透影の紅 ~悪魔が愛した少女と疑惑のアルカナ~

ぽんぽこ@書籍発売中!!

文字の大きさ
上 下
87 / 87
聖杯の章

JOKER 透影の紅

しおりを挟む
「そんな、俺は、でも紅莉を愛していたのに……」

「あははは!! そうだよ。両想いだったんだろう? まったく、笑っちゃうよね。でも、紅莉は昔からずっと考えていたんだ。悠真クンを手に入れるにはどうすれば良いかって。その為に、幼馴染とその母親を利用した。あの女をそそのかしたのが誰か分かるかい? ……紅莉だよ。自分が悪魔を復活させたから協力しろ。今度こそ、一緒に暮らせるようにしてやるから、って。わざわざ鳥かごのカッコウになっていた日々子の元に会いに行ってまでしてさぁ」


 紅莉は星奈の母親のことを知っていた……?
 ぜんぶ、俺と星奈を別れさせるために……?

「紅莉がずっと日々子と連絡を取っていたのだって、気付いていなかったのかい? 星奈のスマホを盗んで日々子に持たせていたけど?」
「まさか、星奈と連絡が取れなかったのも……どうして、そこまでして……」
「日々子がボクを神と崇め、ボクを手に入れようとしたように。紅莉にとっての神は悠真クン、キミだった。自分を絶望から救ってくれた人と、たとえ死んでも離れたくない。――だからあの子は、思い付いたんだ。

 長椅子の上にあった黒い本……あの日々子が持っていた呪術の本を取り、俺の前でヒラヒラとこれ見よがしに見せつけてきた。


「本を集めればボクの力は戻り、永遠に本の中の世界は守られる。紅莉が目指したのは、本の中でキミと暮らすこと」
「そんな……ならどうして俺は星奈を……あの女をこの手で殺してまで……」

 思い出したくもない、肉が抉れていく感触が手に戻る。ガタガタと震えてきた。
 手も真っ赤で、ぬるぬるで……


「いくら他人を護るためとはいえ、人を殺めた。純粋だったキミが罪を犯す過程は……ふふっ。実に見ものだったよ」



「そ、それじゃあ……俺の、呪いは……」
「術者が死んでも消えることはない。解くには本が必要だったから。そしてその本は……ふふふ。この通り、ボクの手の中にある」
「よ、寄越せよっ!!」

 興奮し過ぎたのか、今度は鼻から血が流れてきた。鼻が詰まって、さっきから漂っていた臭いにおいが分からなくなったから丁度いい。
 ラブホテルで出逢った時のカズオのように、甘酸っぱい臭いがしていたから。

 その代わり、かゆい。かゆいかゆいかゆい……。


「嫌だよ。これはボクのものだ。それにどちらにせよ、もう時間タイムリミットだ」
「え――」

 マルコが紅莉の持っていたコンパクトミラーを取り出し、見せてきた。

 鏡に映っていた俺は真っ赤で……

 ドロドロと流れた紅い影が……

 透明だった……俺の……


「さようなら悠真クン。本の中で紅莉と末永くお幸せにね。ふふっ、ふふふふ。あははは!!」


 遠くなっていく意識の中、悪魔のような笑い声が教会に木霊していた。



 ―了―
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ゴーストバスター幽野怜

蜂峰 文助
ホラー
ゴーストバスターとは、霊を倒す者達を指す言葉である。 山奥の廃校舎に住む、おかしな男子高校生――幽野怜はゴーストバスターだった。 そんな彼の元に今日も依頼が舞い込む。 肝試しにて悪霊に取り憑かれた女性―― 悲しい呪いをかけられている同級生―― 一県全体を恐怖に陥れる、最凶の悪霊―― そして、その先に待ち受けているのは、十体の霊王! ゴーストバスターVS悪霊達 笑いあり、涙あり、怒りありの、壮絶な戦いが幕を開ける! 現代ホラーバトル、いざ開幕!! 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

一ノ瀬一二三の怪奇譚

田熊
ホラー
一ノ瀬一二三(いちのせ ひふみ)はフリーのライターだ。 取材対象は怪談、都市伝説、奇妙な事件。どんなに不可解な話でも、彼にとっては「興味深いネタ」にすぎない。 彼にはひとつ、不思議な力がある。 ――写真の中に入ることができるのだ。 しかし、それがどういう理屈で起こるのか、なぜ自分だけに起こるのか、一二三自身にもわからない。 写真の中の世界は静かで、時に歪んでいる。 本来いるはずのない者たちが蠢いていることもある。 そして時折、そこに足を踏み入れたことで現実の世界に「何か」を持ち帰ってしまうことも……。 だが、一二三は考える。 「どれだけ異常な現象でも、理屈を突き詰めれば理解できるはずだ」と。 「この世に説明のつかないものなんて、きっとない」と。 そうして彼は今日も取材に向かう。 影のない女、消せない落書き、異能の子、透明な魚、8番目の曜日――。 それらの裏に隠された真実を、カメラのレンズ越しに探るために。 だが彼の知らぬところで、世界の歪みは広がっている。 写真の中で見たものは、果たして現実と無関係なのか? 彼が足を踏み入れることで、何かが目覚めてしまったのではないか? 怪異に魅入られた者の末路を、彼はまだ知らない。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...