14 / 87
剣の章
♠14 愚者のカード
しおりを挟む
「禍星の子……?」
聞き慣れないフレーズに悠真は首を傾げる。
受け入れる態勢になって最初のひと言目から知らない言葉が出てしまったのだから、それも当然だろう。
「うーん、ちょっとオカルト染みた話になるんだけどね。取り敢えず、まぁ。そう呼ばれている人間が居るのよ。ところで悠真君はタロットって知ってる?」
紅莉はポカン、としてしまった彼を見て「だよねぇ……」と苦笑した。
襲ってきた女について聞いていたはずなのに、「タロットって知ってる?」と聞かれればそれも当然である。
「ほら、占いとかでもカードで使っている人がいるでしょ? あれだよ、あれ」
「え? あぁ、うん……実物は見たことが無いけど、タロット自体は聞いたことはあるような……あぁ、いや。母さんが昔、それっぽいのを持っていたかもしれない」
幼い頃に悠真がタンスに入っていたタロットカードを、トランプカードと勘違いして遊ぼうと思ったことがある。それは両親の寝室にあったのだが、どうやら母の大切なものだったらしく、使い方が分からず神経衰弱を始めていた悠真を見て激怒された記憶があった。
「タロットには二一種類の大アルカナと呼ばれるカードがあってね。いろんな人間の物語が描かれているの。それらのカードが意味する宿命を背負った人間が、禍星の子なのよ」
紅莉はスクールバッグから小さなカードの束を取り出し、一枚を取り出した。
「たとえば、この愚者のカード。まぁ愚者なんて名前がついているけれど、ゼロ番目のコレは、旅の始まり、何かが始まることを意味しているの。だから愚者、というよりも旅人って意味合いの方が近いかな」
「はぁ……」
紅莉はその他にも塔や法衣を着た人物が描かれたカードを悠真に見せて、簡単に説明していった。
中には死神や悪魔といったカードもあった。「死」や「誘惑」といった意味だと教えられた時には、他人事ながら「こんな宿命は嫌だな」と思ってしまった。
「つまりはね? これらのカードをに選ばれた禍星の子は、そういったタロットの性質に近い運命を辿るということなの」
紅莉はここまで説明して、悠真の口が限界まで引き攣っている事に気が付いた。
まぁそれも仕方のないことだろう。
見知らぬおかしな女に襲われ、助かったと思ったら友人からオカルトの話をされる。
とうに理解の限界を迎えていてもおかしくはない。
「うぅ~。これじゃ悠真君に、私までおかしな人間に思われちゃう……」
「あ、いや。そんなことは……」
思っていないとは言えない。嘘を吐けない悠真は否定も肯定もせず、ただ言葉を濁した。
聞き慣れないフレーズに悠真は首を傾げる。
受け入れる態勢になって最初のひと言目から知らない言葉が出てしまったのだから、それも当然だろう。
「うーん、ちょっとオカルト染みた話になるんだけどね。取り敢えず、まぁ。そう呼ばれている人間が居るのよ。ところで悠真君はタロットって知ってる?」
紅莉はポカン、としてしまった彼を見て「だよねぇ……」と苦笑した。
襲ってきた女について聞いていたはずなのに、「タロットって知ってる?」と聞かれればそれも当然である。
「ほら、占いとかでもカードで使っている人がいるでしょ? あれだよ、あれ」
「え? あぁ、うん……実物は見たことが無いけど、タロット自体は聞いたことはあるような……あぁ、いや。母さんが昔、それっぽいのを持っていたかもしれない」
幼い頃に悠真がタンスに入っていたタロットカードを、トランプカードと勘違いして遊ぼうと思ったことがある。それは両親の寝室にあったのだが、どうやら母の大切なものだったらしく、使い方が分からず神経衰弱を始めていた悠真を見て激怒された記憶があった。
「タロットには二一種類の大アルカナと呼ばれるカードがあってね。いろんな人間の物語が描かれているの。それらのカードが意味する宿命を背負った人間が、禍星の子なのよ」
紅莉はスクールバッグから小さなカードの束を取り出し、一枚を取り出した。
「たとえば、この愚者のカード。まぁ愚者なんて名前がついているけれど、ゼロ番目のコレは、旅の始まり、何かが始まることを意味しているの。だから愚者、というよりも旅人って意味合いの方が近いかな」
「はぁ……」
紅莉はその他にも塔や法衣を着た人物が描かれたカードを悠真に見せて、簡単に説明していった。
中には死神や悪魔といったカードもあった。「死」や「誘惑」といった意味だと教えられた時には、他人事ながら「こんな宿命は嫌だな」と思ってしまった。
「つまりはね? これらのカードをに選ばれた禍星の子は、そういったタロットの性質に近い運命を辿るということなの」
紅莉はここまで説明して、悠真の口が限界まで引き攣っている事に気が付いた。
まぁそれも仕方のないことだろう。
見知らぬおかしな女に襲われ、助かったと思ったら友人からオカルトの話をされる。
とうに理解の限界を迎えていてもおかしくはない。
「うぅ~。これじゃ悠真君に、私までおかしな人間に思われちゃう……」
「あ、いや。そんなことは……」
思っていないとは言えない。嘘を吐けない悠真は否定も肯定もせず、ただ言葉を濁した。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
ゴーストバスター幽野怜
蜂峰 文助
ホラー
ゴーストバスターとは、霊を倒す者達を指す言葉である。
山奥の廃校舎に住む、おかしな男子高校生――幽野怜はゴーストバスターだった。
そんな彼の元に今日も依頼が舞い込む。
肝試しにて悪霊に取り憑かれた女性――
悲しい呪いをかけられている同級生――
一県全体を恐怖に陥れる、最凶の悪霊――
そして、その先に待ち受けているのは、十体の霊王!
ゴーストバスターVS悪霊達
笑いあり、涙あり、怒りありの、壮絶な戦いが幕を開ける!
現代ホラーバトル、いざ開幕!!
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
一ノ瀬一二三の怪奇譚
田熊
ホラー
一ノ瀬一二三(いちのせ ひふみ)はフリーのライターだ。
取材対象は怪談、都市伝説、奇妙な事件。どんなに不可解な話でも、彼にとっては「興味深いネタ」にすぎない。
彼にはひとつ、不思議な力がある。
――写真の中に入ることができるのだ。
しかし、それがどういう理屈で起こるのか、なぜ自分だけに起こるのか、一二三自身にもわからない。
写真の中の世界は静かで、時に歪んでいる。
本来いるはずのない者たちが蠢いていることもある。
そして時折、そこに足を踏み入れたことで現実の世界に「何か」を持ち帰ってしまうことも……。
だが、一二三は考える。
「どれだけ異常な現象でも、理屈を突き詰めれば理解できるはずだ」と。
「この世に説明のつかないものなんて、きっとない」と。
そうして彼は今日も取材に向かう。
影のない女、消せない落書き、異能の子、透明な魚、8番目の曜日――。
それらの裏に隠された真実を、カメラのレンズ越しに探るために。
だが彼の知らぬところで、世界の歪みは広がっている。
写真の中で見たものは、果たして現実と無関係なのか?
彼が足を踏み入れることで、何かが目覚めてしまったのではないか?
怪異に魅入られた者の末路を、彼はまだ知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる