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金貨の章
♦11 配信者の女の子
しおりを挟む「えっ、ちょ!? ま、待って。何なのよ!?」
ピンクゴールド頭でモコモコのパジャマ姿をした少女が悲鳴を上げた。
突然、パソコンの電源が落ちた。
せっかく盛り上がっていたのに、お陰で配信がストップしてしまったのである。
部屋でホラーゲーム実況に興じていた少女は真っ暗になったディスプレイに絶望し、装着していた高級そうなヘッドホンを荒々しく床に投げ捨てた。
「ちょっとぉ、お姉ちゃんの仕業なの!? 今日は仕事に行ったはずじゃ……って、誰?」
姉、というのは同居人だろうか。
彼女は文句の一つでも言おうと思ったのか、立ち上がって部屋から出ようとしたところで悠真たちの存在に気が付いた。
「こんにちは、山科立夏さん。私たち、貴女に用があってここまでやってきたの」
「……私に? ってもしかして、これやったのアンタたち!? なんてことすんのよ!! 配信止まっちゃったじゃん!!」
いや、配信のことより目の前にいる不審者の方をまず気にしろよ。
自分のことながら、悠真は心の中でそう突っ込まざるを得なかった。
「いいから、話を聞いて。単刀直入に言うけど、貴女が持っている占星術の本を私達に渡してほしいの」
「あぁ。渡してくれさえすれば、俺達はさっさと帰るから」
二人は「説明しても分かってもらえなさそう」と、打ち合わせ無しで意見が一致した。
だから本を持っているなら寄越すよう、シンプルに伝えたのだ。
だが立夏は一瞬何のことを言われているのか分からず、ポカンとしていた。
「はぁ!? なんでアタシがアンタ達に渡さなきゃなんないのよ!? あの本だってメッチャ高かったんだからね!? お小遣いと配信活動で稼いだお金使ってやっとゲットできたんだから!!」
まぁ、そうだよなぁ。
いきなり知らない人間がやってきて、お前の物を寄越せと言われたところで渡したがる奴なんて居るわけがない。
どうするんだよ、と紅莉を見やる。
「あのね。この本を狙ってとある女が人を殺して回っているの。知らない? 貴女が入ろうとしていたカレイドスコープ。そしてメールをしていた相手。みんな死んじゃっているのよ? このままじゃ、貴女だって狙われるわ」
「嘘……じゃああのキモ……オジサンも……?」
紅莉がスマホでニュースを検索して見せてやると、立夏は大げさなほど口を開けて驚いた表情をした。どうやら演技でも何でもなく、カズオが死んだことを知らなかったようだ。
「アタシ、昨日氷川市のカレイドスコープに行ったんだけど……」
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