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杖の章
♣24 初めてのラブホテル
しおりを挟む喫茶店でひと通りの準備を終えた悠真と紅莉は、ラブホテルへと来ていた。
カレイドスコープの本拠地へ向かう途中で見つけた、あの年季の入った愛の巣だ。
もちろん、二人は性行為をするためにここへ来たのではない。
これからあのパワーストーンを売りつけるボッタクリ野郎と会うためである。
なお、文面でしか分からなかったが、その占い師は男で間違いないだろう。
理由は口コミを見れば一目瞭然だった。
明らかに女性に対してだけ、そいつの占いの内容が違っていたのだ。
『親身になって相談に乗ってくれました! 丸裸にされちゃった気分です!』
『プレゼントしていただいた石も、彼のパワーがたくさん籠められていて生活が一変しました!』
『またお願いしたいです。彼と会うだけで、身体が驚くほどスッキリします!』
そんなレビューがあれば誰だって、その占い師が客にいかがわしい行為をしたんだと勘付くだろう。それでもリピーターが居るということは、なにか裏があるに違いない。
試しに紅莉がその占い師に『ホテルで逢いたい』とメールを送ってみたところ、案の定『今から行く』と返ってきた。そのメールアドレスがKazuo_K@~とあったので、カズオが奴の名前なのかもしれない。
そういうわけで、悠真と紅莉はカズオを罠に嵌めるためにここへと来ていた。
もちろん、童貞の悠真はラブホテルに入るのは初めての経験だ。
入り口にあったフロントでの一幕を思い出し、悠真の顔が真っ赤になった。
部屋を選ぶ時に、どの部屋を選べばいいのか分からず、ずっと目が泳いでいたのだ。
その様子があまりにも挙動不審だったのか、それを見た紅莉に散々からかわれてしまった。
だって、ジャグジー付きだとかシチュエーションプレイ別と言われたって、分かるわけがない。隣りで紅莉にクスクスと笑われながら、真ん中の値段が表示された部屋を選んだ。
考えてみれば、別に紅莉といたすわけでも何でもない。だから、部屋で悩む必要なんて一切無かったのだ。あぁ、紅莉もそれが分かっていたからこそ、あんなに笑っていたのだろう。
さらに顔の温度が上昇したことを自覚しながら、悠真はクローゼットの中に隠れていた。
あくまでも主役は紅莉であって、自分はいざという時の為のボディーガードである。
念のため、悠真も紅莉もこの現場をスマートフォンで録画している。カズオが紅莉に手を出した瞬間に、こちらの勝利が確定する。
やろうとしているのは完全に美人局のそれなのだが、今はそんなことを気にしている場合では無い。こっちは命懸けなのだ。
クローゼットの隙間から部屋の様子を覗いていると、紅莉も準備が整ったようでこちらに向かってオーケーのハンドサインをした。
紅莉は奴にこのホテルの場所と、部屋の番号などを伝えてある。
来る予定の時間もあと僅かだ。
ドキドキしながらさらに十分ほど待機していると、部屋のインターフォンが鳴った。
ついにカズオがやってきたのだ。
紅莉は彼を部屋に迎え入れるため、一度深呼吸をしてから玄関に向かった。
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