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第20話 狙われていた天使。
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「俺は神を呪ったよ……天使として生まれて初めて愛を教えてくれた人を、この手で滅しなければならなくなった……お前に、その時の俺の気持ちが分かるか?」
紅い瞳から、血のように赤い涙を流すフェル。
かつて真琴に美しいと言われた白い涙を、堕天してしまった今ではもう見ることはできないだろう。
苦悩の末、自分の役目として悪魔を消滅させなければならなくなった状況。……どれだけの悲しみを彼を襲ったのか、それは想像に難くない。
「なにが天使だ。なにがシロだ。俺はただ、彼女と穏やかに暮らしたかった。それだけなのに……こんなことは幾ら神の思し召しだったろうと、絶対に許せない。だから俺は運命に歯向かい、彼女を復活させるための研究を始めたんだ」
ポタポタと赤い液体が白い教会の床を染めていく。
それはシロでも、クロでもない、ただ血のように赤い色。
「だから……だからアンタは天界を裏切ったのか!? そんな理由があったとしても、ボクの親友だったフェイトを殺す必要なんて無かったはずだ! 天使も悪魔も関係ないなら何故!!」
たしかにフェルに同情したい部分はある。
だが、ミカエルの友を殺したことはそれとこれとは別だ。
そもそも、そのフェイトをミカエルに紹介したのも師匠フェルだったはずなのに。
「あぁ、アイツか。アレは悪魔なのに天使に肩入れする珍しい実験体だったよ。名前はフェイトだったか? アイツが居なきゃ俺の研究による最高傑作は生まれなかったから感謝してるよ。クハハハ」
「実験、体だと……? アンタ、そんな目でアイツを……?」
「当たり前だろ。俺以外の純粋なシロであるお前と、シロが芽生えつつあるフェイト。2人がどう影響し合うかっていうのも良い研究になったぜ? 真琴はシロの身体にクロの悪魔を宿していたんだ。その逆のパターンを解析すれば……」
なにやら難しいことを言っているが、ミカエルには専門外のワードが多すぎて途中から理解することができなかった。
というより、自身も研究対象としてしか見られていなかったという事実にショックを受けていた。
あれほどの期間、優しく、時に厳しく様々なことを教えてくれた。
知識も、戦う技術も。あの慈愛に満ちた笑顔も、全部、ぜんぶ嘘だったのか。
たくさんの事が脳裏をよぎり、それらが胸をぎゅうっと締めつける。
「じゃあなぜ今になってボクの目の前に現れた……? ボクはもう、用済みなんだろ……?」
項垂れてしまったミカエルは、ポツリ、と独り言のように呟いた。
それを聞いたフェルは、我が意を得たりとばかりにパンと手を打った。
「それだよ、ミカエル。いやぁ、もうお前には何の役にも立たないし、放っておいていいと思ったんだけどよ。お前、面白いもの飼ってんじゃん。それ、俺に譲ってくれよ」
「……は? 飼っている……?」
ミカエルはもちろん、ペットなど飼ってなどいない。
そして他に一緒に居るモノと言えば。
「ほら、最近人間界に降りてからずっと一緒に居る、白黒の女がいるだろ? アレだよアレ! あのマガイモノこそ、俺が長年探し求めていたんだよ!! だから、な? 俺にくれよ!」
目を見開き、興奮しだすフェル。
どうやら彼はリィンが目的でこの教会にやって来たようだ。
――そういえばリィンはどこへ? まずい!? イネインもいつの間にか居なくなっている!!
「フェル様。ようやく掴まえましたよ。例の能力で脚を止められましたが……この通り」
まるで狩られたウサギのように、グッタリとしてイネインに抱きかかえられているリィン。
どうやら必死に逃げたが、彼女に捕らえられてしまったようだ。
「でかした、イネイン。……と、いうわけだ。さぁ、ミカエル。お前はどうする?」
紅い瞳から、血のように赤い涙を流すフェル。
かつて真琴に美しいと言われた白い涙を、堕天してしまった今ではもう見ることはできないだろう。
苦悩の末、自分の役目として悪魔を消滅させなければならなくなった状況。……どれだけの悲しみを彼を襲ったのか、それは想像に難くない。
「なにが天使だ。なにがシロだ。俺はただ、彼女と穏やかに暮らしたかった。それだけなのに……こんなことは幾ら神の思し召しだったろうと、絶対に許せない。だから俺は運命に歯向かい、彼女を復活させるための研究を始めたんだ」
ポタポタと赤い液体が白い教会の床を染めていく。
それはシロでも、クロでもない、ただ血のように赤い色。
「だから……だからアンタは天界を裏切ったのか!? そんな理由があったとしても、ボクの親友だったフェイトを殺す必要なんて無かったはずだ! 天使も悪魔も関係ないなら何故!!」
たしかにフェルに同情したい部分はある。
だが、ミカエルの友を殺したことはそれとこれとは別だ。
そもそも、そのフェイトをミカエルに紹介したのも師匠フェルだったはずなのに。
「あぁ、アイツか。アレは悪魔なのに天使に肩入れする珍しい実験体だったよ。名前はフェイトだったか? アイツが居なきゃ俺の研究による最高傑作は生まれなかったから感謝してるよ。クハハハ」
「実験、体だと……? アンタ、そんな目でアイツを……?」
「当たり前だろ。俺以外の純粋なシロであるお前と、シロが芽生えつつあるフェイト。2人がどう影響し合うかっていうのも良い研究になったぜ? 真琴はシロの身体にクロの悪魔を宿していたんだ。その逆のパターンを解析すれば……」
なにやら難しいことを言っているが、ミカエルには専門外のワードが多すぎて途中から理解することができなかった。
というより、自身も研究対象としてしか見られていなかったという事実にショックを受けていた。
あれほどの期間、優しく、時に厳しく様々なことを教えてくれた。
知識も、戦う技術も。あの慈愛に満ちた笑顔も、全部、ぜんぶ嘘だったのか。
たくさんの事が脳裏をよぎり、それらが胸をぎゅうっと締めつける。
「じゃあなぜ今になってボクの目の前に現れた……? ボクはもう、用済みなんだろ……?」
項垂れてしまったミカエルは、ポツリ、と独り言のように呟いた。
それを聞いたフェルは、我が意を得たりとばかりにパンと手を打った。
「それだよ、ミカエル。いやぁ、もうお前には何の役にも立たないし、放っておいていいと思ったんだけどよ。お前、面白いもの飼ってんじゃん。それ、俺に譲ってくれよ」
「……は? 飼っている……?」
ミカエルはもちろん、ペットなど飼ってなどいない。
そして他に一緒に居るモノと言えば。
「ほら、最近人間界に降りてからずっと一緒に居る、白黒の女がいるだろ? アレだよアレ! あのマガイモノこそ、俺が長年探し求めていたんだよ!! だから、な? 俺にくれよ!」
目を見開き、興奮しだすフェル。
どうやら彼はリィンが目的でこの教会にやって来たようだ。
――そういえばリィンはどこへ? まずい!? イネインもいつの間にか居なくなっている!!
「フェル様。ようやく掴まえましたよ。例の能力で脚を止められましたが……この通り」
まるで狩られたウサギのように、グッタリとしてイネインに抱きかかえられているリィン。
どうやら必死に逃げたが、彼女に捕らえられてしまったようだ。
「でかした、イネイン。……と、いうわけだ。さぁ、ミカエル。お前はどうする?」
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