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1-2 魔王討伐の日
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「――これでこの世界に平和が訪れた。やっと、これから新しい時代が始まる……!!」
「えぇ、レオ。魔王が勇者である貴方に討ち果たされた今、再びこの世界は希望の光に満ち溢れるでしょうね」
「あぁ、でもそれは聖女であるモナ。君のお陰だ!!」
人間の住む世界と魔王城が存在する空間を繋いでいる“狭間の門”。
その門を潜った先にある、魔王が棲む巨大な城。
吐き気を催すほどに異常な濃密な魔力が漂う、この石造りの要塞の最奥にある玉座の間にて、お互いを褒め称えながら抱き合う青年と少女。
周囲の様子を考えれば、この二人の行動はかなり異常なのだが……どうやら彼らにとってそんなことはお構いなしのようだ。
「ねぇ、二人とも。気持ちは分かるけど、その辺にしてくれる? ここには僕たちだって居るんだからね?」
「そうだよ~!! お姉ちゃんたちばっかりイチャついて、もうっ!」
二人だけの空間を作っている彼らに対して他の仲間たちが茶々を入れる。
そのセリフこそ空気を読まない男女に対する文句だったが、対する彼らの顔も満面の笑顔だ。
この城の主は、もう居ない。
空になった玉座の前には魔王だったモノの残骸が転がっていた。
世界に恐怖をもたらしていた存在も、物言わぬ骸になってしまえばもう恐れることは無い。
魔王を討伐したのはもちろん、今もこの広間で喜びあっている彼らだ。
リーダーは女神の加護を受けた平民出身の勇者、レオナルド。
その勇者と抱き合っていたのが彼の幼馴染である聖女、モナ。
彼らの国の王子で、背は小さめだが力は随一の剣士、ミケラッティオ。
そして聖女をお姉ちゃんと呼んでいたのが、彼女の双子の妹で魔法使い、リザ。
この四人は女神によって紡がれた運命の糸に手繰り寄せられ、出逢うべくして出逢った。
幼少の頃より共に血の滲むような研鑽を積み重ね、数え切れぬほどの死線を潜り抜けてきた、命の次に大切な戦友でもある。
そうして長い年月をかけて育まれたのは、友情だけでは無かった。
聖女モナは、勇者レオナルドに恋をしていたのだ。
レオナルドの方も、そんな彼女のことを……。
「取り敢えず、こんな陰気なところから脱出してさっさと僕らの国に帰ろうか」
「それもそうね。とは言っても……ここは思ってたよりおどろおどろしくないし、案外静かなところだったわね」
王子に対して聖女がそう答えた通り、この魔王城は良く言えば質実剛健な造りをしている。
悪く言えば物寂しい雰囲気のある居城だと言えるだろう。
インテリアや照明も最低限しかないし、人が住んでいたような生活感もほとんど感じられないが……ここに居たのは何と言っても、あの残虐非道な魔王だ。
人間とは根本的に感性が異なるのだろう。
魔王はどんなメカニズムなのか不明だが数十年に一度、突如発生すると言われている。
モンスターと呼ばれる異形の怪物を従えてあらゆる生命を貪り尽くす、恐怖の存在である。
そいつが現れる度に、女神が選んだ勇者と代々受け継がれていく聖女、そしてその仲間たちで魔王を打ち破ってきた。
当代の勇者たちである彼らも誰一人欠けさせることなくその役目を立派に果たし、これから数十年間も続く僅かな平和な時間を勝ち取ることができた。
ここへ来た時に使った門を潜り、戦闘で疲れ切った身体を引き摺るようにゾロゾロと自分たちの世界へ帰還していく一同。
だが彼らの心は達成感と期待感で満たされていた。
これから始まるであろう平和な生活を、愛する人との未来を夢見て。
それを物陰から見守る、奇妙な仮面をつけた人物がいた。
「魔王を斃し、全てが終わったかと思ったかな? 残念ながら、これからが始まりさ」
――さぁ、世界を救う物語を始めよう。終わりの聖女よ……。
「えぇ、レオ。魔王が勇者である貴方に討ち果たされた今、再びこの世界は希望の光に満ち溢れるでしょうね」
「あぁ、でもそれは聖女であるモナ。君のお陰だ!!」
人間の住む世界と魔王城が存在する空間を繋いでいる“狭間の門”。
その門を潜った先にある、魔王が棲む巨大な城。
吐き気を催すほどに異常な濃密な魔力が漂う、この石造りの要塞の最奥にある玉座の間にて、お互いを褒め称えながら抱き合う青年と少女。
周囲の様子を考えれば、この二人の行動はかなり異常なのだが……どうやら彼らにとってそんなことはお構いなしのようだ。
「ねぇ、二人とも。気持ちは分かるけど、その辺にしてくれる? ここには僕たちだって居るんだからね?」
「そうだよ~!! お姉ちゃんたちばっかりイチャついて、もうっ!」
二人だけの空間を作っている彼らに対して他の仲間たちが茶々を入れる。
そのセリフこそ空気を読まない男女に対する文句だったが、対する彼らの顔も満面の笑顔だ。
この城の主は、もう居ない。
空になった玉座の前には魔王だったモノの残骸が転がっていた。
世界に恐怖をもたらしていた存在も、物言わぬ骸になってしまえばもう恐れることは無い。
魔王を討伐したのはもちろん、今もこの広間で喜びあっている彼らだ。
リーダーは女神の加護を受けた平民出身の勇者、レオナルド。
その勇者と抱き合っていたのが彼の幼馴染である聖女、モナ。
彼らの国の王子で、背は小さめだが力は随一の剣士、ミケラッティオ。
そして聖女をお姉ちゃんと呼んでいたのが、彼女の双子の妹で魔法使い、リザ。
この四人は女神によって紡がれた運命の糸に手繰り寄せられ、出逢うべくして出逢った。
幼少の頃より共に血の滲むような研鑽を積み重ね、数え切れぬほどの死線を潜り抜けてきた、命の次に大切な戦友でもある。
そうして長い年月をかけて育まれたのは、友情だけでは無かった。
聖女モナは、勇者レオナルドに恋をしていたのだ。
レオナルドの方も、そんな彼女のことを……。
「取り敢えず、こんな陰気なところから脱出してさっさと僕らの国に帰ろうか」
「それもそうね。とは言っても……ここは思ってたよりおどろおどろしくないし、案外静かなところだったわね」
王子に対して聖女がそう答えた通り、この魔王城は良く言えば質実剛健な造りをしている。
悪く言えば物寂しい雰囲気のある居城だと言えるだろう。
インテリアや照明も最低限しかないし、人が住んでいたような生活感もほとんど感じられないが……ここに居たのは何と言っても、あの残虐非道な魔王だ。
人間とは根本的に感性が異なるのだろう。
魔王はどんなメカニズムなのか不明だが数十年に一度、突如発生すると言われている。
モンスターと呼ばれる異形の怪物を従えてあらゆる生命を貪り尽くす、恐怖の存在である。
そいつが現れる度に、女神が選んだ勇者と代々受け継がれていく聖女、そしてその仲間たちで魔王を打ち破ってきた。
当代の勇者たちである彼らも誰一人欠けさせることなくその役目を立派に果たし、これから数十年間も続く僅かな平和な時間を勝ち取ることができた。
ここへ来た時に使った門を潜り、戦闘で疲れ切った身体を引き摺るようにゾロゾロと自分たちの世界へ帰還していく一同。
だが彼らの心は達成感と期待感で満たされていた。
これから始まるであろう平和な生活を、愛する人との未来を夢見て。
それを物陰から見守る、奇妙な仮面をつけた人物がいた。
「魔王を斃し、全てが終わったかと思ったかな? 残念ながら、これからが始まりさ」
――さぁ、世界を救う物語を始めよう。終わりの聖女よ……。
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