17 / 106
第17話 魔王様、謝罪する
しおりを挟む
「調子に乗ってごめんなさい……」
ティリングの街から帰還後。
俺は領主館の食堂で土下座していた。
「無駄遣いはしないから、買い出しは俺に任せろって言いましたよね? なのにこの大量の商品は何なんですか!?」
両手を腰に当て、悪戯をした子供を叱る母親のようなポーズのリディカ姫が、俺を見下ろしている。
ちなみに共犯であるはずのピィは、フシとクーと一緒に外へ遊びに行ってしまった。プレゼント(賄賂)をしたっていうのに、あの薄情者め。
「聞いてますか!?」
「は、はい! 誠にすみませんでしたッッ!」
「もう、いい大人なんですから。しっかりしてください!!」
う、うぅ……返す言葉もございません。
珍しい種類の野菜があったものだから、領主という立場も忘れて、つい大人買いしてしまったんです。
でもトマトもナスも美味しいよ? スパイスの苗も手に入ったし、上手く作れたら夏野菜カレーも作れるよ??
「はぁ、買ってしまったものは仕方ありません。責任をもって育ててくださいよ?」
「はい! もちろんです!!」
「……まったく、調子がいいんですから。ふふっ」
怒りの表情から、少し困ったような笑みへと変わったリディカ姫に、ホッと胸を撫でおろす。
でも良かった……どうやら機嫌は治ってくれたみたいだ。
すると食堂の扉が開き、ピィたちが帰ってきたようだった。
「たっだいまなのニャー!」
「楽しかったのー」
いつも感情が薄いピィの声がやや弾んでいる。
フシやクーにせがまれて、俺があげた魔道具で空を飛んできたらしい。上手く使えたようでなによりだ。
「みんなが集まったことだし、畑をどうするか説明しようと思う」
食堂のテーブルで、それぞれの定位置に座った仲間たちを見回し、俺は話を始めた。
「まずは、俺たちで管理できる広さを開墾しよう」
元々この村には、百人ほどが住んでいたらしい。
つまり畑は、それだけの人数が生活できるだけの規模があったわけで。草だらけになってしまった畑を全て元通りにしてしまうと、今の少人数で扱いきれない。
「ストラ兄が魔法を使えば不可能じゃないのニャ?」
「そうしてもいいんだが、あくまでも領主のメイン業務は管理と運営だからな。できるかぎり、そこで生活する村人に手入れをしてもらいたい」
もちろん、将来は村人を増やして、それに合わせて畑もどんどん広くする予定だ。だけど現段階でそれをやってしまうと……。
「川や井戸は作物以外に、人も使いますからね。しかも簡単には移動できないので、無計画にやってしまうと凄く不便な目に遭ってしまいます」
「おぉ、さすがリディカ姫。そういうことも学んでいるんだな」
「えへへへ。社交界に出してもらえなかったので、お城の図書館に引き篭もってずっと本を読んでいましたから……」
おっと、リディカ姫の瞳から光が消えてしまったぞ。触れてはいけない過去を掘り起こしてしまったらしい。
「と、ともかく。畑は全部で三つ作ろうと思う。一つ目が麦用の畑だ」
俺の領地では、小麦や野菜を自給自足できる体制を整えるつもりだ。そのためにはまず、主食となる作物の育成が必要になる。
「二つ目は薬草用の畑だ。これはピィに一任したい」
彼女には、村の周りで自生している薬草を集めてきてもらう予定だ。
遠くからでも目当ての物を発見できるほどの視力持ち。さらには、いつも虫の集まる植物のところにいたので薬草にも詳しい。ピィほどの適任は居ないだろう。
計算も得意なので経理も任せたいところだが、残念ながら計算する収入がまだ無いし。
「三つめは、実験用の畑だな」
「実験用ですか?」
「そう。実は魔族領で自生する植物の種を、少し持っていてな。それをこの村でも育てられないか、試してみようと思うんだ」
そう言って俺は、収納バッグからワサワサと黒い毛の生えた種を取り出した。
――――――――――――――――――
「ストラゼス様。とある世界で『ファンタジー大賞』が始まったそうですよ」
「あー、らしいな。読者さんの応援で、受賞する確率がUPするんだとか」
「『投票』をしてもらった作者が、気持ち悪い顔をしていたニャ!」
「僕も見たのです!」
「見たのー」
「ちょっ、三人とも……」
「…………あんまり言ってやるな」
「え、えっと。清き一票を入れてくださると……」
「作者はともかく、フシたちのためによろしくニャ!」
「なのです!」
「よろしくー」
ティリングの街から帰還後。
俺は領主館の食堂で土下座していた。
「無駄遣いはしないから、買い出しは俺に任せろって言いましたよね? なのにこの大量の商品は何なんですか!?」
両手を腰に当て、悪戯をした子供を叱る母親のようなポーズのリディカ姫が、俺を見下ろしている。
ちなみに共犯であるはずのピィは、フシとクーと一緒に外へ遊びに行ってしまった。プレゼント(賄賂)をしたっていうのに、あの薄情者め。
「聞いてますか!?」
「は、はい! 誠にすみませんでしたッッ!」
「もう、いい大人なんですから。しっかりしてください!!」
う、うぅ……返す言葉もございません。
珍しい種類の野菜があったものだから、領主という立場も忘れて、つい大人買いしてしまったんです。
でもトマトもナスも美味しいよ? スパイスの苗も手に入ったし、上手く作れたら夏野菜カレーも作れるよ??
「はぁ、買ってしまったものは仕方ありません。責任をもって育ててくださいよ?」
「はい! もちろんです!!」
「……まったく、調子がいいんですから。ふふっ」
怒りの表情から、少し困ったような笑みへと変わったリディカ姫に、ホッと胸を撫でおろす。
でも良かった……どうやら機嫌は治ってくれたみたいだ。
すると食堂の扉が開き、ピィたちが帰ってきたようだった。
「たっだいまなのニャー!」
「楽しかったのー」
いつも感情が薄いピィの声がやや弾んでいる。
フシやクーにせがまれて、俺があげた魔道具で空を飛んできたらしい。上手く使えたようでなによりだ。
「みんなが集まったことだし、畑をどうするか説明しようと思う」
食堂のテーブルで、それぞれの定位置に座った仲間たちを見回し、俺は話を始めた。
「まずは、俺たちで管理できる広さを開墾しよう」
元々この村には、百人ほどが住んでいたらしい。
つまり畑は、それだけの人数が生活できるだけの規模があったわけで。草だらけになってしまった畑を全て元通りにしてしまうと、今の少人数で扱いきれない。
「ストラ兄が魔法を使えば不可能じゃないのニャ?」
「そうしてもいいんだが、あくまでも領主のメイン業務は管理と運営だからな。できるかぎり、そこで生活する村人に手入れをしてもらいたい」
もちろん、将来は村人を増やして、それに合わせて畑もどんどん広くする予定だ。だけど現段階でそれをやってしまうと……。
「川や井戸は作物以外に、人も使いますからね。しかも簡単には移動できないので、無計画にやってしまうと凄く不便な目に遭ってしまいます」
「おぉ、さすがリディカ姫。そういうことも学んでいるんだな」
「えへへへ。社交界に出してもらえなかったので、お城の図書館に引き篭もってずっと本を読んでいましたから……」
おっと、リディカ姫の瞳から光が消えてしまったぞ。触れてはいけない過去を掘り起こしてしまったらしい。
「と、ともかく。畑は全部で三つ作ろうと思う。一つ目が麦用の畑だ」
俺の領地では、小麦や野菜を自給自足できる体制を整えるつもりだ。そのためにはまず、主食となる作物の育成が必要になる。
「二つ目は薬草用の畑だ。これはピィに一任したい」
彼女には、村の周りで自生している薬草を集めてきてもらう予定だ。
遠くからでも目当ての物を発見できるほどの視力持ち。さらには、いつも虫の集まる植物のところにいたので薬草にも詳しい。ピィほどの適任は居ないだろう。
計算も得意なので経理も任せたいところだが、残念ながら計算する収入がまだ無いし。
「三つめは、実験用の畑だな」
「実験用ですか?」
「そう。実は魔族領で自生する植物の種を、少し持っていてな。それをこの村でも育てられないか、試してみようと思うんだ」
そう言って俺は、収納バッグからワサワサと黒い毛の生えた種を取り出した。
――――――――――――――――――
「ストラゼス様。とある世界で『ファンタジー大賞』が始まったそうですよ」
「あー、らしいな。読者さんの応援で、受賞する確率がUPするんだとか」
「『投票』をしてもらった作者が、気持ち悪い顔をしていたニャ!」
「僕も見たのです!」
「見たのー」
「ちょっ、三人とも……」
「…………あんまり言ってやるな」
「え、えっと。清き一票を入れてくださると……」
「作者はともかく、フシたちのためによろしくニャ!」
「なのです!」
「よろしくー」
9
お気に入りに追加
1,078
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる