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杖の章

♧11 ラッキーボーイ

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 禍星の子、飯田直樹は大吉男ラッキーボーイである。
 なぜなら、彼には風水という占いの才能を生まれ持っていたのだから。

 風水を扱う上で、ある有名な本がある。
 晋の時代、占術のひとつ、卜占ぼくせんを専攻していた郭璞かくはくによって書かれた葬書、という本だ。

『気は風に乗れば則ち散り、水に界せられば則ち止る。古人はこれを聚めて散らせしめず、これを行かせて止るを有らしむ。故にこれを風水と謂う』

 要約すると、これは『気は風に乗り、水に留まる』となる。

 地理学、天文学、五行説などに精通していた彼はそれらを複合的に踏まえた上で、「気の流れ」と「環境」との関係を研究し、それを本にしたためたのだ。

 そして葬書とあるように、元々は弔いに適した地を探すのが目的としていた。
 これは風水的に良いと示す場所に死者を葬れば、その子孫に繁栄がもたらされるという当時の思想があったためだ。

 直樹は大学で地理を専攻していたこともあり、弔いのプロとも言える郭璞かくはくに興味を持った。

 奇しくもその時、彼には弔いたい人が居たのだ。
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