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11話/12話

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「ウォーレス!?」

 予想もしなかった人物。だけどそれは、私の都合のいい妄想ではなかった。

 魔物に侵されつつある街の中を、彼の馬が駆けてきていた。そして颯爽と馬から飛び降りると、彼は私を庇うように剣を抜いたのだった。


「どうしてここに?」
「ここは俺の街ですよ、レイ? 守るのは当然じゃないですか」

 そう言って笑うウォーレスの笑顔に、思わず胸が高鳴った。
 だって仕方ないじゃない? 彼が、こうして私を助けにきてくれたんだから!


「って、どうして私がレイだと!?」

 すっかり忘れていたけれど、今の私は聖女の姿だ。女性の恰好を彼に見せたことは、一度も無かったはずなのに――。

「知り合った期間は短くとも、あれほど心の内を語り合った仲じゃないですか。……それにたとえ姿かたちが変わろうとも、貴方の心は俺の好きなレイそのものだから」

 そんなの嬉し過ぎて、にやけ顔が止まらなくなるじゃない!
 もうっ! そんな可愛いこと言われたら、ますます好きに――。

「ウォーレス……私、貴方に謝らなくちゃ――」
「話は後にしましょう。まずは魔物の殲滅が先です」
「そ、そうね!」

 言われて慌てて、私は杖を構えて魔法を詠唱する。
 そしてウォーレスは剣で魔物を薙ぎ払う。

 そんな息の合ったコンビネーションで、私たちは次々と魔物を駆逐していった。

 1時間もすると、息のある魔物は居なくなり。救護が必要な街の住人達もあらかた助けることができた。
 ウォーレスは私の元に来るまでに、部下たちに指示をしていたらしく、迅速な対応ができたのも大きかった。


「一時はどうなるかと思ったけれど、これで一安心ね」

 ひと通りのやるべきことを終えて教会に戻ってきた私は、壁にズルズルと背を預けて座り込んだ。

「すべては聖女様のおかげです」
「あ、あはは……」

 私の隣に腰掛けたウォーレスは太陽のように輝かしい笑顔を私に向ける。なんだかそれが恥ずかしくって、私は思わず彼から顔を背けた。


「それにしても……一生の不覚でした」
「え?」
「昨晩の無礼をお詫びさせてください。貴方の言う通り、俺は聖女様に幻想を抱きすぎていた。レイとしての貴方をキチンと見ていれば、本当に大事な人はずっと傍にいたと気付けたのに」

 ウォーレスはそう言うと、私の前にひざまずいてこうべを垂れた。

「ちょ、ちょっとウォーレス! こんなところでやめてよ!」
「いいえ。これは俺なりのケジメなのです」

 彼の誠実さは嬉しいけど、やっぱり少し気恥ずかしいわね……。

「いい? 私は聖女だけど、貴方の友人であるレイでもあるの! 今まで通りでいいから!」
「……分かりました。では改めてよろしくお願い致しますね、レイ」

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