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3 君の秘密
第36話 ああ、どいつもこいつも鬱陶しい3
しおりを挟む「はっはっは。…………閣下ぁ、お歳を重ねて先代に似てきましたなあ~! その瞳! 目元! 雰囲気! 亡きオリバーさまの再来を彷彿とさせるその威厳! まさに『オリオンの血』! 流石は我が国屈指の武器商人! 身震いがしますなあ!」
(────────これだ)
ドミニクの言葉に、彼の中。張り付けた薄い笑みの裏側で、何かが淀み、捻じれ・沈んだ。
会食の度。
毎度毎度。
言われるたびに自覚する。
逃げられぬ運命だと突きつけられる。
────『忌まわしきオリオンの血』。
それに、何度心が濁っただろう。
腹の奥、ごろりと音を立てる重い何かを笑いに変えて。エルヴィスは少し高めの声を意識してドミニクに顔を向けると、
「────……それは……昔の話ですよ。現在の取り扱いは魔具専門です。……武器は……、父の時代で終わりですから」
「がっはっは! そうでありましたな! お父上と初代オリオン様が我が諸侯同盟に挙げた功績は、計り知れぬものがありますからなあ!」
「…………有難うございます」
「エルヴィス様♡ レアは魔具も好きなんですの。コレクションをご覧になりまして?」
「────……ああ、それではまた、機会のある時に」
レアのすり寄った笑顔に微笑を浮かべ、ふと。手元のナイフに映った自分の瞳に、彼は動きを止めた。
そこにあるのは『確かに自分の瞳』であるはずなのに、中から父が見つめているかのような感覚に、素早く目を反らす。
嫌というほど味わってきた。
うんざりするほど浴びてきた。
(……お前たちが欲しいのは、うちの金と地位だろう。オリオンの名があれば国内で怖いものなどないからな? …………透けて見えるんだよ)
彼は、嫌いだった。
こうした欺瞞と虚栄に溢れた貴族の付き合いが。
(どいつもこいつも、二言目には「オリオンの血」)
会うたびそっくりだと言われる、この『奈落を閉じ込めた様な瞳』も。
(裏で。お前たちがなんて言ってるか、知らないとでも思っているのか? だとしたらおめでたいな?)
『所詮あそこは死の商人』『何万人殺してきてるんだ』『血にまみれた富』『悪魔の末裔』『女神の御許へなど行けるわけがない』
対面では媚び諂い、陰で囁く醜悪さも。いくら努力・研鑽を重ねても付きまとう家の呪いも。
『オリオンの家の子』
『血も涙もない悪魔の子!』
『逆おうものなら屋敷ごと焼かれる』
『戦争も知らない3代目が』
(………………人なんて。表面上笑っていても、肚の奥で何を考えているかわからない)
幼いころから突き付けられていた、人の本性。腹の中身。成人してからさらに感じる──どす黒さ。
利用し・利用され・裏切りそして────富を得る。
そんな世界に生きている。
(────……信じられるのは 自分だけ)
エルヴィスは皿の上の肉の塊にナイフを通し、淡々と口に運んだ。
ああ────吐き気がする。
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