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新しい家と新しい旦那様?②
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「あの……私に手伝えることは無い?」
「いえいえ気にしないでください。先輩はお疲れでしょう?」
そんな私の申し出を、彼は笑顔で断ったけど……ここで引き下がるわけにはいかないのだ!
「そう言わずにさ。私にも何かやらせてほしいな~って……」
「……わかりました。それじゃあスープの味見役をお願いしてもいいでしょうか?」
私が必死になっているとローグ君は折れてくれたようで、小さな器にスープを入れてくれた。私はスプーンでひとすくいして口に運ぶ。
「あ、美味しい!」
私は一口食べて思わずそう溢したけれど、ローグ君は少し不満そうにしていた。
「本当ですか……? 一応、僕も味見はしましたが……自分では少し物足りないかなぁって……」
そんなローグ君の呟きを聞いて、私はつい笑みがこぼれてしまう。
「キミって結構、完璧主義なところあるよね」
「え? 別にそういうわけじゃ……」
「はいはい、分かってるって。ローグ君は根が真面目なんだもんね?」
「……むー。僕はただ、先輩に美味しいご飯を御馳走したかっただけです」
図星だったのか彼は頬を膨らませていたけど、それがまた可愛らしい。私はそんな彼の顔を見ながらスープを再び口に運ぶと……今度はニッコリと笑ってこう言った。
「でも私はこの味好きだよ。ホッとする味っていうか……毎日でも飲みたい味?」
「えっ、本当ですか?」
「本当だよ……って、あれ? なんだか変な言い方しなかった私!?」
そんな私の言葉に、彼は嬉しそうに「嬉しいです」と頷いていた。
◇
(結局、ローグ君に任せきりになっちゃったな……)
味見だって別に、私がする必要はなかったんじゃない? 先輩らしく、もっとカッコいいところを見せたかったな……。そんな後悔を心の中でしていると、ローグ君がテーブルに料理を運んできた。
「さぁ先輩、どうぞ召し上がれ」
「わ、美味しそう! それじゃあ早速……」
私はナイフとフォークを手に取ると、まずはスープから頂くことにした。そんな私の反応を待つようにローグ君はジッとこちらを見ている。
(うっ……なんだか緊張するなぁ)
やっぱり感想を言うのって恥ずかしいよね? だけどせっかく彼が作ってくれた料理だし……頑張って褒めよう!
「えっと……その……美味しいよ?」
なんで疑問形? と思うかもしれないけど、仕方ないじゃない! だって本当に美味しくて、それ以外の言葉が出てこなかったんだから! そんな私の反応に、ローグ君はホッとしたように胸を撫で下ろしていた。
「はぁ、良かった……魔法薬と一緒で、レシピがあればひと通り作れるんですけど。気付けばあれこれアレンジしてみたくなっちゃって」
「あ、分かる! “こうすればもっと美味しくなるかも?”って思ったら、ついつい新しい食材や調味料を試しちゃうんだよね!」
「そうそう! 先輩もそう思いますよね?」
「分かるよ。あ、そうだ! 今度は私が料理を作ってあげようか? これでも一人暮らしは長いから、パスタなんかは得意なんだよ!」
私の提案にローグ君は一瞬驚いたような顔をしていたが……すぐに嬉しそうに頷いた。
「いいですね! 楽しみにしてます」
そんな他愛もない話をしていると、さっきまで感じていた緊張がいつの間にか消えていた。
「いえいえ気にしないでください。先輩はお疲れでしょう?」
そんな私の申し出を、彼は笑顔で断ったけど……ここで引き下がるわけにはいかないのだ!
「そう言わずにさ。私にも何かやらせてほしいな~って……」
「……わかりました。それじゃあスープの味見役をお願いしてもいいでしょうか?」
私が必死になっているとローグ君は折れてくれたようで、小さな器にスープを入れてくれた。私はスプーンでひとすくいして口に運ぶ。
「あ、美味しい!」
私は一口食べて思わずそう溢したけれど、ローグ君は少し不満そうにしていた。
「本当ですか……? 一応、僕も味見はしましたが……自分では少し物足りないかなぁって……」
そんなローグ君の呟きを聞いて、私はつい笑みがこぼれてしまう。
「キミって結構、完璧主義なところあるよね」
「え? 別にそういうわけじゃ……」
「はいはい、分かってるって。ローグ君は根が真面目なんだもんね?」
「……むー。僕はただ、先輩に美味しいご飯を御馳走したかっただけです」
図星だったのか彼は頬を膨らませていたけど、それがまた可愛らしい。私はそんな彼の顔を見ながらスープを再び口に運ぶと……今度はニッコリと笑ってこう言った。
「でも私はこの味好きだよ。ホッとする味っていうか……毎日でも飲みたい味?」
「えっ、本当ですか?」
「本当だよ……って、あれ? なんだか変な言い方しなかった私!?」
そんな私の言葉に、彼は嬉しそうに「嬉しいです」と頷いていた。
◇
(結局、ローグ君に任せきりになっちゃったな……)
味見だって別に、私がする必要はなかったんじゃない? 先輩らしく、もっとカッコいいところを見せたかったな……。そんな後悔を心の中でしていると、ローグ君がテーブルに料理を運んできた。
「さぁ先輩、どうぞ召し上がれ」
「わ、美味しそう! それじゃあ早速……」
私はナイフとフォークを手に取ると、まずはスープから頂くことにした。そんな私の反応を待つようにローグ君はジッとこちらを見ている。
(うっ……なんだか緊張するなぁ)
やっぱり感想を言うのって恥ずかしいよね? だけどせっかく彼が作ってくれた料理だし……頑張って褒めよう!
「えっと……その……美味しいよ?」
なんで疑問形? と思うかもしれないけど、仕方ないじゃない! だって本当に美味しくて、それ以外の言葉が出てこなかったんだから! そんな私の反応に、ローグ君はホッとしたように胸を撫で下ろしていた。
「はぁ、良かった……魔法薬と一緒で、レシピがあればひと通り作れるんですけど。気付けばあれこれアレンジしてみたくなっちゃって」
「あ、分かる! “こうすればもっと美味しくなるかも?”って思ったら、ついつい新しい食材や調味料を試しちゃうんだよね!」
「そうそう! 先輩もそう思いますよね?」
「分かるよ。あ、そうだ! 今度は私が料理を作ってあげようか? これでも一人暮らしは長いから、パスタなんかは得意なんだよ!」
私の提案にローグ君は一瞬驚いたような顔をしていたが……すぐに嬉しそうに頷いた。
「いいですね! 楽しみにしてます」
そんな他愛もない話をしていると、さっきまで感じていた緊張がいつの間にか消えていた。
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