鬼畜なエロゲ世界にモブ転生!?このままだと鬱ENDらしいので、ヒロイン全員寝取ってハピエン目指します!

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第23話 ぐるぐる、巻き巻き。

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「御主人様、実はスパイダーのアジトでこれを見付けたんだにゃ」

 任務に失敗してしまった莉子たちをひとしきり慰めたあと。各自解散しようかと思ったところに、莉子が何かを差し出してきた。

 渡されたものをよく見るため、俺たちは公園の街灯の下にあるベンチに移動することに。俺の両サイドには莉子と宇志川がちょこんと座る。


「これはタブレットか?……かなり壊れているみたいだが」

 それは蜘蛛の巣のようにひび割れたタブレット端末だった。

 だが液晶部分が割れてしまっていて、電源を入れることもできない。
 よく見れば焦げたような形跡もある。復旧できないよう、誰かが完全に破壊したんだろう。

 だが裏を返せば……。


「まさか、この中にタカヒロを殺した犯人の情報が!?」

 莉子もそれを予想していたようで、真剣な顔でコクンと頷いた。


「わたくしたちが来たのを察知して、慌ててその場を立ち去ったんでしょう」
「アジトそのものも徹底的に破壊されていたんにゃけれど、焼かれていたのはそのタブレットだけだったのにゃ」

 相手も偽装する暇は無かったってことか。でも莉子たちとガチの殺し合いに発展しなくて本当に良かった。これで誰かを喪っていたら、後悔してもしきれないしな。


「ともかく、二人ともよくやってくれた。これはお手柄だぞ!」

 そう褒めたのだが、宇志川はしょんぼりと肩を落としていた。


「でもここまで壊されていたら、さすがに復旧は無理ですわ。それこそ魔法でも使えない限り絶望的ですの……」

 俺が持つタブレットの残骸を見つめながら、宇志川は重苦しい溜め息を吐いた。

 なんだ、そんなことか。


「心配いらないさ。俺は魔法使いなんだ」
「今はそんな冗談はよしてください。こっちは真剣に悩んでいるんですよ?」

 隣に座っていた宇志川は呆れた様子で首を横に振る。

 どうやら信じてもらえなかったらしい。まぁ、そりゃそうだよな。俺だって逆の立場なら絶対信じるわけないし。

 まぁこの機会だし、宇志川にも俺のアイテムを披露してやるか。


「いや半分は本当だって。今から証拠を見せてやるよ」

 自信満々の表情で俺はポケットに手を突っ込み、目当てのアイテムをガサゴソと取り出す。

 今回使用するアイテムは、ご家庭にあるようなラップと同じ見た目をしている。それを二人の前でピリリ、と開封していく。


「えっ、ちょっ! どこからそんなものを出したんですの!?」

 明らかにポケットに収まり切れないブツが出てきた瞬間を目撃した宇志川は、ギョッとした顔になる。


「いいから見てろよ。これをこうしてっと……」

 説明は実演しながらだ。長細い箱からラップを引き出すと、俺は自分の膝の上でタブレットの残骸をグルグル巻きにし始めた。


「これは巻き戻しラップと言ってな。これに包んだものは何でも一度だけ時を戻すことができるんだ」

 ちなみに一周ぐるっと巻けば、一時間ほど巻き戻すことができる。だから襲撃のあった時間を計算して……うん、十周ぐらいしておけば大丈夫だろう。


「ちょっと、莉子様。マコトさんの言ってることって……」
「心配いらないにゃん。御主人様は雑魚だけど、持ってるアイテムだけはガチでヤベーのにゃん」
「おい莉子。雑魚ってなんだ雑魚って」

 たしかに俺自身は何の取り柄もないモブだけど、言い方ってもんがあるだろうに。

 まぁ莉子の言う通り、このタブレットも元通りになるってことだ。

 ただしこのアイテムには欠点がある。ひとつは巻き戻すにはその分だけ時間が掛かること。そしてもうひとつが、巻くことのできないものには使用できないということだ。つまり固形物以外や巨大なものは無理だってこと。

 ちなみに今回は十周したので、戻すのに十時間掛かる。そう考えるとちょっと使い勝手は良くないな。


「ほ、本当にそんな凄いアイテムが……」
「ああ。だからこのタブレットは問題なく直せるはずだ」

 宇志川は目を真ん丸にして驚いている。が、何かを思い出したように声を上げた。


「そういえば以前もおかしなアイテムを使っておりましたわね。そう、カラオケで莉子様がわたくしを操って……」
「…………さて。復元までまだ時間が掛かるし、いったん解散しようか。トワりんを待たせているんだ」

 明日は祝日なので、今日はお泊り会をする予定だったのだ。莉子の呼び出しで邪魔されてしまったが、これから徹夜でトワりんとDVDを見る約束が……。


「ダメですわ。ここでちゃんと説明してもらいます」

 宇志川が逃さないといった感じで、俺の腕を掴んできた。

 今まではアイテムのことをあやふやにしてきたんだが、これ以上誤魔化すのはちょっと厳しかったか。


「御主人様、もういいんじゃにゃい?」
「そうだなぁ……」

 彼女は俺たちの事情を理解してくれて協力してくれてるんだ。隠し事ばかりというのも気が引けるし、宇志川にも全部話しておくか。


「あー……、仕方ないな。じゃあ帰り道で歩きながら話すよ」
「いえ、このままここに座って話しましょう。そのヘンテコなアイテムで逃げられてはかないませんもの」

 その言葉の節々には、絶対に逃がさないという意思を感じた。実際、俺の腕を握る力がギュッと強くなった。

 やばい、コイツの怪力なら俺の細腕なんて簡単に折られそうだ。



 それから俺と莉子は、宇志川にこれまでの経緯を話してやった。

 もちろん俺が転生者であることも、この世界がエロゲーであることも包み隠さず全てだ。

 最初はまるっきり信じていない様子だったが、ゲームでしか知らないような知識――たとえば宇志川にも俺ののスリーサイズやいつも鞄にお菓子を沢山詰め込んでいるマル秘情報――を披露したら、みるみるうちに顔色が変わった。


「そんな……わたくしが生きている現実がゲームの世界だなんて……」

 宇志川は愕然とした様子で膝から崩れ落ちた。まぁ無理も無いよな。いきなりこんなことを言われても混乱するだけだし。すぐに納得した莉子の方がおかしかったのだ。

 とはいえ、実際にアイテムなんて非現実的なモンを目の当たりにしたわけで。彼女も信じるほかなかったようだ。

 エロゲーってなんですの?と聞かれたときは説明に困ってしまったが、俺の代わりに莉子がやんわりと解説してくれたから助かった。


「そういうわけで、俺はトワりんを救いたいんだ。宇志川にも協力してもらいたい」

 俺は地面にへたり込む彼女に手を差し伸べ、懇願するように頭を下げた。

 いつ死ぬか分からないこの世界で、味方はいればいるだけありがたい。特に彼女の力は絶対に必要なのだ。

 宇志川はしばらく呆けた顔のまま動かなかったが、眉を下げて小さく息を吐いてから、俺の手を取った。


「ここまで乗り掛かった舟ですもの。最後まで協力いたしますわ」
「そうか、それは助かる」

 良かった。以前は協力を断られてしまったが、宇志川の態度が軟化したみたいだ。

 だが決意に満ちた瞳をこちらに向けると、はっきりとこう言った。


「ですがその前に、貴方に聞いておきたいことがありますの」
「ん、なんだ? 答えられることなら、何でも答えるが」

 すると宇志川は真剣な表情で俺を見つめてきた。

 な、なんだ……? 一体どんな質問が来るんだ。

 思わずゴクリと喉を鳴らす。そして宇志川はゆっくりと口を開いた。


 ―――マコトさんは、本当に磯崎先生のことを愛しているのですか?

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