24 / 106
第24話 魔王様、困惑です
しおりを挟む
『おい、そこの豚ァ! 貴様正気か!?』
巨大なふわふわの白玉から、いきなり顔が生えた。
いや、正確に言えば元々空を見上げていた顔が、単に俺たちの方に向いたというべきか。
しかし初手から豚呼ばわりとは、失礼な白毛玉である。
『聖獣である我に石を投げつける行為……貴様、その意味が分かっているんじゃろうなァ~?』
「えっ? 聖獣……?」
『そうじゃ! 我はローウン王国を守護する、偉大な聖獣であるッ!!』
――ブワッ。
そう叫んだ瞬間、コイツの全身の毛が逆立った。
お、怒ってるっぽいな……。
「リディカ姫、これって……」
「わ、私の知っている守護聖獣様のお姿とは違いますが……おそらくは本当かと」
俺とリディカ姫は、小声でひそひそと囁き合った。
この国で兎の聖獣が崇められていることは、俺もなんとなく知っていた。ピィと一緒に行った隣街のティリングでも、凛々しいお姿の兎像が置いてあったしな。
たしか名前はアルミラージという、伝説の兎だったような気がする。だがどうしてそんな偉い守護聖獣サマが、こんな辺境のド田舎に……?
『ん、ンゴ……? どうして黙っているのだ。我、もしかして何か変なことを言っちゃった?』
「え? あっ、いや。すまん、ちょっと考え事をしていた」
俺がそう言うと、巨大な白玉が急にふるふると震えだした。心なしか声も涙ぐんでいたようにも聞こえた。
『ひ、久しぶりに人里に降りて、勇気を出して話し掛けたっていうのに! 無視するなんて酷いンゴ!! 我、偉い聖獣なのに……」
「別に無視していたワケじゃないんだが……」
何だこの聖獣、急にンゴンゴ言い出したぞ?
しかしなんだか、急に雰囲気が柔らかくなったな。さっきまでの偉そうな態度はどこへ行ったのやら。
『むむっ、その反応! さては我のことを疑っておるな!』
「い、いえ……そんなことは……」
『ふふふ、別に構わないンゴ。人の子にとって我のような存在は、と~っても珍しいンゴね。疑いたくなる気持ちは分かるぞ~』
なんだろう、この妙なガッカリ聖獣感は。というかコイツ、意外とチョロそうな気配がする……。
俺と同じことを思っていたのか、口元を引きつらせたリディカ姫と目が合った。
「ストラゼス様……」
「まぁ、こんなんでも偽物ってことはないだろう。聖獣とは?って感じだけど」
「ですよね……」
こっちに害を与える気はなさそうだし、取り敢えず目的を訊ねてみるか。
俺は石を投げ付けてしまったし、第一印象はきっと最悪だろう。ここは親善大使としてリディカ姫に任せてみよう。
「あの、聖獣様? あなた様はどうしてこのプルア村へ?」
『んほほっ、我好みの可愛い女の子ではないか~! おぬし、名前は?』
「えっ?」
『……ご、ごほん。よくぞ聞いてくれたぞ、人の子よ。我はこの村に観こ……ゲフンゲフン。天からの啓示を与えに参ったのだ』
天からの啓示……?
啓示ってアレだよな、神様からのお告げって意味だったはず。つまり俺たちに何かを伝えるためにやってきたってことか。
でも今、観光に来たって言いかけていなかったか?
だが聖獣様は急に真面目なトーンで、俺たちに語り始めた。
『実はな、この村に危険が迫っていることを伝えに来たのだ』
巨大なふわふわの白玉から、いきなり顔が生えた。
いや、正確に言えば元々空を見上げていた顔が、単に俺たちの方に向いたというべきか。
しかし初手から豚呼ばわりとは、失礼な白毛玉である。
『聖獣である我に石を投げつける行為……貴様、その意味が分かっているんじゃろうなァ~?』
「えっ? 聖獣……?」
『そうじゃ! 我はローウン王国を守護する、偉大な聖獣であるッ!!』
――ブワッ。
そう叫んだ瞬間、コイツの全身の毛が逆立った。
お、怒ってるっぽいな……。
「リディカ姫、これって……」
「わ、私の知っている守護聖獣様のお姿とは違いますが……おそらくは本当かと」
俺とリディカ姫は、小声でひそひそと囁き合った。
この国で兎の聖獣が崇められていることは、俺もなんとなく知っていた。ピィと一緒に行った隣街のティリングでも、凛々しいお姿の兎像が置いてあったしな。
たしか名前はアルミラージという、伝説の兎だったような気がする。だがどうしてそんな偉い守護聖獣サマが、こんな辺境のド田舎に……?
『ん、ンゴ……? どうして黙っているのだ。我、もしかして何か変なことを言っちゃった?』
「え? あっ、いや。すまん、ちょっと考え事をしていた」
俺がそう言うと、巨大な白玉が急にふるふると震えだした。心なしか声も涙ぐんでいたようにも聞こえた。
『ひ、久しぶりに人里に降りて、勇気を出して話し掛けたっていうのに! 無視するなんて酷いンゴ!! 我、偉い聖獣なのに……」
「別に無視していたワケじゃないんだが……」
何だこの聖獣、急にンゴンゴ言い出したぞ?
しかしなんだか、急に雰囲気が柔らかくなったな。さっきまでの偉そうな態度はどこへ行ったのやら。
『むむっ、その反応! さては我のことを疑っておるな!』
「い、いえ……そんなことは……」
『ふふふ、別に構わないンゴ。人の子にとって我のような存在は、と~っても珍しいンゴね。疑いたくなる気持ちは分かるぞ~』
なんだろう、この妙なガッカリ聖獣感は。というかコイツ、意外とチョロそうな気配がする……。
俺と同じことを思っていたのか、口元を引きつらせたリディカ姫と目が合った。
「ストラゼス様……」
「まぁ、こんなんでも偽物ってことはないだろう。聖獣とは?って感じだけど」
「ですよね……」
こっちに害を与える気はなさそうだし、取り敢えず目的を訊ねてみるか。
俺は石を投げ付けてしまったし、第一印象はきっと最悪だろう。ここは親善大使としてリディカ姫に任せてみよう。
「あの、聖獣様? あなた様はどうしてこのプルア村へ?」
『んほほっ、我好みの可愛い女の子ではないか~! おぬし、名前は?』
「えっ?」
『……ご、ごほん。よくぞ聞いてくれたぞ、人の子よ。我はこの村に観こ……ゲフンゲフン。天からの啓示を与えに参ったのだ』
天からの啓示……?
啓示ってアレだよな、神様からのお告げって意味だったはず。つまり俺たちに何かを伝えるためにやってきたってことか。
でも今、観光に来たって言いかけていなかったか?
だが聖獣様は急に真面目なトーンで、俺たちに語り始めた。
『実はな、この村に危険が迫っていることを伝えに来たのだ』
0
お気に入りに追加
1,078
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる