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第19話 元気に、なった?
しおりを挟む時間が過ぎ。リビングにあるローテーブルに並べられたのは、香ばしいタレの匂いが漂ううな丼だった。それと山盛りのトロロ芋。さらにはニンニクとニラの効いた餡かけ中華が追加でドン。
目の前に広がるご馳走を前にして、俺はゴクリと唾を飲み込んだ。
……いや、だがちょっと待ってほしい。なんですかこのラインナップ。統一性が皆無なうえに、どれも滋養強壮効果のある食材ばっかりじゃないか? トワりんの絶対に性交を成功させるという強い意志を感じる。
その証拠に、隣に座っているトワりんから物凄いプレッシャーを感じる。どうしよう、トワりんが怖くて顔を見れない。料理を前に体を硬直させながら冷や汗をダラダラと流していると、トワりんが楽しげに話しかけてくる。
「ねえ、マコトくん。私がどうしてこのメニューを選んだと思う?」
「……えっと。栄養満点だから、とか?」
「ふふっ、ある意味では大正解。実はね、私――」
そこで一度言葉を区切り、トワりんは艶っぽい声で囁いた。
「――ヌメヌメするモノが大好きで、とても元気になれるの」
「ッ!?」
「だからマコト君もいっぱい食べて、元気になってね?」
「は、はい……!」
まさかトワりんの方から誘ってくるとは思わなかった。これは夢じゃないよね? 頬をつねりたい衝動を抑えつつ返事をする。っていうか授業でウナギが出てきたのって、まさかトワりんの好みだったの?
すると彼女は妖しく笑い、俺の手を取った。そのまま指を絡めると、ゆっくりと顔を近づけてくる。
唇が触れ合うまであと数センチというところで、トワりんはピタリと動きを止めてしまった。
「さぁ、冷めちゃう前に食べましょう?」
「う、うん。そうだね……」
その後、俺はトワりんに促されるまま食事を始める。
箸を手に取り、まずはメインディッシュであるうなぎを一口。
もぐもぐと咀しゃくしてから飲み込む。うん、美味しい。
そして、おそるおそるトワりんの反応を確かめる。
すると、彼女は期待に満ちた眼差しでこちらを見つめていた。どうやら味を訊きたくてウズウズとしていたようだ。
「ど、どうかしら……?」
「美味しいよ。身もフワフワだし、タレも絶妙だし。毎日でも食べたいぐらいだよ……」
正直に答えると、トワりんはホッとした様子を見せる。
「良かった……。ふふっ、マコト君は褒め上手ね」
「あはは、それは言い過ぎだって」
トワりんに頭を撫でられながら苦笑する。恐々としながらも、他の料理にも箸を伸ばす。
……うん、普通に美味しい。派手さはないものの、家庭的な安心感がある。
でもどうしてだろう。大好きな人の料理を食べているのに、素直に喜べないのは。
それから俺は無言のまま食事を済ませた。
トワりんも同じタイミングで完食。すると、彼女はおもむろに席を立った。
「ごちそうさま。食器はそのままにしておいて。私がまとめて片づけておくから」
「いや、さすがにそれは悪いよ。いろいろと作ってもらったし、後片付けぐらいなら俺も手伝うよ」
「ふふ、ありがとう。でも大丈夫よ。それよりもマコト君にはひとつ、お願いしたいことがあるの」
「えっ、俺に……?」
いったいなんだろう。トワりんが俺に何かをお願いするなんて珍しい。
内心で首を傾げていると、彼女はソファーの前に移動し、ポンと腰掛けた。そして、膝の上を指し示してくる。
「マコト君、こっちに来て」
「……はい」
断る理由などないので言われた通りにする。すると、トワりんは嬉しそうな表情を浮かべた。
そのまま俺を太股の上に座らせると、ぎゅっと抱き締めてきた。トワりんの体温と柔らかさが伝わってきてドキドキとする。
心臓の音が大きくなるのを感じながら、彼女は俺の耳元に顔を寄せて囁いた。
「最近、肩こりがすごくって。マコト君、男の子で力がありそうだし……お風呂に入った後に、マッサージをしてくれないかしら?」
「あっ、そういうこと……」
「ダメだったかしら?」
「ううん、全然! むしろ嬉しいよ!」
もちろん断るはずがない。本人の同意ありでトワりんの身体に触れられるのだ。トワりんラブな俺が、こんなチャンスを逃すわけがなかった。
それにマッサージなら、丁度いいアイテムがある。この機会に試してみるのもいいかもしれない。
「じゃあ、後片付けをしたあとは一緒にお風呂に入りましょうね」
「あ、やっぱりそうなるんですね……」
その言葉を聞いて、先日の暴発事件を思い出した俺の心臓がドキリと跳ね上がった。
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