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杖の章
♣20 駅前通り~商店街
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氷川駅の改札から出て、西口へと向かう。
この駅は河口駅に比べて倍以上も大きい。
電車の種類も多く、新幹線も通っているのだから大きいに決まっている。
規模に比例して利用者も多く、構内は制服やスーツを着た人たちで溢れかえっていた。
学校をサボっている手前、警察に補導されないように私服でやってきたのだが、これでは逆に目立ってしまった。まぁ、こればっかりは仕方がないだろう。
駅構内を仲良く二人で歩いていると、テレビのCMにも出ているワッフル屋の脇を通り過ぎた。
スイーツが大好きな紅莉が、目を奪われている。じっと見つめたまま、人の流れに逆らうように立ち止まって動かない。
「……食べたいのか?」
「え? えへへ、だって美味しそうじゃない?」
仕方なく、悠真はワッフルを買ってあげることにした。
というより、そうでもしなければそこからテコでも動かなさそうだった。
「えへへ、ありがとう悠真君」
紅莉は自分で払うと言っていたが、ここは少し彼氏面をして支払ってしまった。
店員からワッフルを受け取ってさっそく紅莉に渡してやる。
すると、紅莉は「お金持ちのパパみたい」と失礼なことを言ってきた。
イラっと来た悠真は、彼女の手にあったワッフルに噛み付いてやった。
「……ふぇ?」
「ふふふ。ばーか。あ、美味いなこれ」
モグモグと咀嚼する悠真の隣りで、紅莉は口を開けてポカンとしていた。そして自分が食べる前にワッフルの半分が消えたことに気が付いた。
「私の……ワッフル……」
手元のワッフルを見て泣きそうな顔になっている紅莉。
それを見た犯人は焦った。さすがに泣かせるつもりはなかったのだから、
結局、悠真はワッフルを新しく買い直す羽目になってしまった。しかも、チョココーティングつきで。
そうして腹を軽く満たした二人は、目的のビルがある三番街の方へ歩いていく。
事前にマルコからビルの名前は聞いてある。マップアプリで検索し、場所も把握済みだ。あとはナビに従って行けば辿り着くはずである。
今日の空は曇天だ。午後からは雨が降るらしい。
だけど最近はもう暑い日が多かったし、これぐらいの方が涼しくて助かる。
それに今はデート中だ。握っている手に汗を掻きたくなんてない。
そう、二人の手はしっかりと握りあったままなのである。
電車を降りた時から、ここまでずっと。
改札を通る時やワッフルを食べる間はもちろん、手は繋いでいない。
しかしその度に、手を繋ぎ直すのだ。悠真からも、紅莉からも。
「星奈にバレたら殺されるかもな……いや、でも向こうだって……」
悠真は言い訳をしつつも、罪悪感を覚えていた。
手を繋いでも、恋人繋ぎにはしなかったのはそれが理由だった。
駅からロータリーに向かい、三番街へと入る。
ここはアーケード街になっていて、雨の日でも気にせず歩くことができる。
繁華街というだけあって、居酒屋や風俗店が多い。まだ月曜の朝だというのに、立ち飲み屋には顔を赤黒くした中年が、お猪口を片手に酒を呷っていた。
この駅は河口駅に比べて倍以上も大きい。
電車の種類も多く、新幹線も通っているのだから大きいに決まっている。
規模に比例して利用者も多く、構内は制服やスーツを着た人たちで溢れかえっていた。
学校をサボっている手前、警察に補導されないように私服でやってきたのだが、これでは逆に目立ってしまった。まぁ、こればっかりは仕方がないだろう。
駅構内を仲良く二人で歩いていると、テレビのCMにも出ているワッフル屋の脇を通り過ぎた。
スイーツが大好きな紅莉が、目を奪われている。じっと見つめたまま、人の流れに逆らうように立ち止まって動かない。
「……食べたいのか?」
「え? えへへ、だって美味しそうじゃない?」
仕方なく、悠真はワッフルを買ってあげることにした。
というより、そうでもしなければそこからテコでも動かなさそうだった。
「えへへ、ありがとう悠真君」
紅莉は自分で払うと言っていたが、ここは少し彼氏面をして支払ってしまった。
店員からワッフルを受け取ってさっそく紅莉に渡してやる。
すると、紅莉は「お金持ちのパパみたい」と失礼なことを言ってきた。
イラっと来た悠真は、彼女の手にあったワッフルに噛み付いてやった。
「……ふぇ?」
「ふふふ。ばーか。あ、美味いなこれ」
モグモグと咀嚼する悠真の隣りで、紅莉は口を開けてポカンとしていた。そして自分が食べる前にワッフルの半分が消えたことに気が付いた。
「私の……ワッフル……」
手元のワッフルを見て泣きそうな顔になっている紅莉。
それを見た犯人は焦った。さすがに泣かせるつもりはなかったのだから、
結局、悠真はワッフルを新しく買い直す羽目になってしまった。しかも、チョココーティングつきで。
そうして腹を軽く満たした二人は、目的のビルがある三番街の方へ歩いていく。
事前にマルコからビルの名前は聞いてある。マップアプリで検索し、場所も把握済みだ。あとはナビに従って行けば辿り着くはずである。
今日の空は曇天だ。午後からは雨が降るらしい。
だけど最近はもう暑い日が多かったし、これぐらいの方が涼しくて助かる。
それに今はデート中だ。握っている手に汗を掻きたくなんてない。
そう、二人の手はしっかりと握りあったままなのである。
電車を降りた時から、ここまでずっと。
改札を通る時やワッフルを食べる間はもちろん、手は繋いでいない。
しかしその度に、手を繋ぎ直すのだ。悠真からも、紅莉からも。
「星奈にバレたら殺されるかもな……いや、でも向こうだって……」
悠真は言い訳をしつつも、罪悪感を覚えていた。
手を繋いでも、恋人繋ぎにはしなかったのはそれが理由だった。
駅からロータリーに向かい、三番街へと入る。
ここはアーケード街になっていて、雨の日でも気にせず歩くことができる。
繁華街というだけあって、居酒屋や風俗店が多い。まだ月曜の朝だというのに、立ち飲み屋には顔を赤黒くした中年が、お猪口を片手に酒を呷っていた。
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