

(よしこのまま! あれ?)

 すぐさま少女を引き上げようとするが、ここで異変に気付く。というのも踏ん張りがまったくきかないのだ。そう、まるでシンヤも落ちかけているように。

「――あ、これはだめだ……」

 その瞬間、シンヤはさとる。少女の落ちる勢いにつられ、自分も落下しかけていることを。

(――ははは……、これはさすがにあんまりだろ? 神さま……)

 心の中でもはや笑うしかない。
 助けるどころか、一緒に巻き込まれてしまうとは。せめて少女だけでも助けられたのなら恰好かっこうがつくのだが。人生とは本当にうまくいかないものである。

「――ああ……、さらば我が人生……。次生まれ変わるときは、せめてもう少し面白味のある人生だったらなー、ははは……」

 ビルの屋上から落下しながら、そう願わずにはいられないシンヤなのであった。
 
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