1 / 5
1/5話
しおりを挟む
「――ふぅん? キミたちドワーフには、他人のベッドに潜り込む習慣があるのかな?」
その冷え切った声で、私の意識は夢の世界から強制的に呼び起こされた。そして瞬きをパチクリと二度三度。
……私をジロリと見下ろしている、恐ろしく顔の整ったエルフと目が合った。
「……は、はじめまして? おはようございます??」
「おはよう。ちなみに今は夕方だし、このベッドの上にドワーフはキミしかいないけど?」
「で、ですよねぇ……」
うぅん、どうしよう。これって夢じゃないわよね。
何で私、ベッドの中に居たんだろう。そもそもここは誰の部屋? そんな疑問が次から次へと湧いてくる。と同時に「なるほど、これがエルフかぁ……」なんて吞気に目の前の人物を見つめていた。
サラッサラの金髪に空のように青い瞳。そして非の打ち所がない美貌っぷり。自分と同じ生き物というより、神様がお作りになった精巧なお人形っていう方が相応しいかも。
ていうか毛穴すらあるんだろうか、この人? もしやエルフに伝わる特別なスキンケアが??
でも綺麗な顔で怒られると、こんなにも怖いなんて……。
「キミの返答次第では、この後どうなるか……分かるよね?」
「ち、違うんです! これにはドワーフの地下王国よりも深~いワケが……」
「へぇ~? それは王である僕の寝室に、そんなあられもない姿で侵入するほどの深い理由?」
王様!? ってことはこの方がエルフ王のコルティヴァ様!?
陛下の仰る通り、王族の私室に無断で立ち入るなど不敬も不敬。場合によっちゃ賊として処刑されても仕方ない。つまり言葉を間違えれば私の未来は――死!?
しかも今の私は全裸というオマケ付き。かろうじて体は布団で隠せているけれど、このチンチクリンなボディではセクシーさの欠片もない。
せめて色仕掛けができれば、どうにか誤魔化せたかもしれないのに……くうぅっ、ドワーフに生まれたことが今日ほど悔しいと思ったことはない。
「えっとぉ、気付いたらここに居た……みたいな?」
無言の時間がしばし流れる。あっ、これミスった。嘘を言えば間違いなく断罪される、そう判断したこの脳が絞り出した答えがコレだったんだけど、完全にやらかした。
彼の貼り付いた笑顔は、仮面のように固まったままだ。あまりのいたたまれなさに耐え切れなくなった私は、布団から頭だけ出した姿で平伏した。
「……まことに申し訳ございませんでした」
あぁ、もう最悪だ。終わった。不慮の事故とはいえ、殿方のベッドに全裸で潜り込むなんて、痴女と言われても致し方ない。しかも初対面という最悪なタイミング。でも本当にどうしてこうなった!?
「色々と聞きたいことはあるんだけど……まずは名前から聞かせてもらおうか」
圧力の高いスマイルで詰め寄られた私は、他人の布団を涙で濡らしながら「ひゃい……」という情けない声で答えた。
その冷え切った声で、私の意識は夢の世界から強制的に呼び起こされた。そして瞬きをパチクリと二度三度。
……私をジロリと見下ろしている、恐ろしく顔の整ったエルフと目が合った。
「……は、はじめまして? おはようございます??」
「おはよう。ちなみに今は夕方だし、このベッドの上にドワーフはキミしかいないけど?」
「で、ですよねぇ……」
うぅん、どうしよう。これって夢じゃないわよね。
何で私、ベッドの中に居たんだろう。そもそもここは誰の部屋? そんな疑問が次から次へと湧いてくる。と同時に「なるほど、これがエルフかぁ……」なんて吞気に目の前の人物を見つめていた。
サラッサラの金髪に空のように青い瞳。そして非の打ち所がない美貌っぷり。自分と同じ生き物というより、神様がお作りになった精巧なお人形っていう方が相応しいかも。
ていうか毛穴すらあるんだろうか、この人? もしやエルフに伝わる特別なスキンケアが??
でも綺麗な顔で怒られると、こんなにも怖いなんて……。
「キミの返答次第では、この後どうなるか……分かるよね?」
「ち、違うんです! これにはドワーフの地下王国よりも深~いワケが……」
「へぇ~? それは王である僕の寝室に、そんなあられもない姿で侵入するほどの深い理由?」
王様!? ってことはこの方がエルフ王のコルティヴァ様!?
陛下の仰る通り、王族の私室に無断で立ち入るなど不敬も不敬。場合によっちゃ賊として処刑されても仕方ない。つまり言葉を間違えれば私の未来は――死!?
しかも今の私は全裸というオマケ付き。かろうじて体は布団で隠せているけれど、このチンチクリンなボディではセクシーさの欠片もない。
せめて色仕掛けができれば、どうにか誤魔化せたかもしれないのに……くうぅっ、ドワーフに生まれたことが今日ほど悔しいと思ったことはない。
「えっとぉ、気付いたらここに居た……みたいな?」
無言の時間がしばし流れる。あっ、これミスった。嘘を言えば間違いなく断罪される、そう判断したこの脳が絞り出した答えがコレだったんだけど、完全にやらかした。
彼の貼り付いた笑顔は、仮面のように固まったままだ。あまりのいたたまれなさに耐え切れなくなった私は、布団から頭だけ出した姿で平伏した。
「……まことに申し訳ございませんでした」
あぁ、もう最悪だ。終わった。不慮の事故とはいえ、殿方のベッドに全裸で潜り込むなんて、痴女と言われても致し方ない。しかも初対面という最悪なタイミング。でも本当にどうしてこうなった!?
「色々と聞きたいことはあるんだけど……まずは名前から聞かせてもらおうか」
圧力の高いスマイルで詰め寄られた私は、他人の布団を涙で濡らしながら「ひゃい……」という情けない声で答えた。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした
楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。
仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。
◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
◇全三話予約投稿済みです
玉砕するつもりで、憧れの公爵令息さまに告白したところ、承諾どころかそのまま求婚されてしまいました。
石河 翠
恋愛
人一倍真面目でありながら、片付け下手で悩んでいるノーマ。彼女は思い出のあるものを捨てることができない性格だ。
ある時彼女は、寮の部屋の抜き打ち検査に訪れた公爵令息に、散らかり放題の自室を見られてしまう。恥ずかしさのあまり焦った彼女は、ながれで告白することに。
ところが公爵令息はノーマからの告白を受け入れたばかりか、求婚してくる始末。実は物への執着が乏しい彼には、物を捨てられない彼女こそ人間らしく思えていて……。
生真面目なくせになぜかダメ人間一歩手前なヒロインと、そんなヒロインを溺愛するようになる変わり者ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID3944887)をお借りしております。
溺愛される妻が記憶喪失になるとこうなる
田尾風香
恋愛
***2022/6/21、書き換えました。
お茶会で紅茶を飲んだ途端に頭に痛みを感じて倒れて、次に目を覚ましたら、目の前にイケメンがいました。
「あの、どちら様でしょうか?」
「俺と君は小さい頃からずっと一緒で、幼い頃からの婚約者で、例え死んでも一緒にいようと誓い合って……!」
「旦那様、奥様に記憶がないのをいいことに、嘘を教えませんように」
溺愛される妻は、果たして記憶を取り戻すことができるのか。
ギャグを書いたことはありませんが、ギャグっぽいお話しです。会話が多め。R18ではありませんが、行為後の話がありますので、ご注意下さい。
【完結】伯爵の愛は狂い咲く
白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。
実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。
だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。
仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ!
そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。
両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。
「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、
その渦に巻き込んでいくのだった…
アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。
異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点)
《完結しました》
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
たとえこの想いが届かなくても
白雲八鈴
恋愛
恋に落ちるというのはこういう事なのでしょうか。ああ、でもそれは駄目なこと、目の前の人物は隣国の王で、私はこの国の王太子妃。報われぬ恋。たとえこの想いが届かなくても・・・。
王太子は愛妾を愛し、自分はお飾りの王太子妃。しかし、自分の立場ではこの思いを言葉にすることはできないと恋心を己の中に押し込めていく。そんな彼女の生き様とは。
*いつもどおり誤字脱字はほどほどにあります。
*主人公に少々問題があるかもしれません。(これもいつもどおり?)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる