*婚前なれそめファンタジー* 盟主は手綱を握りたい! ※ 猜疑心強めのいじわる盟主は、光の溺愛男に進化する ※

保志見祐花

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第59話「あっあっ、んっんっ。」

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「────んっ。」
 昼。




「────アッ。」



 声。


「あっ。
 あっ。
 ん……っあっ……!」

 ミリアのそれと



「…………へえ、もっと?」

 エリックのそれが

 

「あっ。あっ……!?
 やだっ……!
 ああっ、あっ?
 あっ。あっ。
 んっ……あぁっ。」
「…………ミリア……これは?」


 ────店内に響く。



 彼女の声は焦り上ずり
「あっ! あっ! やだっ。
 ちょっ……、とっ
 まっ……てっ!」



「…………もう少し、入れようか? ほら」
 彼の声は、余裕そのもの



 はあはあとした息遣い
 篭る熱気に 滴る汗



「あっ、やだっ! だめっ
 あっあっあっあっ。」
「ダメって言われても……君が求めたんだろ?」

 

 彼のそれには、加減がない。
 耐える彼女の表情は、真っ赤に紅潮し────










 ギリギリのところで 持ち堪えていた。






 腕が

 倒れる

 ギリギリのところで。
 




「────んんんんああああああ!
 ねえ待って!? ちょっとまって!?
 こんなギリギリのとこで力キープするっ!?
 ちょっとキミッ……大人げなさすぎるのでは!?」

「……大人げないことを求めたのは君だろ?」
「ちっとも動かない! ちっとも動かない!
 あああああっ腕がぷるぷるッ!
 ぷるぷっ。
 あああああああっ!
 もう無理ああああああああ!」

「…………だから言ったんだよ。
 何度やらせるつもりなんだ、『腕相撲』」



 あと1ミリ。
 もう少しで『負け』というところで力をキープし続けている、黒髪くせ毛の青年エリック・マーティン……
 いや、エルヴィス・ディン・オリオン盟主は、絶妙な加減で腕に力を込めた。



 お察しの通りである。
 『契約』を終えた彼女が求めたのは『腕相撲』。


 言われ戸惑うエリックに向かって、彼女は『マジェラの儀式だから』と嘘八百を言い放ち、そのまま試合へと縺れ込ませた。




 もちろん、マジェラにそんな儀式はない。


 しかし
 ソレを知らないエリックは──
 『馬鹿げてる』と思いつつも、ソレに付き合い手を貸したのである。



 エリックが内心
 『…………本当か?』と思いつつ手を貸して早数回。


 顔を真っ赤にして
 『ふんぬううう!』と唸るミリアに、彼は呆れ気味に目を向けると





「…………なあ。
 君の力で俺に勝てるわけないだろ?
 もういい加減にしたらどうだ?」
「……わかっ、……ってるけど、
 奇跡っ、
 がっ、
 あっ!」
「──あるわけがない。筋肉量が違う」


 力はそのまま。
 プルップルの彼女からそっぽを向いて、彼は頬杖を突きながら言い放つ。


 ミリアから『勝負!』と言われたその時には、魔法を使って挑んでくるかと思いもしたが、彼女は純粋に力で挑んできた。



 馬鹿にされているのか、おちょくられているのか、それともただの馬鹿なのか。
 彼女の真意はまるでわからないが────



 それにしても『弱すぎる』。



 右手一本。
 身を入れなくとも、片手で頬杖を着きながらでも、余裕しゃくしゃく。

 カウンターを挟んで、顔を真っ赤にしながら力を込めている彼女の『全力』を疑うレベルだ。



 まあそもそも性別が違うのだから
 腕力が違うのは明らかであるが

 『こんなにも違うのか……?』と子供を相手にしているような気分であった。




 しかし彼女は諦めない。
 カウンターすれっすれのところで、今もぷるぷる耐え忍ぶミリアの手と、その顔をちらり。

 エリックは「また」ため息交じりに口を開いて、



「…………なあ。
 …………確認なんだけど、
 君、これで全力なんだよな?」
「全力じゃないように見えますかなっ!?」

「……見えないよ。
 見えないから聞いてるんじゃないか」


 勢いよく返ってくる言葉に、エリックは静かに首を振る。



 ……ハァ……
 そしてこぼれる、お決まりのため息。


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