上 下
16 / 19

新しい家と新しい旦那様?②

しおりを挟む
「あの……私に手伝えることは無い?」

「いえいえ気にしないでください。先輩はお疲れでしょう?」

 そんな私の申し出を、彼は笑顔で断ったけど……ここで引き下がるわけにはいかないのだ!

「そう言わずにさ。私にも何かやらせてほしいな~って……」

「……わかりました。それじゃあスープの味見役をお願いしてもいいでしょうか?」

 私が必死になっているとローグ君は折れてくれたようで、小さな器にスープを入れてくれた。私はスプーンでひとすくいして口に運ぶ。


「あ、美味しい!」

 私は一口食べて思わずそう溢したけれど、ローグ君は少し不満そうにしていた。

「本当ですか……? 一応、僕も味見はしましたが……自分では少し物足りないかなぁって……」

 そんなローグ君の呟きを聞いて、私はつい笑みがこぼれてしまう。

「キミって結構、完璧主義なところあるよね」

「え? 別にそういうわけじゃ……」

「はいはい、分かってるって。ローグ君は根が真面目なんだもんね?」

「……むー。僕はただ、先輩に美味しいご飯を御馳走したかっただけです」

 図星だったのか彼は頬を膨らませていたけど、それがまた可愛らしい。私はそんな彼の顔を見ながらスープを再び口に運ぶと……今度はニッコリと笑ってこう言った。

「でも私はこの味好きだよ。ホッとする味っていうか……毎日でも飲みたい味?」

「えっ、本当ですか?」

「本当だよ……って、あれ? なんだか変な言い方しなかった私!?」

 そんな私の言葉に、彼は嬉しそうに「嬉しいです」と頷いていた。


 ◇

(結局、ローグ君に任せきりになっちゃったな……)

 味見だって別に、私がする必要はなかったんじゃない? 先輩らしく、もっとカッコいいところを見せたかったな……。そんな後悔を心の中でしていると、ローグ君がテーブルに料理を運んできた。


「さぁ先輩、どうぞ召し上がれ」

「わ、美味しそう! それじゃあ早速……」

 私はナイフとフォークを手に取ると、まずはスープから頂くことにした。そんな私の反応を待つようにローグ君はジッとこちらを見ている。

(うっ……なんだか緊張するなぁ)

 やっぱり感想を言うのって恥ずかしいよね? だけどせっかく彼が作ってくれた料理だし……頑張って褒めよう!


「えっと……その……美味しいよ?」

 なんで疑問形? と思うかもしれないけど、仕方ないじゃない! だって本当に美味しくて、それ以外の言葉が出てこなかったんだから! そんな私の反応に、ローグ君はホッとしたように胸を撫で下ろしていた。

「はぁ、良かった……魔法薬と一緒で、レシピがあればひと通り作れるんですけど。気付けばあれこれアレンジしてみたくなっちゃって」

「あ、分かる! “こうすればもっと美味しくなるかも?”って思ったら、ついつい新しい食材や調味料を試しちゃうんだよね!」

「そうそう! 先輩もそう思いますよね?」

「分かるよ。あ、そうだ! 今度は私が料理を作ってあげようか? これでも一人暮らしは長いから、パスタなんかは得意なんだよ!」

 私の提案にローグ君は一瞬驚いたような顔をしていたが……すぐに嬉しそうに頷いた。

「いいですね! 楽しみにしてます」

 そんな他愛もない話をしていると、さっきまで感じていた緊張がいつの間にか消えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】初夜の晩からすれ違う夫婦は、ある雨の晩に心を交わす

春風由実
恋愛
公爵令嬢のリーナは、半年前に侯爵であるアーネストの元に嫁いできた。 所謂、政略結婚で、結婚式の後の義務的な初夜を終えてからは、二人は同じ邸内にありながらも顔も合わせない日々を過ごしていたのだが── ある雨の晩に、それが一変する。 ※六話で完結します。一万字に足りない短いお話。ざまぁとかありません。ただただ愛し合う夫婦の話となります。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中です。

実在しないのかもしれない

真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・? ※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。 ※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。 ※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。

根暗令嬢の華麗なる転身

しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」 ミューズは茶会が嫌いだった。 茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。 公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。 何不自由なく、暮らしていた。 家族からも愛されて育った。 それを壊したのは悪意ある言葉。 「あんな不細工な令嬢見たことない」 それなのに今回の茶会だけは断れなかった。 父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。 婚約者選びのものとして。 国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず… 応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*) ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。 同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。 立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。 一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。 描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。 ゆるりとお楽しみください。 こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」 あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。 「セレス様、行きましょう」 「ありがとう、リリ」 私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。 ある日精霊たちはいった。 「あの方が迎えに来る」 カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

貧乏子爵令嬢ですが、愛人にならないなら家を潰すと脅されました。それは困る!

よーこ
恋愛
図書室での読書が大好きな子爵令嬢。 ところが最近、図書室で騒ぐ令嬢が現れた。 その令嬢の目的は一人の見目の良い伯爵令息で……。 短編です。

【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢

美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」  かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。  誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。  そこで彼女はある1人の人物と出会う。  彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。  ーー蜂蜜みたい。  これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。

処理中です...